決戦へ
「奴等の目的は分かったとは言え、拠点が分からなければ攻めようも無い、か」
「各国の軍がしらみ潰しに捜してくれてはいるが、奴等が動き出せば此方に不利な点しか存在しないぞ。早くしなければ--」
千冬と菫は【アーク】の内部で焦りを募らせていた。普通なら焦っても仕方が無い場面、だが、それを打開するのはやはり彼だった。
「安心してくれ、察しは付いてる」
「何!?」
「確かに【
「それは....何なんだ、全く分からん」
「簡単な話だ、菫先生。奴等は全人類にアリスの能力を掛けようとしている。つまり、なるべく広範囲かつ効率的に能力を発動させられる場所が絶対条件になる。それが満たせる場所は、恐らく
「地球上にはだと!?なら、お前が言いたいのは、まさか!!」
「そう、そのまさかだ織斑先生。奴等の拠点は宇宙に、そして其処へ辿り着く為のステーションは【ヘルメス・レター】の跡地にある!!」
この言葉が決定打となり、IS学園の専用機持ちは全員【ヘルメス・レター】跡地へと赴く事になったのだ。
「それにしても、本当にこんな場所に居るのか?」
「ですが、それしか宛てが無いのも事実ですわ。此処に居る事に賭けるしかないのではなくて?」
アークから発艦した10機は跡地へと向かう。海の地形が半球状に抉れ、海水が中心へと流れていく場所、それが【ヘルメス・レター跡地】だ。此処は各国が漁を禁止している海域で、密漁者は先述した半球の中心に流れる水により生じた特殊な海流に流され、海の藻屑へと成り果てている。
故に誰も、最近では密漁者ですら近付かなくなり、完全に無人の海域になっていた。だから拠点を作るには最適と言えるのだろうが。
「何も...無い?」
「嘘でしょ!?じゃあもう何処に居るってのよ!」
「....嫁よ、解るか?」
「....あぁ、解るぜ。あの中心だけ歪んでやがる。雪菜!」
「任せて下さい。箒さん、エネルギーの供給をお願いします」
「了解だ」
箒は単一仕様能力を発動させ、雪菜が構えるランチャーにエネルギーを供給する。砲口からは過剰エネルギーが放電し、バチバチと音を立てている。引き金を引くと、高密度のビームの球体が高速で跡地の中心に飛んでいく。
数秒後、球体は弾けて
「やっぱりステルスしてやがったか!」
「これからどうするんだ、響介!」
「どうしたもこうしたも、突入しなけりゃ--」
『あら、困るわね。招待状も無しに訪問しちゃ駄目よ?』
「貴女は....!」
『あら、幹部が地上に居ないと思ったの?それなら残念、これから上に昇るのよ。此処を突き止めたのは褒められるけど、もう駄目よ。ドレスコードも守れない客には帰って貰わなきゃ』
彼女が指を鳴らした次の瞬間、彼女の背後にズラリと武器が並ぶ。それは将の号令を待つ兵士達の如く、今にも弾けそうな緊張感を保って並んでいた。
だが、その武器は次の瞬間には黒い焔で焼き尽くされる。決して消えぬ黒焔は全ての武器を焼き尽くし、何も無い空間だけを残した。
「知ったこっちゃねぇよ、そんな事。悪いが、これが俺達の一張羅だ。無理矢理にでも押し通る...!」
『....ふぅん。分も悪いし、仕方無いわね。追い掛けてらっしゃい、
「へぇ、逃げるんだね」
『随分と安い挑発ね。逃げる?冗談は止めて欲しいわね。この程度の軍勢を凌げないのなら、戦う時間が惜しいだけよ』
蓮菜の後ろには無数の無人機が整列していた。一斉に目に光が灯り、動き出す。流石にこの数は厳しい、そう思った瞬間に全員の背後からビームの弾幕が無人機の軍勢に直撃した。
「遅くなったわね。パーティーには間に合ったかしら?」
「
其処には【銀の福音】と【
「ボランティアってヤツさ。このまま帰ってもどうせこってり絞られるんだ、存分に暴れるぜぇ...!」
その直後、響介達の後ろからもミサイルが飛来し、何体か無人機を墜とす。そして其処には、ラウラの機体と酷似した機体が浮遊していた。
「なっ、クラリッサ!?」
その搭乗者はラウラの隊の副隊長、クラリッサだった。彼女は笑い、ラウラに話し掛ける。
「軍の上層部は
そんな話をしている隙に蓮菜は離脱し、宇宙へと向かった。雪菜はアークの側面部からブースターを外し、人数分あるハンドルの1つに掴まる。
「皆さん、掴まって!このブースターで一気に宇宙まで翔びます!」
その声を皮切りに雪菜を除く全員が慌ただしく掴まると、雪菜はハンドル型のスイッチを回しながら押し込む。燃料が放出、着火されて勢いを生み出し、みるみる内に加速していく。既に成層圏を突破しそうな所で、箒は気付いた。
(姉さんは地上に居るのか...?それとも、もう宇宙に...?)
何故そんな事が気になったのか、箒には解らなかった。