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人を喰らいし者
「えーと、貴方のお名前は?」
「雨宮鏡夜だ」
「私は舞原雪菜って言います、宜しくお願いします。それで、どうしてアリーナに?」
「分からん。歩いてたら突然アリーナに居て、舞原と会ったんだ。俺に言われても、俺だって解らないから説明なんて出来ない」
「またですか....そろそろ嫌がらせの域に達してますよ」
「....?なんの事だ?」
「此方の話です。何か食べたい物は有りますか?」
「...良いのか?なら肉をくれないか?」
「解りました。....更識くん、仕事ですよー」
「何すりゃ良いんだ?」
「この人とお話してて下さい。更識くんは何か食べますか?」
「んー....じゃあハンバーガーで」
「分かりました。じゃあ宜しくお願いしますね」
雪菜が食べ物を取りに行った所で、響弥は椅子に座って話し始める。その顔には疲労の色が色濃く出ているが。
「俺は更識響弥だ。アンタの名前は?」
「雨宮鏡夜だ」
「おぉ、【きょうや】同士仲良くしようぜ!」
「そ、そうだな....随分と疲れてそうだけど、大丈夫か?」
「ハハハ....ちょっと仕事が、なぁ。まだ有るんだぜ?もう1日寝てねーよ」
「それは....頑張ってくれ」
「ありがとよ....ハハハ....」
鏡夜はある衝動に襲われていた。それは、響弥を襲いたいという感情だった。別に、鏡夜がホモという訳ではない。それは鏡夜に埋め込まれたある細胞が起因している。それは【Armour細胞】という細胞で、要するに運動能力などを強化する代償に人を喰いたくなる細胞だ。人を喰いたくなる、というと少し語弊があるだろうか。蛋白質を摂らないと食人衝動に襲われる、と言うのが正確か。その為に鏡夜はさっき雪菜に肉を頼んだのだった。
「....なぁ響弥、お前は食人細胞ってのが有ったらどう思う?」
「ん?そうだなぁ....まぁ、腐った研究だ、としか思わないな」
「....埋め込まれた奴にはどう思う?」
「....埋め込まれた奴には、ねぇ。少なくとも、同情や共感、そういう感情は抱かない。当たり前だが、気持ち悪いらともな。俺も、そういう犠牲者だからな。どうせその食人細胞を埋め込まれた奴ってお前の事だろ、鏡夜」
「あぁ、そうだよ。それより、お前が言った『そういう犠牲者』ってどういう事だ?」
「....最近はコレ見せる事が多くなったな。別に構わないけど」
響弥は腕のナノスキンを少しだけ剥がし、黒の義手を見せる。それだけで大体の事を察した鏡夜は身ぶり手振りで響弥に『もう隠せ』という事を伝えると、また話を切り出した。
「その腕....ISにやられたのか?」
「ま、そうだな。後は右目と左脚って所だな。お前の左目は?」
「ちょっとした事故でな...やっちまったんだ」
「俺の予想は、零落白夜による怪我だと思うが....どうだ?」
「正解だよ。どうして分かった?」
「そもそもIS乗ってる奴に傷を付けるとか零落白夜くらいしか出来ないしな。言ったら当たったってだけだ」
「持ってきましたよー。さ、食べましょう」
「お、来たか!IS学園の飯は美味いからな、楽しみだ!ハンバーガーは初めて頼んだし!」
「凄いな、極厚ステーキだ。学園でこんなの出すとかやっぱり規格外だな、この学園...」
「パフェ....やっぱり美味しそうだなぁ...」
3人は合掌し、声を合わせて一言言う。食べ物に感謝を込めて、命を喰らう時の礼儀としての言葉を。命に感謝を捧げる言葉を。
「「「いただきます!!」」」