姫と守護者の物語   作:寅祐

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進みが良くないなー、もう少しテンポアップした方がいいんでしょうか?見辛いかもしれませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。


第2話

 「ごめんね、私はあなたを殺さなくちゃいけないの」

 

 

 これはあの時の夢だろう。あの人が話しかけてくれる。

 

 

 「せめてあなたの名前を教えてくれる?」

 

 

 答えられない。僕には名前なんてものはないのだから。

 

 

 「そう、答えられないか。ごめんね」

 

 

 そう言うとあの人は、背中から銀色の槍を取り出し、僕に向かって槍を構えた。その姿は敵なのにとても美しく神々しかった。

 

 

 「僕はさ……なんのために生きてたのかな?」

 

 

 僕は気づいたらそんなことを口にしていた。ほとんど無意識だった。するとあの人は構えていた槍をしまい始めた。

 

 

 「僕のこと殺さないの?」

 

 

 するとあの人は、僕のところまで目線を合わせて、笑みを浮かべて僕の頭をなで始めた。

 

 

 「殺したよ。昔のあなたは、これからはあなたに、色々な人やものや世界に出会わせてあげる。そして新しく生まれ変わったあなたに私が、生きてる意味を教えてあげる。もしそれでも生きてる意味が見つからなかったらまた殺してあげる」

 

 

 そう言うとあの人は僕の手をひきはじめた。僕は抵抗する気は全くなくあの人に手をひかれるまま歩き出した。

 

 

 「そうだ。昔のあなたはもう死んだんだし新しい名前を考えないとね。うーん……そうだ優くんなんてどうかな? 我ながらいいわね。決定です。よろしくね、優くん」

 

 

 「ユ……ウ?」

 

 

 「そうあなたの名前だよ。優しく育って欲しいなって、うーん親が子供に名前を決めるのはこんな気持ちなんだー。じゃあ私はあなたの名前の名付け親だからあなたのお母さんだね。これからよろしくね、優くん」

 

 

 そう言うとあの人は今まで僕が見たこともない美しい笑顔で僕に微笑みかけてくれた。そう、この時、僕は優に生まれ変わった。

 

 

 

 

 「大丈夫ですか、冬坂さん?」

 

 

 目の前には優の護衛対象である姫柊雪菜がいた。宿泊先であるホテルで寝てしまっていたのだろう。しかしなぜ雪菜がこの部屋にいるのか、雪菜とは別々の部屋を取っていたはずだったのだが、それになぜか雪菜が優の頭をなでている。

 

 

 「どうしてここにいるの、雪菜ちゃん? もしかして隣の部屋に俺がいると落ち着いて寝られないか、それだったら外で寝るけど? それと俺の頭をなでてるのは、なんか関係があるのかな?」

 

 

 「いえ、そんなことはありません、今日のことを謝りに来たのですが、そうしたら冬坂さんが寝ておられたので明日、謝ろうと思ったのですが、そうしたら冬坂さんが涙を流されていたのでつい頭をなでててしまっていました。気分を害されたのでしたら本当に申し訳ありません」

 

 

 優は驚いて自分の目元を手で拭ったら確かに涙が流れていた。すると優は笑いだした。

 

 

 「いやーごめん、ごめん、心配かけちゃったみたいだね。それで謝りたいことってなに?」

 

 

 「今日のことです。私のせいで第四真祖との接触もうまくいかず、それによりにもよって財布を落として冬坂さんにホテル代と夕ご飯のお金をお借りするはめになってしまい、本当に申し訳ありません」

 

 

 雪菜は本当に申し訳無いと思ってるのだろう。とても綺麗な土下座で謝罪していた。

 

 

 「そんなこと気にしなくていいよ。第四真祖の接触だってまだチャンスはあるよ。それにもしかしたら第四真祖は別人かもしれないしそれに、第四真祖は本当に都市伝説の存在かもしれない」

 

 

 すると雪菜は一瞬で雰囲気が変わり優の事を見つめ始めた。

 

 

 「まだ、何か話しておくことがあるかい。雪菜ちゃん?」

 

 

 「はい、あなたは一体何者ですか、冬坂さん、あなたのことは三聖からお聞きしました。敵にすると、とても厄介だと、しかし今までのことから考えても三聖の方々が恐れている人とはとても思えません。それに今日もそうですが、冬坂さん、あなた第四真祖を庇っていませんか? あなたは本当に何者何ですか?」

 

 

 「うーん、何者と言われても、冬坂優、獅子王機関に雇われ姫柊雪菜の護衛を任された者だよ。それと俺は雪菜ちゃんの上司である三聖に恐れられるのもおこがましい者だよ。それと第四真祖を庇うなんてとんでもない。俺は雪菜ちゃんの味方だよ。まあ信じろだなんて言わないけど、だから雪菜ちゃんは俺のことは盾ぐらいに思っていてくれればいいよ」

 

 

 そう言うと優は玄関の方に向かい歩き始めた。

 

 

 「どこに行かれるんですか?」

 

 

 「少し、散歩してくるね。雪菜ちゃんも明日学校行くんでしょ。早く寝なよ」

 

 

