こちら、稲葉さんの作品のURLです。
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別世界への来訪
「突然で悪いな、響弥」
「別に構わないけど、いきなりどうしたんだ?先生が俺達を呼び寄せるなんてそうそう無い事だけど」
「それもそうですよね」
「『コレ』についてお前達の意見を聞きたいんだ。どう思う?」
「どうって...これはどう見ても...」
「まぁ、そうだよな。コレは...」
「「ベルトとガラケー(だな)(ですよね)」」
休日にいきなり菫に呼ばれた2人は現在、更識邸の菫の
「コレ、一体何なんですか?」
「分からない」
「分からない!?先生が、分かんない!?」
「ハァ、響弥、お前は私が全能の神とでも思っているのかい?それは有り難いが、生憎私が知ってるのは私が知っている事だけさ。知らない事は知らないよ、当たり前だがな」
「...ま、それもそうか。で、材質は--」
「あ、更識くん、いきなり触ったら何があるか--」
響弥がベルトに触れた瞬間、響弥の下に何か穴が空いた。錯覚では無い。それは絶対的で究極的に、穴だった。響弥が抵抗出来ずに落ちていく。その響弥の腕を掴んでいた雪菜も響弥を持ち上げられず、穴の中へ落ちていく。咄嗟に雪菜が掴んだ物はベルトであり、固定されていなかったソレは検査用の電極を引き剥がして共に落ちていく。床も掴めず、2人は穴の中へと引き摺り込まれてしまった。
「響弥!雪菜!クソッ、どうしたら良い!?捜してはみるが--」
独り言も虚しく、穴がもう一度開く事は無く、菫がキーボードを叩く音が響く。2人が其処に居た形跡は、まるで別世界に消えたかの様に存在しなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
(クソッ、何処まで落ちる!?義眼を使っても全く底が見えねぇ!舞原だけでも守らなきゃ、絶月を使っても意味が無い。アイツだけでも!)
雪菜を抱き寄せ、身体で包む。下手をすれば響弥は即死レベルの高さだが、自分の身体で衝撃を幾分か吸収すれば雪菜は助かる。そんな思考からの行動だった。しかし、穴の終わりは唐突に訪れた。穴が途切れたかと思えば、アリーナの空中から放り出されていた。空中で姿勢を整えて着地すると、目の前には此方を凝視する鈴とラウラ、そしてセシリアが居た。
「お、鈴にラウラ、セシリアじゃねーか。此処ってIS学園なのか?」
「...何故お前が私達の名前を知っている?」
「は?悪い冗談だな。俺だよ、更識響弥。舞原雪菜も居るぞ?これで充分か?」
「...お前達の知り合いか?2人とも」
「いいえ、違いますわ」
「あたしも違うわ」
「と言うことは侵入者か。ならば--」
「「「まずは叩き潰すだけ(だ)(ね)(ですわ)ッ!!」」」
「っ、お前ら--!!」
3機の第三世代ISが一気に襲来する。セシリアはレイピア型の近接ブレードを、鈴とラウラはその拳で肉薄してくる。響弥は持っていたガラケーを雪菜に投げ渡すと自分のISを展開する。
「【絶月】ッ!!」
「男なのにISを...2人目の男性操縦者!?」
【ドラグ・ファング】を使ってセシリアの斬撃を受け止め、【水鳴刀 鬼百合】を横に構えてラウラと鈴の拳を受け止める。
--セシリアが近接ブレードを?アイツは確か【インターセプター】しか使ってなかったハズ。しかもこの2人の拳、かなり慣れた『格闘家』の一撃だ。ラウラならまだしも、鈴がそんな事を覚えているか?
雪菜と3人の距離を放す為に壁に沿って移動する。空中にはブルー・ティアーズが並んでおり、鈴は衝撃砲を発射可能にまで、ラウラは停止結界の準備を済ませていた。響弥はISの
「....舞原、【雪】だ」
『了解です』
近接武装が全て外され、遠距離武装に特化したパッケージである【雪】に換装される。両手にビームマグナム【
壁にピッタリ背中を付けた響弥は双肩の【
左の鈴は骸火で牽制し、腰のレールガン【クリュサオル】を放つ。仕留めるつもりで放ってはいるが、全く当たる気配を見せない。が、近付けない様なので結果は充分だ。
右のラウラのプラズマ手刀は堅固な装甲を生かして受け止める。右手をラウラの腹部に密着させ、【ガーンデーヴァ】を連射する。更に展開したクリュサオルを鎖の様に使い逃げられなくすると超至近距離での骸火の射撃でISの展開を解除する。
上のセシリアは黒雷の砲撃に片腕が当たってしまい、展開が解除されてしまう。それと同時に、
「なっ!?クソ、舞原!」
「分かりません!復旧はしますが、生身で持ち堪えて下さい!」
「ッ...了解!」
構えた2人と対する響弥。其処に展開を解除した鈴が並び、3対1の構図が出来上がる。
「ドイツ代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「イギリス代表候補生、セシリア・オルコット」
「中国代表候補生、鳳 鈴音」
此処まで名乗り、未だに来ない3人を見て響弥は笑った。恐らくは此方の名乗りを待っているのだと理解出来たからだ。真剣な顔になり、響弥も名乗る。
「じゃあ俺も名乗るぜ。IS学園副会長兼『自衛隊特殊部隊IS破壊兵第二十二研究室所属』更識響弥、推して参る」
実力者3人の激戦は、これで漸く幕開けを告げた。まだ戦いは続く...