シロナさんとの勝負が終わり、俺は控え室でポケモンたちを手入れしていた。
ゲームでは、ポケモンが泥まみれになろうが麻痺状態だろうが、ポケリフレなんて一度もやったことがないが、この世界では仲良し度は上げておいた方が良い気がする。自分のポケモンに攻撃とかされたら確実に死んじゃうし。
不意に、控え室の扉がノックされる。誰だろうか?…あれか?サインください的なあれなのか!?
無意味に有頂天になる自分を落ち着かせ、入室を許可する。
記念すべく俺のファン一号は、大人の魅力が漂う黒の衣装を身に纏い、美しすぎる金髪を揺らす超絶美人な………って、シロナさんやんけ。
「シロナさんでしたか……先ほどはお疲れ様でした」
「こちらこそ。今はお邪魔だったかしら?」
「いえ、そんな事は。いかがなさいましたか?」
シロナさん、めっちゃ真剣な顔してるから怖いんですけど…
『ますた、らぐなろくのしはいしゃです。やつをころせば、らぐなろくはえいえんにふういんできます』
一目散に俺の後ろに隠れ、ブルブルと震えるアロフォーネが物騒すぎる発言をぶっこんでくる。お前どんだけガブリアスの事嫌いなんだよ。
「単刀直入に聞くわ。マキナ、なぜあたしとの勝負を望んだのかしら?それも、こんな親善試合だなんて形で」
…どうやら、この親善試合は俺が持ちかけた話だと言う事を、シロナさんは知っていたようだ。
シロナからしてみれば、あまり快くは思わないであろう動機なので、あまり喋りたくない内容なんだがなぁ…
「……目的なんて一つしかないですよ。あなたとポケモンバトルがしたかった。ただそれだけです」
「ふざけないで。私があなたに勝てない事くらい、あなたは知っているはずよ。親善試合に勝ったところで、勝者のあなたには何も得る物がないじゃない。まるで意味がわからないわ」
ヒェッ……怒ってるシロナさん怖すぎるやろ………
「あなたは、あたしが惨めに敗北する姿を、多くの人たちに晒したいだけだったのかしら?」
……どうやらシロナさんは、俺がシロナさんを公開処刑にするつもりだったと思っているようだが、当然そんなつもりはない。
「まさか。あなたを晒し物にしたいだなんて、これっぽっちも思っていない。むしろ、それはトレーナーとして絶対に許せない事だと私は考えています」
俺は過去に一度、レート戦のバトル動画を、実況動画として晒された事がある。
動画サイトでポケモンの実況を見ていたらたまたま見つけた動画で、俺が選出の際に凡ミスをして、スカーフテテフに三タテを決められるという悲惨な内容のものだ。その実況者がこれでもかと言うくらいに俺をこき下ろしていた事を今でも覚えている。あの時はマジで、死ね以外の言葉が出てこなかったわ。
「ごめんなさい……決してあなたを蔑もうとしたわけではないわ」
少々感情的に喋ってしまったのか、シロナさんが申し訳なさそうに謝ってくる。
「…謝らないでください。結果としてシロナさんに不快な思いをさせてしまったのは私の方です」
今回の勝負は、決して褒められた動機で申し込んだものではないので、少々言いづらい。だが、散々ダシにしておいてこのままはぐらかすのは、シロナさんからしてみれば納得がいかないだろう。
「確かに、私はシロナさんに勝つつもりでいた。ですが、私の目的はシロナさんに勝つ事ではない。シロナさんとの勝負に勝利する事は、手段にすぎません」
「手段?」
「知って欲しかったんですよ、
そう、これは単なる売名行為に過ぎないのだ。
この世界でのポケモントレーナーという職業は、芸能人のように知名度と実力が物を言う業種だ。
いくら実力があっても、名が売れてなければ金にならないし、いくら名が売れていても、実力がなければすぐに消える。
トレーナーの収入は、歩合制でトレーナー協会から振り込まれる。公式戦で好ましい成績を収めたり、協会が公認したジムのバッジを取得したりする事で、より収入が大きくなっていく。地方リーグに挑み、見事殿堂入りを果たすと、トレーナー資格から「マスター資格」というものに昇格し、グンと収入が増える。
が、地方リーグは基本的にその地方のバッジを全て持っていないと挑めない為、島の試練すらクリアしていない俺は、アローラのリーグにすら挑めない。というか、アローラにはまだリーグが発足していない。確か、ククイ博士によって立ち上げられていたはずだが、今の時系列は原作開始前なのだろうか?