 優はドアを閉め部屋に残されたのは雪菜だけになっていた。雪菜は自分の部屋に戻ろうとした時、机の上に伏せられた写真が置いてあった。雪菜は見てはいけないと罪悪感はあったが好奇心が勝ってしまいつい見てしまった。

 

 

 「この写真は……」

 

 

 その写真は小さき頃の自分と冬坂優が仲むつましくしている写真であった。

 

 

 

 

 

 

 

 優は自分の行動に驚いていた。

 

 

 「まさか、飛び出しちゃうなんてね。それにしても、まさかあんな夢を見るなんて、それに俺が涙なんて流すなんて本当にどうにかなっちゃたかな。俺も」

 

 

 優は上着のポケットに手を突っ込んだ。しかし、そこに入っていると思った物がなかった。

 

 

「まずい、気が動転して写真を置きっ放しにして忘れるなんて、雪菜ちゃんにだけは見てないといいけど」

 

 

 優は急いで自分の部屋に戻ったがその部屋には雪菜はおらず、机にあるはずの写真はなくなっていた。

 

 

 「これは見られたかな……」

 

 

 優はそのまま部屋を立ち去り、夜の街並みに消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 雪菜が目を覚まし、周りを見渡しても彼は帰って来なかった。雪菜はあの写真を見てどうしてもあの写真のことを聞きたくて、彼が帰ってくるのを待っていたのだが、いつのまにか寝てしまっていたようだ。しかし雪菜にはあの写真を見てもその頃の記憶が一切なく、そして一番の疑問が写真に写っていた冬坂優である。今のように白髪ではなく、写真では黒髪、瞳は今のような綺麗な空色の瞳が写真では黒色のまるで日本人のような人物である。そして雪菜が見る限り小学校低学年に見える、そのためこの写真は六、七年前に撮られた写真なのに冬坂優は今と髪と瞳の色以外何も変わっていないのである。

 

 

 「本当にあなたは何者なんですか、冬坂さん」

 

 

 疑問ばかり残りながらも雪菜は第四真祖の通っている彩海学園に編入手続きをしに行くのだ。夏休みあけから雪菜も彩海学園の中等部に通うことになっているのだ。冬坂さんもその頃には帰ってくるだろうと思い雪菜は学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 優は雪菜と第四真祖である暁古城がハンバーガーショップに入るのを遠くから見送っていた。優は結局ホテルには戻らず近くの公園のベンチで寝た。朝に弱い優だが雪菜の護衛はまだ続いているため眠気と戦いながら雪菜を今日は気づかれないように遠くから護衛し続けている。すると優の周りに烏が飛び回っていた。

 

 

 「今のところ大丈夫かな? それよりも何の用だ」

 

 

 優が自分の上を飛んでいる烏に声をかけると烏が優の肩に降り立った。するとその烏が老人のような声で烏が話し始めた。

 

 

 「どうだ? 順調か、護衛の任務は」

 

 

 「よく言うよ。写真を雪菜に見せたのはお前だろ。あの写真をもらったのはお前からだし、それにお前だったら俺を出し抜くのも造作もないだろ。仕事の前に決めた約束をまさか忘れたのか」

 

 

 すると優の周りから魔力が集まり始めた。すると烏は笑い出し優を見つめる。

 

 

 「落ち着け、写真の件に関してはすまなかったな、約束は忘れていないさ、その方があの娘にもお前にも意味があると思ってやったことだ。しかし第四真祖とあの娘が距離が少し縮まってくれてよかったよ」

 

 

 「そうだな、お前からしたら雪菜と第四真祖が近づかないと計画が進まないしな。だがもし約束を犯すことをして、もし雪菜にこれ以上の害が出ると分かったら第四真祖もお前らも、雪菜の害になるもの全て俺が殺す」

 

 

 優の雰囲気が一瞬にして変わり今の言葉は冗談ではないことを告げている。すると烏はゆっくりと語り始めた。

 

 

 「そうか……だからこそお前にこの仕事を頼んだ。あの娘がいればお前はむやみやたらに動けない、そしてあの子のためならお前は鬼でも修羅にでもなる。だからせいぜい彼女を守り続けるんだな、それが我々のためそしてお前のためになる」

 

 

 すると烏の姿は解け、一枚の紙となりふわりと風に乗って舞い上がっていった。すると優はため息をつきながら遠くから雪菜の護衛を続ける。

 

 

 「雪菜の害になるもの全てを殺すか……なら俺が一番最初に殺されなくちゃいけないのかもな」

 

 

 その言葉は誰にも聞こえていない、そしてこの言葉の意味を知る必要はない、そして雪菜の知っている冬坂優に今、戻らなくてはいけない。

 

 

 「さーて、雪菜ちゃんに写真のことどうやって説明しようかな」

 

 

 するといつもの笑みを浮かべて雪菜と第四真祖のいるハンバーガーショップに向かって入って行く、その姿はとても獅子王機関の三聖が恐れるほどの人物とはとても思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




優くんの情報が少しずつ出てきましたね。これから優くん活躍させて行きたいですね。そして今回とても書いてて難しかったです。もし感想などありましたら是非お待ちしています。第三話は一週間以内にできたらいいなと思ってます。お読みいただき本当にありがとうございました。

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