IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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 閑話『あの後...』

 「ちょ、ちょっと響弥くん?そんないきなり土下座してどうしたの?」
 「頼み事がある。俺と舞原雪菜の部屋を相部屋に、クラスも同じにしてくれ」
 「はぁ!?」

 生徒会室で全力で土下座して楯無に頼み込む響弥。それは先程の雪菜の頼みを叶える為の行動だった。しかし、やはりというか楯無は反対していた。

 「別に一緒に住まなくても良いんじゃない?私が一緒に住めば良いんだし」
 「アイツは1年だろ。先輩で、しかも生徒会長と暮らすのはストレス溜まるだろ。舞原本人の願いなんだ、頼む」
 「でもねぇ...虚ちゃんはどう思う?」
 「良いんじゃないですか?響弥なら間違いは起こさないでしょうし」
 「えぇ!?じゃ、じゃあ本音ちゃんは?」
 「えぇ~?別に良いんじゃない~?響くんだもん」
 「み、皆ねぇ...」

 是が非でも認めようとしない楯無。その意思を崩したのは、響弥が放った言葉だった。

 「楯無」
 「....なに?」
 「認めてくれなきゃお前の黒歴史を学校中に言い触らすぞ」
 「分かったわ!おねーさんに任せておきなさい!」

 人間、黒歴史を守る為なら直ぐに切り替えが出来るものだ。
 こういう事があり、雪菜と響弥の相部屋が認められたのだった。その為にどれだけ楯無が東奔西走したかは綴る必要も無いだろう。当分の仕事を響弥に一任するくらいには疲れた様だったが。


所属不明

 「.........どうしてこんな修羅場に...」

 「全く同意です。こんな事になるなんて...」

 

 響弥と雪菜の目の前に広がる修羅場、それは一夏(鈍感)(幼馴染み)の言い争いだった。薄々気付いてきた響弥だったが、今回の修羅場で確信した。一夏の鈍感さは筋金入りだという事に。...だがしかし、今回は鈴の言葉の選択も悪かった事もあるだろうが。

 

 「謝りなさいよ!」

 「だからなんでだよ!約束覚えてただろ!」

 「...なぁ舞原」

 「どうしました?」

 「いやさ、アイツら大変だなぁって」

 「....確かに」

 

 そんな会話を交わす間にも2人の会話の応酬はまだ続く。

 

 「呆れた。まだそんな寝言言ってんの!?約束の意味が違うのよ、意・味・が!!」

 

 わざわざ単語を分けてまで言う鈴は怒り心頭なんて言葉では足りない程激昂していた。背中に阿修羅が構えている姿が見える。其処までは行かずとも、陽炎くらいは立ち上っているかも知れない。

 

 「なぁ舞原、沖縄の豚を使った料理の名前は?」

 「ミミガーです」

 「正解」

 「じゃあこうしましょう!来週のクラス対抗戦で勝った方が負けた方に何か1つ言うことを聞かせられるって事で良いわね!?」

 「おう良いぜ。俺が勝ったら説明して貰うからな!!」

 「せ、説明は、その....」

 

 修羅場の隣では凄まじく下らない問題を出して談笑する響弥達、そして修羅場を繰り広げる本人達(一夏と鈴)、そして除け者にされたセシリアと箒。何ともカオスな状態である。

 

 「今なら止めても良いぞ?」

 「な、うっさいわね!そんな事しなくて良いわよ、この唐変木!朴念仁!鈍感!」

 「.......うるさいぞ、貧乳

 「あ゛あ゛!?

 「......舞原、開発室行こう。」

 「そうですね、それが良いと思いま--」

 

ズガァァァァン!!!

 

 逃げようとした途端にこの様である。鈴が一瞬で纏ったISにバチバチとその怒りを体現している様に紫電が見える。殴った訳でもないのに、壁が凹んだ様な錯覚も覚える。凄まじい気迫だ。

 

 「なんか嫌な予感がすんな...舞原、アレの開発を早く終わそう。少なくとも、【月】ぐらいは完成させたい」

 「分かりました。...って言っても、更識くんに手伝える事はもう有りませんよ?」

 「マジで?」

 「マジです。更識くんの癖も大体把握しましたし、【月】は開発難度は一番低いパッケージですしね。出来る事が有るとすれば、機体に振り回されない様に訓練して貰う事ですね」

 「....分かった。クラス対抗戦まで出来るか?」

 「勿論です。私は更識くんの専属開発者ですよ?出来ない訳が有りません!」

 「頼もしいな」

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 選手控え室、其処に一夏と響弥は居た。一夏は代表の選手として、響弥は副会長として与えられた責務である緊急時の警護に当たっている。いざとなれば直ぐに出撃出来る様にだ。

 

 「じゃ、頑張ってこいよ一夏。無様な姿晒せばあのファースト幼馴染みと金髪英国人が黙っちゃいねぇからな」

 「ハハハ...笑い事じゃないけど、頑張ってくるぜ。説明もして貰わなきゃいけないしな」

 

 出撃した一夏をモニターで見守る。少し話した後、戦闘が開始された。

 一夏は鈴のISの特徴的な武装である【龍咆】に手こずっている様だった。砲弾も砲身も見えないその武装は一夏だけでなく、響弥自身とも相性が悪い。と言うのも、義眼での演算は間に合っても八重霞を振るう速度が間に合わずに種がバレる可能性があるからだ。此方は技能でどうにか『見えない斬撃』として見せて警戒させるが、バレてしまえば多少は不利になる。(しかし、それだけで倒せる程に響弥は弱くないが)

 強化パッケージを装備しない絶月は全ての武装が初期装備扱いされており、拡張領域(バススロット)はガラガラなのでスモークグレネードでも装備して龍咆の方向を見破って八重霞の斬撃を更に不可視にするだろうが、一夏の白式に拡張領域(バススロット)の空きは無い。だから零落白夜の一撃で確実に仕留めるしか無いのだが....

 

 「グッ.....やっぱ強いな」

 「フン、謝ってももう遅いわよ!」

 「今更謝れるかよ!」

 

 そして再びぶつかり合う--様に思った瞬間、異変が起こった。あらゆる障壁やドアの操作全てが何者かに乗っ取られて学園側からの操作を全く受け付けなくなった。ISを展開しながら義手の薬莢を撃鉄(ハンマー)でぶっ叩き、特殊火薬が炸裂する勢いのままに拳を振り切って厚い扉を破壊した。

 

 「一夏、無事か!?」

 「あ、あぁ。だけど、侵入者が...」

 「は?お前、何言って....」

 

 アリーナの中央に居たのは2体のIS。しかし、ツーマンセルで行動している訳ではない事は直ぐに()()()()()()()()。初めに入ってきたであろう黒いISを完膚なきまでに純白のISが破壊していたからだ。

 しかし、響弥が驚愕している事実はそれではない。黒いISが無人だった事ではなく、バリアを破ってきた事でもない。それは、()()()()()I()S()()()()()()()()()()()()()()()()。包み込まれる様な安心感、ISを抱き締めたいという欲望、それら全てが響弥を包んでいた。

 

 「何なんだ....何者なんだ、お前はッ!!」


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