ジュエルス・ストラトス~宝石の海に浮かぶ無限の願い   作:カオスサイン

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EPⅨ「願いの守護者と予期せぬ再会 前編」

Side一夏

「…」

「説明して貰うぞ」

ったくなんでこうも次から次へと面倒事を増やしてくれるんだよこのアホ共は…。

「アンタ達に説明出来る事など何も無い!…只今回の様な事があってIS部隊を出されたとしても足手纏いでしかないから手を出すな!良いな?」

「何?それはどういう事だ!?」

「これで失礼させて貰うぞ。先に行っておくぞ狐夜音」

「な、おい待て!…」

俺はさっさとその場から退散した。

 

Side狐夜音

「ああもう!一夏ったらしょうがないんだから…」

組織から言われていた事を忘れている訳じゃないだろうけど…こうなったら私から話すしかないようね。

「ではこの学園の理事長先生をお呼び下さい。

そこで全てお話します。

ですが一夏が言った通りそれでも貴方達に出来る事は何もありませんよ」

「…分かった話せ」

何処かまだ納得がいかないといった様子の織斑先生の様子を見て私は未だ一夏が彼女を嫌う理由が改めて分かった気がした。

~理事長室~

「ふむ…特別な宝石に封印された未知の怪物ジュエルガイストですか」

「はい」

私は琴代さんも呼んで魔石の力「願いを叶える」という部分のみ伏せて先生達に話した。

この事が無闇に一般人に知られればそれこそ血を見る争奪戦が引き起こされてしまうからだ。

それに魔石を使おうとする者の心の力が弱ければ今回の様に暴走を引き起こしかねない。

勿論皆はこの事を聞き各々驚いていた。

「その怪物への唯一の対抗策が貴方方ジェムマスターの力もしくは銀を介した武器ですか…」

「そういう事になりますね。

例え低級のガイストであっても既存のISの装備では全く歯が立ちません」

「ならばその魔石とやらを渡せ。

此方で解析をかける」

「それは無理だと思って下さい。

魔石はマスターである私達の物であって所属する組織の所有物でもあるのですから。

かのオッペンハイマー卿がそれだけの理由でお許しになるとは到底思えませんわね」

「何?」

「一体どういう事よそれは!?」

「そうよ世界最強のISが怪物如きに負ける訳ないわよ!」

織斑先生はそれを聞き訝しげな表情をし、彼女を盲信的に支持する女尊男卑派の教師共が騒ぎ立ててくる。

「まあ、たかだかISという欠陥パワードスーツの限定閉鎖的な称号を持っただけという貴方じゃ我が組織の首領に並び立てると思うのがそもそもの間違いでもありますけどね。

ねえ、ブリュンヒルデさん?」

「なんですって!?」

有象無象の声は無視し私は思考する。

何も知らない他人からしてみれば卿は只の魔石を独占する組織のトップの卑怯者なのかもしれない。

その分、フルブライトや一部の者の反感を買ってしまっている事は事実ではある。

でも彼はジュエルガイストの危険性や魔石その物に内包された力の危険性を十分に理解出来ているからこそ「全世界の魔石を管理する」という役目を自ら買って出ているのだ。

そしてそれは彼に付き従う私達が良く理解している。

「弓花さんの言っている事は全て事実だと思います…私が指揮していたIS部隊も恐らくその怪物であろう一匹に全滅を強いられました。

絶対防御もことごとく突破され中には死亡者も出てしまいました…」

「なんですって?…」

確か一夏の事を嗅ぎ回ろうとした暗部の一族である更識会長でしたっけ?がそう告げると教師陣は驚きを隠せない。

成程ね…駄獣モデケの件の時にIS迎撃部隊が出撃ていたってのは一夏から聞いていた。

彼女もあの場に居たのね。

「お疑いでしたら他の皆さんに話を聞いてみて下さい…只思いの他傷が深いのでそれはお勧め出来ませんが…

それに我々更識がこの件に協力出来る事は限り無く無いでしょうね…」

「それは一体どういう事です?」

「簡単な事ですよ…といっても私にもたった今しがたその理由が分かりましたが…弓花さん達の所属する組織のトップに君臨するのはあの鉱物界で有名なオッペンハイマーの一族」

「そう、我がカルテルを敵に回すという事がどういう事だかようやく理解出来たか暗部の小娘よ」

琴代さんがようやくかと言わんばかりに補足する。

「ええ…」

「成程、もしもそんな人物の怒りを買ってしまえば一体どうなるか大体の想像がつきますね…」

「どういう事ですか理事長?」

理事長先生もすぐに思い当たったようだ。

「考えてもみたまえ諸君。

相手はとてつもない巨大な組織を率いていて尚且つ鉱物という業界では世界最大級のシェアを誇るといっても過言ではないとてつもない富を持った人間の一人だ。

もしその彼の一言で日本に輸入される筈の鉱物資源が出回らなくなってしまえば国内の経済がどうなってしまうかぐらいは想像がつくだろう!」

「そ、それは…」

理事長先生に強く言われ織斑先生や女尊男卑派の連中はようやく理解出来たようだ。

「良いですか?もしですよ、鉱物類が日本に入って来なくなったらISは愚か他の生活関係の企業にもその影響が出て国内の経済が立ちいかなくなってしまうって事になるんですよ!」

現在では資源にはかなり乏しく厳しい日本は世界各国の輸入に頼り切るしかない現状で大元のシェアを持つ卿の一言でそれがストップしてしまえばほとんどといって鉄などの金属等を扱うIS業界は愚か他の生活関連企業にまで経済制裁という名の影響を受けかねないのだ。

それだけはなんとしてでも避けたい筈だ。

だが卿も魔石絡みでない人の業が生み出した過ちなら人自身が修正すべきとの考えを持っているが自らがその火付け役になろうとは思ってはいない。

ましてや無闇に無関係の者達を巻き込む事は絶対にしないと断言出来る。

「ではその怪物絡みの件は貴方方に一任するしか無いって事で良いですね?」

「はい」

「…」

理事長がそう提案するがまだ女尊男卑思想が媚びり付いている者は納得はしていない様子だ。

だが奴等の唯一の弱点がとても高価な銀という代物である以上おいそれととても一決で学園に搬入出来る物ではないと理解したのか押し黙っていた。

 

 

 




予想より長くなってしまったのでここで。
次回、「あの子はきっと淋しかったんだと思いますわ…」
魔石と結合した自身の機体を見てセシリアは新たに決意する。
一方…
「確かに反応があるわね…イレギュラーの男性操縦者のデータ収集ついでに回収してやるわ!ってえ?…」
願いの守護者はかつての友の一人と予期せぬ再会を果たす。
「願いの守護者と予期せぬ再会 後編」


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