てふてふ は ごがつびょう を わずらっている!!
こうしんそくど が ガクッと さがった!!
無事にイリマの試練を終えた俺たちだったが、重大すぎるアクシデントが発生した。
少し目を離した隙に、リーリエがいなくなっていたのだ。
リーリエを危険に晒してしまった己の不甲斐なさと自責の念に押しつぶされ、一時過呼吸になりかけたが、大人の俺が取り乱すわけには行かないので、とりあえずミヅキとハウには、ハウオリシティで待機しているククイ博士を呼んでくるよう指示した。
恐らくリーリエは、スポーツバッグからフラっと出て行ってしまったほしぐもちゃんを追いかけたのだと思われるが、スカル団のような頭がオメデタイ連中がウロついている事を考えると、やはり安心はできない。
急ぎ足で『メレメレの花園』へと向かうと、果たしてリーリエはそこにいた。
おお、大天使リーリエよ!!
貴女を守護する事こそが、我々に与えられた使命であると言うのに、一時的とは言え、清廉にして純潔なる貴女を、矮小な不埒者共が愚行に及び兼ねない状況化に置いてしまった事を、切腹を以ってして贖罪したいと存じます次第…ッ!!
しかしながら、貴女をその身に宿した、総ての起源にして至高なる聖母ルザミーネを、無邪気なる触手より救済致します前に、この無価値にも等しい命を投げ出すのは、死をもってしても償い難き愚昧故、烏滸がましくも生命維持を継続させていただく事を、お許しくださいませ……ラ・ヨダソウ・ルザミーネ。
「あ、マキナさん!!ほしぐもちゃんが………あの、なんで泣いてるんですか?」
「……いや、なんでもない。リーリエが無事で安心しただけだ」
「そ、そんなに心配をしてくれていたのですね……迷惑をかけてごめんなさい!!」
何の落ち度も無いと言うのにも関わらず、俺のような人間にまで頭を下げるリーリエは、もはや天使の翼と後光を携えた聖女と言う他ない。光と光が両方そなわり最強に見える。
「いや、リーリエが謝る必要はない。だが、リーリエは野生のポケモンや、良くない連中のポケモンと戦えるポケモンを持っていないんだ。ほしぐもちゃんを追いかけるにしても、せめて俺やククイ博士に一言かけてくれ。大人がいなかったらミヅキやハウでも良い」
「そうですね……できるだけほしぐもちゃんと離れないようにしますが、もしそうなったら今度からは気をつけます。あの、マキナさん……ほしぐもちゃんがこの花園の奥の方まで行ってしまったんです。ほしぐもちゃん、野生のポケモンさんと戦える技を持ってないのに……」
やはり、今のリーリエはほしぐもちゃんが心配で仕方ないのか、頻りに花園の方へと視線を泳がせている。
「俺が行ってくるから、リーリエはここで待っていてくれ」
流石にリーリエを一人にするのは心配なので、捕獲要員として連れているドーブルにリーリエの護衛を任せる。リーリエに近づく怪しい奴がいたら『みねうち』でボッコボコにして差し上げなさい。
花園にはオドリドリやアブリーなどの野生ポケモンが、花の蜜を求めて集まっている。そして、そのポケモンたちを捕まえんと意気込む女性トレーナーたちが何人かいる。
いちいち野生ポケモンやトレーナーに絡まれていては面倒なので、ぬしポケモンを倒して少し調子に乗っているドードリオを引き連れて、ほしぐもちゃんの元へ向かう。
アブリーやチュリネたちは『げぇっ、ドードリオ』と言う声が聞こえてきそうな程、慌てた様子で逃げて行き、『おどりこ』であるオドリドリたちは、本能的にドードリオの『つるぎのまい』を真似してしまい、バトルそっちのけで踊りに夢中になっている。
そんなシュールすぎる光景を目の当たりにした女性トレーナーたちは、なんか知らんがヤベェ奴が来た…とでも言いたげな顔をして、花園を去って行った。
メレメレの花園には、一心不乱に剣舞を踊り続けるドードリオとオドリドリだけが残された。何これひっどい。
ほしぐもちゃんを捕まえるのはそこまで苦労しなかった。と言うのも、バカみたいに剣舞を続けるドードリオたちを見つけたほしぐもちゃんが、自らこちらに飛んできたからだ。
「ピュイ!!」
お前まで混ざらんでもええんやで?
