おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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ヤーナム実装時に全ての狩人に送られたプレゼント武器
神器級に匹敵するまで強化可能
なお強化するのは神器並みにレアなアイテムが必要
アンゲリカの場合はただひたすらに早く、鋭く強化
技量を上げて、物理で殴れ

狩人の灯火
獣狩りの狩人のみが非戦闘状態で使用可能
どこからでも狩人の夢に戻ることができる
破壊不能・配置した狩人以外には見えない

狩人の夢
獣狩りの狩人にプレゼントされた隠し家



アンゲリカの仕込み杖

アンゲリカが獣狩りに用いる、工房の「仕掛け武器」の1つ
 
刃を仕込んだ硬質の杖は、そのままで十分に武器として機能するが
仕掛けにより刃は分かれ、まるで鞭のように振るうこともできる
 
武器を杖に擬し、獣に対するに鞭を振るう様は、様式美の類である
それは、自ら獣狩りの血に飲まれまいとする意思だったのだろうか

工房の量産品だが、幾千幾万の獣の血を吸った事により
尋常ならざるものすら切り裂く
狩人と同様、武器もまた血によってその本質を変えていくのだ


アンゲリカの獣狩りの短銃
アンゲリカが獣狩りに用いる、工房製の銃
 
獣狩りの銃は特別製で、水銀に自らの血を混ぜ
これを弾丸とすることで、獣への威力を確保している
 
また、短銃は散弾銃に比べ素早い射撃が可能なため
迎撃などに適する

工房の量産品だが、幾千幾万の血の弾丸を放った事により
尋常ならざるものすら打ち砕く
狩人と同様、武器もまた血によってその本質を変えていくのだ

要するに最大限強化した初期装備。


Hunt 6 Tutorial

杖と筒をこちらに向け、油断なく伺いながらこちらへと女性が歩いてくる。

なりは人間だろう、だがその本性は?

一応助けてはくれた、だがこの異常な街で正常な人間がこうも都合良く現れるものだろうか?

そんな緊迫した空気の中でラキュースが発言する。

「ご助力感謝いたします、私の名はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ、この蒼の薔薇でリーダーをやっております」

と礼儀正しく応対し実に綺麗なお辞儀を返す。

 

「そしてこちらがガガーラン、そこにいる二人がティナとティア。

あの仮面の魔術師がイビルアイです」

 

「イビルアイ<邪眼>?ふぅん?

私はアンゲリカ・ブリューティヒ・ダ・カインハースト

”カインハーストの血族に連なる、血より生まれたる天使”

コンゴトモヨロシク」

 

ラキュースの長い名前に対抗してちょこっとカインハーストの名前を入れるのであった。

お前はいつの間に悪魔召喚されたんだ。

更にあからさまに英語名のストレートな厨二病がアンゲリカの何かをくすぐる。

「うーん、シンプルに”A”とだけ名乗った方が良かったかな?」

いや、それだけではない。

(ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラって名前長!

貴族!?貴族ロール?あっちの双子も双子でニンジャってことは60以上?

あの戦士は匂いからすると女性?

で、ちっこいのは・・・なんだろ、なんか変な感じ)

とすごい勢いで思考の次元をグルングルン回した。

何を言っているのがわからないと思うが、一般人がいきなり現実化した悪夢に取り込まれて脳に瞳を植えつけられると常に発狂一歩手前に置かれてしまう。

要するにこれが獣狩りの狩人に課せられたデメリットの最たる物

スキル:高まりし啓蒙 が現実化したことによって発動するバッドステータス

発狂:Lv1の前兆である。

ちなみに発狂するとレベルに応じて敵味方無差別攻撃し始めたり、獣になって超位神秘を撒き散らした挙句即死したりする。

狩人は巨大な不発弾、自爆・誘爆ご用心。

これがレベルダウンなしにリスポーンできるにも関わらず

種族:上位者

職業:獣狩りの狩人が不人気だった理由でもある。

ヤーナムで人間種のみがへその緒をゴニョゴニョするとなれる種族だったが・・・

だが頭の中が残念とはいえ、蒼の薔薇にとっては目の前にいるのは圧倒的な力を持った存在である。

下手に気分を害してその刃をこっちに向けられては堪ったものではない。

「まぁ、いいわ。それより貴方達レベルはいくつなわけ?

