IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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正義と神と恐れ知らず

 それはある日の事だった。墜ちてきたその機体は、まだアリーナで練習中だった生徒達を薙ぎ倒し、蹂躙を始めたのだ。それらの機体は3機、名称は悠人によって明らかになった。紅い機体は【ジャスティスガンダム】、X型の有線兵器が特徴的な機体は【ドレッドノートガンダム】、オールラウンドな戦いが出来る、ビームシールドを搭載した機体は【ハイペリオンガンダム】。その3機はどれも強敵らしい。

 

 「織斑先生、どうしましょう?」

 「....既に教師で編成した制圧部隊を送ったが、撃退された。暗号文も添付された状態で、退却させられたらしい」

 「すっかりメッセンジャー扱いですね。それで、その暗号文とは?」

 「『更識響弥、山田悠人、織斑一夏、シャルロット・デュノアと戦わせろ。でなければ、この世界を壊し尽くそう』だそうだ」

 「そんな....」

 「やるしか無かろう。....4人を呼べ」

 

 校内放送で呼ばれた4人は即座に職員室に向かう。いつもなら居る教師陣も保健室に居るからか、ガラガラに空いている。千冬と真耶から話をされた響弥達は出撃をすると答えるが、真耶が待ったを掛けた。

 

 「危なすぎます!響弥くんは未だしも、悠人と織斑くんとデュノアさんはまだ学生です!他国に支援を要請して--」

 「山田先生、気持ちは察するがこの4人は学生である前に兵器を持っている【兵士】だ。弟を想う気持ちも分かるが、信頼しているなら信じて待っているのも良いと思うが?」

 「で、ですが....」

 「大丈夫だよ姉さん。一夏とシャル、それに--」

 「俺も居るし、な。」

 「いいえ更識くん、私『達』です」

 

 下手をすれば死ぬかも知れない状況下で笑う2人が、悠人達には付いている。2人とも既に1度死の気配を間近で感じ、その気配を覚えた2人が。それはある意味、教師陣よりも頼れる味方なのだろう。まして響弥と雪菜が揃えば、負ける道理は無い。

 

 「....行こう、4人とも」

 「あぁ!」

 「おう!」

 「うん!」

 「はい!」

 

 これより、【ガンダム撃墜作戦】の開始である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナでは、圧倒的な存在感を放つ3機が4人を待ち構えていた。先手必勝と言わんばかりにカタパルトから勢い良く射出された4人だったが、ハイペリオンによって分断されてしまう。

 勝負の組み合わせは一夏&響弥VSジャスティス、悠人&シャルロットVSハイペリオン&ドレッドノートだ。

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 「行くぞ一夏、速攻で片付ける!」

 「おう!」

 

 響弥は右腕を引き絞り、一夏は雪片弐型を構えて突撃する。そのスピードも響弥の世界の一夏とは一線を画していた。しかし流石はガンダムと言った所か、装甲の硬さを生かして2人の一撃を容易く止める。更に背中に装備されていたリフター【ファトゥム-00】に搭載されているビーム砲【フォルティス】に一夏が被弾してしまう。

 余りの出力に吹き飛ばされた一夏を案じる暇もなく、次は【アンビテクストラス・ハルバード】との接近戦と洒落込む事になる。右上、左下、横凪ぎと複数の軌道から放たれる斬撃を【水鳴刀・鬼百合】を使ってガードし、隙を突いて攻撃を当てようにもその暇がない。

 

 「舞原ァ!」

 『了解、【月】に換装します!』

 

 換装途中、身体を傾けて背中に生成される【ゲイボルグ】でカウンターを仕掛ける。流石に換装途中に攻撃を挟むとは思っていなかったらしいジャスティスは胸部にマトモにゲイボルグの刺突を受けて仰け反る。

 

 「ッ...今、だ...!!」

 

 ジャスティスの背後から気配を消していた一夏の雪片による攻撃が入る。零落白夜は発動してはいなかったが、元々ブレオンの白式の持つ刃はジャスティスの背中の装甲を斬る事に成功した。

 だがしかし、【正義】の名を冠するその機体がその程度で終わる事は、有り得ないのだ。戦争を体験し、人との命のやり取りを経験したパイロットを模倣したAIは、その程度の損傷で命を諦める程往生際が良くないのだ。

 

 「なっ....コイツ....ッ!!」

 「こんなビームの量、メチャクチャな....!」

 

 ビームライフルにファトゥム、自分の持てるビーム兵器を全てを使ってきたのだ。幾ら響弥の【ヤタノカガミ】、一夏の【雪羅】と言えども、燃費が悪いのはどちらも同じだ。何度も大きい威力のビーム兵器をガードすればSEもいずれ尽きてしまう事だろう。それは...2人がジリ貧になりつつある、何よりの証拠であった。

 

 「クソ...楽な戦いは無いって知ってるが、本当に辛いな....」

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 「ハイペリオンとドレッドノート....どっちも強敵だよ、シャルロット」

 「分かってる。あの強さ....元々気を抜くハズは無いけど、一層注意しないと一瞬で消される!」

 

 その言葉を放った直後、敵機が戦闘を開始する。ハイペリオンが自分の最大の特徴である【アルミューレ・リュミエール】を展開する。自分の攻撃しか通さない最強の盾と同時に悠人とシャルロットの周囲を囲むのはドレッドノートのドラグーンだ。響弥のファングより数が少ないとは言え、威力が通常と比べれば桁違いだ。一撃でも直撃すればSEは容易く吹き飛ぶのは間違いないだろう。

 ドレッドノートのドラグーンは有線だ。線は無くとも操作は出来るが、エネルギーの供給を理由に有線になっている。その線によって移動を遮られる事を嫌った悠人は【ラケルタ・ビームサーベル】を使ってワイヤーを斬る。しかし、それを誘っていたのかハイペリオンのビームキャノン【フォルファントリー】が悠人の背中に向かって放たれる。それをシャルロットが自分の盾を使って防御する。

 

 「うぅ....この威力、盾が--」

 

 ハイペリオン側の世界は一撃喰らえば死を覚悟する程にハードな世界だ。相手の兵力を削る為に武器の威力を高め、自軍のパイロットを護る為に装甲を厚くする。それは自然な事であり、故にこの世界のISは弱い。【絶対防御】という最強にして最高の盾が有る限り、ISバトルはいつまでも娯楽の域を出ない。故に装甲は脆く、武装も貧弱だ。

 しかし、勝たねばならない。世界の為に、愛する者の為に。

 

 「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 高機動形態(ハイマットモード)に移行し、攻撃を繰り出す悠人。ドレッドノートを狙うが、ドレッドノートが墜とされれば自分の不利になると分かっているのかハイペリオンがアルミューレ・リュミエールを用いて悠人の攻撃を片っ端から防ぐ。1度シャルロットがアルミューレ・リュミエールに向かって【灰色の鱗殻(グレー・スケール)】を当てたが、弾かれこそはしないもののカートリッジを1つ無駄にした、という結果になった。

 

 「くぅ.....どうすれば勝てる...?」

 

 反撃の糸口は、まだ見えない。


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