ジュエルス・ストラトス~宝石の海に浮かぶ無限の願い 作:カオスサイン
Side一夏
「ふう…」
あの日二年前に俺はある組織の者達に救われ新たな決意を胸にその組織「我がカルテル」に正式に入団し新米ジェムマスターとして修練・任務をこなしていた。
まあ、修練は文字通り地獄と困難を極めたが…笑顔で月花鳥・白鳳の火炎の舞を浴びせようとしてくるすせりさん怖ええ!
軽くトラウマ物だよありゃあ!
「ガ!」
「お?お呼び出しかダール?」
俺の相棒となった魔王級ジュエルガイストであるギアパープルマシンダーズドラゴンことダールが俺を呼びに飛んできた。
今はこの小さい姿ではあるが俺がこの二年間の修練で培った力を発動させれば本来の巨大な機械龍としての姿と力を取り戻せる。
「ガウ!」
ダールの返答に対し俺は駆け出していた。
ではいきますかね。
~我がカルテル「卿の間」~
「「お呼びでしょうか?オッペンハイマー卿」」
既に組織のトップであるオッペンハイマー卿に呼ばれていた俺を仲間として受け入れてくれた武流やすせりさん、ラウルさんといったメンバーもいた。
全員頭を下げながら敬礼する。
「うむ、ハイマスターの称号を与えた一夏君にもそろそろちゃんとした任務をと思ってな。
また新たな魔石の反応が確認された地点が判明したのでな」
「「!」」
その一言に俺達は一層気を引き締めた。
「その地点といいますと?」
「それなのだがちと問題があってな…先日本来ならば女性にしか動かせない筈のISを動かした男性操縦者出現の報道は皆の者も知っておる筈」
「…」
オッペンハイマー卿の言葉に俺は顔をしかめそうになった。
俺の元糞兄貴である織斑 依秋がなんとISを動かしその前代未聞なニュースが世界中に瞬く間に広がっていったのだ。
だけど俺だけはかつての自身の立場をより一層悪化させたISに対して嫌悪感しかないのでどうでも良い事だと思っていたのだが…。
「一夏?」
「…ああ、そういえば皆には俺の過去を話していなかったよな」
武流に心配された俺は意を決して彼等に以前の事を話した。
「…お前さんがまさかブリュンヒルデの弟の内の一人だったとはねえ…」
「アゲイルの奴もそこに価値を見出していたという事か…」
「ですがいくら血の繋がった姉兄弟だからとしてもやって良い事と悪い事がありますわ!」
俺の過去話を聞き終えた武流達は口々にそう言ってくれた。
「…という事はもしや魔石の反応があった地点というのはIS学園ですか?」
「そうである!先日の件の事もあるから此処に一つISコアを拝借させて貰ってきたのだが…」
オッペンハイマー卿が懐から出したのはISのコアだった。
「もしかしたら俺達の中で誰かが動かせる可能性があるかもしれないという事ですね?」
「その通りだ、各自このコアに触れてみたまえ」
「分かりました」
俺達はそのコアに触れていった。
すると…
「おお!…」
「ま、マジかよ!?…」
「…」
コアは武流や八尋さん、ラウルさんには一切の反応を見せず、俺にだけその眩いまでの反応を示したのだ。
「ふむ…これには何か作為的な物を感じるな…だが此処は早急に一夏君の専用機を拵えさせよう」
俺の過去話から何かを感じ取ったのかオッペンハイマー卿の言葉に何かひっかる物を感じたが今は緊急を要する事態である事には変わりはない。
もし魔石が女尊男卑思想に染まった連中やアゲイルの様な者達に渡ってしまえば世界はそれこそ一貫の終焉を迎え、誰しもが持つささやかな願いでさえ壊されてしまいかねない。
そうなる前に早く我がカルテルの手で回収せねばならないのだ。
「御意!…御身のままにこの任務必ずややりとげてみせましょう!」
卿に一礼し下がった後。
「まるで一夏は「願いの守護者」だな」
「俺が?」
武流にそう言われ俺は首を傾げる。
「お前はこの女尊男卑の世でもささやかな願いを守りたい…そう思ったんだろ?」
「…ああその通りだ…」
武流に見抜かれるとはな。
「まあ、他の団員からは孔雀とこはく、それともう一人いかせるつもりだ」
「こはくさんは分かりますが孔雀って?」
「ああ、そういえば一夏は未だに面識がないんだったな…アイツは基本一匹狼で気難しい所もある奴だがまあ腕は確かだし大丈夫だろ…多分…」
「た、多分って…」
「ああ、孔雀…琴代は昔つっかかってきた不良の一団をフルボッコにした事があるからなー」
「それはそれでどうなんですかね…」
一匹狼の理由ってそれかよ!
不安になってきたぜ…。
ビー!ビー!
!これは…野良ジュエルガイスト出現警報だ。
「行こう一夏!」
「ああ!」
俺達は急いでまた卿の間に足を運ぶのだった。
「卿、状況は?」
「…IS学園付近の市街内で三体のジュエルガイストの出現が確認された。
…」
「他に何か問題が?」
「そこからは私が代わって説明しよう」
卿の横で待機していたのは卿の右腕である人物であり精鋭部隊「ダイヤモンドナイツ」隊長であるアダム・フルブスだ。
「実は先程確認された事なのだが出現したジュエルガイストの侵行方向がある地点を目指している事が判明してきたのだ」
「ある地点…もしかしなくてもIS学園!」
アダムさんが告げてきた一言に俺はすぐに思い当たり言う。
「まさか魔石の存在をもう嗅ぎつけたのか!?」
「いや…恐らくそれだけじゃない…きっと今確認されているジュエルガイストは野良ではないと思う」
「一夏?他に何か思い当たる事があるのか?」
「ああ、まずは地点についてだ。
武流のいう通り魔石も関係しているとは思う。
だけど魔石って使用されなければ例えガイストでも感知は出来にくい筈だろ?」
「ああ、探知系に長けてるガイストならまだしもそこらの下級ガイストでは俺達と同じく余程付近でなければ魔石は感知しにくい…まさか!?」
武流は俺が投げかけた問いかけにすぐに気が付いたようだ。
「ああ、きっと魔石を偶然拾った一般人それも恐らくは女尊男卑思想による被害者の願い事に反応してIS学園へと向かっているに違いない。
そう、願いを成就する為、ISを破壊し尽くす為に…」
「いかん!もし一夏君の予想が正しいのならば只のIS如きではたとえ下級といえどジュエルガイストを倒す事は出来ん!」
本来ならば生まれるべきではない願いによって世界に綻びが生じそこからまた封印されていないジュエルガイストが世に溢れ出る。
この負の連鎖を助長してしまっているのがISという女尊男卑を広めてしまった存在だ。
そのせいでささやかな願いまで壊されるのはもうたくさんだ!
「「出撃許可を!」」
「うむ!直ちにコードネーム『金剛』、『天』、『鬼神』…そういえば一夏君の勲名を与えておらんかったな…では今から『守願者』じゃ。
お前達は出現したジュエルガイストの駆逐・封印に充れ!
アダムは件の魔石を拾った者を探し出すのだ!」
「「は!御身のままに」」
ちなみに金剛が武流、天がすせりさん、鬼神が八尋さんの事だ。
それにしても守願者か…その勲名に恥じない働きを見せるぞ!
次回、突如出現した未知の存在、ジュエルガイストに劣勢を強いられるIS部隊。
その時現れるは…
「願いの守護者と予想外 後編」