いくらチュートリアルと雖も新顔がガイドなしじゃきついんじゃない?

もしかしてもう血の洗礼は済ませたの?

もう”悪夢に囚われた”んなら死にゲー上等で来たのもわかるけど・・」

 

全く知らない単語がポンポン出てきて

混乱する蒼の薔薇の面々

 

「いえ、私達はこの都市に調査に来た他の冒険者チームの捜索と探索に来たのですが・・・・」

 

チラと向こう側に晒されているミスリル冒険者チームの遺骸を見てこう応答する。

「もしかして・・・・あの人達?そう・・・死んでるわね・・・」

磔にされて膾切りにされ、ついでに炎にくべられているあの状況で生きているはずも無し。

(おかしい・・・この街で輸血され悪夢に囚われたのなら”死んでもペナルティ無し”になるはず・・プレイヤーなら誰でも・・・)

とそこまで思って口に出す。

「貴方達・・・もしかして輸血されてないの?

あのヤブ医者に輸血されて、悪夢を見たはずよね?」

の言葉に青の薔薇全員が輸血?という言葉すら知らなかった。

「イビルアイ、“ユケツ”って何か知っている?」

ラキュースはイビルアイにまた飛び出た知らない単語について尋ねるが

「いや、全く知らん。医者というからには医療の何かだと思うが?」

 

輸血が人から人へ行われたのは19世紀、血液型が発見されたのはようやく20世紀、血液抗凝固剤が発明され輸血袋が使われたのは1910年。

ヴィクトリア朝をイメージしたヤーナムでの最新の科学治療を中世ファンタジー風世界の彼らが知るはずもない。

遥かに衛生的で面倒の少ないポーションとか回復魔法とかあるので科学は不必要かもしれないが。

 

「?輸血をされてから入ったわけじゃない?

じゃぁ貴方達は悪夢に囚われてるわけじゃない?

どういうことなの?」

 

ウンウンと唸りながら考え込んでしまうが

しばらく考えて、突然キン!と鞭から杖へと形態を特に意味なく変形させると

ティア、ティナ、、ガガーランにイビルアイもビクッとする。

ラキュースは変形する仕込み杖という実に厨二病をくすぐる武器をメモしている。

「まっ、いいわ。ここで考えてても仕方ない。

とりあえず、話は後で聞くとして“ヤーナムのセーフハウス”に行かないことには何も始まらないしね」

 

そういうと踵を返して歩き始める

「ついて来て、質問は安全な場所で受け付けるから」

見知らぬ黒衣の狩人についてくるよう言われた面々は顔を見合わせる。

「どうするリーダー?知らない人についてったら駄目、ただし美形を除く」

そう言いつつもホイホイとついていこうとする同性愛者のティア。

アンゲリカの美貌は中身は残念だが、彼女を引きつけるなら十分な餌だった。

歩き出したアンゲリカのお尻を見つめながらホイホイついていくティアに頭を抱えながらもチームで一番の常識人のガガーランが提言するには。

「ま、外に出ようにもあてはないし。

助けてもらっておいて、罠にかけるってことは無いだろ。

ここでこうしてても何も始まらんのは確かなんだから、とりあえず警戒しながらついてきゃいいんじゃ無いか?」

 

「そうだな、他にあてはないしあの狩人の後ろがここでは一番安全みたいだな」

イビルアイも賛成し、一同はついていくことにした。

 

「そう!やっぱり皆わかってるわよね。あの人はいい人よ!あんなかっこい

んだからきっと良い人よ、うん」

 

 

 

