IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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決闘、苦闘-2

 蒼と白の流星と、赤い彗星が飛び交う戦場。その流星は殺意が乗せられたセシリアとマドカの射撃、彗星は中距離を保ちつつ飛び回る鈴だ。

 両手に握る剣を鈴はマドカに叩き付けるが、シールドビットが連結して大きな盾を作って攻撃を遮る。その連結したシールドビットの連結が解除されるとシールドビットの後ろからビームを撃つビットが現れ、鈴の頭を狙ったレーザーが発射される。死ぬ気で頭を横にずらし、それに加えて自分も左に動く。そのまま片方の肩で2発ずつ、計4発衝撃砲を放つが、マドカは怯まない。

 その隙を狙っていたセシリアはティアーズを使ってビームの壁を作り、マドカが居る方向に移動させるが、マドカの【クリスタル・スケイル】によりビームは湾曲してしまいあらぬ方向にビームは発射されてしまう。それでもセシリアは習得した偏光制御射撃(フレキシブル)を使って軌道を修正、当たらないと判っていても牽制の為にビームを曲げていた。

 

 「小癪な!既に意味は無いと判っているだろうが!!」

 「何もしないよりかはマシですの!!」

 「チィッ、往生際の悪いクズ共が!」

 「潔く諦められる綺麗な性格してないのよ、悪かったわね!!」

 

 言葉は激情を表そうとも、全員の攻撃は冷静かつ大胆、捌きも的確だった。驚愕すべきは鈴とセシリアの成長と、2人がかりの攻撃を捌きつつも反撃するマドカの技能だろう。

 鈴の近接攻撃をシールドビットで防いでいると、背中に衝撃が走る。見れば、セシリアがレイピアに改造された【インターセプター】を持ち、かなりの速さで何度もマドカの背中を突き続けているではないか。流石に痛みは感じるのか苛ついた様に腕を振ると、隠されていたビットがビームを放つ。1度は回避したが、何度も反射してくるビームにセシリアも痺れを切らし、レイピアでビームを突いて散らすという荒業をやってのけた。

 

 「フン、姉さんの能力の醜い模倣か。人の能力の模倣を自信満々に使って、恥ずかしくはないのか?」

 

 明らかな挑発だった。僅かに見える口元には余裕と軽蔑を含んだ笑みが見える。以前までの2人だったなら逆上し、個人トーナメント前のラウラ戦の様に返り討ちに遭っていただろう。いや、鈴はキレかけているが、セシリアは寧ろ好都合と言わんばかりに挑発を返した。

 

 「あら、弱い者が強い者の真似をするのは当然ではなくて?...失礼、貴女はそんな事も学べない過去を送っていらした哀しい悲劇のヒロインですものね、仕方の無い事でした。まぁその性格では、救って下さる王子様は現れないでしょうけど」

 「ッ....黙れ、没落貴族風情が!!」

 「織斑先生の劣化コピーが何か?」

 「--ろす......お前だけは絶対に殺すッ!!」

 

 滅多に、いや、普段ならば絶対に言わない生まれを挑発として、セシリアは言い放った。学んでいたのだ。戦いの場に於いては貴族のプライドなど重り以外の何物でもなく、戦いは泥臭くとも最後に立ち、命がある者が勝者であると。知識ではなく、経験として学んでいた。

 挑発をまんまと返され、逆上したマドカはビットの攻撃全てをセシリアに向ける。それを見ていた鈴は溜めていた最大威力の衝撃砲をマドカに直撃させる。回避行動をせず、マトモに喰らったマドカは吹き飛び、キッと鈴を睨む。

 

 「猿が.....劣等種が、調子に乗るなァァァァ!!!」

 「人の事見下してるといつか足元掬われるわよ、覚えときなさい!!」

 

 鈴が右手を思い切り振り上げると、鎖がマドカの右足に巻き付き、電流が流れる。特殊な電流はISに保護されている人間に痛みを重点的に与え、次の行動とそれを考える思考速度を落とすのだ。

 だが、それが逆効果だった。マドカが、ドミナント全員が無意識に掛けているリミッター、それを壊してしまったのだ。マドカの両目からは涙が溢れ、周囲に漂っている水晶の鱗粉はその赤色を更に紅く、血のように紅く染まった。

 

 「何故だ...おかしいよなぁ。私は誰にも愛されないのに、織斑一夏は姉さんに愛されてそして守られてきた。誰よりも姉さんに近い私がこんな人生を送ってきたのに、何故あの無能が幸せな人生を送れてるんだよ。なぁ、教えろよ。教えてくれよ。.......答えろよォォォォァァァァァ!!!」

 

 マドカが放ったビームは反射率を変に変えられたクリスタル・スケイルによって乱反射し、コースが読めなくなる以上被弾が増える。しかも出力も燃費度外視なのか、エネルギーの減りも先程より早くなっていた。流石にこの空間に居るのは不味い、そう2人が思ったとき、声が届いた。

 

 『私の愛する教え子達よ。お前達に、1つ託したい事がある』

 「織斑先生...?」

 「千冬さん、いきなりどうして...?」

 「姉さんの、声....」

 

 マドカの動きが一瞬止まる。それを見逃さなかった鈴は鎖でマドカを捕らえ、拡張領域から自分の最高威力の武装を装備し、セシリアに向けて叫んだ。

 

 「やりなさいセシリア、私の事は良いから!」

 「ですが--」

 「早くッ!!」

 

 その叫びに込められた覚悟を察する事が出来ない程、セシリアは鈍くはない。インターセプターの柄に新たに装備されたティアーズを装着する部分に全てのティアーズを装着すると、最大出力のビームをドリル代わりにしてそのレイピアを突き刺した。

 鈴もただでは済まないが、それはセシリアの腕も同じ話だ。元々想定されていなかった使い方だ。セシリアへの負担も大きい。突いていたレイピアが熱と衝撃に自壊を始めた所で後ろに逃げる。そう、鈴のチャージが終わったのだ。

 

 「粉々に吹き飛びなさい!!奉山大崩ォォォォォォォォ!!!!!」

 

 空間をねじ曲げる程の力を持つ球体が鈴の肩から放たれる。マドカの身体はバラバラになり、そして耐え切れない機体は爆発四散する。それと同時にほぼ零距離で使った代償か、右手はひしゃげてしまい、鈴はこれ以上戦えなくなってしまった。

 セシリアも先程の突きのせいで右手の装甲は全て熔けてしまい、更に保護する為にエネルギーも大量に消費した為にもう余裕が無かった。戦いに向かっても地球に帰れなくなる事は確実だろう。

 千冬の言葉と共に自分達の想いも背負って欲しい、2人はそう思うと肩を貸し合いながら地球へと降下していった...


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