「ッツ....キツすぎる!」
「楽しいねぇお兄ちゃん!!」
『キョウヤ.....タノシイワネェ!』
「この無人機、成長して...!?」
夏蓮と無人機だと思っていた機体を2体纏めて敵に回して立ち回っている響弥はその顔を驚愕に染める。
「その無人機...なんなんだよ!」
「お兄ちゃん、無人機じゃないよ?その中には人が入ってる。誰だと思う?」
「.......」
「もう、解ってるんでしょ?言わないなら私が言ってあげるよ。--この機体は、お母さんだよ」
「--知ってんだよそんなのッ!!声を聴いて、解らない訳が有るか!!」
『ウレシイワ、キョウヤ。オボエテテクレテ、マエヨリツヨクナッテイテ』
「黙れェェェ!!」
響弥の手で【月】に換装。【アロンダイト】を抜いて夏蓮に向かって振りかぶる。更に腰から【八重霞】を抜いて母親であろう機体に攻撃を仕掛けるが、容易く砕かれてしまう。
「あ、そうだ。私のISの名前、お兄ちゃんは知らなかったよね?教えてあげる!このISは【
「無駄話を、ウダウダとッ!!」
【ドラグ・ファング】をスラスターの代わりにして急加速し、義手の薬莢を激発させて殴る。渾身の力、いつも通りに殴ったハズだった。俄には信じられない光景。何故なら、
「なっ....なっ!?」
「う~ん、まだ甘いなぁ。こんなんじゃ【アリス】どころか私にすら勝てないよ?もっともっと、【殺意】を乗せないと」
無造作に握った拳を響弥に向けて放つ夏蓮。予測線を視て避けようとしたが--
「ガッ.....!?」
予測線が出ると同時に...いや、出る前に攻撃を当てられていた。顔面、鳩尾、腹と3箇所をほぼ同時に攻撃された響弥は絶対防御を通しても尚、身体を芯から揺らされる様な衝撃に驚愕しながら体勢を立て直す。
「.....まだ『醒めて』ないならこんなものかな。それで此処まで戦えたんだから、凄いよお兄ちゃん」
「『醒めて』...?一体、何を...」
「じゃあ、ちょっと痛いけど眠っててね。大丈夫、
「グホッ!......まい、はら...たてな、し.....ら、うら....」
最後の最後に呼んだ3人の名前は何故詠んだのか響弥にも理解は出来なかった。ただ口を衝いて出てきた名前がその3人だったから、としか言いようがない。ただ確実なのは、響弥を助ける人は今此処に居ない事だけである。
「お母さん、帰ろうか。皆も待ってるしね」
『ソウネ。キョウヤハキニイッテクレルカシラ?』
「解んないね~。でも、少しでもこの世界に疑問を持ってたら気に入りはしなくても、少しは解ってくれるかもね!」
『ソレナライイワネ』
「うん!」
そしてと抱えられた響弥は何処かへと連れていかれてしまった。激戦が繰り広げられた証拠はもう殆どなく、偶々出ていた岩に刃が無惨に砕かれた八重霞とその刃の破片が虚しく輝きを放っているだけであった....
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
「おおおおっ!!」
全てのエネルギーを無効化する必殺の刃が福音の装甲を斬り裂く。そのまま一夏はスラスター出力を最大まで上げていく。押されながらも自分と操縦者を脅かす脅威を屠らんと喉笛に手を伸ばす。その指先が一夏の喉笛に少し食い込んだ所でやっと動作を停止した。
「目標は沈黙、倒したよ!」
「行くぞシャルロット、我が嫁を助けに『無駄ですよ』....何だと?」
『無駄なんですよ....だって、だってもう絶月の反応は--』
【
自分の無力さに泣く雪菜の涙が落ちるパソコンのレーダーには、絶月の反応を捉える事が出来る。いつもなら頼もしい光の点を刻むその画面には【MISSING】の文字が輝いていた....
臨海学校は終わった。しかし、それが楽しかったのは初日だけだという事は言うまでもないだろう。まだ専用機持ちは外面だけならいつも通りに振る舞えていた。だが、雪菜はそうもいかなかった。精神的に不安定になっている雪菜は旅館の海が見える部屋に半ば軟禁される形で入れられ、少しは安定するまで入れられていた。
教師陣は全力で絶月に至る手掛かりを捜した。しかし、見付かったのは無惨に砕かれた八重霞だけであり、他には何も見付からなかった。八重霞を見せられた雪菜はまた泣いたという。
生徒会長である楯無も皆の制止を振り切って捜そうとしたが、保険医として転勤してきた菫に止められて落ち着いた。他の専用機持ちも菫のカウンセリングに世話になっている。
更識響弥というかけがえのない存在を喪ったIS学園は、少なくとも最悪の雰囲気である。それを持ち直す為の文化祭すら、どうなるのかは解らない....
はい、どうもSuilennです。今回はこれからの読み方について話したいと思います。
響弥がまさかの誘拐をされてしまいました。これからは同じ章を響弥(御伽の国の破壊者)サイドと雪菜(IS学園)サイドで分けて話を展開していきます。なので、響弥サイドか雪菜サイドだけを読んで学園や響弥はどう動くのかを予想したり、両方を読んで同じ事件に対する捉え方の違いを楽しんだりしてください。因みに時間軸はどっちのサイドも同じ様に進行します。
では、この作品をこれからも宜しくお願いします。