IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

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面談、猥談、女子会

 「--はい、これで今日ラストの授業は終わりだ。はい、皆解散!HRはしなくて良いって織斑先生からのお達しだ。あ、放課後、山田と織斑は俺と面談だから残っててくれ」

 「「「「はーい、響弥せんせー」」」」

 

 これが今の響弥だ。同じ年齢--ひいては、同じ教室で学んでいる友達に勉強を教えるという、中々に複雑な状況になっている。雪菜の授業は今日の1組の時間割には無く、今日は2組に教えたらしい。

 この後響弥はこの世界の男性操縦者、織斑一夏と山田悠人(やまだゆうと)と面談をする。雪菜はシャルロットから『女子会』なるものに呼ばれているらしく、楽しんでくるらしい。

 

 「...舞原先生、入って良いですか?」

 「織斑か、良いぞ、入れ入れ。あ、ドアは閉めといてくれよ」

 「は、はい」

 

 響弥はこの面談を楽しみにしていた。それは、この異世界の一夏がどんな価値観で戦っているのかを知りたかったからだ。響弥達の世界の一夏は現在引き籠っており、話が出来ないからこそこの世界の一夏と話したいと思ったのだ。

 

 「どんな話をするんですか?」

 「敬語なんてしなくて良いぞ、俺とお前は同い年だからな。」

 「お、同い年ぃ!?」

 「そ。お前は異世界って信じるか?」

 「え、えっと...有るなら有るんじゃないかなって」

 「まぁ有るんだけどな。俺は異世界の住人だよ。境遇は違うけど、悠人の立場だと思ってくれ」

 「へぇ~」

 「ま、そんな事は置いといて、なんか悩みは無いのか?」

 「....1つだけ」

 「言ってみろ」

 

 響弥はあっさりと自分が異世界の住人と暴露した後で、一夏に話題を振った。因みにこれで言わなかったら、「俺も秘密を教えたんだ。お前も教えてくれるよな?」というお願い(脅し)をするつもりだったのだが、普通に話してくれたのは僥幸だったのだろう。

 

 「悠人はさ、自分は弱いとかよく言ってるんだ。本当はそんなことはないのに自分自身の弱さに理解して強くなろうと努力して、誰かを助けるために自分の時間を削って責任とか全部背負って.....情けないよな。悠人を守るって決めたのに逆に守られてその分、負担をかけて.....俺が悠人の邪魔しかしてないんじゃないかって思うんだ。そして何より、それで捨てられるのが怖いって思う自分が、嫌なんだ」

 

 響弥は感心した。普通ならこの場面、感心する場面ではないのは解っている。しかし、響弥達の世界の一夏はこんな事を思わないだろう。自分がやった事に対する重大さが全く分からない一夏に対し、この世界の一夏は自分の友達がしている努力を知り、その強さを認めている。そしてその負担になっている自分を嫌に思う、それだけで響弥達の世界の一夏よりも全てが上だと思ったから、感心したのだ。そして響弥はこう返答した。

 

 「俺の世界でのお前は、そんな事も考えやしなかったな。お前は悠人のお荷物になりたくないって思ってる。そしてアイツ(悠人)を護りたいと思ってるんだろ?」

 「...あぁ」

 「お前は悠人を護るって決めたんだ。その為に強くなれ。お前がそう思う限り、悠人はお前をお荷物だとは思わないだろうよ。そもそも、俺の見立てじゃアイツは友達を捨てる様な奴じゃないさ、安心しな」

 「.....ありがとう、響弥」

 「おう。さて、これで面談は終わりだ。あ、プライベートの時は呼び捨てで良いけど、周りに人が居る時はちゃんと先生を付けろよ。じゃないとお前の怖い姉の出席簿アタックが飛んでくるぞ」

 「げ、それは勘弁....じゃ、悠人呼んでくる」

 「頼んだぜー」

 

 一夏が教室から出ていき、1人になる。やはりこの世界の一夏は自分の世界の一夏より強い、と思いながら次の男子--山田悠人のプロフィールを見る。

 --コイツ、5股してるのかよ....しかも親公認の。なんか複雑そうな感じだな。女誑しではなさそうだけど...

 それが響弥が抱いた感想だった。恋人の当人達もそれで良しとしているのだから、関係無いと言えば関係無いのだが、やはり2股でもあまり良い感情は抱かないのに、更に多い5股にもなると流石の響弥も若干引き気味になるのだ。

 

 「失礼します、舞原先生」

 「お、来たか。入れ入れ、ドアは閉めてな」

 「はい。それで、どんな話を?」

 「せっかちだなお前らは。ホモはせっかちだぞ」

 「ホモじゃないですし、『アレ』の話は止めて下さい!」

 「わぁったよ、そんな怒んな。まぁそうだな...あぁそうだ、シャルロットから聴いたか?俺の事」

 「まぁ、にわかには信じ難いですけど」

 「そうだよなぁ....まぁそんな事は置いといて」

 「置いといて?」

 「タメ口で話せ。どうせ同い年だ、気にする程の事じゃねーからな」

 「....分かった」

 「それで良し。んー....悠人は5股してるみたいだけど、もうヤったのか?」

 「ぶっ!!!!???」

 

 皆、響弥は下ネタを言わないと思っているのだろうか?そんな訳はない。確かに響弥は同年代の男子と比べれば達観している部分が多々ある。しかし、響弥も実際は10代、思春期真っ盛りだ。女の楽園とも言われるIS学園は全員が美少女、更に屋内の殆どが女子特有の甘い香りが漂う。個室だったなら溢れるリビドーを発散する為に事故発電に勤しむであろう所が、雪菜という最強の関門があるのだ。故に溜まっている。要するに、下ネタに触れたいのだ。一夏とも仲が良い訳ではないので、下ネタを言い合える訳でもない。だから異世界に来て下ネタを言った事を、誰が責められるものか。