ともかく、今の俺はクソ雑魚トレーナーという立ち位置なので、はした金しか振り込まれないため、フレンドリィショップの店員よりも薄給だ。時給に換算したら五百円くらい。生活できません。
じゃあ公式戦で協会からの評価あげればええやん?と思うかもしれないが、公式戦は基本的に、いきなり強いトレーナーとは戦えないので、底辺トレーナー同士で戦いながら、チマチマと評価をあげるしかないのだ。
そんな事をしていては何年かかるかわかったものではないし、そもそもポケモントレーナーは子どもの頃から下地を作っていくのが基本で、俺みたいに20を過ぎたやつが一から始めようと思うと、かなり険しい道のりになるのだ。
そう考えると、トレーナーだけじゃ食ってけないじゃん、という話になるが、ポケモントレーナーの収入は他にもあるのだ。
実力のあるポケモントレーナーは、トレーナーズスクールの講師を務める事ができるし、自分でジムを構える事もできるし、テレビやラジオなどといったメディアからオファーが来る事もある。また、一流企業がスポンサーとして付く事もある。
しかし、それらは知名度があって、初めて現実となるものだ。
親善試合は、勝敗の結果が協会の査定を左右する事はなく、専ら「見せ物」としての側面が強い。故に、バトルの様子は新聞やラジオ、動画サイトやテレビなどに、実況や解説をつけて発信される。売名行為にはもってこいといえよう。
そして、親善試合は公式戦と違って、トレーナー協会に
「……でも、なぜ私なの?あなたと私は、何の関わりも無かったはずよ」
「シロナさんが、この世界で一番強いと思ったからです」
この世界では実際のところがどうなのかは知らないが、ゲームのシロナは他のトレーナーとは違ってタイプ統一ではない為、割と簡単にボコボコにされかねない。というか氷技を入れてないだけでガブリアスで止まる。シロナさんはみんなのアイドルであると共に、みんなのトラウマとも言える。公式に残念な美人とか言われちゃうシロナさんかわいいよシロナさん。
一応、この世界でも『無敗のチャンピオン』という二つ名は耳にしているので、トップクラスである事は確かだろう。そんな彼女に勝利を収めたともなれば、明日の朝刊の一面を飾るのも全然ありえる話だ。
シロナさんを踏み台にした感は否めないが、俺自身はシロナさんの事は大好きだし、大好きでもあるし、大好きだ。お部屋の片付けが出来ないシロナさんも愛せます。シロナさんかわいいよシロナさん。
「……もう一つだけ聞かせて。私にはまだ、知りたい事があるの」
そう言ったシロナさんは、ちらりと俺の後ろにいるアロフォーネを一瞥する。
あー……なんと言っても新種ポケモンだし、こいつに負かされたと言っても過言ではないので、アロフォーネの事を知りたがるのも無理はないだろう。
あまり期待させるのも可哀想なので、俺はキッパリと断る。
「……それについては、教える事はできません」
「ッ!!どうしてッ!!」
鬼気迫る表情で迫られる。怖いですシロナさん。
「………私も知らないんです。現状では、知る術が無いんですよ」
なにせアロフォーネなんてポケモンは前のゲームにいなかったですしおすし。環境と条件を整えて、検証を繰り返しているので種族値は粗方割り出せているが、どういうポケモンかは、俺でも分からない事だらけだ。
『ますたは、わたしのことを、しりたいのですか?わたしは、うたをうたうのがとくいですよ。きいてください。
…ほろべ。なきさけべ。なんじをしはいする、しっこくのかんじょうが、さらなるやみのかなたへ、いざなうだろう。ほろべ。ほろべ…』
おい馬鹿やめろ。それ絶対ほろびのうただろ。殺す気かてめぇ。
何かを考え込んでいるシロナさんは、そっと瞼を閉じる。しばしの間を経て瞼を開いた彼女は、真っ直ぐに俺を見つめてくる。
「………マキナ。あなたと戦えた事、本当に……本当に感謝しているわ。だから、待っていて欲しい。必ずあたしは、あなたに勝って見せる」
