IS ~義肢義眼の喪失者~   作:魔王タピオカ

105 / 152
対策、タイムリミット

 「さて、先ずはこの街で休息を取るがその前に赤羽、お前の兄のあの能力は何だ?」

 「何が起きたか分からなかったな。雪菜とシャルロットは解ったか?」

 「....正直、何も解んなかったよ、ラウラ」

 「えぇ。気付いたらあの状態でした」

 

 響介によって滅ぼされた街で専用機持ちは休息を取る。この艦を直すのは積まれているアンドロイドがやってくれる為、今は夏蓮を問い詰めているのだ。響介が使い、蹂躙して見せたあの能力を。

 

 「言っても無駄だと思うよ。なにせ、あの単一仕様能力( ワンオフ・アビリティー)は理解の範疇を越えてる。能力を教えた所で対策もクソも無い」

 「言ってみないと分からないだろう!お前達には無理でも、私達には出来るかも知れない!」

 「随分と威勢が良いね、箒。乗ってるISが最新世代だからこそ自信かい?でも、お兄ちゃんのISには勝てないと思うよ。1つ言うけどね、雪菜。お兄ちゃんのISの機体各部に装備されてるあの結晶を全部破壊しなきゃ倒せないよ」

 「どういう事ですか?」

 「アレは何かしらのエネルギーを加えるとSEを生成する半永久機関だよ。お兄ちゃんの機体は加速、速度特化だから足を止めなきゃその首狩られるよ?」

 「それだけなら私が行けば何とかなるか...?」

 「無理だと思うよ、織斑先生。確かにその人間離れした身体能力と反射神経なら良いとこまでは行けると思うけど、倒せるまでは至らない。私が単一仕様能力を使ったお兄ちゃんを倒せたのは片手で数えられる程度、単体戦力で最強だったアリスも負け越してる。()()()()()()()()()()()

 

 当たり前だ。響介が望んだのは理不尽を叩き潰せる理不尽、生半可な力ではないのだから。

 

 「教えてくれないか、赤羽さん。俺達はアイツを取り戻したいんだ。あの頃の、俺をどうにかしようとしてくれたアイツを」

 「...分かったよ。お兄ちゃんの能力の発動条件は自分のSEを一定の空間に充満させる事。範囲はその充満させた範囲だけ。そして肝心の能力は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 「望む世界、ですか?」

 「そう。多分雪菜がやられたのはその場所だけが重力が大きい世界。シャルロットは分かんないな。簡単に言えばそうだね....神になれる能力、かな?」

 

 沈黙、そして絶句した。1つは響介の能力の危険さだ。SEは操縦者の命を守る物、それを響介は空気中に満たさなければ能力が発動できないのだから。そしてもう1つはあまりにも『規格外』だからだ。自分達を相手取っても余裕で捌く夏蓮が言うのだから、かなり強い事は分かっていた。だが、それにも限度が有るだろう。自分の好き勝手に世界を改変するなど、人の出来る事を越えているのだから。

 あの【天災】篠ノ之束ですら本物の天災が起きるタイミングを完璧に把握し、被害を0にするなど出来ない。何故なら、彼女は確かに人間離れした才能と頭脳を併せ持つが、言ってしまえばまだ『人間』なのだから。だが響介の能力は違う。天災も予測する事が可能なのだ。簡単な話、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。自制が効かない子供でもなければ、自分がやる事は分かっている。なら、自分のタイミングで天災を起こせば完璧に把握し、どんな災害なのかも知るのだから対策もやり易いだろう。

 

 「そんな....副作用は無いの!?」

 「鈴、話を聴いてた?お兄ちゃんのSEが満たされている区域はお兄ちゃんの世界。自分が傷付く妄想なんてする人は居ないでしょ。お兄ちゃんが改変するから、副作用なんて有っても無いのと同じだよ」

 「未然にさえ防げれば、って話よね....」

 「未然に防ぐ?.....有るかも、知れませんね。私達だから、そしてあの人が記憶を喪っているからこその防止策が」

 「まさか雪菜...」

 「それしか無いでしょう、菫先生。あの人を倒す為には、SEを斬り裂いて無効化するしか無いんです。だからこそ、私と一夏くん、箒さんのスリーマンセルで対策するしかありません」

 

 雪菜のIS【極光】には改良型の【ヤタノカガミ】が搭載されており、SEを無効化できる。一夏の零落白夜は言わずもがな、箒は絢爛舞踏で一夏のSE問題を解決する為だ。だが...

 

 「...すまない、雪菜。私は絢爛舞踏を自在に発動できないんだ」

 「....仕方無いですよ。元々単一仕様能力っていうのはコアとの親和性が高まった状態で精神が高まった時しか発現しません。自在に発動させられるのは世界でも数人でしょう。結局、艦が傷つけられたお陰で今すぐには動けません。皆さん、各自自由に過ごしましょう。ただ、鈍らない様にはしてくださいね?」

 

 この言葉を最後に、話し合いは終わった。残ったのは雪菜だけ。雪菜は自分の服の裾を捲り、白い腹部を露にする。其処には、青いみみず腫の様な傷があった。

 

 (....SEは人体に取り込めば毒となる。まだ腹部だからどうにかなりますが、完全には取りきれなかった。....制限時間はもう残り少ない、どうにか延命手段を探さないと...)

 

 雪菜に残された時間は、もう残り少ない...


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。