「響介、クイーンとの戦いは僕とラウラでやるよ」
「あぁ、武装が少ないお前達よりも少なくとも相性は良いハズだからな」
「頼む。...分かってるとは思うが--」
「任せろ。絶対に追い掛けるさ」
初めと比べると随分掴まっている人数が少なくなった大型ブースターから手を離し、降りたのはシャルロットとラウラの2人。そしてその先に待ち構えるのは孤独なる女王、クイーンだった。
「あの御遊戯から成長はしたんですか?そうでなければ--」
「ラウラ!」
「ああ!」
「.....へぇ、この殺気と動き、少なくとも『戦い』になるのは確かみたいですね。それなら、全力で御相手しましょうか!!」
クイーンの手から紫の毒々しい波が放たれる。それをラウラの前に立って受け止めるのはシャルロットだ。武装奪取の力が働き、エクレールの拡張領域からランダムに武器が抜き取られるのだが--
「....?コレは、玩具...?」
クイーンが構えているのは100均で売っているちゃちな銃の
「チッ、小癪な手を!」
「やれる事は何でもやらないと--」
「--お前達と同じ土俵じゃ前と同じになるからな!」
シャルロットは【パラレル・スイッチ】を発動、ラウラは眼帯を乱暴に取り、その辺に投げ捨てて【
クイーンは拡張領域から剣を取り出し、構えた。だが、その剣は特別な物ではなく、打鉄の
クイーンには固有の武装は無い。その代わりに性能は速度と旋回、そして拡張領域の容量に割いている。それ故に奪い取った武器を拡張領域に入れ、適切な場面と判断した時に奪った武器を使う事が出来るのだ。
クイーンが斬り掛かってくる。ラウラはAICで停めるが、クイーンは即座に刀を手放して
シャルロットは瞬時加速し、空中に浮かぶホログラムの中から【ブラッディ・マンディ】を2丁掴むと同時に引き金を引く。点で穿つスラグ弾ではなく、面で制圧する散弾を選択し、立て続けに4発放つ。クイーンは拡張領域から取り出したシールドを押して投げ、1度だけ防ぐ壁として利用する。が、その壁は攻撃を防ぐと同時に攻撃するコースを狭めてしまう。それはクイーンにも、シャルロットにも適応されるが、この中で唯一その制限に縛られない者が居た。ラウラだ。
ラウラはワイヤーブレードを巧みに操ってシールドを迂回しつつ攻撃する。そしてこのワイヤーブレードは色が黒く塗られている。つまり、周囲の空間に溶け込んで視認を遅らせる事が出来る。幾ら本能による常人離れした反応速度を持つドミナントとて、眼に映る前に反応するという事は難しい。これでは不利だ、そう思ったクイーンはシールドから離れる。
「.....流石に安直過ぎますよね」
「クッ、流石に当たってはくれないか...」
クイーンの機体が動かなくなる。ラウラが展開した停止結界に捕まったのだ。だが、それはラウラの動きも制限されるという事。クイーンは落ち着いて拡張領域からビットを取り出すとラウラの元へ飛ばし、自爆させる。
爆炎に包まれた事で反射的に集中力が途切れ、拘束が緩くなる。クイーンは早急に其処から抜け出すと、両手に刀を装備してシャルロットに斬り掛かった。踊る様に繰り出される斬撃はシャルロットの装甲に傷を付け、体力を消耗させていった。
「シャルロット!」
「........フッ」
ラウラがシャルロットを援護しようとレールカノンを構える。その時、クイーンが笑った。その笑いの意味を即座に理解したシャルロットはラウラに向けて叫び、自分の機体をラウラの前に持っていこうとする。
「やはり甘い。味方の損傷を見過ごせないその青さが、仲間を傷付けるのです」
ラウラのレールカノンは【
シャルロットを蹴り飛ばしたクイーンは拡張領域から
それを読んでいたクイーンは吹き飛ぶ距離が最低になる場所に弾丸を置く様に撃っていた。その弾丸は対象を過たずに、最高の効果を発揮する場所に着弾した。それは、ラウラの右眼。【越界の瞳】を移植されていない方の眼だったのだ。
「グアアァァァァァァァァ!!??!?」
「ラウラ!?っ、よくも!!」
どう足掻いても貫通しない弾丸に眼を潰され、絶叫するラウラと怒り狂うシャルロット。その様を見て、クイーンは笑みを深めていた.....