ジュエルス・ストラトス~宝石の海に浮かぶ無限の願い   作:カオスサイン

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EPⅧ「願いの守護者と入学、クラス代表決定戦 後編」

Side一夏

「「!」」

まさか、この感覚は!…

「一夏!…」

「ああ…」

俺達の中の人工緋赤眼の超人的感覚が付近で魔石が発現し封印されたジュエルガイストが解き放たれてしまった事を告げてくる。

「狐夜音、結界の方頼むぞ」

「ええ!ブレイジング・スライサー!」

狐夜音が妖刀を召喚して地面に突き刺すと術式が展開され周囲に結界が張られた。

これで魔石を持たない一般人は容易に近付けなくなった…と思っていた矢先に予想外の事が起きていた。

 

その頃、Side依秋

「な、なんなんだよこの化物は!?…」

神(紙)屑転生者、依秋は自身の目の前で突然に起こった事態に酷く混乱していた。

一体何処から侵入してきたのかが分からない目の前の異形に対し応戦していた。

いやそもそもISという物語にこんな異形は存在しない筈だ。

なのに目の前の異形は一体何だというのか?

依秋は「一夏のポジを奪う」という特典しか受け取っておらず目の前の異形、ジュエルガイストに対応可能な策など勿論持ち合わせていない。

だが、彼は無謀にも己とISの力を過信しジュエルガイストに突撃していった。

「【零落百夜】-!」

たまたまなのか分からないが苦し紛れに使った技がジュエルガイストに直撃する。

だがこれではまだまだ甘かったのだ。

「グアー!」

「なっ!?零落百夜の直撃を受けて平然としているだって!?…」

依秋はまさかの事態に驚愕を隠せない。

彼はすっかり忘れているようだが零落百夜の特性は対エネルギーに特化している能力だ。

エネルギー能力を所持していないのは勿論の事、尚且つある物を用いた攻撃でないとジュエルガイストには怯ませられる所か掠り傷一つすら与える事が出来ないのだ。

だが彼はそんな事を知る由も無い。

「グアー!」

「んなぁっ!?…」

ジュエルガイストが咆哮を上げたかと思うと、更に驚くべき物が出現してきた。

それは紛れも無くセシリアの駆るブルーティアーズのBT武装だったのだから。

そう、セシリアが「敗北を帳消しに」と魔石に願った直後、封印されていたジュエルガイストが歪んだ願いによって暴走しセシリア自身を取り込んでしまったのだった。

勿論依秋にはそんな事が分かる訳がなく続けて突っ込もうとした所逆に反撃を喰らい無様に気絶させられてしまった。

 

