IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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格闘技とライダー達

 「レッグラリアートォォ!!」

 「ラリアットってのは普通腕だろうがッ!!」

 

 飛び蹴りの様な謎の技をいなし、ハイキックを繰り出す響弥。しかしラウラの乱入により、止めざるを得なくなる。

 

 --クソ、脚と腕を使うか?だが下手をすれば...!

 

 それが懸念だった。世界最高峰の硬度を誇る【硬黒翔石(ハード・オルニウム)】での殴打でさえ打ち所が悪ければ死ぬ程なのだ。ソレに薬莢を激発させる勢いを加えれば、簡単にスプラッタな展開を繰り広げられるだろう。幾ら軍人と代表候補生とは言っても、所詮は只の人間なのだ。千冬でもない限りは死んでしまう。

 

 「ベルリンのぉぉぉ赤い雨ーーッ!!」

 「炎を纏った拳!?グゥッ--」

 

 ラウラの放った炎を纏った拳。両腕をクロスさせて防いだは良いものの、後ろに回り込んでいたセシリアによって投げっぱなしジャーマンの要領で投げられてしまう。どうにか受け身は取ったにしても、徐々にダメージが蓄積していく。響弥は、決断した。

 

 「--使うか」

 

 義眼を起動し、自然体で構える。これが格闘家の言う【型】だ。流れる雲の如く、周囲の攻撃をいなして只其処に有り続ける悠久の存在から名付けたその型の名は--

 

 「更識流戦闘術【流天の構え】。...来な」

 「言われずとも!百戦百勝脚!!」

 

 再び鈴が放つ蹴撃に手を添え、円運動に乗せて返す。自分の勢いがそのまま乗った投げにより凄まじい距離を吹き飛ばされる鈴だが、ラウラは構わずに突っ込んでくる。敵意が駄々漏れならば、響弥が被弾する要素は1つも有りはしない。

 後ろから迫るセシリアの腕を掴み、背負い投げをする。正拳を繰り出していたラウラの手に突っ込む様な形で投げられたセシリアの腹に、ラウラの強力な正拳がモロに入ってしまう。余りの威力に口から胃液と唾液が混じったモノを漏らすセシリアだが、アイコンタクトで「行け」という意思を伝える。しかし、ラウラが前を見た時には既に響弥の姿は無かった。

 

 「アイツは何処に消えた...?」

 「更識流戦闘術弐ノ型参番【流紋撃(りゅうもんげき)】ッ!!」

 「上、だと...ッ!?」

 

 空中で回転を加え、遠心力を用いて繰り出す踵落とし。上からの奇襲にも関わらず、ラウラは防いで見せた。しかし響弥は脚部の薬莢を1発だけ激発させた。人間相手には過剰な推進力を産み出すソレはラウラのガードを打ち破り、肩に一撃を与える事に成功した。

 

 「ッ....やっと1人。だが--」

 

 --あと2人。しかも援軍の可能性有り、か。更に此方はISが何故か使用不能...絶体絶命だな。

 

 義手と義足に張り巡らされた痛覚神経の全てを切断。これにより響弥は通常の人間では出来ない様な格闘を可能にした。セシリアは代表候補生だが基本戦法が射撃という事もあり、格闘技は付け焼き刃感が否めない。予測線に違う事無く繰り出される格闘技を掻い潜り、鳩尾に殴打を加える。人間の急所を突かれたセシリアは短く息を吐くと響弥の腕に身体を預けてくる。気絶したのだ。

 

 --鈴はあの中で一番の手練れだろうな。まだ薬莢は余裕が有るけど...やりにくいな。

 

 「中々やるわね、アンタ」

 「お褒め頂き恐悦至極」

 「でも、アンタも余裕が無いみたいね。次の一撃で決着を付けましょう」

 「俺は敵だぞ?嘘を吐くかも知れない」

 「ま、そん時はそん時ね。...行くわよ」

 「...フン、来い」

 

 響弥は構える。同時に走り出し、同時に拳を繰り出す。女子の細腕から出されるとはにわかに信じがたい威力が硬黒翔石の義手と拮抗する。しかし響弥も幼少の殆どを鍛練に費やしたのだ、元々の性別と積み重ねてきたモノの重さとランクが違う。拳を弾き飛ばし、鈴の顎にストレートが叩き込まれる。金属で殴られた様な衝撃が脳天を突き抜け、鈴は意識を失った。しかし、殺されるという心配は無く、有ったのは強者と戦えたという事に対する感謝だけだった。それを知るのは本人だけなのだが。

 

 「ハッ、ハッ....舞原、此処は一旦逃げよう。それから--」

 「逃がさないよ」

 「....簪」

 「私の名前まで知ってるんだ。嘘かどうかは知らないけど、副会長を名乗っただけはあるね」

 「それでも私はあの人の事、知らないわよ?」

 「まずは~捕まえれば良いんじゃないかな~?」

 「本音の言う通りですね。先ずは捕まえましょう」

 「じゃあ3人とも、行くよ」

 「「「「変身」」」」

 『ガシャット!!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイム ア 仮面ライダー』

 「....なんじゃありゃ」

 

