「さて、全員準備は良いな?」
「「「「「「はい!!」」」」」」
「それじゃあ非公式ではあるが....【銀の福音】へのリベンジ、開始だ」
響弥達が教師陣の制止を振り切り結構した
「響弥、先ずは誰が先行するの?」
「先ずは攻撃力と機動力に特化してるセシリア、鈴に先行して貰う。良いな?」
「「了解(ですわ)」」
「ラウラは基本的に旅館の防衛で、隙が有れば福音に攻撃してくれ。ただヤツは中距離特化、遠距離も対応出来るだろ。攻撃が来た時、ちゃんと離脱出来る用意をしておけ」
「解ったぞ」
「そしてシャルロット、お前の仕事はかなり重要で大変だ。お前の専用機【エクレール】はかなり機動性と汎用性に秀でている。それを今回の強化パッケージ【アイギス】で防御力も強化する。だから装甲が薄いセシリアと鈴が被弾しそうになった場合、お前が守れ」
「うん、了解」
「そして箒、お前は基本的に陽動に徹しろ。一夏の事もあって決めたくなるだろうが、絶対に決めようとするな。お前の【紅椿】はほぼ全ての攻撃が福音には通用しない。【
「あぁ、絶対に守って見せよう」
「舞原は俺のサポートと全員のオペレーター、頼んだぞ。誰かが暴走したらお前が叱れ。お前が俺達の頭脳だ、頼んだぞ。俺は攪乱と遊撃を担当する。それじゃあお前ら、絶対に墜ちるなよ!」
「「「「「「了解!!」」」」」」
そして空へと飛び立った全員。教師陣が止めようとするかとも思ったが、恐らく束か千冬の圧力で来ないのだろう。そう思って意識を切り替える。
今の絶月のパッケージは【月】だ。ただこれは追従する為にそうしているのであって、対面した時はニュートラルの絶月に戻すだろう。【月】の薄い装甲では福音の攻撃に耐えられないし、【雪】の厚い装甲では超速の戦闘に対応しきれない。【花】を使ったとして、3分以内に決着を付けられるか解らないこの状況下でそんな不確定で危険なパッケージは使えないので、結局はニュートラルになるのだ。
「居たぞ....セシリア、鈴!」
『言わなくとも....!』
『今やりますわ...!』
鈴の【双牙天月】による斬撃の直後、福音の身体2ヶ所にレーザーと徹甲弾が着弾する。【ブルー・ティアーズ】の機動力強化パッケージ【ストライク・ガンナー】が装備する大型BTライフル【スターダスト・シューター】と【シュヴァルツェア・レーゲン】の砲戦パッケージ【パンツァー・カノニーア】の装備する2門の大型レールカノン【ブリッツ】の攻撃だった。
立て続けに3度の攻撃を喰らったのは流石に痛手だったのか、一番近い鈴に向けて【銀の鐘】による攻撃を加えようとする。だが、それを通す程甘くはない。
「やっぱりこの【エクレール】、凄いね...