……俺は今、シロナさんにライバル宣言をされたのだろうか?俺としては、シロナさんのような美人と関われる機会が増える事は大変喜ばしい事だし、シロナさんと戦う度に俺の知名度は上がっていく一方なので、大歓迎である。むしろ求婚したいです。
「願ってもいない。いつでもお待ちしておりますよ」
「ええ、あたしが勝つまで誰にも負けないで。あたし以外のトレーナーに負けるなんて、許さないわ」
確かに、今度俺がその辺にいる底辺トレーナーに負けたら、三段論法的にシロナさんまで底辺トレーナーになってしまう。そんな事をした日には、磔にされて大文字で焼却処理されても文句言えないな。というか、今日の親善試合がまるっきり無駄になってしまう。
シロナさんはそれだけ言うと、踵を返して控え室を出ていく。あ、今ふわって良い匂いが……しゅごい。
俺がシロナさんの
……冷静になって考えると、俺ってこいつらに攻撃されたら一撃で死ぬんだよね?懐かれてなかったら相当やばいよね?ナットレイの鉢巻ジャイロなんて食らったらミンチ不可避ですよ。
……多分、ポケモンは動物みたいなものだろう。真心をこめて撫でてあげれば愛情は伝わるはずである。
イメージはムツゴ◯ウさんだ。ナットレイは家族だ。
よーしよしよし、よしよし。ここか?ここがええんか?アゴの下が気持ちええんか?あ、お前アゴ無かったな。よーしよしよし…
『ますた………いたくないのですか?』
あ。
とくせい:てつのトゲ
俺は、三針も縫う大怪我をした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『マキナ選手 控え室』
シロナは、そう書かれた扉をノックする。「どうぞ」という、入室を許可する男声が聞こえたので、シロナはひと呼吸を整えた後に、ドアを開く。
控え室の中には、先ほどまで自分のポケモンとバトルを繰り広げていたマキナのポケモンが、ゆっくりと
手を止めたマキナが、入ってきたシロナへと視線を向ける。
「シロナさんでしたか……先ほどはお疲れ様でした」
「こちらこそ。今はお邪魔だったかしら?」
「いえ、そんな事は。いかがなさいましたか?」
至って冷静に用件を問いただす彼の後ろに、新種ポケモンのアロフォーネが隠れ込むと、彼の肩越しからシロナを警戒している。散々、シロナのポケモンを蹂躙しておきながら、なんと臆病なポケモンなのだろうか。
「単刀直入に聞くわ。マキナ、なぜあたしとの勝負を望んだのかしら?それも、こんな親善試合だなんて形で」
この親善試合は、マキナ自身から自発的に協会側に打診したものだと、シロナは知っていた。
最初は、一度も顔を見たこともないようなトレーナーに親善試合を申し込まれたのか理解できなかったが、相手があの論文を書いた男だと知るや否や、頭ごなしに断る事ができなかった。シロナとしては、興味本位で勝負を受けたに過ぎない。
しかし、結果はシロナの大敗に終わった。相手のマキナは三対五という目に見えるハンデを抱えながら、圧勝したのだ。
シロナは確信している。この男には、私に勝つ事ができる絶対的な自信があった事を。
「……目的なんて一つしかないですよ。あなたとポケモンバトルがしたかった。ただそれだけです」
「ふざけないで。あたしがあなたに勝てない事くらい、あなたは知っているはずよ。親善試合に勝ったところで、勝者のあなたには何も得る物がないじゃない。まるで意味がわからないわ」
親善試合は公式試合やリーグと違い、バトルに勝利してもトレーナーが賞金を得る事はない。今回のイベントマッチも例外ではなく、スポンサーの提供は試合の運営に充てられるのみであり、観戦チケットによる収入も、全て協会に入るだけで、一円たりともトレーナーに利益があるわけではない。会場の観客や地上波の放送で、自分たちのポケモンバトルを楽しんでもらうだけだ。
