◇ ◇ ◇ ◇
「響弥、どうしたら良い!?俺はそんなに頭が良くない、だから響弥に従う!」
「どうしたら良いって言ったって....こんな弾幕、全部避けるのは無理だし直撃したら墜ちるぞ!」
それが事実だ。ジャスティスが放つ全ての攻撃が致命の一撃、掠っただけでもゴッソリとSEを持っていかれる。しかもジャスティスは核エンジン、【ニュートロンジャマーキャンセラー】を搭載している。理論上では無限に駆動出来る機体が、馬鹿げた威力の攻撃を乱射しているのだ。
「.......一夏、俺がどうにか突破口を開く。隙を見付けたら零落白夜をぶちこめ」
「わ、分かった」
義眼内部のCPUが超速の演算を開始する。体感速度の拡張、それ即ち、世界が遅く見えるという事だ。義手と義足の痛覚神経をカット、更に響弥はその観察眼を以て
右腕に直撃コース、ヤタノカガミを起動、防御。胴体に直撃コース、義足の薬莢を激発、回避。ビームライフルの銃口が向けられる。機体を横に移動させ、【ファトゥム-00】とビームライフルが一直線になる場所から【八重霞】を真っ直ぐに伸ばし、貫通させる。鞭モードの八重霞を刀モードに戻すと、スラスターを逆噴射して距離を取る。
「舞原!」
『【雪】ですよね、解ってますよ!』
特化パッケージ【雪】の展開と同時に【裂雷】を背中から取り出し、
ファトゥムとビームライフルを失い、多少の脅威は消えたにしてもビームサーベルが残っている。接近戦に加えて速さを誇るジャスティスとの接近戦はとてもリスキーだ。しかし、あれほどの爆発に巻き込まれたのだ、無傷は有り得ない。ハイパーセンサーにもしっかりと片腕が無くなったジャスティスが視認できた。
「銃衝術なんざ、使わないもんだと思ってたけどな...まさか、使う日が来るとは」
バレルの部分でビームサーベルを受け止める。直前になって耐えられるか、という懸念が浮かんだが、そんな心配を嘲笑う様に容易く受け止めて見せた。そして生まれた隙を突き、腹部に連続で徹甲弾を撃ち込む。ISの装甲を確実に撃ち抜く為の弾丸なのだが、電磁加速した上に超至近距離での接射は流石に効いたのか、後ろに大きく仰け反る。それと同時に響弥の叫び声と一夏の雄叫びが上がった。
「今だ一夏、やれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
自らのSEを削り攻撃に転用する諸刃の剣、【零落白夜】。自分の防御をかなぐり捨てる分の恩恵は大きく、当てさえすれば敵機のSEを無効にする。それ即ち、必殺の刃。特殊なビームの刃はジャスティスの腹部装甲に食い込み、一瞬だけ拮抗し、次の瞬間にはジャスティスの上半身と下半身はお別れを告げていた。流石のジャスティスでも上半身と下半身が斬られれば、しかも動力源ごと斬り捨てられれば動くことは出来ない。ジャスティスは未だ左手に握るビームサーベルを振ろうとして--爆散した。
「ハッ、ハッ、ハッ.....お疲れ、一夏」
「....あぁ、お疲れ響弥。どうにか勝てたな」
「そうだな。...アイツら2人はどうだ?」
「見てみれば分かるだろ。劣勢なら加勢に行かなきゃ」
「大丈夫だろ。それに、こんな消耗してる俺達が行った所で足手纏いだ。信じとけよ、お前の親友を」
「.........あぁ、その通りだな」
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
「ッ、不味い!!シャルロット、急下降!」
『わ、分かった!』
攻勢に出られない。全くと言って良い程に勝ちへの解答が見えない。どんどん時間が経過するに連れて自分達が不利になり、更に響弥と一夏が撃墜される可能性も上がる。そんな焦りが、悠人から思考力を奪い去っていた。