 

 「ま、まぁ...ヤった、けど...」

 「へぇ...スゲェな、まだ高校生なのに」

 「響弥、君もIS学園の男子生徒なら分かるハズだ」

 「....あぁ、分かるぞ」

 「「滅茶苦茶ムラムラする」」

 「ISスーツがエロ過ぎるんだよ。実際、着ながらヤった事もあるし」

 「あぁ。なんであんなに露出させるんだろうな。年頃の男の事を考えて欲しいもんだよ」

 「シャルも楯無も胸が大きいし、ラウラと鈴のスレンダーな身体も可愛いし、簪は凄く健気に尽くしてくれるし...そうだ、響弥は雪菜さんとはどうなの?」

 「ま、舞原ぁ?アイツはそんなんじゃないさ。何て言うんだろうな....泣かせちゃいけない?護りたい?そんな感じだ」

 「それが好きって事じゃないの?好きな人を泣かせたくないっていうのも、護りたいっていうのも」

 「そうなのかな....まぁ覚えとく」

 「それが良いんじゃない?その内考えてみて」

 「おう、分かった。で、お前は胸派か尻派、どっちだ?」

 「難しいね...僕はどっちかって言うと--」

 「いやいや、やっぱり俺は--」

 

 思春期男子(バカ2人)の猥談はどんどんと深まっていく。これ以上は双方の名誉の為に描写はしないが、2人にとってはとても有意義な話し合い(猥談)だった事だろう...

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 「はい、入って入って!話はしてあるから!」

 「ひ、引っ張らないで下さい。行きますから!」

 

 恐らくシャルロットの部屋なのだろう。雪菜達の世界と同じくラウラと同室らしい。そして部屋の真ん中には楯無、簪、ラウラ、鈴が座っていた。何処か嫌な予感を感じる雪菜だったが、気のせいだと振り払い鈴とシャルロットに挟まれる形で座る。

 

 「じゃあ女子会(猥談会)、始めましょうか」

 「そう言う訳で雪菜ちゃん、響弥くんとはもうシたの?」

 「シたのって...何をですか?」

 「ゴニョゴニョの事だ」

 「え、ええぇ!?してませんよ!まだ手を繋いだ事も無いのに!」

 

 雪菜を除いた皆は響弥と雪菜が既に付き合っている前提で話をしている。しかし、実際の2人は付き合ってなどいない。ISによって繋がれた絆ではあるのだが、それはかなり不安定だ。響弥がIS学園から居なくなれば、その繋がりは絶たれてしまう。そんな危うい関係なのだ。

 

 「へぇ....でも、雪菜ちゃんは響弥くんの事好きなんでしょ?」

 「...はい...」

 「照れてる...お暑いですねぇ」

 「簪さん、からかわないで下さい!」

 「実際、響弥は手強そうね。何と言うか....壁、みたいなのを感じるわね。自分からは行かなさそうな感じがするわ」

 「雪菜から襲えば手っ取り早いが....まぁ無理だろう」

 「そ、そんな爛れた関係になりたい訳じゃありません!その、清らかなお付き合いをしてみたい、です」

 「あまぁぁぁぁぁい!!!ペロペロキャンディーよりも甘い!!」

 

 自分の願望を初めて口に出した雪菜に、楯無からの一喝が入る。右手の扇子には『恋は混沌(カオス)』と書いてある。何処ぞのニャルラトホテプだろうか。他の面々も頷いて賛同している。

 

 「雪菜ちゃんのその願い....分かるよ、大いに分かる!」

 「でも、それだけじゃ叶わない恋もあるの」

 「悠人はそういうのに敏い人だったからまだ良かったけど、鈍いヤツは一筋縄じゃいかないわよ」

 「響弥くんは普通に性格も良くてイケメンだから、ちんたらしてたらグイグイ系の人に盗られちゃうかもね」

 「だから、いっそのこと唾を付ければ良いんだ。爛れた関係って程にする訳じゃない。それからデートを重ねれば良い。ちょっと順番が前後するだけだ」

 

 上からシャルロット、簪、鈴、楯無、ラウラだ。やはり、既にシテいる彼女らは言う事が違う。しかし、相手は初心(ウブ)な雪菜だ。手を繋ぐだけならまだしも、想像の中でキスをする様なシチュエーションを想像して顔を真っ赤にする程初心なのだ。【行為】に移すなど、夢のまた夢だろう。

 響弥から襲えば話は別なのだが、響弥はスーパーストイックマンである。なので雪菜と同室になってから1度も事故発電していない。異性として見てはいるのだが、どうにか節制しているのだ。何か切っ掛けが有れば直ぐに外れそうなリミッターではあるが。

 

 「だから、コレあげるよ」

 「な、何ですかコレ」

 「媚薬よ、強力なヤツね。後は念の為に避妊薬。使う時は使いなさいよ」

 「私達全員、雪菜ちゃんの恋が叶う事を願ってるから」

 「はい、じゃあ解散!」

 「また明日ね」

 「そうだな、また明日」

 

 体感では直ぐに終わっているのだが、時計を見ればもう1時間も経過している。両手に握るその薬を見て、雪菜はコレを使ってする【行為】を想像するが、直ぐに顔を真っ赤にして頭を振る。雪菜と響弥がくっつくのは、まだ当分後の様だ...


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