では、如月ユウさんに感謝を捧げつつ...どうぞ!
あ、此方如月さんの作品のURLです。
https://novel.syosetu.org/100223/
役柄は技術者!?放り込まれた2人!
「響弥、雪菜。ちょっと良いか?」
「...なんか嫌な予感がするんだよなぁ...」
「同感です」
「まぁそう言うな。ちょっとしたお手伝いだ」
菫の研究室にて。響弥と雪菜は菫に用を頼まれていた。嫌な予感がすると言いながら結局は話を聴く響弥はやはりお人好しなのだろう。
「で?どんな『お手伝い』だよ」
「まぁちょっと実験台に--」
「逃げますよ更識くん!!」
「逃がすか!!」
「ちょ、何だよこの穴!?」
「大丈夫だ、何度か
「オイどういう意味だよ!」
「あっちの世界ってまさか--」
雪菜の言葉は最後まで菫に聴こえる事は無かった。何故なら、2人が呑み込まれた穴が閉じたからだ。そう、以前響弥達がファイズギアを持って異世界に迷い込んだ際のデータを基に、菫は異世界に行く装置を作り出していたのだ。
そして送られたのは、この世界とは
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
「ぶげらっ!?」
「ほっ」
「舞原さ~ん、背中から降りて欲しいなぁ~。ローファーの踵の部分がめり込んでるから凄い痛いんだけど」
「あ、すみませんでした。今降りますね」
穴からぺっと吐き出された響弥は顔面から地面にぶち当たり、雪菜は美しい着地を響弥の背中の上で披露して見せた。最近踏んだり蹴ったりの響弥である。
「貴方達が、菫博士の言っていた方達ですか?」
「アンタは.....アルベール・デュノア...」
「その通りです、更識響弥くん。お待ちしてましたよ。響弥くんは私の所へ、雪菜さんは娘に着いて行って下さい」
「えっと...初めまして、舞原雪菜さん。シャルロット・デュノアです。信用できないだろうけど、着いてきて欲しいな」
「...更識くん」
「その通りにしておこう。先生は話は通してあるとか言ってたし、心配は無いだろ」
「...有り難う。じゃあシャルロット、頼んだよ。響弥くんは此方に」
2人は別れ、響弥はアルベールに、雪菜はシャルロットへと着いていった。
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
「...すまないね、響弥くん。私自身ではないにしろ、君の大切なモノを奪ってしまった。彼方の世界の私達は死んでしまったのだろう?」
「あぁ、そうだな」
「だから、私が償いたい。何か出来る事が有るなら言ってくれ」
デュノア社の社長室にての会話だ。沈み込みそうな程柔らかい椅子に座らされ、アルベールは響弥に頭を下げていた。その内容は響弥の世界での自分達の行った所業についての謝罪だった。それを聴いた響弥はゆっくりと口を開き、言った。
「...なぁ、アンタはシャルロットを愛してるのか?」
「あぁ、勿論だ」
「そっか...なら、永遠にそのままシャルロットの事を愛してやってくれ」
「...それだけなのか?何か他にも--」
「それだけの事を、俺の世界でのお前は出来てなかった!...いや、愛してはいたんだろうが、それを言葉にして伝える事はしていなかった。俺が親と過ごせたのは、本当に少ない期間だけだった。それでも、あの2人は俺を愛してくれたんだ。それは絶対に忘れない。お前は、お前が死ぬまでシャルロットと過ごせるんだ。だから、愛してやってくれ。俺の世界のシャルロットの分まで深く、ずっと...」
「...分かった。約束しよう、私は永遠に、死んでもシャルロットを愛し続けると」
「....有り難う」
響弥が抱いた、自分の為の願いだ。響弥が親と過ごした期間は極僅かだ。だから、償いたいなら別世界のシャルロットの分まで娘を愛して欲しい。それだけの、単純にして難しい願い。
「じゃあ、次はこれからの打ち合わせだね。君達には-」
「--え、嘘だろ。俺、技術に関しては素人で...」
「大丈夫さ!じゃあ、2人が来るまで待とうか」
「....おう」
がっくりと項垂れる響弥だったが、その顔の口角は上がっていた。それはきっと、久し振りに見せた笑顔だろう。だってその笑顔は、親に甘える子供の様なあどけない笑顔だったのだから。
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
場所は変わって応接間。此処にはシャルロットと雪菜が向かい合って座っていた。そして2人の前には良い香りを放つ温かい紅茶が。まず雪菜は紅茶を楽しんでから、話を切り出す。
「...シャルロットさん、私に何かお話があるんですか?」
「うん。...謝りたくて」
「謝る?この世界で初めて会った貴方が、私に何か?」
「響弥くんもだけど、私の家族が迷惑を掛けて、本当にごめんなさい。何か償える事が有るなら、言って下さい」
アルベールと同じ内容の言葉。響弥はシャルロットを愛する事を要求したが、雪菜が話したのは--
「シャルロットさん。貴方は今、『シャルロット・デュノア』として生きていて、幸せだと思いますか?」
そんな質問だった。てっきり頼み事をされると思っていたシャルロットは一瞬呆けてしまうが、直ぐに返事を返す。
「う、うん。凄く幸せだよ」
「そうですか、それなら--」
雪菜は誰もが見惚れる微笑みを浮かべ、自分の要求を口にした。とても優しい、自分より友人を想っての要求を。
「幸せなら、どうか謝らないで下さい。私の世界のシャルル・デュノアさんは、死にました。そして『シャルロット・デュノア』という人間はもう居ない。居るのは『シャルロット・メイル』という人間です。その人の為にも、貴方が今幸せだと思うのなら、謝らないで下さい」
「...うん、分かった!雪菜ちゃんがそう言うなら、もう謝らないよ!そしてシャルロット・デュノアとして、僕は雪菜ちゃんの世界の分まで生きる!」
「それで良いんです。....此方の世界のシャルロットさんもそれを望んでいるでしょうから」
「よし、お父さんの所に行かなきゃ。2人に相談があるみたいだからね!」
「....今日は随分と相談されますね。嫌な予感が...」
その予感は的中する事になるのだが、現在の雪菜がそれを知るハズもなく、アルベールと響弥の元へ向かうのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
デュノア社での会話から数日、響弥達は日本に帰ってきていた。しかし、世界線は違う世界のまま。そう、菫に放り込まれた世界のままだ。そして2人は見慣れた施設の廊下に立っていた。
「更識くん、どうしてこうなったのでしょうか...」
「あぁ全くだ。どれもこれも先生の手口を知ってんのに頼みを聴こうとした俺のせいだ....」
「やるしか無いですよ。私もかなり嫌なのですが...」
「--2人とも、入れ」
黒のキッチリとしたスーツを着た女性に声を掛けられ、
「
「同じく、
響弥の名字が雪菜の【舞原】になっているのは日本で同姓になるのは殆ど有り得ない【更識】という名字を使うのはマズイ、という事だからだ。この時、雪菜は顔を真っ赤にしていたが、響弥には何故か理解出来なかった。
そして今居るのは言わずと知れたIS学園。2人は其処に技術講師として派遣され、今此処に立っているのだ。2人が思うのはたった1つの思い。強く、とても単純だ。
((先生絶対に許すまじ....))
異世界で紡ぐ物語は此処から幕を開ける....