此方、Rainforestさんの作品『隻腕隻眼の操縦者』のURLになります。良かったら読んでみて下さいね。
https://novel.syosetu.org/121178/
同じ境遇の者と--
「あー....もう突っ込まん。俺は突っ込みを放棄するぞ、舞原」
「それで良いんじゃないですか?私もそろそろ突っ込み放棄したいです」
「....僕も、何故貴方達を尋問しているのか知りたいですよ」
毎度とも言える程にやり慣れた事になりつつある異世界転移に、再び響弥達2人は巻き込まれた。異世界転移初心者の時は向かってくる此方の世界の生徒達と戦闘していたが、既に慣れた響弥達の対応はもう熟練とも言える程になっていた。
IS学園の第3アリーナに放り出された響弥達に、今現在対面している少年--篠ノ之昴が掛かってきた所で両手を上げて戦闘する意思が無い事を示し、学生証を提示したのだ。IS学園の学生証は特殊な作りをされており、複製は不可能なので響弥と雪菜の学生証をそれぞれチェックした教師は目を疑ったという。学生証は本物なのに、存在しない生徒の識別コードが学生証に刻まれていたのだから。
「何故だか解りませんが、異世界から来たんです。私の世界に男性操縦者は隣の人を含めて2人だけです。織斑一夏と更識響弥の2人だけですよ」
「嘘発見器にも反応は無し、と。嘘を言ってる訳じゃないんですね」
「ま、そういうこったな。....そんな事より昴、お前....」
「....?どうかしましたか?」
「
「響弥くんと同類...?どういう事ですか?」
「こういう事だよ」
響弥は腕を捲り、右手の義手を覆うナノスキンを剥がした。義手の構成金属、オルニウムが独特の呑まれる様な漆黒の光沢を放つ。それだけで昴は意味が解った様だった。
「....まぁ、その通りですね。どうして解ったのですか?」
「この【眼】も特別製でね、その腕から体温が検知されなかったからだ」
「サーモグラフィー機能も有るんですか、その【眼】」
「簡易的だけどな」
「あと、片目も義眼ですよね、篠ノ之くん」
「そうですよ。まさか舞原さんも?」
「いえ、女の勘です」
「そ、そうですか....」
其処で会話が一旦途切れるが、響弥は一瞬だけ思考を巡らせると、かなり言いにくそうに次の言葉を紡ぐ。
「なぁ昴、どうしてそんな事になったのか、教えてくれないか?...まぁ、会って数分の奴に言う気は無いだろうけど」
「.....構いませんよ。舞原さんも、響弥くんの境遇を知ってるのですか?」
「いえ、私は知りません」
「......それなら、少しばかり席を外して頂けませんか?少し、いえ、かなりキツい話なので」
「.......聴きたい所ですが、我慢しておきます。終わったら呼んで下さい」
「....有り難う、舞原」
ドアを開けて雪菜が外に出た事を確認すると、まずは響弥からゆっくり話し始めた。
~~ 少年達語り中 ~~
「人体実験ねぇ....まぁ此方の世界でも黒い研究してる奴等も居るし、被害者も居るとは思ってたが...」
「僕からすれば響弥くんの方がショッキングですよ。まさか会社の土地の為に一家族を消し去るなんて....」
「舞原、もう大丈夫だ。入ってきてくれ」
「結構掛かりましたね。それだけ濃密な体験だったって証明なんで--!?」
「舞原!?」
見えない鎖の様なものに捕まった雪菜は、硝子を割って外に連れ出される。敵ISが保護していたのか、以前の様に傷は負わなかったものの、状況的には響弥が体験している中でもぶっちぎりで悪い。
響弥の戦い方はそもそも雪菜との連携を前提に組まれており、ニュートラルの状態の絶月は大して強くない。大体の事は出来て、他の特化パッケージの武装も使えるが、やはり運用を意識していない状態では威力は格段に落ちる。一応響弥側からもパッケージ換装は出来るが、雪菜がやる時よりも速度は落ちるし絶月の強味である【リアルタイムでの換装】が無くなるも同然である。その事実が示すのはたった1つ、大ピンチという事だけだ。
「舞原....絶対護る、心配すんなよ」
「はい、信じてます」