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ラウラ・ボーデヴィッヒは鉄の子宮から生まれた。人為的に造られ、人形として育てられた。その目的自体は人としての形を保ったまま最高の戦果を挙げる事を目的とされていた。しかし
データによる予想では完全に適合し、
そんな
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「更識くん、そろそろ【雪】の調整が終わりそうです!」
「お、じゃあトーナメントの時には使えんのか?」
「勿論ですよ!私を誰だと思ってるんですか?」
「俺だけの専属、舞原雪菜だろ?ちゃんと信頼してるさ。舞原は俺の専属だからな」
「ふぇっ.....そういう所、本当に卑怯です....」
そんなイチャイチャを繰り広げる2人の前で、白と黒の争いが見えてしまった。一夏の白式とラウラのシュヴァルツェア・レーゲンの争いだった。と言っても、一方的にラウラが突っ掛かってるだけだったが。
「ならば、無理矢理にでも戦わなければならない様にしてやる!」
「はーい、変な小競り合いは其処まで」
カタパルトから射出された
「貴様、何を--」
「あのさぁ、こういう面倒は起こさないでくれねぇか?俺の仕事が増えんだよ」
「更識、響弥....!」
「どーせその【瞳】、暴走してんだろ?」
「なっ....貴様、何故それを!?」
「あー、声荒げんなよ。...あんま、人に知られたく無いんだろ?」
「ぐっ.....」
「さて、お前には罰として指導室に出頭して貰う。一応こんな俺でも生徒会副会長なんでな、其処は筋を通さなきゃ駄目なんでな。ま、丁度良いだろ?その【瞳】の話も有るし、な」
「.....ふん、良かろう。まだ構造は熟知していないのでな、案内を頼みたい」
「オーケー、じゃあ一緒に行こう。出口で待ってる」
~~指導室~~
机をくっ付けて3人座れる様にしてから話を始める。足こそ組んでいないが、ラウラの顔色には疑問と不安が入り交じっていた。
「そんじゃ自己紹介から行こうか。IS学園副会長兼、『自衛隊特殊部隊IS破壊兵第二十二研究室』所属、更識響弥だ」
「その部隊名、まさか!」
「流石、察しが早くて助かる。アンタが失敗なら、俺は成功さ。この【義眼】だけじゃない、【兵器】にも適合した」
「【兵器】?何だ、それは...?」
「聴いた事は無いのか?『次の段階』ってのは」
「それが、【兵器】?」
「その通り。【衝撃一点特化機動力強化義手・義足】だ」
「義手に義足だと!?」
「お前普通の人間が生身でISを壊せると思ってんのか?普通に不可能だろ。だから衝撃を一点に集中させつつ、絶対防御が反応出来ない速度で装甲もろとも搭乗者をぶち抜く。だから実体銃をもぎ取るなんざ簡単なんだよ」
「お前が、成功だと....」
肩を震わせ、声を大にしてラウラは叫んだ。指導室は防音だから音が漏れないが、防音ではなかったら絶対に外に音が聴こえる程の大きさで、だ。
「どうしてお前が成功者なのだ!?お前は成功した上に片手で数えられる程しか存在しない男性操縦者!片や私は軍の作り物で失敗作!どうして、どうしてなんだ!!私が欲しい物全てを貴様が持っている!」
それがラウラの思いだった。頼れる専属、周りからのプラスの目線、そして成功した義手と義足と義眼。それだけではなくISを扱う事が出来る男という肩書き。ラウラ本人は同じコンセプトの瞳を埋め込まれたにも関わらず、データの適合予想を覆して暴走。そして自分を救ってくれた人から
「.....俺が、そんな明るい人生を送ってると思うのか?この【眼】は義眼だし、脚と手も義手と義足だ。俺は奪われたんだよ、ISに。.....世界に」
「世界に?」
「そんなのはどうでも良い。ただ、1つ言いたい。舞原、頼んだ」
「はい。ボーデヴィッヒさん、貴方は織斑先生を大切に思っていますよね?」
「あぁ、当たり前だろう」
「そして織斑くんの事は?」
「教官の経歴に傷を付けた汚点だ」
「それですよ。その認識、織斑先生が大事なら止めた方が良いですよ」
「何故だ?」
「織斑先生は基本的にブラコンです。鳳さんや篠ノ之さんの様な幼馴染みならまだしも、貴方の様なぽっと出の...ろくに織斑くん本人と面識の無い人物がビンタやらキツい物言いをして気持ちいいと思いますか?」
そう雪菜が言うと、ラウラの顔色がどんどんと青くなっていく。
「きょ、教官なら私を助けて--」
「そんな訳が無いでしょう。尚更嫌われますよ」
「何故そんな事が分かるんだ!?」
「少し考えりゃ分かんだろ。元々一夏は織斑先生のたった1人の肉親だ。それに比べてお前はただの教え子の1人だし、それにただ1人で孤独ぶって同情を誘ってる餓鬼だ」
「........」
「それに、織斑先生が思っているかも知れない事を言うとな--」
響弥は言った。恐らく、ラウラへ与える精神的ダメージが一番大きくなるであろう一言を。
「お前はただ勝手に尊敬して勝手に孤立してる、大切な弟に暴力を振るおうとする邪魔な奴だろうよ」
其処まで言うと、ラウラは立ち上がって叫んだ。今までで最も悲痛な声色で。
「お前に何が分かる!お前に、何が.....ッ!」
ドアを叩き開けて出ていくラウラの頬には、一粒の涙があった。その涙を流すその瞳は澱んで、どんな光も映してはいなかったが。
「......やっぱ、こうなったか」
「えぇ。っていうか、分かってましたよね?」
「まぁな。....後はこれからだ」
2人は指導室を使う前の状態に戻すと、自分達の部屋へと戻っていった。扉の前で待つ、一夏とシャルルに波瀾の予感を覚えながら。