「もう、勝手に飛び出ちゃダメですよ、ほしぐもちゃん」
「ピュイ?」
「ほら、バッグに戻って。マキナさん、手間をかけさせてしまってごめんなさい」
またしても俺はリーリエに頭を下げられてしまった。ツーストライクである。次、リーリエに頭下げられたら爆発するから、俺。
「いや、ほしぐもちゃんが無事だったならそれで良いが………なあ、リーリエ」
「はい、なんですか?」
「俺のドーブルがどこに行ったか知らないか?」
「あ、そういえば見当たりませんね……あっ!!」
素っ頓狂な声をあげたリーリエが、花園の出口を指差す。一体どうしたんだ…?
リーリエが指し示す先には、無我夢中に尻尾を振り回すドーブルと、それに対峙する『怪しい男』がいた。
「くっ……なんだこのドーブル、なかなか手強いな!!だが、そんな手加減をした攻撃では、鍛え上げたぼくの体を打ち破る事はできない!!」
「ねーミヅキーっ!!ククイ博士が生身でドーブルと戦ってるけど、大丈夫なのこれーっ!?」
「…………」
「さっきから『みねうち』ばかり……そんなんじゃぼくは倒れないぜ!?他の技を見せたらどうだ!!そうだ、ドーブルならもっと珍しい技を…………あっ、キノコのほうし」
「ミ、ミヅキー!!博士が倒れたよー!?」
「…………」
何やってんだお前ら。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いやぁ、悪かった悪かった。まさか君のドーブルだとは思わなかったよ。危うく怪我をさせてしまうところだったぜ!!」
普通は逆なんだよなぁ……
ミヅキとハウが、思ったより早くククイ博士を呼んで来てくれたらしく、リーリエの護衛を任せていた俺のドーブルが、ククイ博士の事を『怪しい奴』だと勘違いしてしまい、スーパーアローラ人流ポケモンバトルが勃発してしまったようだ。相手が捕獲要員ドーブルじゃなかったらあんた死んでたぞ。
「ま、リーリエも無事だった事だし、とにかく試練達成おめでとう!!この後、島キングのハラさんと戦う『大試練』が控えている。ハラさんは『かくとうタイプ』のポケモンを使ってくる、とても強いポケモントレーナーだぜ!!」
……かくとうタイプと聞いた瞬間から、ミヅキちゃんが自分のオシャマリを凝視しているんですが、ネタバレしても良かったんですかね?
一旦、ポケモンセンターに寄ってポケモンを回復してから、ハラの待つリリィタウンを訪れた。ポケモンセンターのジョーイさんが俺好みのお姉さんで、俺のパラメーターも色々と回復したが、大天使リーリエの前なので自重した。
リリィタウンに着く頃にはすっかり日が沈んでしまったが、ハラはすでに祭壇の上で待機しており、大試練を行う準備が整っていた。
「最初の試練達成、お見事です。過去に例を見ない速さですな!!」
俺たちの試練達成が異例のスピードだったのか、ハラが豪胆に笑いながら賞賛の辞を贈る。
「これから大試練を行いますが、準備はよろしいですかな?大事な試練故、全力でお願いしますぞ!!」
大試練を行う順番はイリマの試練と同じく、ミヅキ、ハウ、俺の順となった。
「ふむ、ミヅキのオシャマリがどこまで育ったか、とくと拝見させていただきますぞ!!」
ハラの手持ちはマンキー、マクノシタ、マケンカニのかくとう統一パだ。
オシャマリのチャームボイスで瞬殺だった。もはや戦術もクソもない。レベルと不一致弱点技の暴力である。
「すげー、じいちゃんのポケモンが全部一撃でやられたー!!」
「流石はミヅキさんですね」
「ワッハッハ、手も足もでませんでしたな!!」
ハラはミヅキの成長っぷりを嬉しそうに笑いながら、かくとうZをミヅキに渡す。まーたミヅキちゃんが強化されてしまったのか……壊れるなぁ。
ハラのポケモンを回復させた後、すぐにハウの大試練が行われたが、レベリング不足が顕著に出てしまい、ハラの手持ちを倒す事ができなかった。
「くー、俺のポケモンたちなら勝てると思ったんだけどなー」