「あなたは、あたしが惨めに敗北する姿を、多くの人たちに晒したいだけだったのかしら?」
意地の悪い聞き方をしているという自覚ぐらい、シロナにはあった。だが、シロナにはそう思えて仕方がなかったのだ。
シロナの一方的な追及を、終始黙って聞いていたマキナが、どこか言いにくそうな顔で口を開く。
「まさか。あなたを晒し物にしたいだなんて、これっぽっちも思っていない。むしろ、それはトレーナーとして絶対に許せない事だと私は考えています」
語気をわずかに強めたマキナは、何かを想起しているかのように目を細める。初めて感情を露わにする彼を前に、シロナは少しばかりたじろぐ。
「ごめんなさい……決してあなたを蔑もうとしたわけではないわ」
「…謝らないでください。結果としてシロナさんに不快な思いをさせてしまったのは私の方です」
マキナはそこで言葉を切ると、わずかに逡巡してから、言葉を紡ぎ始めた。
「確かに、私はシロナさんに勝つつもりでいた。ですが、私の目的はシロナさんに勝つ事ではない。シロナさんとの勝負に勝利する事は、手段にすぎません」
「手段?」
「知って欲しかったんですよ、
(
その時、シロナは頭の中でパズルのピースがはまっていく感覚を覚えた。
なぜ、あたしに親善試合を持ちかけたのか。
なぜ、三対五などという、大きすぎるハンデキャップを抱えながら戦ったのか。
なぜ、完膚なきまでにあたしを叩きのめしたのか。
シロナがいかにポケモンバトルに関して無知であるかを。いかに未熟であるかを。いかに井の中の蛙に過ぎないかと言う事を……
マキナはシロナに教えてくれたのだ。
もし、シロナがマキナと闘う事なくチャンピオンを名乗り続けていたら、自分がこの男よりはるかに劣っているという事実を知ることなく、己が『無敗のチャンピオン』である事を信じてやまず、滑稽にも現状に満足し続けていた事だろう。
そう、これまでのシロナは行き止まりに立っていたのだ……否、越えるべき壁に気づかないでいたのだ。
だが、もしシロナがマキナに対して「お前は未熟だ」と言われても、どこの馬の骨ともわからぬ男の言葉を聞き入れる事などなかっただろう。
結果が全てを語るポケモンバトルで、シロナが越えるべき壁を示してくれたのだ。
「……でも、なぜあたしなの?あなたとあたしは、何の関わりも無かったはずよ」
「シロナさんが、この世界で一番強いと思ったからです」
世辞の句を述べる風でもなく、ただ思った事を発言するかのように、マキナはサラリと答えた。
この世界で一番強い。
自分を圧倒した相手にそんな事を言われたシロナは、得も言われぬもどかしさを覚える。
「……もう一つだけ聞かせて。あたしにはまだ、知りたい事があるの」
そう、シロナは
シロナは、マキナの背後に隠れて、怯えた様子でシロナを見ているアロフォーネを一瞥する。
マキナと言う名前。
新種ポケモンを見つけたという事。
ポケモンバトルが理不尽なほど強いと言う事。
たったそれだけの事しか知らないのだ。
シロナが何を知りたいか、皆まで言わずとも俺には分かる………そう主張するかのごとく、マキナは間髪なく答えた。
「……それについては、教える事はできません」
「ッ!!どうしてッ!!」
シロナが強く追及すると、マキナは困り果てたような表情になる。
「………私も知らないんです。現状では、知る術が無いんですよ」
マキナの言葉に、シロナは思わず息を呑む。
この男は、勝負に負ける前の自分と同じなのだ。越えるべき壁が無いのだ。これまでも、これからも。
それどころか、シロナは越えるべき壁がある事に気づかなかっただけと言うのに対して、この男には越えるべき壁が
見ず知らずの男に、シロナは導かれた。それなのに、シロナには虚無を彷徨い続けるこの男を導く事ができないのだ。
(あたしだけが救われるだなんて、こんな……こんな残酷な話が…………ッ!?)
