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買い物
「....こんな一々待ち合わせなんてしなくても良いじゃねーか...ったく、本当に女心は理解出来る気がしないな」
黒いジーパンに黒い半袖。例え夏が近くとも長ズボン、モノクロのファッションなのが更識響弥だ。片手には薄い長袖を持っている。半袖なのは腕の方が冷却効率が良いという理由で、足が長ズボンなのは熱を帯びやすく、稀に凄まじい温度になる時があるからだ。幾ら硬黒翔石とは言え基本は金属だ。その色もあって熱を帯びやすいのだ。モノクロは本人のセンスなのだが。
「お待たせしました、更識くん」
「ん、大して待ってねーよ」
「それなら良かったです。それでは行きましょう!」
珍しくハイテンションな雪菜の服装を見る響弥。上は白の半袖、下はハーフパンツだった。いつもは清楚な服装の雪菜だが、今日は違う。活発そうな一面を垣間見せるその服装に響弥は心からの誉め言葉を送る。
「その服、いつものお前とはイメージが違ってて、スゲェ新鮮で良いと思うぞ。でも、その格好は少し寒くないか?」
「え?...まぁ、少し肌寒いですけど大丈夫ですよ」
「...ハァ、風邪引いたら駄目だろ。臨海学校に支障が出るんだし、ちゃんと寒いなら言え。俺がさっきまで着てたヤツだけど、羽織っとけ。嫌なら返せ」
「いえ、大丈夫です。...更識くんのなら、むしろご褒美ですから」
「あ?」
「どうしました?」
「何か言わなかったか?ご褒美だとか何とか」
「...?空耳じゃないですか?」
「....そうか。ほい、ヘルメット」
「へ、ヘルメット?」
「おう。今日は天気も良いし、バイクで行くぞ」
「え、えぇ!?」
雪菜はつい大声をあげてしまった。何故なら、バイクに乗るという事はサイドカーでも無ければ掴まらなければ--つまり、密着しなければならないからだ。髪型が乱れるとか、そういう事ではなくただ恥ずかしいという、立派な理由なのだ。
「嫌だったか?それなら車に変えるけど」
「別に私は構わないけどでも響弥くんが私が掴まられるのが嫌でしょ!?」
(あ、コイツパニクってるな。日本語が聞き慣れない感じになってるし、確実にパニクってる)
「別に嫌じゃねーよ。お前が良いならバイクで良いな。よし、ヘルメット被ったら早く行くぞ」
「......はいぃ...」
耳まで真っ赤にしている雪菜を可愛いと思いながら、ヘルメットを渡してバイクに跨がる。タンデムシートに雪菜が乗り、腰を掴まれたのを確認して徐々に速度を出していく。響弥はバイクが一番好きだ。風を一番感じられる乗り物だと思っているからである。ISは兵器なのでノーカウントだが、他の乗り物は好きなのが響弥だ。其処はやはり男子という所だろう。
「うわぁ....人多いな。ピークの時よりかはマシなんだけど」
「でも、皆さんゲームコーナーに行ってますね。親子連れが多いですし、大会でも開かれてるのでしょうか?」
「どうでも良いけどな。さて、さっさと買いに行くか」
「分かりました」
ゲームに全く興味を示さない辺り、やはり何処かズレているというか達観しているというか、変わり者の2人だった。水着店に入った瞬間、響弥は黒い水着を持ってレジに向かう。それを雪菜は響弥の裾を引っ張って全力で止めていた。
「いきなりどうした?舞原」
「更識くん、まさかその水着を買うつもりだったんですか?」
「...?そうだけど、それがどうかしたか?」
「前から言いたかったのですが、どうして響弥くんは私服が全部モノクロなんですか?」
「いや、だって暖色とか寒色とか考えんの面倒じゃん。それに私服持ってる事だけでもマシな方だと思うけど。別に中学とかIS学園の制服とか持ってるし...いつもは楯無に言われて買ってるんだけどな」
「ぇ......」
「何かおかしいか?」
「...更識くん、私の水着より先に更識くんの服を買いましょう」
「え?別に要らねぇよ、服なんざ。それよりも舞原の水着だろ?」
「そんなのは些細な問題です。先ずは更識くんの服装に対する意識を変えます」
「は?おいちょっと待っ--」
雪菜は響弥の手を引っ張って服売り場を練り歩く。その際に服装の蘊蓄や重要さを説く事は忘れず、響弥からすれば何故こんな事をしているのだろうか、という事を思い続ける時間だった。
「取り敢えず、これだけ買えば良いですかね」
「お、おう....じゃあ買ってきてくれ。こんだけ有れば足りるだろ...」
「はい。.....って、ブラックカード!?」
遠くで雪菜が驚愕した声が聴こえる。それもそうだ、響弥が渡したのは大富豪が持つ様なカードだ。一介の高校生が持っている訳が無い代物なのだが、対暗部組織の実質No.2なのだ、これぐらいは持っていて当然だろう。
「ねぇ、其処の男」
「あ?俺か?」
「そうよ。この水着、さっさと戻してきて」
「ハァ?俺は店員じゃないんだけど」
「そんなの関係ないわよ。アンタは男で私は女、この意味が分かんないの?私が此処でアンタに乱暴されたって叫べば、アンタは捕まるの。分かったらさっさとこれを片付けなさいよ!」
「....だから?アンタがISに乗れる訳じゃねーのにどうしてアンタを敬わなきゃならねーんだ?」
正論である。
「はぁ!?アンタ、脳ミソ腐ってんじゃないの!?さっさとこれを片付けろって言ってんの!」
「......」
響弥は懐から学生証を出す。勿論、IS学園の学生証だ。それを認識した女性の顔色はみるみると悪くなっていく。
「さて、何か言う事は有るか?」
「ぇ...あ、その...」
「ぶっちゃけ、
響弥は懐からXD拳銃を取り出し、近距離で突き付ける。どうやっても外れない距離だ。目の前にある命の危機に、女性はパニック寸前だ。
「や、止めて!ただの気の迷いだったの!あ、謝るから!」
「あー、そゆこと....
