おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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第39話

 

あの後、モモンガさんはやっぱこの異世界とのコンタクトやめよっかなーと、うんうん悩んだが

何事もヤってみなければわからない。

とりあえずちょこっと転移し、カルネ村にコンタクトを取った。

「グラスブ・ハート!ふむ、こいつらには普通に効くようだな。

となるとあの狩人がここいらでは特別に強いボスキャラといったところか?」

 

仮面を被り、周辺からわらわらと群がってきた雑魚兵士たちをなぎ倒しながらカルネ村に近づいていったモモンガ御一行。

それもこれも『お金あげましゅ』ことベリュース隊長が戻ってこないことに焦った他の法国の隊員がカルネ村に集まっていたところをモモンガとアルベド+セバス+シャルティアといったLv100の戦闘職で警戒しながら接近した。

哀れ、法国の下っ端。

まさに諸行無常である。

(はー、とはいえ気が向かないんだよなぁ)

この世界の住人の平均レベルがどれほどのものかは相変わらず不明だが

小さな村の用心棒(?)の人間がセバスより少し劣る程度か同程度のカンストプレイヤーならばもっと大きな町や都の衛兵はそれ以上ということも考えられる。

とはいえ、それを確認しないことには何も始まらず

これから始める冒険、さらにいえばナザリックの防衛も不安になる。

敵を知り、己を知れば百戦危うからず。

今の所は全身武装したアルベドのみが近くに侍り、他の護衛はしばらく離れたところで待機している。

「と、いうわけなのですよ」

ほぼ原作通りに村長に説明しこの世界のおおよその見当をつけたモモンガ。

このあたりはアニメ版か小説版かでよくわかるので省略。

(なるほど、普通の人間はせいぜいLv5までと言ったところか

してみるとユグドラシルの通常NPCと変わらないな)

問題はあの小柄な狩人だ。

「そういえば、この村でも戦闘があったようですが…

この辺りの事を教えてくださったお礼ですが、どうぞ…」

と言ってポーションを差し出しながら、村長にあの狩人の事を聞く

「ああ、あの兵士たちですか…我々も何が何だかわからないのですよ。

突然エモットのところのエンリちゃんがあんなノコギリを持ち出して暴れ出して…」

 

「おかげで我々の村は守られましたが、村の外の畑で働いていた男手が大勢殺されたせいでこの冬を越せるかどうか…」

「そ、そうですか」

(やばいよ、この村。村の女の子が突然スプラッター殺人を始めるって普通じゃない)

と考えながら、この村の価値を考える。

結局のところ、カルネ村をこの世界を知るためのフロント企業的ポジションに置こうと考えエンリに接触した。

今はもう、血塗れの装束を洗っている事以外は普通の女の子にしか見えない。

目がポカーンとしてレイプ目で血塗れ衣装を洗っている図はシュール。

エンリは手を洗い、武器と装束についた血を洗い流しているが心ここにあらず。

 

と、そこへ到着したガゼフだったが村を救ってくれたエンリは自分が現実世界で人殺しした事を認めたがらなかったのでモモンガに村を救ったのはモモンガだということにしてくれと頼んだ。

「すみません、私も突然、朝起きたらこうなってて…何が何だか…

大変失礼ですが、あの兵士たちをやっつけたのもあなた様ということにしてはいただけませんか…」

 

「う、うむ。君がそういうのなら…」

モモンガは少女と打ち解けようとしたが、なぜかひどく落ち込んでいたのでお近づきの印にと“ゴブリンの角笛”を渡した。

モモンガは実に低姿勢な少女の願いを聞き届けた、そしてアルベドがイラっとした。

と、いうわけで怪しい仮面に怪しい格好の魔術師のふりをしたモモンガに頭を深々と下げたガゼフがあーだこーだというやり取りの末に対峙したのはいつのまにかすっかり元気になったニグンくんでした。

『腐った脊髄、蕩けた目玉、聖者の腐臭…

ひひひひひひひひ…臭う、臭うなぁ…死者の匂いがプンプンするぞ』

すっかり元気になったニグンは相変わらず蕩けた目をしながら意味不明な独り言をブツブツつぶやき、周りの陽光聖典隊員をドン引きさせていた。

啓蒙が上がり、言動はおかしくなったがLvは上がったから問題なしというガバガバな人選である。

 

「ニグン隊長!ガゼフが来ます!」

『憐れむべきかな、その穢れを知らぬもの。無知、大宇宙の神秘に触れざるものは無知のなんたるかすら知らぬ…』

ニグンはLvアップしたおかげか天使をじゃかじゃか召喚し、一瞬でガゼフとその部下たちをボコって殺した。

「くっ、まさかスレイン法国の特殊部隊の力がここまでとは!

圧倒的、まさにその一言に尽きる、ガゼフの命もここまでと思われた時…

これを遠隔視の鏡で見ていたモモンガは感嘆した。

(あの人間、ユグドラシルで言うところのLv50相当のマジックキャスターか)

そして原作通り転移しニグンと対峙する。

その瞬間、今まで狂っただけのニグンの蕩けた瞳に変化が生じた!

『おおお!わかる!わかるぞ、これは!この匂い立つ香り。

腐臭の聖者、叡智の血臭!aagagagsg!』

悍ましい冒涜的な言葉を尽くすとニグンの体が腐り落ちながら弾け飛ぶように膨れ上がり、ゴキュゴキュという音とともに一瞬にして聖職者の獣へと姿を変えた。

「う、ウワァァァッァ!前々から思ってたけど!やっぱりニグン隊長がとうとう獣憑きになったぁぁぁ!」

悲鳴をあげながら天使たちにニグンを攻撃させる隊員たちを左腕の人はらいでなぎ倒し、もろともに圧殺する。

 

(は!早い)

「モモンガ様!お下がりを」

一瞬のうちに隊員たちを皆殺しにしてのけると今度は獣はモモンガの方に跳んで殴りかかって来た。

アルベドが咄嗟にモモンガを庇うが、正直冷や汗をかいた。

とはいえ、所詮はインスタントの獣に過ぎずLvにして80程度という弱さのため

アルベドとセバスが10発ほど殴ると息絶えた。

これで終わりってニグンさんの扱いひどくないですかね?

(うーん、いきなりカンストプレイヤー級の少女にレイドボス級の獣か。

この世界も結構物騒みたいだな…)

 

一方で遠く離れた場所からこの戦いを監視していた水の巫女姫が啓蒙アップで脳汁プシャーと発狂死した。

これもそれもヤーナムの真理、大宇宙の神秘の一端に備えなしに触れてしまったが故の犠牲者である。




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