割烹着の悪魔な隣人さん。   作:イリヤスフィール親衛隊

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な に が あ っ た !?

なんか評価増えてるし!お気に入りも増えてるし!
……思わずスクショしちゃいました!

ありがとうございます!(建前)
もっとやれぇ!(本音)

と、はしゃぐのはここまでにしておいて。なんというか本当に色々とありがとうございます!このような不定期更新の拙作ですが、これからもよろしくしていただければ幸いです!



④いそうろう

 

 

 

正義に博愛などない。

 

救済とは即ち選択。

 

だれを救い、だれを救わないかだ。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

その後の蛇足というか、蛇足と呼ぶにはあまりにも突飛な話だという自覚はあるのだが。結論から言えば、家に居候ができた。

 

「あの、助けていただいてありがとうございました」

 

ぺこりと丁寧に頭を下げた少女は、これ以上ご迷惑をおかけしたくないので。そう言って立ち上がった。

 

しかし、その瞳は揺れていた。本当はまだ甘えていたい。不安気に揺れる少女の瞳が、言外にそう語っていることに気づいてしまった。普段は他人の機微に疎いとまで言われているというのに、この時ばかりはできすぎているまでに察しが良かった。

 

なにも話してくれない少女だ。正直、関わっていいものかもわからない。

 

…………いや、自分は初対面の相手に一体なにを求めているのだ。なにかを抱えていようがそうでなかろうが、目の前の少女が困っていることに変わりはないだろう。

 

立ち上がった少女の手を掴み、痛くない程度の力で引っ張った。

 

きゃッ!突然のことで驚いたのか、可愛らしい悲鳴を小さく上げた少女は、ぽすんっと再び布団の上に座ることになった。

 

真正面から顔を合わせてやれば、少女の琥珀色の瞳と視線がぶつかる。

 

―――行く宛てがないんなら……

 

しばらくはここに居ればいい。

 

困っている人間を放っておくことなんてできない。これは最早性分。友人たちをして病気だと言わしめたお人好し度合いのなせる技である。

 

なんて、言ってみたところで、自分から面倒を抱えているだけ、もしかすると少女にとってはお節介甚だしいのかもしれない。

 

内心で少し不安になってみたところで、こちらの言動に目を見開いていた少女はなにも言わず、困ったような、でも、それでいてどこか嬉しそうでもある複雑な想いを表情にしながらも、こくりと首を縦に振って頷いた。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

「兄さん?」

 

どうかしたんですか?と鍋の火を止め、可愛らしく小首を傾げてこちらを見上げてくる少女に、苦笑いでなんでもないと返し、手に握っていた包丁を一度まな板の上に置いた。

 

危ない危ない。どうやら台所に立ったまま考え事をしていたようだ。件の少女、美遊ちゃんが家に居候することになってから早くも三日の時が流れていた。

 

美遊ちゃんの中でどのような経緯があって、この「兄さん」という呼び方が定着したのかは定かではないが、呼ばれてみて存外に悪い気分はしないというもの。

 

独りが長かったためか考えたこともなかったが、ひとりっ子が弟や妹を欲しがる理由がなんとなくわかった気がした。

 

誰かとキッチンに立ち、肩を並べて料理をしたのなんて一体いつ以来だろうか。

 

家に自分以外の誰かが居るという事実だけで、孤独で冷たかった家という居場所に温かさを覚えてしまう。

 

それにしても不思議でならないのは、美遊ちゃんとはまだ会って間もないというのに、どうしてか他人の気がしないということである。

 

思えば、最初からそうだった。……どこかで会ったことがあるのか。もしかしたら忘れているだけなのではないか…………。

 

なにかがひっかかり、内心でもやもやとしていたところに背後から声がかかった。

 

「いやぁ、こうしていると本当に兄妹みたいですねぇ?」

 

「……」

 

その言葉を受けて、なにか思うところがあったのか、曖昧な表情でぷいっとそっぽを向いた美遊ちゃんを横目に、声の主へと振り向けば、そこにはニヤニヤという擬音が聴こえてきそうな笑みを貼りつけてこちらを眺めている女性、最近はなにかと夕飯を共にする機会が多くなった琥珀さんが。

 

美遊ちゃんを居候させるまでは良かったのだが、そこに問題がないわけではなかった。いや、まあ、問題は数えれば切りはないのだが、今考えるべき一番としては、自分が学生の身分であるということである。

 

つまり、平日の昼間は嫌が応にも家を空けなければならない。その上、アルバイトにも入れば、必然的に遅い時間帯まで美遊ちゃんを家にひとりにしてしまうということだ。

 

その間、美遊ちゃんの面倒を見てくれる人が必要になってくる。色々と考えた結果として、やはり隣人である琥珀さんが筆頭の候補に上がった。

 