後半セシリア憑ジュエルガイスト戦推奨BGM「Silly-GoRound」

Side一夏

「チッ!…既にあの馬鹿が交戦していやがったか!」

結界を張る前に交戦していたようで無様に気絶させられている糞兄貴の姿を見て俺は内心舌打ちしていた。

「こはくさん、琴代さんは結界の影響を受けた一般生徒達の避難をよろしくお願いします!」

「うん!」

「了解した」

こはくさんと琴代さんに避難誘導は任せ敵を見据える。

「魔石の発現者は恐らく…」

「ああ、ほぼ間違い無くオルコット女史だろうな」

最も魔石を入手し易いであろう資産家の情報は重点的にマークしていたがよもやこんな近くにいようとは。

「でも、オルコットさんとバトルした時には全く反応が無かったよね?」

「恐らくあの時までは手元にはなかったのだろう…謎フードの男の事もある。

先程、学園内の監視カメラに一瞬のノイズが走ったのを確認した」

「その男が内部に侵入してオルコットさんを騙したって訳ね…」

「ああ、恐らく今回の暴走にも彼等が関わり、オルコットに願いを成就させる様に事を誘導した事はまず間違い無い筈だ」

「来るわ!」

「!考察は後回しだな。いくぞ!」

まずは奴が取り込んだブルーティアーズの武装を全て叩き落とす。

すると奴は水龍を象った砲撃武装を具現化させ此方へと向けてきた。

「散開!」

すぐに散開し、勢い良く放たれた水の砲撃を回避した。

「」

次に奴は叩き落とした筈のBT武装を出現させた実体剣に纏わせ振るってきた。

振るわれると同時にBT武装からも攻撃が放たれる。

「ええ!?」

「ヤベ!『シングルギア・ガードウィング』!」

俺は急いで狐夜音を守る様に片翼を展開し攻撃を分散させる。

が…

「何ッ!?…」

「一夏!?…」

「こ、コレは!?…」

俺は直後急に機体のガタを感じ急いで把握する。

なんと防御に使用した片翼の一部から錆付き初めていたのだ。

「成程…あの特徴的なキャノンにブレイドといい、俺のギアの翼を錆付かせた攻撃といい…魔石「ディープブルー・サファイア」に封印されし魔王級水鎧龍型ジュエルガイスト、ブルースパイラルドラゴナイターか!

水を司る龍が青き雫であるブルーティアーズを取り込んで己が力の糧としたか!」

ジュエルガイストの正体が判明した所で俺は錆付いてしまった片翼を即座にパージしブルースパイラルドラゴナイターに破片をぶつけた。

「ギャアーー!?」

「狐夜音!」

「OK!」

ギアの破片をぶつけられ奴が一瞬怯んだ隙に俺の指示を受けた狐夜音が妖刀による刀撃を繰り出し更にダメージを与える。

「【魔弾】!」

続け様に技を奴の腹部に浴びせ穴を空けると取り込まれていたオルコットの姿が露わとなった。

「今助けるぞ!

だがその前に…」

俺はオルコットを救出する為手を伸ばした。

その際に人工緋赤眼の力を使い感応力を上げ彼女の魔石を通して同調していた。

歪んだ願いを浄化させ純粋なる本当の願いへと変えねば彼女を救えないからだ。

「さあ、教えてくれオルコット、お前の持つ本当の願いを!」

 