ハウは悔しそうにしているが、別にハウの育成が遅いわけではない。むしろ、この短期間でピチューがピカチュウに進化している事を考えると、トレーナーとしての資質は十分に伺える。ミヅキのポケモンたちが鬼の速さで育っているせいで、シナリオが早く進み過ぎているだけだ。ミヅキちゃんマジミヅキちゃん。
「ま、時間はまだまだたくさんある。ポケモンスクールに行けば、イリマも稽古に付き合ってくれるし、ハラさんを倒すためにも特訓あるのみだぜ!!」
ククイ博士がそのハンサムスマイルと共に、落胆するハウの肩をバシバシと叩いて叱咤激励する。この人の子供の扱いに関しては、是非とも見習いたいところだ。ポケモンの扱い方は絶対に見習ってはいけないが。
「ふむ、次はマキナ殿の番ですな」
ついに俺の番となったので、祭壇へと足を運ぶ。
「ククイ博士から話は聞いておりますぞ。なんでも、アローラリーグのチャンピオンを任されたそうですな」
ハラさんがミヅキたちに聞こえぬよう、声を潜めてそんな事を言ってきた。なーんで俺がチャンピオンを務める事が確定してるんですかね?
「わしも四天王を任されましてな、メレメレ島の誇りをかけて戦わせていただきますぞ」
内緒話はここまでですな…と、ハラは告げると、
「さて……本来であれば、先ほどの手持ちで大試練を行うのですが、マキナ殿はわしのゼンリョクと戦ってもらいますぞ!!」
あ、これアカン流れや。
ハラが力強く投げたボールから、ハリテヤマが飛び出てきた。絶対これリーグ用のパーティーじゃないですかやだー。
現在の俺の手持ちは、島巡り用の舐め腐ったメンツなので、まともに戦えるのはドードリオとアロフォーネくらいだ。
ドードリオはレベリングが終わっていないので現時点ではまだLv44だ。ハラのポケモンは全てLv50以上だと思われるので、実数値にそれなりのハンデがある。
おそらく初手は『ねこだまし』が飛んでくるだろう。ここはアロフォーネを投げ、相手が無意味な『ねこだまし』をしている間に『ほたるび』を積んで、ばくおんぱ連打ゲーに持ち込めば、相手のポケモンは鈍足ポケモンばかりなので勝ち確定だ。
ククイ博士と戦った時のように、公式戦の『ターン制』が適用されるわけではないが、アロフォーネがただひたすら同じ技を連打している以上は、相手もこちらの虚を突くような行動はとれないはずだ。
完璧な脳死戦法が確立したので、アロフォーネの入ったゴージャスボールを取り出す。出番ですよ、姫。
『………むにゃむにゃ……ああっ……ますた……だめです……そんなはずかしいことを………せきにんとってください……むにゃむにゃ………』
爆睡しとるやんけ。
えぇ……マジかよ。いつもなら起きてる時間帯じゃん。なんでこんな時に限って寝てるんだよ。詰みもうしたぞ、我。
「……?どうかされましたかな?」
「……いえ、なんでもありません」
マジかぁ……Lv44ドードリオと捕獲要員のドーブルだけで勝ち筋を作るしかないな。
とりあえず俺はドーブルの入ったプレミアボールを投げる。
「先手必勝……ハリテヤマ、ねこだまし!!」
出鼻に繰り出されたハリテヤマの『ねこだまし』が、ドーブルに繰り出され初手を完全に封じられてしまう。
だが、素早さにかなりの差があるので、二手目は必ず俺のドーブルが先制を取れるはずだ。『なんでもアリ』のルールが俺にとって足枷になっているのなら、相手ポケモンに
「あー!!あれさっき博士が食らってた技だー!!」
ハウ君ご名答、俺がドーブルに指示したのは『キノコのほうし』だ。先発がやるきオコリザルじゃなかったのが不幸中の幸いだったな。
「むっ……まずいですな。起きなさい、ハリテヤマ!!」
俺はすぐにドーブルを引っ込め、ドードリオを取り出す。
「なんとか起きましたぞ…ハリテヤマ、もう一度ねこだまし!!」
おいゴルルァ!!寝ろ!!カゴのみ持ってんのか!?起きるのが早すぎるんだよこの野郎!!