エクレールとは【稲妻】という意味である。正に雷光の如く鈴と福音の間に飛び出したシャルロットはパッケージの名前の由来となった腕部装備型実体盾【アイギス】を構える。【ヤタノカガミ】のデータを利用したその盾は射撃の無効化ではなく衝撃や爆炎から自分や味方を護る事に特化しており、機体の背部に装備されている【シールドドラグーン・ツヴァイ】をビームで連結して巨大なビームシールドを生成する事も可能な防御力強化パッケージである。
「それじゃ、吹き飛んで貰おうか....!」
そして拡張領域から取り出したのはフルオートショットガン【
「【龍咆】!!」
甲龍の肩から、赤い炎を纏う砲弾が発射される。これこそが甲龍の攻撃力強化パッケージ【崩山】だ。安直なネーミングにも思えるが、正に山を崩す程の一撃を福音に叩き込む。
「はあぁぁぁ!!」
そして箒の【
「背中がお留守だぜ....!」
『
福音は両腕をいっぱいに広げる。それと同時に翼も広げ、エネルギーが集束する。次の瞬間、戦闘空域いっぱいにビームの奔流が放たれた。
「ッツ....こんなの、かわせる訳が--」
『皆さん!ビームシールドを持たない人は全員シャルロットさんの後ろに退避!更識くんは隙を見て【雪】に換装、このビームを散らして!』
「り、了解!」
エクレールのシールドドラグーンを連結させ、ドーム状のシールドを展開する。シャルロットの器用さは【
「【黒雷】!墜ちろぉぉぉ!!」
紅い純粋な破壊の奔流が、大量のビームを打ち消して福音に迫る。どうにか回避した福音だが、直下から迫る鈴。それに気付いた福音はエネルギー弾を何発も当てるが、鈴は止まらない。一夏が墜ちた事に対する悔しさを双天牙月に乗せる様に何度も何度も斬り、最後には拡散衝撃砲を喰らわせる。しかし、それは連携を乱す事になる。痛手を負わせたのは喜ばしい事だが、あまり褒められた事ではない。
「ど、どうよ!!」
片翼になった福音は深いダメージを負いながらも崩した姿勢を直ぐに修整すると、鈴の左腕に回し蹴りを放つ。既に大きいダメージを負っていた甲龍の腕部装甲はその威力に耐えきれず、破壊されてしまう。そしてそのまま海へと墜ちていく。
「鈴っ!おのれ--」
「ッ、馬鹿が!あれほど前に出るなと--ッ!!」
箒は両刀を手に持ち、福音へと斬り掛かる。あまりの加速に反応を一瞬だけ失った福音はその刀を肩に受ける。しかし、そのまま福音は両手で雨月と空裂を掴むと広げて無防備な体勢を取らせる。そのままエネルギーを充填し始める。
(此処で退いたら、響弥に申し訳が立たん!)
響弥の指示を破っての行動、実が伴わないならば本当に無意味な行動だ。それに意味を持たせる為、箒は身体をぐりんと1回転させる。装甲を展開、踵からビームの刃を発生させて頭に叩き込む。しかしまだ倒れない。
「一番の攻撃は、僕の手にある!」
シャルロットは福音の頭を掴み、海面へと飛行する。それだけならば直ぐに拘束を解かれ、鈴の二の舞になるだろう。そう、
「やった....僕達の--」
勝ちだ、そう続けようとしたのだろう。だが、それを続ける事は出来なかった。海へ沈んでいった福音が、再び空中へと飛来したからだ。先程までとはフォルムも違う。青い雷を纏ったその機体は、その目に明確な殺意と敵意を抱いて復活していた。
「アレは....【
そうラウラが叫ぶと同時に響弥も新たな気配を感じて後ろを向く。其処には自分の妹、夏蓮とクラスマッチに乱入してきた機体が響弥を掴み、何処かへ拐おうとしていた。
「久し振りだね、お兄ちゃん」
「あぁ...で、この俺を掴む腕はどういう事だ?」
「んー?あぁ、ちゃんと何をしたいのか言わないとね。.....
「仕方ねぇ、妹の我儘に付き合うのと躾は兄貴の役目だ。やってやる!」
そのまま引っ張っていかれる響弥を見て、雪菜とシャルロットとラウラが同時に声を荒げる。
「「「響弥(くん)!!」」」
「待ってて、今--」
スラスターにエネルギーを充填、
「お前らぁ!!」
「ッ.....!!」
「『やんなきゃいけない事』と『やれる事』の区別をちゃんと付けろ!俺の事は良い、先ずは俺が頼んだ仕事をやり遂げろッ!!」
そう言われてしまえばどうしようもない。追いたい気持ちを押し殺し、どうにか福音の方向を向く。運命が、変わる....