「ヒィッ!!....ぁ....」
「...気絶しやがった。何なんだコイツ」
口から泡を吹いて気絶した女を一瞥し、雪菜の所へ向かう響弥。中々多い量の荷物を持って歩いてくる雪菜の荷物を無言で持ち、看板を見てある事を提案する。
「なぁ舞原、遊園地行かないか?」
「遊園地、ですか?」
「おう。なんか屋上でそういうのやってるらしいからさ、息抜き的な感じで。あ、まずは水着を買わないとな」
「...そうですね。じゃあ、更識くんに水着を選んで貰いましょうかね」
「え、俺が?.....期待はすんなよ?」
「嫌です。凄く期待しますよ」
「ハハ....でもあんまり詳しくは無いんだけど?」
「それもそうですね...じゃあ、色だけでも」
「舞原の水着、か。......白が、良いかな」
「白ですね!じゃあ更衣室の前で待ってて下さい!」
「おう」
直ぐに水着を選んだ雪菜は更衣室で着替える。いつもは全く気にしない衣擦れの音が騒がしいショッピングモールの中だというのにいつもより耳に付き、かなり照れ臭い気分になっていく。凄まじく長く感じられたその時間はその数分後に終わり、顔を真っ赤にした雪菜がカーテンを開けた。
「え、えっと、その.....どう、ですか...?」
白のタンキニだ。背中がオープンになっているのが鏡で分かる。ビキニよりも露出は控え目だが、いつものエロさとは対極に存在する様な雪菜が其処までの露出をする事に驚きを感じていた。
柄は無く、とてもシンプルな水着だ。だからこそ雪菜の持つ清楚さや痩せ形の身体が描くシャープな美しさが何処か艶かしさを感じさせる、そんな姿。多分、いや、ほぼ確実におちゃらけた男どもが放っておかない。10人中10人が振り向く、そんな姿だった。
「あ、あの...更識くん?」
「っ、あぁ、ゴメン。スッゲェ似合ってる。想像以上だ。正直、俺以外に見せたくないぐらい。誇張も世辞も全部抜いて、そう思った」
「そうですか....そうですか!じゃあ買いますね!」
「奢るぞ」
「良いんですか?」
「どうせ使い道も無いまま貯まってくだけだしな。こういう時に使っとかないと。経済に貢献しとけば、将来役立つかも知れないからな」
「変な価値観ですね」
「そうか?」
「でも...有り難う御座います、
「っ、おう。いつものお返しだよ、気にすんな」
不意打ちの名前呼びだ。いつもの控え目な微笑みではなく、青春真っ盛りの高校生がする様な明るい笑顔と共に普段全くされない名前呼びは響弥の心に大打撃を与えるには充分だった。少なくとも、付き合えたら幸せだろうな、と思わせる位には打撃を与えただろう。
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
所変わって屋上。遊園地が開かれているその場所で響弥と雪菜は遊んでいた。ジェットコースターでもフリーフォールでもドンと来いと言っていた響弥だが、たった1つだけは全力で抵抗している物があったのだ。それは--
「行きましょうよ!ほら、早く早く!」
「待ってくれ!頼む、『アレ』だけは本当に勘弁してくれ!本当にマジで、何でもするから許して!」
「ん?今何でもするって....いやいや、許しません!ほら、早く行きますよ。あの
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
そう、お化け屋敷が嫌なのだ。だが響弥はお化けなど欠片も信じていない。ならば何故嫌なのか?それは、今回の舞台が関係している。
「病院は駄目だって!白衣が、白衣が来るだろ!」
「来ません。じゃあ行きますよ」
「.....分かったよ」
自然に手を握る雪菜。余りに逼迫している響弥はそれに気付く余裕が有る訳もなく、身体の震えをダイレクトに雪菜に伝えていた。スマホのバイブの如く震える響弥は曲がり角に差し掛かる所で異様に怯える。それを不思議に思った所で響弥の様子が変わった。
診察室に入り、ゴールへの扉を開くのに必要なカードキーを取ると後ろから
「更識くん、作り物ですから!作り物です、落ち着いて下さい!」
「ハッ、ハッ、ハッ.....悪い、取り乱した」
後は特に何もなく脱出した2人。雪菜は響弥に疑問をぶつける。
「更識くん、何か白衣にトラウマでも?」
「まぁ、そうだな。小さい頃廊下を歩いてたんだが、曲がり角から先生が全力でメス持って脅かしてきてな。そのせいで真っ暗な病院の曲がり角が怖くなってさ...ハハハ...」
「それはもう...はい、御愁傷様です」
「ありがと...もう帰ろう。そろそろ帰宅ラッシュだ」
「もう少しイケると思いましたが...仕方ありませんね。帰りましょう」
バイクに2人で跨がり、更識家へと向かう。其処で側近に車を出して貰い、学園に帰る。途中、疲れたのかねてしまった雪菜。寝顔を見てドキッとしながら過ごしていたが、髪が掛かって少し不機嫌そうな表情をしているのに気付いた響弥は指で髪を払ってあげた。すると幸せそうに笑顔になった雪菜を見て、響弥も笑ってしまった。そんな平和な日常を幸せと噛み締めて、響弥も迫ってきた眠気に逆らわずに眠った。少なくとも、嫌な夢を見る事は無さそうだ。