あと、さりげなく『ねこだまし』二回も使ってんじゃねぇぞ!!こんなんチートや!!チーターや!!
……やっべぇなコレ。きあいのたすきを潰された上に、インファイトの確定一発圏内に入れられてしまった。普通ならば3DSをぶん投げている状況だ。
だが、まだ負けが決まったわけではない。俺のドードリオが育成中という事は、
つまり、このドードリオは四つ以上の技を覚えている。技スペースを確保したドードリオの恐ろしさをとくと味わうがいい。
「終わりですな!!ハリテヤマ、インファイト!!」
「ドードリオ、
至近距離に飛び込んできたハリテヤマが、重い連撃をドードリオに叩き込む。紙耐久かつレベルが足りていないドードリオを一撃で落とせる強力な攻撃だ。
だが、『こらえる』構えをとったドードリオは、瀕死確定の攻撃を耐えてみせた。
「ドードリオ、
じたばた。
そのネタ性の強さで有名なコイキングが覚える事で知られている技だが、侮る事なかれ。
この技は、使うポケモンのHPが低いほど威力が増し、最大HPが48以上のポケモンがHP1の時に使うと、威力は200となる。
これは、高火力ノーマルタイプ物理技として名高い『ギガインパクト』よりも高い威力であり、ノーマル/ひこうタイプのドードリオには『タイプ一致ボーナス』が付き、さらに威力が1.5倍となる。
そして、ドードリオの攻撃種族値は110と馬鹿にできない数字であり、努力値も既に最大まで振ってある。
窮地に立たされたドードリオは、死にもの狂いで、じたばたする。
ひたすらに、我武者羅に、遮二無二じたばたする。
わけのわからないレベルでじたばたするドードリオに巻き込まれたハリテヤマは、わけのわからないまま一撃で倒される。
そして、わけがわからないといった表情でハラが唖然としている隙に、俺はドードリオに指示を出す。
「ドードリオ、つるぎのまい」
無駄に耳触りな鳴き声。
一体感の欠片もなく暴れ回る三つの頭。
大地を踏みしめる
己を鼓舞したドードリオの全身に、荒ぶる駄鳥の力が漲っていく。
今のドードリオなら、いつも以上に力強く、いつも以上に見苦しいじたばたが繰り出せるだろう。
「これは……なんだか良くわかりませんが非常にまずい気がしますな。なんとかしてあの鳥を止めなさい、オコリザル!!」
割りと結構本気で鬱陶しいレベルでじたばたするドードリオに、攻撃を当てるのは至難の業だ。
もはや、今のドードリオを止められる者はいないだろう。
「ドードリオ、エターナルじたばた」
エターナルじたばた。
それは、俺がドードリオをボールに引っ込めるまで、永遠にドードリオがじたばたし続けるという、禁忌の戦術。相手は死ぬ。
こうなったドードリオは誰にも止められない。俺も止められない。
ドードリオは考える事をやめたのだ。
この圧倒的じたばたを受けたオコリザルは、一撃で沈んだ。後続のニョロボン、キテルグマ、ケケンカニ……ハラの手持ち全てがじたばたに巻き込まれ、瀕死となった。
「な、なんという事でしょう……もはやマキナ殿のドードリオを止める事はできませんな」
いつの間にか祭壇の上から退避していたハラが、絶望に満ちた表情で呟く。ちなみに俺も祭壇から退避している。
祭壇の上には、わけのわからない勢いでじたばたするドードリオだけが残された。恐らく、ドードリオ自身もわけがわかっていないであろう。
「ドードリオ、戻れ」
ドードリオは考える事を止めている。トレーナーである俺の声すらも届かない。じたばたしている。
「くっ……もはや誰もドードリオを止める事ができないのか……ッ!!」
ククイ博士が苦々しげに呟く。ポケモンの技をその身に受け、ポケモンの技を研究し続けた彼ですら、ドン引きしているのだ。
「ドードリオさん…傷だらけで暴れてて大丈夫でしょうか?」
リーリエは天使だった。
