「数が...数が多すぎるよ。そろそろ勘弁して欲しい、ね!」
振り返りつつ頭を撃ち抜く。当然無人機だが、如何せん数が多すぎる。空を埋め尽くす無人機の軍団、それはIS学園には見向きもせず一直線にシャルロットの元へ襲い来る。それを全て捌いているのだ、疲弊もするだろう。
まだ弾薬こそ尽きはしないものの、戦い続ければ当然疲弊していく。だが、相手は倒しても次が現れる上に疲れを知らず死を恐れない鉄の軍団だ。いずれ弾薬も尽きる。ジリ貧も迫ってきていた。
(何で僕に真っ直ぐ向かってくるの?目的は何?学園の破壊なら僕になんて見向きもしないハズだ。なのに、どうして僕だけを?)
右から迫る2機をショットガン【ブラッディ・マンディ】で頭を吹き飛ばし、隊列を組んで迫る前面の無人機をアンダースローで投げたグレネードを撃ち抜いて爆発させ、纏めて吹き飛ばす。黒煙が消えた後に見えたのは一向に減らないどころか逆に増えている感覚すら覚える無数の無人機。
だが、不思議と無人機は武器を使わず、徒手空拳でしか挑んでこない。良く言えばやりやすいが、悪く言えばプログラムが御粗末だと言える。
「これがあの篠ノ乃博士が組んだプログラム....?こんな、
それを言った途端、無人機の動きが変わった。もっと複雑になり、連携を取り始めた。だが、武器は未だに使わない。専用の武器は無いにしても、統一された武器なら有っても不思議では無いと言うのに。
背中に迫る無人機の顔面を右手で掴み、掌のビーム砲で頭脳を壊す。次は前、その次は左、はたまた上から、と次々襲い来る。それでも捌けない量ではない、シャルロットは【エクレール】の速さを生かした高機動戦闘に切り替える。
円を描く様に動くと追い掛け、真正面に躍り出る無人機をひたすらに撃ち、破壊していく。シャルロットは本当に不出来なプログラムだと思った。幾ら何でも、銃を構えている真ん前に陣取るプログラムなど、ド三流が組むプログラムだろう。または、技術が圧倒的に足りていないかだ。
(.....動きが変わったね。このままじゃ押し負ける!)
突然、動きが人が乗っている様な動きに変わる。瞬時加速まで使い、エクレールの肩装甲を掴むと
「うわあぁぁぁぁぁ!!?!??」
衝撃に振り回され、何が何だか分からなくなる。地面が上で空が下、それが次の瞬間にはまた反対に。訓練された候補生とは言え、理解しがたい状況に置かれれば10代の少女と何ら変わりなかった。
だが、何処か冷静な心は囁く。やはりこの機体は自分に相応しくなかったと。ラウラならもっと効率的に武装を使い分け、箒ならフォトンブレード【コテツ】を使って無人機を斬り捨て、鈴なら得意な中距離で渡り合い、セシリアなら遠距離から撃ち抜き続けただろう。雪菜なら自分で設計した機体だ、最も効率的な使い方で全滅させる。そして響介なら、その持ち前のセンスで殲滅しただろう。
だが、自分には何も無い。得意の【ラビットスイッチ】も端的に言えば普通より早い速度で武器を換装するだけで、響介や一夏の様な換装が必要の無い敵には効き目が薄い。武器も平均より使うのが上手い程度で、一芸を突き詰めた相手と渡り合える訳ではない。シャルロットには、何も無かった。
「でも、負けられないんだ...!この機体を預けて、期待してくれてる皆の為に....!」
このISは以前のシャルロットの乗機だった【ラファール・リヴァイブ・カスタム】のコアを流用した機体だ。だからこそ相性は最高であり、滅多に高まる事がないシャルロットの精神が昂った事で唯一にしてオリジナルの機能が覚醒する!
「これ......何なの?」
が、シャルロットには使い方が解っていなかった。自分の周囲に半透明になった武器が浮かび、漂っている。手を伸ばすとコツン、と其処にある感触はするものの、どうしろと言うのか。
目の前には先程の無人機軍団が。シャルロットはヤケクソ半分で半透明のアサルトライフル【ヴルム】を握り、引き金を引く。すると、実体化したヴルムが弾丸を吐き出し、無人機の装甲に傷を付けた。手放せば、また半透明になって空中に漂った。右斜め前に浮かぶ【コテツ】を握り、光で構成された刃を形成して斬り掛かれば、また実体化したコテツは装甲を焼き切った。
これが【エクレール】の
「行ける....。この子となら、僕は戦える。だよね、エクレール!!」
空中に漂う武装の中からライトマシンガン【アヴェンジャー】を2丁掴むと、引き金を引く。連続した破裂音と共に放たれる弾幕は易々と無人機の装甲を穿ち、爆発させていく。弾が切れるとシャルロットは後ろに投げ捨てて足元に漂うハンドガン【ベテルギウス】とコテツを握り、実体化させると瞬時加速を用いて懐に飛び込む。コテツを横一線に薙ぎ払い、露出した内部に弾丸を御見舞いする。掴み掛かろうとしてきた1機は頭を掴まれ、掌部ビーム砲【パルマフィオキーナ】で粉砕される。残った1機に向け、シャルロットは言い放った。
「この無人機軍団を操ってるのは君だね、更識簪さん。君が僕を狙うのはこのエクレールを奪い取る為そうでしょ?でも残念、この機体は
初めからおかしかった。学園にも侵攻せず、ひたすらに狙うのはシャルロット。そして明らかに掴まれれば避けられない自爆はシャルロットへの殺意に満ちていた。それも、この雪菜謹製のエクレールを奪い取る為なら合点がいく。そして、それをするのは雪菜に依存していた簪以外は有り得ないとシャルロットは考えたのだ。こんな決め台詞を言っておいて無反応なら恥ずかしいだけだったが、怒る様に飛び掛かってきた無人機を見て、シャルロットは恥をかくことはなかったのだが。
が、大人しく掴まれるシャルロットではない。後ろに下がりつつブラッディ・マンディを掴むと頭部に銃口を突き付け、何も躊躇せずに引き金を引いた。
最後に倒したのが指揮官機だったのか、もう現れる気配が無い事を数分後に悟ったシャルロットは地面で煙を起こして壊れている無人機に向けて呟いた。いや、簪に向けた言葉なのだろう。もう、壊れた彼女には届かないだろうが。
「...君の打鉄弐式だって、雪菜が手掛けた機体なのにね」
第1話の機体紹介にエクレールの情報を追記しました。良ければ見てやって下さい。