Sideセシリア

「…私は?…」

ふと目覚めると私は真っ白い空間にいた。

「ウッ!?…」

思い出した!…確か謎のフードを被った男性に諭されて両親の形見を手に叶えるべきではない願いを叶えてしまおうとしてそれで…

「はっ!只の威張り屋の小娘如きがこの私の力を下らない願い事に使おうなんざ片腹痛いね!」

「あの貴方は?…」

私の目の前に突如、とても綺麗で透き通った蒼い髪を持つ女性がいた。

「私?私はお前に憑りついたお前達人間が言う所の化物の一匹さ!」

「私に憑りついた…化物?…」

「そ!でもお前の持つ力は私と相性が良かったみたいだし。

封印されてから久し振りに人間界に出れて物凄く暴れたい気分だったんだ」

「!?あれが貴方の姿なのですの?…」

自身の事を化物と名乗った女性は指をパチンと鳴らすと目の前に映像を出してきた。

それは異形が好き勝手にアリーナ内で暴れ回っていた光景だった。

「やめろー!」

「お、織斑さん!?」

織斑依秋が騒ぎを聞きつけ駆け付けてきて私に憑りついた異形と交戦に入っていた。

「がっ!?…」

「キャアァー!?」

でも異形には全く以て歯が立たず逆に返り討ちに遭ってしまい彼は気絶させられてしまっていた。

「全く私等には効かないね」

「そんな!?…」

ISの絶対防御をも斬り裂く攻撃までもが効かないとは成す術がないのか…。

「!…チッ!?結界が張られちまったか…よもや此処にも僅かながらのジェムマスターがいやがったか…」

「ジェムマスター?」

私には彼女の言った言葉が理解出来ずにいたが映像を見てアリーナの周囲に居た生徒達が一斉に倒れていた。

だがその中で唯一倒れる事無く異形との交戦に入った人物が現れた。

もう一人の男性IS操縦者である鈹岸さんとその恋人といった弓花さんだった。

「チッ!奥の手も躱されたか…」

私のブルーティアーズの武装をも使い彼等を追い詰めようとするが彼等は全く意に介さず攻撃をし続けていた。

「グッ!?…この魔王級ジュエルガイストである私がたかだか二人のマスターに気押されるだと!?…」

気付くと彼女はかなりの後退りをしていた。

「この!?…がはああー!?」

弓花さんの繰り出した技を異形が受けた直後、彼女も先程より大きく吹き飛ばされていた。

「しまっ!?…あの野郎、私が強制的に結んだお前との力のパスに介入してきやがっただと!?…」

「『オルコット、今助けるぞ!

お前の本当の願いを言うんだ!』」

私がこの異形の力に振り回されていた事に気が付いてくれていたのか鈹岸さんは私に向かってそう告げてきた。

思えば何時からこんなにも歪んだ考えを持ち得てしまったのだろうか…。

いつもいつも厳格だった母にペコペコと低姿勢でいた父を情けなく思うようになってしまい中学の時に列車事故で両親が他界してからというものの私に残されたものというのはオルコット家の莫大な遺産と偶然にもたった一つだけ唯一両親の返り血が付着しなかった美しい輝きを持つ蒼い宝石のみだった…。

思い返してみればその宝石は父が昔母に一年目の結婚記念日に購入しプレゼントした物凄く思い出の深い宝物だと本人達から聞かされた事を思い出していた。

そしてその時に父が私に言った言葉も同時に思い出す。

「『セシリア、この宝石の様に例えどんな世界になっていったとしても正しき誇りと優しさという美しさを忘れずにいてくれ。

お前もまた私達の大切な娘なのだから!…』」

そう…父も母もまたオルコット家を支え私という宝物を守るのに必死になっていた事にようやく気が付かされた。

「わ、私の本当の願いは…」

「や、やめろー!言うんじゃねえー!…」

異形の女性がそう言って脅してくるが私の覚悟は既に強い意志で決まっていた。

「父と母が…両親が守ろうとしていた正しさを私も守れる様に強くなりたい!」

「やめてくれー!…」

私が本当に叶えたい純粋な願いを告げると空間にはいくつもの亀裂が生じ段々と崩壊をし始める。

「『その手を伸ばして掴め!』」

「あ…」

私は鈹岸さんが差し伸べてくれた手を掴んでこの世界から解き放たれ再び視界が暗転した。

 

Side一夏

「ふうー…【ギアドラゴブレス】!」

無事にオルコットを魔石の呪縛から解放し終えた俺はジュエルガイストの再封印処理を施していたのだが。

「ム?これは…どういう事だ?…」

「え!?」

処理を施したディープブルーサファイアが突如浮遊しオルコットのIS待機状態であるイヤリングに向かって飛来し結合する現象が起きたのだ。

この不足の事態に俺達は頭を抱えるしかなかった。

そしてもう一つ頭痛の種がやってきた。

「そこでおとなしくしていてもらおうか。

鈹岸、弓花これは一体どういう訳なのか説明を求める」

「…」

結界も解けていたおかげで元賢姉殿が数人の教師部隊を引き連れて俺達の周囲を包囲していた。

 

 

 




次回、「ブリュンヒルデ、俺がアンタ達に話せる事は何も無い」
「い、一夏!…」
千冬の尋問を軽く躱す一夏。
「あの子はきっと淋しかったんだと思いますわ…」
一方、ブルーティアーズと不慮の結合事故を果たした魔石の事実を聞きセシリアは決意する。
「確かに反応はあるようね…イレギュラーの男性IS操縦者のついでに回収させて貰うわよってえ?…」
一夏は友と呼べしもう一人の少女と意外な形で再会を果たす事となる。
「願いの守護者と予期せぬ再会」


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