重い沈黙とドードリオがじたばたする音だけが支配する空気の中、延々とじたばたするドードリオを真顔で見ていたミヅキが、不意に上空を指差した。彼女の指し示す先には……
「あれは……カプ・コケコ!!」
「カプウゥゥウウコッコ!!」
その勇ましき鳴き声と共に、裁きの雷霆が祭壇に放たれる。
黒煙をあげる祭壇の上では、電撃に灼き尽くされた焼き鳥が気絶していた。
リリィタウンの安寧は、島の守り神によって取り戻された。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
先日、無事にかくとうZを得た俺は、リゾートで休息を取っていた。やはり、一日中歩き回っていると、疲れが蓄積するものである。何をする気にもならなかった俺は、おねむのアロフォーネと並んで、惰眠を貪っていた。
そんな、怠惰の限りを尽くしていた俺を叩き起こすかのように、ポケモンマルチナビが着信音を鳴らす。こっちにメールが入ってくるなんて珍しいな……誰だ?
とりあえずナビを起動してみると、なんとあのミヅキちゃんからメールが届いていた。
From:ミヅキ
To:マキナ
Sub:繧上◆縺励?∵ー励↓縺ェ繧翫∪縺
繧「繝ュ繝シ繝ゥ縲√?繧ュ繝翫&繧薙?ゅΑ繝?く縺ァ縺吶?
繧ッ繧ッ繧、蜊壼」ォ縺九i縲√?繧ュ繝翫&繧薙?豐「螻ア縺ョ繝昴こ繝「繝ウ蜈ア縺ォ縲∝、ァ縺阪↑繝ェ繧セ繝シ繝医↓菴上s縺ァ縺?k縺ィ閨槭″縺セ縺励◆縲ゅ→縺ヲ繧よー励↓縺ェ縺」縺溘?縺ァ縲∽ク?蠎ヲ隕九↓陦後▲縺ヲ繧り憶縺?〒縺吶°?溘〒縺阪l縺ー縲√Μ繝シ繝ェ繧ィ縺。繧?s繧ゆク?邱偵↓騾」繧後※陦後″縺溘>縺ァ縺吶?
日本語でおk。ガッツリ文字化けしてますね。ミヅキちゃんマジミヅキちゃん。
文字化けとか久しぶりに見たわ。図鑑ロトムから送ってきたのだろうか?ゲームじゃメール機能なんて付いてなかったが、これじゃ有っても無くても一緒だな。凄まじい死に機能である。
何を伝えたかったのか全くわからなかったので、直接ミヅキちゃんの家まで向かうことにした。休日なんて無かった。
呼び鈴を鳴らすと、額にサングラスを差し、長い髪をポンパドールにした女性が出てきた。
「アローラ……って、あらっ?マキナくんじゃない!!」
女性……というかミヅキの母親は、俺を見るなり興奮した様子でキャッキャと騒ぎ始めた。
「いつもテレビで見てるわよ〜。マキナくん凄くポケモンバトルが強いわね!!あのシンオウチャンピオンとの戦いも見てたわよ〜?あの時はまだカントー地方に居たんだけどね、もーミヅキもテレビに釘付けだったわよ!!今でも、あの子はマキナくんの試合中継を楽しみにしてるのよ〜。あ、そうそう。ミヅキやハウくんと一緒に島巡りを始めたんでしょ?その歳になっても一所懸命になれるって、凄い事だと思うわ〜。…そうだった!!いつもミヅキにマキナくんのサインを貰ってきてって頼んでるのに、あの子シャイだからいつまでたっても貰って来てくれないのよ。良かったら、マキナくんのサイン貰えないかしら?色紙なんて持ってないからこのシャツに書いて欲しいんだけど、書けるかしら?あっ、ペンがないと書けないわね、今持ってくるから!!……ミヅキ〜!!本物のマキナくんが来ちゃった〜!!あら、リーリエちゃんも来てたの?ほら、二人とも!!本物のマキナくんよ!!立って立って!!」
えぇ……これ本当にミヅキちゃんのお母さん?似ても似つかないくらいマシンガントーカーなんだけど。遺伝子仕事しろ。
それにしても、リーリエが来ているのか。ミヅキちゃんの家でリーリエが遊んでいるとか、二人とも原作をはるかに上回るスピードで仲良くなってませんかね?タマリマセンワー。
サインペンを携えたミヅキのお母さんと共に、
ミヅキちゃん飽きるの早スギィ!!もう染め戻したんかい!!どんだけフリーダムなんや君は!!