 目の前に居たのは奇妙なベルトを付け、3頭身になった4人だった。ゆるキャラと言えば通じる様なそんなデザインだが、放たれる威圧感は通常のIS以上。油断せずに構える。が、自分の()()()()()()()()()が目の前で自分に敵意を向けている事に動揺を隠しきれず、敵意を向けられない。

 

 「第二戦術」

 『ガガンガンガガン!ババンバンババン!バンバンシューティング!!』

 「第二術式」

 『タドルメグル タドルメグル タドルクエスト!』

 「大変身」

 『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!』

 

 虚が変身したモノだけは3頭身のままだが、残りの3人はベルトのレバーの様なパーツを動かすと8頭身になった。奇妙なトランスフォームに驚くが、響弥は驚愕を押し殺して走り出す。先手のアドバンテージは計り知れないからだ。

 

 「それがISだろうがなんだろうが、ソレが鎧なら全力を出せるんだよッ!!」

 

 走って加速し、腕の薬莢を激発。本音が変身したピンクのISを殴り付ける。只の人間のパンチと思ってノーガードで受けるが、それは悪手だ。胸のボタンの様な部分を殴り付けると、火花と共に後ろに吹き飛ばされる本音。それを見て全員は本音に注意を向けてしまう。

 

 「本音ちゃん!?」

 「余所見してる場合か楯無ァ!!更識流戦闘術壱ノ型伍番【龍牙咆虎(りゅうがほうこ)】!!」

 「ガッ--」

 

 楯無が変身した騎士の様なモノを殴り飛ばす。腹部に捩じ込む様に放たれた拳打は鎧よりも硬いモノに包まれているにも関わらず、威力が浸透した事により内臓の全てが揺さぶられ、吐き気を催す。

 

 「...別に、貴方だけが侵入者じゃない」

 「ッ!!や...めろォォ!!」

 

 脚の薬莢を激発。止めに入った虚を足場にして空を駆ける。マグナムにもライフルにも見える銃を叩き落とし、生身の方の脚で蹴る。簪が持っていた銃を奪い取り、虚に向けて連射する。

 

 --何だよこの銃!?反動強すぎて肩が...!

 

 耐える虚は無視し、向かってくる本音と楯無に向けてその銃を--ガシャコンマグナムを放つ。楯無が剣を使って防いだのを視認すると、乱射しながら近付いて剣を無理矢理もぎ取る。仮面に阻まれて表情は窺えないが、響弥は口角を吊り上げて斬撃を放つ。眩い火花が散り、当たった地肌に神経が熱を伝えるが耐えて更に本音を狙う。

 エンジン音が近付いてくるのを感じ、横に飛び退く。それは自走しているバイクだった。良く見れば虚が何処にも居ない。ならばアレは虚なのだろうと響弥は仮定する。ハンマーで背中を殴られ、吹き飛ばされる響弥だが、腕を引っ掛けて本音からハンマーを奪い取る。ハンマー--ガシャコンブレイカーのボタンを叩くと、剣が出てきた。

 

 『ジャ・キーン!』

 「ジャキーン...ってな」

 

 此処までやれている事に驚愕を覚えつつ、響弥は3人と大立ち回りを始める。楯無の斬撃をガシャコンブレイカーで受け止め、横からの本音の拳打を簪に誤爆させる。しかし仮面ライダーである3人と一応生身である響弥。スタミナ切れは響弥が起こしてしまった。

 

 「いい加減...倒れなさいッ!!」

 「グァッ!!流石に、此処までか...」

 

 ガシャコンソードの柄で後頭部を殴られ、気絶した響弥。それを見た簪は雪菜の元へ迫る。ガシャコンマグナムを持つその手は、直ぐにでも雪菜を撃ち抜きそうだ。残りの3人も簪の元へと向かう。

 

 「あの人も倒れたし、そろそろ投降して。じゃないと貴女を--え?」

 「--更識流戦闘術壱ノ型壱番【鳳穿華(ほうせんか)全弾激発(フルバースト)】ッ!!」

 

 雪菜に投降を進める簪の肩に手を置き、振り向かせた響弥。その胸部に腕の薬莢を全弾同時に激発させた正拳を振り抜く。推進力のベクトルを無理矢理地面に向け、拳と地面とサンドイッチにする。威力は全て簪に向けられ、胸に刻まれた命のゲージを恐ろしい勢いで減らしていく。その推進が止まった時、簪のゲージはもう目視でギリギリ見える程の細さで残っていた。

 

 「オイ...雪菜に手ェ出してみろ...俺がお前ら全員を、殺して、やる...から、な....」

 

 そう言って響弥の意識は闇に刈り取られてしまった...同時に、簪の意識も刈り取っていたが。此処から、異世界での騒動は幕を開けていく...




 ...響弥、強すぎない?ちょっとやり過ぎた感がありますね。気を付けます。では稲葉さんに感謝を捧げつつ、次をお楽しみに!

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