シロナの中で、最後のピースが
『シロナさんが、この世界で一番強いと思ったからです』
求めているのだ。
この男は強く、強く、シロナに求めているのだ。
マキナは、シロナが「越えるべき壁」を示してくれる事に、一縷の望みを託したのだ。
(マキナ……なんて不器用な男なのかしら。こんなに回りくどい事をするだなんて)
しかし、これは紛れもなく救済を渇望するマキナの心の叫びなのだ。マキナは、シロナならば気づいてくれると思ったからこそ、此度の親善試合を持ちかけて来たのだ。
完全なる敗北を前に、根こそぎ熱を奪われたシロナの体が、徐々にその情熱を取り戻していく。
芯から、徐々に、徐々に、燃え広がっていく。
「………マキナ。あなたと戦えた事、本当に……本当に感謝しているわ。だから、待っていて欲しい。必ずあたしは、あなたに勝って見せる」
一瞬、マキナは驚いた表情を見せるが、すぐに戦っていた時のような不敵な笑みを浮かべる。
「願ってもいない。いつでもお待ちしておりますよ」
「ええ、あたしが勝つまで誰にも負けないで。あたし以外のトレーナーに負けるなんて、許さないわ」
シロナはそれだけを言い残し、控え室を後にする。
(マキナは私が導く。あなたに導かれた私が、導く)
シロナは、自分にこれほどの情熱がまだ残っていた事に驚きを隠せなかった。
(……違う、彼が私の熱を取り戻してくれたのよ)
シロナは後手に閉めた扉をふり返る。
『マキナ選手 控え室』
この扉の向こうには、私の知らない彼の素顔があるかも知れない。
しかし、それを覗き込むのは、野暮などという領域ですらない。
彼の心をもっと知りたい。
彼を苦しみをもっと分かちたい。
しばらくの間、葛藤していたシロナだったが、扉の向こうにある誘惑に負け、ゆっくりと扉を少しだけ開く。
静かに、僅かに、開かれた隙間から控え室を覗き込んだ。
シロナは思わず目を疑った。
終始、鉄仮面のような硬い表情を貼り付け続けていたマキナが、まるで我が子を愛でるかのような無邪気な笑顔で、
(あれが……マキナ………なの……!?)
ナットレイを撫でつけるマキナの右手には無数の傷がついており、ボタボタと鮮血が滴っている。
これ以上見ていられないと、シロナはすぐに扉を閉めた。
(私は、マキナという男を誤解していた)
ポケモンとは数字である。そんな事を書き綴った彼に、普段は温厚であるはずのシロナは憤りを覚えていた。
強くなるために必要なのは、ずっとポケモンを好きでいる事。
ポケモンと共に歩んでいく上で、自分たちトレーナーがポケモンたちに、無償の愛情を注ぎつづけるのは当たり前の事なのだ。
故にシロナは、マキナというトレーナーは、ポケモンをバトルに勝つための道具でしかないと思っている、自分とは相容れぬ存在だと思っていたのだ。
「……そんな人間が、ポケモンたちにあんな表情を見せるわけがないじゃない」
比類なき強さを誇るが故に、孤独という虚無を彷徨うマキナ。
そんな彼を支えてきたのは、きっと彼のポケモンたちなのだろう。
だから、彼もまた同様に、自分の
戦いに勝つ事の喜びも。戦いで傷つく事の苦しみも、全て共有しようとしているのだ。
「なんて……なんて、無邪気な笑顔を見せるの」
シロナは後に気づく。
この時すでに、自分の心はこの男のものになっていたと言う事を。
「………ガブリアス」
静かにモンスターボールを投げると、疲労困憊の相棒がボールから出てくる。
「ガァ…………」
「いつもあなたばかりに辛い思いをさせて、本当にごめんなさい。…あたしも、あなたと一緒に強くなる。だから、これからも頼りにしているわ。ガブリアス」
「ガァァアブ!!」
シロナは、いつも以上に頑張ってくれた相棒を、いつも以上に強く撫でる。
ズキリとした痛みが、彼女を襲う。
シロナの女性らしい、美しい白磁のような小さな手から、血が流れ出る。
それでも、彼女は嫌な顔ひとつせず、ガブリアスを撫で続けた。
シロナを支え続けてくれるこの
ボスゴドラ@メガ石
いわ/はがね→はがね
H70→70
A110→140
B180→230
C60→60
D60→80
S50→50
特性
いしあたま→フィルター
性格
いじっぱり
努力値
H236、A252、B20
覚えている技
(岩)もろはのずつき 威力150 命中80
(氷)れいとうパンチ 威力75 命中100
(闘)ばかぢから 威力120 命中100
(地)じしん 威力100 命中100
アロフォーネが苦手とする物理技を、その圧倒的な防御種族値により受けきる男前すぎるポケモン。
特性フィルターの恩恵もあり、ようきなガブリアスのじしん程度なら余裕で受けられる。それどころか、れいとうパンチで返り討ちにできる。強い。