・・・・・・・・・・

外からでは壮麗な都市の摩天楼、華麗な寺院も獣狩りの夜にあっては陰気で覆いかぶさるような圧迫感を齎している。

(アメンボはまだ見えないなぁ・・・)

啓蒙が低いためかアメンドーズは見えない。

もっとも、鐘を鳴らしたとして過疎が凄まじいユグドラシルの他のプレイヤーで更に鐘を鳴らしている者など殆どいないだろうから啓蒙をこれ以上消費する可能性は低い。

いざとなったらアイテムボックスに山ほど積んである叡者の知恵を使えば良い。

自分が脳に瞳を持っているかどうかはイマイチよくわからない。

確かにヘソを使ったが・・・それはゲーム内での事。

自分の種族が上位者なのは確かだが、イマイチ実感もわかない。

(幼年期はまだ始まったばかりって事?)

 

チュートリアルで街の中を進む一行に襲いかかってくる群衆を鞭で切り倒しながら考えるがゲームは所詮ゲームだった。

今の現実化した悪夢とでは何もかも桁違い。

血の匂いも、流れ出す腑の悪臭も全て忌まわしく芳しい事よ。

Lv10の最大限まで強化された仕込み杖はアンゲリカの高い技量もあって群衆を容赦無く細切れにしていく。

時々群衆に混じっている獣人は確かに素早いが所詮は群衆に比べての話でありまっすぐに向かって刃物を振るう間抜けに過ぎない。

(退屈・・・)

チュートリアルの”ヤーナム市街 街角”を抜ければ獣の狩人ならざる狩人にも使える”ヤーナムのセーフハウス”が待っている。

要するにパーティーを組むための待ち合わせ場所である。

一行はさして長いとも思えぬ道を歩いていると狩人が門の前で立ち止まった。

巨大な門、王都の大通りの表門すらこれに比べれば子供に見えるほど壮大。

そして優雅な彫金が施された金と銀の門そのものすら王室の財産全てと比べることができるだろう。

「よく聞いて、ここを抜ければ安全な場所。

でもここには強敵がいるわ」

 

強敵という言葉に5人は背中が冷える。

 

「きょ、強敵ですか!?」

ラキュースが思わず叫ぶように聞き返してしまう

「うん、今までの連中は言ってみればただの前座。

ここを抜けなきゃ安全な場所にも行けないし、そこにある外への脱出路も使えない」

 

「そんな・・・」

イビルアイも仮面の下で蒼くなったかのように震える。

今までの獣人ですら伝説級のデスナイトか・・・あるいは・・・考えたくもなかったが

それ以上の獣人すらいた。

その連中をたやすく屠る狩人の口から発せられる“強敵”という言葉。

どれだけ凄まじい敵なのか想像もつかない。

一行は知らず唾を飲み込んで聞き逃さまいとした。

皆を振り返って狩人は続ける

「いい?倒せない相手じゃない、けど見ればわかるわ。

獣狩りがどういうことか」

そういうと狩人は懐にしまってある手帳を広げ、これから相対する敵の情報を一向に見せた。

文字こそわからないが、精緻な写実の絵で恐ろしい鹿と狼と人を混ぜ合わせたような巨大なモンスターが描かれている。

「敵は”聖職者の獣”と呼ばれてる。

攻撃パターンは主に腕を使っての中距離攻撃で大振り。

弱点は炎で、頭部にダメージを与えると体勢を崩す事が確認されてた」

狩人が絵を触ると、狩人と獣が戦い始める絵が動き始めた。

「これは!?魔法のアイテム!?凄い・・・・こんな物があるなんて」

攻略動画を手帳に貼り付けてあったのが幸いした。

百聞は一見にしかず。

「うん、何度でも見て攻略方法を考えて。

でも今回は私に任せてもらう、単純に私の方が慣れてるからね」

実際問題として聖職者の獣はユグドラシルではレベル100のプレイヤーでも苦戦するようにできている。

蒼の薔薇では単純にゴリ押しで押し切られてしまうだろう。

 

 


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