詳しくは知らないが、彼女は在宅業務をしているとかで基本的には一日中家にいるのだと以前そんなことを漏らしていたことを思い出したのだ。

 

琥珀さんには、親戚の娘をしばらくの間だけ預かることになったとだけ伝えているが、正直どこまで信じてくれたかはわかったものではない。

 

自分の身の上話をやたらと大っぴらにしたことはないが、そういったことを機敏に察知する人なのだこの人は。弁えているというか、巧みなまでに一定のラインを越えて踏み込んで来ない。もしらしたら、天涯孤独で親戚もまともにいないことを薄々感づかれている可能性もある。

 

…………考えすぎだろうか。まあ、とにもかくにも、美遊ちゃんのことは快く引き受けてくれたのだから良しとしよう。琥珀さんが快諾する時に見せたどこか含みのある笑顔は忘れることにするとしよう。

 

美遊ちゃんはなぜか琥珀さんを警戒している節があるが、そこは琥珀さんが余裕たっぷりの大人らしい器量で受け流す……なんてことはなく、いっそのことわざとらしいくらいに煽ること煽ること。

 

琥珀さんから散々にからかわれた美遊ちゃんが疲れ果てて抵抗を諦めるまでが一連の流れ。幸い険悪な仲とまではいっていないようだが、どうやらこの二人は中々に噛み合わないようである。

 

このままでは美遊ちゃんのストレスが溜まる一方だ。これはなにか解消の策を講じるべきか。たとえば、同年代くらいであろうイリヤちゃんと引き合わせてみるとか……。だが、そうすると、セラさんを介さなければならないわけで…………。

 

おそらくというか、確実に、セラさんには琥珀さん相手に使った言い分が通用しないだろう。かといって設定をころころ変えてしまっていてはどこから綻んでしまうかわかったものではない。

 

「兄さん……」

 

呼ばれてはっと我に帰れば、こちらを心配するような視線を送る美遊ちゃんが。いかんいかん。さっきのいまでまたもやぼうっとしてしまっていたようだ。手を洗っていた水を止め、ハンドタオルで水気をとる。

 

「……」

 

疲れてるんですか?大丈夫ですか?本当に大丈夫ですか?と物言わずとも雄弁な美遊ちゃんの視線が突き刺さる。

 

うん。大丈夫だから。本当に大丈夫だから。なんでもないから。そういう意味も込めて美遊ちゃんの頭にぽんっと手を置き、さらさらと手触りの良い髪を梳くように優しく撫でた。

 

んぅ……。と小さく声を漏らして気持ち良さそうに目を細める美遊ちゃんを微笑ましく見つめる。

 

「あの……わたしのこと忘れてませんかぁ?なにを二人だけの空間つくってイチャイチャしてるんですかねぇ?」

 

こっちはお腹空いてるんですがぁ。と机を軽く叩きながら抗議の声をあげたのは琥珀さんである。

 

「ぁ……」

 

言われて撫でていた手を離せば、どこか物足りなさそうな、残念そうな声を漏らす美遊ちゃん。そして、水を差したなとばかりに琥珀さんをジト目で睨む。

 

「なんですか?そんなにイチャイチャを邪魔されたことにご立腹ですかぁ?」

 

「……イチャイチャなんてしてません」

 

「なら、なにをそんなに怒ってるんですかぁ?」

 

「……怒ってません」

 

えぇ~ほんとですかぁ?ニヤニヤと首を傾げる琥珀さんに美遊ちゃんは閉口する。短いつき合いながら、琥珀さん相手には口を開いた時点で負けなのだと理解したようだ。

 

「むっ……」

 

思っていたような反応が返ってこないことに、琥珀さんはつまらなそうに口を尖らせる。子供っぽい仕草であるが、琥珀さんがやるとなにやら様になるというか、とても似合っていた。

 

 

 

…………

 

 

 

『一度、手繰り寄せた運命ですから。決して、決して、あなたからは手放すことがないように…………ねぇ?』

 

聞き覚えのある声がした。彼女の顔には笑みが貼りついていたが、目は笑っていなかった。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

『本来なら交わらなかった運命が、複雑に、絡み合い、溶け合い、混じり合って、誰も予想し得ない結末まで辿り着く…………。クフフ、アハハッ、いやぁ……』 

 

―――ワクワクしますねぇ?

 

 

 






あれもこれも大体全部カレイドルビーってやつの仕業なんだ!!

多少の無理矢理感があっても、とりあえずルビーちゃんのせいということにしておけば納得させられる気がするんだ……。個人的にルビーちゃんやマーリンお兄さん辺りはそういう立ち位置に置きやすいと思う。


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