IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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 次の話で代表決定戦に入ります。...日常とか書けないのでね。御容赦下さい。


第1章 入学
入学


 右を見れば、女。左を見ても、女。右斜め後ろも、女。女、女、女、女....響弥が居るこの場所は学校だ。だが、女しか居ない訳ではない。たった1人だけ男が居るが、それ以外は全員女子だ。教室に入るだけで女子特有の甘い香りが漂い、響弥の脳髄を刺激する。義眼の機能を使えばこの芳香が色となって表されるのではないか、と思う程だった。

 

 「...なぁ、名前は何て言うんだ?俺は織斑一夏だ」

 「俺は更識響弥、宜しく。この女の花園(IS学園)で俺らしか男子は居ないんだ、仲良くしようぜ」

 「そ、そうだな」

 

 そう、此処はIS学園。全世界で最強の兵器、『インフィニット・ストラトス』の使い方を教えられる、実質女子校の学校だ。つい先日、ISを起動できる男性が2人見付かった。それがこの織斑一夏と更識響弥だ。恐らく一夏は先天的にIS適性があったのだろうが、響弥は後天的に適性が生まれたと菫に推測されている。響弥のIS適性はBであるが、菫が言うには今の義手義足を使い続けるならば適性は無限に上がっていくとの事だ。

 

 「皆さん初めまして、私はこのクラスの副担任になる山田真耶と言います。皆さんの名前を覚える為に、出席番号順に自己紹介をお願いします!」

 

 やはり女子しか居ないと肩身が狭くなる様で、響弥は自己紹介をろくに聴かずに呆けていた。何かガタッと大きい音がして、その後悲鳴の様な騒音がしたが無視して机の一点を見続けていた。その後、自分の名前を呼ぶ声が聴こえたので顔を上げると、殺気を纏った凶器(出席簿)が振り下ろされるのが見えた。

 

 「ッ!!」

 「ほう...」

 

 咄嗟に右腕を出して防いだが、バギャッ!!という出席簿からするハズも無い異音がして、一瞬後に鈍痛が右腕から脳髄に伝わる。その間も頭に振り下ろそうとする力と防がんとする力がせめぎあう水面下の戦いは続いていた。右腕を走る力のベクトルを反らし、机に出席簿をいなすと机にヒビが入っていた。表情こそ変えないが、内心ではとてもヒビっていた響弥である。

 

 「な、なんじゃこりゃ....」

 「私の出席簿を流すとはな。更識の名は伊達ではないという事か?」

 「織斑千冬--」

 「......」ギロッ

 「先生ですか」

 「.......まぁ良かろう。自己紹介をしろ、更識」

 「はい」

 

 立ち上がって自己紹介を始める。...が、特に話す事が無いと内心で嘆息する響弥だった。

 

 「えーと...はい、更識響弥です。んー...趣味は綾取りとかその辺。隠してもしょうもないので言うけど、専用機持ちです。後は...大抵の教科は教えられるんで、隣の人とか是非質問とかして下さい」

 

 礼をして着席すると、絶叫が起きる。余りにも大きすぎる音に反射的に耳を塞ぐが、手なんて薄い壁では音の濁流に逆らう事は出来ず、被害が若干軽くなったくらいだった。黄色い声援と言うのか、それとも音響破壊兵器とでも言えば良いのか。面倒になった響弥は再び考える事を止めた。

 

 「ちょっとお二方、宜しくて?」

 「ん?」

 「あ?」

 「すまん、一夏を借りても良いだろうか?」

 「行っとけ行っとけ。俺はこの金髪ロールさんとお話するからさ」

 「すまんな。一夏、此方だ」

 「お、おう」

 

 高圧的に現れたのは金髪ロールの女子、一夏を借りに来たのはポニーテールの日本人。響弥はさっさと一夏を日本人に貸し、金髪ロールに向き直って話を促す。腰に手を当てて金髪ロールは話し出す。

 

 「わたくしの名前はセシリア・オルコットですわ。貴方の名前を御伺いしても?」

 「更識響弥、以上。で、何の用?」

 「何故貴方の様な男が専用機を持っているのですか?訳を教えなさい」

 「....ハァ、イギリスの代表候補生がそんな言い方か。ったく、世も末だな。人に教えを乞う時の態度も分からないとは」

 「なんですって!?」

 

 響弥は口を歪めて不遜に言い放つ。

 

 「自分が分からない事を教えて貰うのに関わらず、何故貴方の様な男が?...ふざけんなよ、テメェが何で調子乗ってんのか訳わかんねぇけど、それを俺にまで押し付けんな。分かったらさっさと帰りな。次、来る時はしっかり礼儀を覚えてから来な。古臭さと礼節しか取り柄無い国なんだから、それぐらい容易いだろ?」

 「わたくしの祖国を侮辱しましたわね!?」

 「ハァ...あほくさ。別に俺がテメェの国をどうこう言おうが馬鹿な男の暴言に過ぎねぇ。だがテメェは違うだろうが。テメェはイギリスの代表候補生、言わばイギリスの顔だ。それがあんな高圧的な態度で来るのはどうかって言ってんだよ。分かったら頭を冷やせ。俺も言い過ぎた、すまん」

 「え、あ、はい...分かりましたわ」

 

 先程の挑発的な内容とは全く違う、謝罪を交えての指摘。セシリアは自分の興味を優先する余りに高圧的な物言いになっていた事を自覚し、更に謝罪された事もあって頭が冷え、自分の席に戻っていった。セシリアが席に着くと、見計らった様にチャイムが鳴り響く。千冬が教壇に立ち、全員に話し始める。

 

 「この時間はクラスの代表を決める。立候補する者は居るか?推薦でも構わん。自推他推は問わんぞ」

 「私は織斑くんを推薦します!」

 「ウチも!」

 「私はね~更識くんを推薦します~」

 「......ん?本音ぇぇぇぇ!?おま、本気で言ってんのか!?」

 「煩いぞ更識。他推された者に拒否権は無い」

 「織斑先生、私は立候補します」

 「オルコットか。他に立候補や他の推薦者は居るか?居なければこの3人で決めるが」

 「先生、此処は3人総当たりの決闘方式の決め方を提案します」

 「ふむ...そうだな。1週間後、クラス代表決定戦をアリーナで行う!異論は無いな!?」

 

 教室が静まり返った中、響弥は密かに2つの思いを胸に閉まっていた。

 

 (あのアマ(オルコット)…、アイツ自分が確実に()()()()()()()()()()()()を選びやがったな。別に良いけど。あと、本音は後で絶対にお仕置きだな)

 

 決闘は来週に...


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