IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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 感想や友人にブラック・ブレッドっぽいって言われたので本を買って読んでみました。いやぁ、あんなそっくりだと本当に吃驚しますね。タグには一応ブラブレ要素と付け足しておきました。いや~、本当に吃驚しました。


適性

 「さて響弥、今日はISの適性を調べるぞ」

 「適性?俺は男だぞ、そんなの動かせないに決まってるだろ」

 「いや、そうでもないんだなこれが」

 

 菫の仮説はこうだ。最近発見された金属のオルニウムはISの装甲にピッタリだが、それを人体に移植した場合の影響は未だに分からない。オルニウムが装甲に使われるのはISへの親和性が高いという事であり、それを常時使っている響弥はISを扱えるのではないか、という事だ。

 

 「....響弥、私の予想はドンピシャだった様だ。喜ぶと良い、世界初の男性操縦者だぞ」

 「いや、別にそんな...俺はISになんて乗りたくないし...」

 「甘ったれるなよ、響弥。力を持つ者が力から逃避する事は何よりしてはならない。力には力を持つ者としての責任を持たねばならないんだ。今のお前は全世界の男が焦がれた力を持っている、それを考慮して言葉を言うんだな」

 

 そして菫はパソコンに向き直り、疑問点の全てを言い始めた。

 

 「何故ゲノム情報が変わっている...?ならば今の響弥は何なんだ....個人が書き換えられる?いや、まさかな」

 「俺のゲノム情報が書き換わっている?」

 「...そうだな、あまり言いたくは無かったが、私の仮説を説明しよう。私は神や物に意思が宿る系統の話は大嫌いだ。だが、ISには意思が宿っているとしか思えないのだ。女っぽい男、男っぽい女は幾らでも居るが、それでも決定的に違うのは遺伝子だ。ならばISは遺伝子で人間を選別しているのではないか、というのが私の仮説だ。ISの開発者はISは自己進化する様に設定したと言い、更にコアネットワークがある。ならばコアに人格が有っても不思議ではない訳だ。そしてISは産み出されたのは最近だ。此処まで言えば分かるだろう?」

 「....まさか、ISが赤ん坊だとでも言いたいのか?」

 「その通りだ。赤ん坊が無意識に親を求める事と同じく、ISは自身の創造者たる『女』を求めている。ほら、君のゲノム情報を見てみろ。限りなく女に近くなっているぞ」

 「......嘘だろ?」

 「残念ながら事実だ。だが身体は未だ男のままだろう?響弥のお陰でオルニウムを常時装着した際の効力も親和性が高い理由も大体察しがついた。男に限り男のゲノム情報は『ISに適合する様に書き換えられる。その効力自身が情報を書き換える為に自然と親和性が高くなる。』という事だ」

 「公表はするのか?」

 「絶対にしないさ。今は女が優遇される時代な訳だ。故に職を失わざるを得なかった男も存在する。恨む者も当然居る訳だから、オルニウムを移植すればIS適性が産まれるならば復讐に走る馬鹿も居るだろう。私は世界を滅茶苦茶にしたいと思ってはいるが、されるのは嫌でね。だからこの事は当主に伝えて秘匿するとするさ」

 「自分勝手な理由だな。争いが起きないならそれに越したことは無いけど」

 「そう言うな。...君の知識は既にその辺の研究者を軽く越えているからな。私もちょうどやってみたかった事だ、ISを造るぞ」

 「はぁ!?」

 「流石にコアは創らないぞ?確かに私は天才と呼ばれたが、それを越えた天災には勝てないからな。武装や装甲、その他全てが君の為のオーダーメイドの機体を造ろうと言っているんだ」

 「.......」

 

 本来、響弥はISに乗りたくないのだ。元々必要以上の争いは好まない性格だった上、家族がバラバラにならざるを得なかった理由もISによって作られたと言っても過言ではない。だが響弥の目的の為には力が必要だ。力でなくとも、世界を相手に出来る権力、煙に巻ける知力、策謀を張り巡らせる用心深さ。それら全てを持てるハズもなし、結局一番の近道はISに乗る事なのだ。

 

 「先生...俺、乗るよ」

 「そう言うと思ったよ。さて、コアを貰えるのは数日後だな。後は刀奈達と遊んでくるが良い。あと、あまり本音を甘やかすなよ。アイツの為にならんからな」

 

 一番子供たちや大人の事に無関心そうに見えるが、子供には気を使っているのが菫だ。大人にはそれはそれは無関心だが、子供を教え導き、自分で答えを探させる事に長けている。発破を掛ける事も何だかんだ言って上手く、更に口では面倒臭がるが誰よりひたむきに取り組んでくれる。本人に言えば「五月蝿いぞ」と言うだろうが、こんな屋敷に引き籠らず教師にでもなれば良いのに。いつも響弥はこう思い、そして自分が居るからそういう訳にもいかないだろうな、と思いながら刀奈達のいる部屋へと向かうのだった。


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