プロローグなので少し短めです。
神社境内で少女は無言で広い拝殿の中央に座っている。まだ幼さは残しているが、綺麗な顔立ちの娘である。そんな彼女は静かに待ち人を待ち続けていた。
数時間前
「第四真祖という言葉に聞き覚えはありますか?」
獅子王機関に仕える少女である姫柊雪菜は自分の目の前にいる獅子王機関の実権を握っている三聖の質問に困惑していた。
「噂程度には……」
「一切の血族同胞を持たない、唯一孤高にして最高の吸血鬼です」
「しかし第四真祖は都市伝説の類だと聞いています」
雪菜の言葉に三聖の一人が首を振りながら雪菜の手元に1枚の写真を飛ばす。その写真の人物は高校の制服を着ていて友達となか良さげに喋っている一人の男子生徒が写っていた。
「この写真は?」
「暁古城というのが彼の名前です。知っていますか?」
「いいえ」
雪菜は正直に首を振る。実際、初めて目にする顔だった。
「その人物が第四真祖だと確認が取れていませんが確かでしょう。そしてあなたにはこの第四真祖の監視役の任に就いてもらいます。」
「私が第四真祖の監視役を?」
「ええ。そして、もしあなたが監視対象を危険な存在だと判断した場合、全力を持ってこれを抹殺してください」
「抹殺……」
雪菜は動揺して言葉を失った。そして三聖は雪菜に一振りの銀の槍を渡した。その槍は雪菜も名前は知っていた。
「これは……」
「七式突撃降魔機槍『シュネーヴァルツァー』です。銘は雪霞狼」
知ってますね、という三聖の問いかけに、雪菜は頼りなくうなづいた。世界に三本しかない獅子王機関の秘奥兵器である。
「これを……私に?」
差し出された槍をおもむろに受け取りながら、雪菜は信じられないという表情で訊いた。そして三聖は重苦しいげに息を吐く。
「しかしこれだけでは一国の軍隊に匹敵する戦闘力を持つ第四真祖相手では少し心もとないでしょう。その為に今回あなたの護衛をある人物に頼みました」
「護衛ですか?」
「はい、腕は確かです。行動に多少の問題はありますがもしも第四真祖を抹殺する場合、彼は大きな力になってくれるでしょう。しかし手綱はしっかり引いておきなさい、彼がもし敵になったらとても厄介です」
雪菜は絶句した。真祖と戦える、そして実力者である三聖にそこまで言わせる人物、そんな人物に護衛をしてもらう。そして第四真祖の監視役、とても荷が重すぎる。しかし三聖は雪菜の気持ちを無視し話を進め始める。
「この任務受けてくれますね。姫柊雪菜」
「……はい」
雪菜は迷うが誰かがやらなければ、いずれ多くの人が災厄に巻き込まれるのだ。そう雪菜は自分を鼓舞し第四真祖の監視役の任を承諾した。
「改めて命じます、姫柊雪菜。あなたはこれより護衛の者と協力し全力を持って第四真祖に接近し、第四真祖の行動を監視するように。彩海学園への転入手続きは、すでに済ませておきました。護衛の者が来るまでここで待っていなさい。以上」
一方的に言い残して三聖の気配が消えた。そしてそれから何時間も待っているのだが護衛の人間が来る気配がいっこうにしない、太陽が西に傾きかけた頃に遠くから走って来る人物が見えて来た。歳は雪菜よりも二つか三つぐらい上に見える、髪の毛は真っ白で瞳の色は空色で顔はイケメンと言われる顔だろう真夏の今日に長袖長ズボンという変わったファッションでこちらにやって来たその人物はとても三聖が厄介だと敵にまわしたくないと思わせる人物とは雪菜にはとても思えなかった。
「こんにちは君が姫柊雪菜さんだよね。ごめんねー寝坊しちゃって、君の護衛の任務を任された冬坂優です。これからよろしくね、姫柊さん」
冬坂優と名乗ったその人物はとても遅れて来たことを悪びれもせず少年のような笑顔で挨拶をした。雪菜はこれからの事を思うとため息をつかずにはいられなかった。
読んでいただき本当にありがとうございます。ここの文章おかしくない?などの感想や一言だけでも作者がとても励みになります。感想お待ちしています。次話は一週間以内に更新できたらなと思っています。これからも姫と守護者をよろしくお願いします。