フリーダムには一撃で削り切れる程の瞬間火力は無い。【フルバーストモード】になれば脚が止まった瞬間にドレッドノートに撃ち落とされ、【ハイマット・フルバースト】を使ったとしてもハイペリオンの【アルミューレ・リュミエール】をブチ抜く程の火力は出ない。既に1度シャルロットの【
しかもこのハイペリオン、全力を出せていない。それはアリーナに展開されている超巨大なアルミューレ・リュミエールが有るからだ。アニメ本編でこんな使い方がされているのかは分からないが、巨大なアルミューレ・リュミエールの中にもう1枚自分とドレッドノートを守る為に展開しているのだ。大分出力は落ちているハズなのに、それでも尚堅固な盾は破れない。それは決定的な世代の違いから来る性能の違いなのだろう。
「クッ....どうすれば勝てる....?」
『悠人』
「響弥?」
『俺達の事は心配すんな。もう
「....あぁ!」
懸念していた2人が既に決着を付けた。それだけの事実が悠人のプレッシャーを無くし、視野を一気に広くする。限られた空間を広々と使い、シャルロットに指示を下していく。
「シャルロット、どうにかして僕が隙を作る!だから、隙が出来たらハイペリオンに【灰色の鱗殻】を撃ち込んで!」
『信じてるからね!無理はしないで!』
自分のビームサーベルにありったけのSEを注ぎ込み、最強の盾を破ろうとする悠人の目の前に、自分の身長ほどもある大剣が地面に突き刺さった。それと同時に響弥から通信が入る。
『使えよ、
「....そういう事ね、分かった。有り難く使わせて貰うよ、響弥」
『此処まで御膳立てしてやったんだ、負けたら容赦しねーぞ?』
「安心してよ、此処まできて負けるなんて--」
悠人は機体をハイマットモードに移行させ、一気にハイペリオンとの距離を詰める。アルミューレ・リュミエールが展開され、悠人の接近を拒絶する。悠人は巧みに身体の重心を入れ替えると、響弥から受け取った自分の背丈ほどある大剣【アロンダイト】をバリアに叩き付ける。その刃は擬似的とは言え【零落白夜】と性能は燃費以外変わらない。ビーム系統に連なる物ならば悉く無効化し、全てを斬り捨てる。それが例え
「有り得ないからッ!!」
硝子が割れる様な音と共にバリアが割れる。それと同時に
アルミューレ・リュミエールを割った悠人はビームサーベルを投げる。それを防いだドレッドノートに一気に肉薄し、アロンダイトを振り抜く。ビームシールドを構えたドレッドノートだが、ビームを無効化するアロンダイトの刃が腕部装甲に食い込む。そのまま身体の回転を加え、悠人はドレッドノートの両腕を斬り落とすと、ビームライフルを古紙から取り出してコックピット部分を撃ち抜いた。弱点を撃ち抜かれたドレッドノートは力なく地上へ墜ちると、そのまま爆散した。
「勝った...3機のガンダムに、勝ったぞ....」
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
「さて、もうお別れみたいだな」
「え、もう帰っちゃうの?」
「身体も透けてきましたからね。いつも通りなら、もうお別れです」
「なんて言うか...残念だな。折角仲良くなれたのにさ」
「そう言うなよ、一夏。全ての物には終わりってもんがあるのさ。この話はこれで終わりってだけだ」
「そうです。もしかしたら、続きが有るかも知れませんよ?」
「そうか....それなら良いな」
「その通りだね。ね、悠人?」
「うん。有り難うね、響弥」
「此方こそ。....っと、アロンダイト返してくれよ」
「あ、そうだったね。ごめんごめん」
「....それでは皆さん、また会いましょう」
「うん、またね雪菜ちゃん、響弥くん」
「またな、響弥と雪菜」
「それじゃあ、また会う日まで。2人とも」
「おう、また来るぜ!」
会話を交わし終わると共に響弥と雪菜はこの世界から旅立っていった。そしてこの世界での話は、これで終幕を迎えた。この世界で、友を作って。