暴利
最近、IS学園内である事件が起きている。全学年で何人か、寮や自宅問わずに引きこもりが多くなっているのだ。別に引きこもりが多いだけならば大した問題ではないのだが、全員が言う言葉に1つだけある共通点が有ったのだ。それが--
「借金取りに殺される、か....一昔前の時代劇かっての。あれか?水戸●門か?人生楽ありゃ苦もあるのか?」
そう、皆が口を揃えて『借金取りに殺される』と言うのだ。引きこもりの中に寮で暮らす者が居る以上、家庭の事情ではない事は分かる。故に、一応は生徒会副会長である響弥が校舎を見回っているのだった。かなり面倒そうにはしているが。
「ざっけんなよアンタさぁ!」
「チッ...めんどくせぇなぁホント...」
声が聴こえてきた校舎裏、其処には黒髪の少女を取り囲む女子達が居る光景が見えた。響弥は全力で気配を消して、事の次第を見守る事にした。介入する事が面倒だからではなく、副会長としての肩書きがある響弥が出ていけば、もしも苛めだった場合に無理矢理口裏合わせされる可能性が有るからだ。
「アンタさぁ、何でそんな金貸しなんてしてんの!?そのせいでリカが学校来なくなったんだけど!!」
「ホント、マジで有り得ない!こんな借用書なんて書かせちゃってさぁ、ワルでも気取ってんの?」
少女が持っていた鞄を叩き落とす金髪ギャル。その中からは大量の紙が--借用書が撒き散らされた。1つ1つに相手と少女の実印が捺されており、更に利子もちゃんと明記されていた。...とんでもない暴利ではあるが。借金取りの事件は意外な形で幕切れを呼びそうだ。
「はいはーい、生徒会でーす。罰則与えに見参しましたー」
「くっ...あははは!!アンタ、生徒会に捕まるんだね!ざまぁ--」
「はい、アンタら全員捕縛完了だ。然るべき措置は取られるんで、覚悟する事だ」
「は...?な、なんでアタシらなんだよ!?捕まるのはソイツでしょ!間違えんなよ!」
「間違えてねぇし。アンタらは校舎裏なんて一昔前のヤンキーみたいにこの人を苛めてた。苛めは犯罪です、これでOK?」
「そ、ソイツは借金取りだ!アタシらはソイツを捕まえようとしてたの!!」
「あぁ、それね?なぁ、それはアンタが無理矢理書かせたのか?」
「い、いえ...同意の上で、です」
「つー訳で、互いの同意を得て書いた借用書だ。互いの同意を得たなら其処に第三者が介在する余地は全くない。引きこもったぁ?んなもん自業自得じゃねえか。死ぬ気で金稼いで返しゃこの借金取りも何も言わねぇだろうが。それに、捕まえようとしたなら俺達生徒会を呼べば良かったし、こんな服が濡れたり破れてたりしない訳だ。他に反論は有るか?」
「ッ.....!!」
「無いんだな?...もしもし、楯無か?苛めの現場を確認した、捕まえに来てくれ。あと、借金取りの事件も解決した。...あ?報告だ?その内する。取り敢えず頼んだぞ」
後ろを向いた瞬間、ナイフを持った金髪ギャルが響弥に襲い掛かる。...が、響弥は振り向き様に右手でフックを放つ。軽く顎に当てるだけで脳震盪を起こしてギャルは倒れた。
「お、丁度来たな。こういう所は出来る女って感じなんだけどな...あぁ、此方来てな?」
そう言って黒髪少女の腕を掴んで人が居ない教室に連れていった響弥。其処で彼女は、こう言った。
「ら、乱暴する気ですか?エッチな本みたいに!」
「.................はぁ?」