「こんにちは、マキナさん。ミヅキさんのメールに返信が来なかったから、少し心配してましたよ」
リーリエがそんな事を言うと、追従するようにミヅキが頷く。
「いや、メールを貰ったみたいなんだが、文字化けしていて全く読めなかったんだ」
俺がポケモンマルチナビを見せると、リーリエは、そう言うことですか…と納得してくれたようだ。
「わざわざ確認しに来てくれたのですね。すみませんでした。スマホとかで聞くべきでした……あ、マキナさんの連絡先をまだ知りませんでしたね。この機会に交換しましょう」
はい、今日は俺の人生における絶頂期確定ですね。サンキューミヅキちゃん。サンキュー図鑑ロトム。お前ら愛してるで。
言うまでもなく登録名は大天使リーリエである。
「マキナくん、私とも連絡先交換しましょ!!見て、ミヅキ、お母さん有名人の電話番号貰っちゃった!!これで私も有名人ね〜」
大丈夫ですよお母さん。近い将来に、あなたの娘さんの方が有名人になりますから。逆に俺がミヅキちゃんのサインを貰っておきたいくらいです。
「……ところでミヅキ、メールの内容は何だったんだ?」
ミヅキに確認をしてみたところ、何故かリーリエが俺の問いに答えた。
「その、ククイ博士から『マキナくんは凄く大きなリゾートで、たくさんのポケモンに囲まれながら生活しているらしいんだぜ!!』…という話を聞きまして、興味を持ったミヅキさんが見に行きたいって。それを伝える内容のメールを、ミヅキさんが送ったんですよ」
大天使リーリエよ、それは
「へ〜凄いわね!!それは是非とも遊んでこなきゃ!!マキナくん、申し訳ないけどミヅキとリーリエちゃんを頼んだわね〜。せっかくリゾートへ行くんだから、二人とも泊まってきたら〜?ちょうど、ハウくんの特訓が終わるまで、ミヅキたちはする事がないんでしょ?もしかしたら、マキナくんにポケモンバトルのコツを教えて貰えるかもしれないわね!!あ、リーリエちゃんもお泊りの準備しないといけないわね!!」
「あ、あの……ミヅキさんのお母様……?」
「大丈夫よ、ミヅキが島巡りで服を汚しても良いようにたくさん服を買ってるから、遠慮せずに借りてって!!リーリエちゃんの方が身長高いから、ちょっとサイズが合わないかもしれないけど、ゆったりとした服なら多分大丈夫ね!!リーリエちゃんなら何着ても似合うわよ〜。あ、都合の良い事に新品の水着が二着あるわよ!!せっかくのリゾートなら海で遊ばなきゃ勿体ないわ〜!!マキナくん、もし良かったら二人の写真を撮ってきてくれないかしら?あ、これカメラね。こんな機会ないから、二人が楽しんでる写真を撮っちゃって!!撮ってきてくれたら、マキナくんの分も記念に現像してあげるわよ〜!!」
これもうミヅキちゃんのお母さんに足向けて寝れねぇな。人妻は神。はっきりわかんだね。
シロナ「なんだかどこかで、あたしのガブリアスのりゅうのまいを馬鹿にされた気が……」