おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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第36話

前回のブラッドボーンから十年後

 

19XX年 地球は世界大戦の炎に包まれた!

地は死体で埋まり 海は血に染まり 空は燃える

大地に鋼鉄の獣 空に鋼鉄の鳥 海に鋼鉄の海獣

しかしヤーナムで獣狩りの夜が絶えることは無い

ヤーナムの悪夢も人間の合理性が作り出した悪夢の世界に比べれば児戯に等しい

 

町中のあっちこっちから銃声が聞こえる。

パンパンという乾いた単発の音から連続した機関銃の音まで様々な銃声が交響曲をなし、

その間に聞こえる叫び声、断末魔の呻き、血の喜びに浸る狩人のケタケタという笑い声。

交響曲“ヤーナム 獣狩りの夜”

全てが変わった赤い月の夜から十年、獣狩りの夜は未だに続いていた。

悪夢は繰り返し現れる、姿を変えても悪夢は消えない。

それでもなお、血の医療を求めてヤーナムを訪れる者が絶えることは無い。

ここはヤーナム、外来狩人のギルド兼待合所

水盆では死者たちが新規入荷した武器を掲げている

版権が切れたWW1の銃器に獣狩りの頭文字つけただけでヤーナム課金装備にするのはよせ。

やっぱ運営はクソだな。

 

“獣狩りのシャベル

おおよそ、武器とは呼べぬはずのシャベルを獣狩りの武器としたもの

大戦での経験から、元軍人の狩人が好んで使うという”

 

“獣狩りのM1911

人に対しては有効な連発拳銃

しかしながら獣はもはや人でなく、それゆえ威力は見劣りする

大戦での経験から、元軍人の狩人が好んで使うという”

 

“獣狩りのモーゼルC96

人に対しては有効な連発拳銃

しかしながら獣はもはや人でなく、それゆえ威力は頼りない

大戦での経験から、元軍人の狩人が好んで使うという”

 

”獣狩りの短銃

極めて簡素な構造の単発の短銃

簡素ゆえ至近での一発の威力は極めて威力が高く、常人では扱えない

獣に対しては牽制以上ではあるまい”

 

 

“獣狩りのMG08/15

重機関銃を水銀の銃弾を使用できるように改造したもの

獣はもはや人ではないが、機関銃が相手を選ぶはずもない

大戦での経験から、元軍人の狩人が好んで使うという”

 

ヤーナムでの狩り2日目

今回はモモンガさんはソロプレイでしたが、最悪なことにプレイヤー狩人同士の殺し合いに巻き込まれてしまった。

低レベル帯での銃弾ならモモンガさんの物理無効で問題なしですが

今回飛び交っているのはカンスト勢の水銀の銃弾”アンデッド・獣系敵への攻撃力ボーナス”なので

かすっただけで “YOU DIED”になりかねません。

 

”ベイカー、右に回れ!あいつを殺してレアアイテムを奪うぞ!”

3人の狩人同士が殺し合っているところに出くわすとは運のない骸骨だ。

離脱しようにも通路が塞がっていて下手に動こう者なら銃弾が飛んできて即死です。

(やばい、やばいよ)

ここはデスナイトを召喚して盾にすべきか?

いや、連射銃の多段ヒットではこのレベル帯ではデスナイトも二発かすったら蒸発する。

つまりほとんど盾の役割を果たせていない。

”おい、あっちにアンデッドのプレイヤーがいたぞ!”

”構わねぇ!ついでに殺しちまえ!動くものはみんな殺せ!”

なんという世紀末状態。

近くのプレイヤーが次々と寄ってきては手当たり次第に殺し合いを始めます。

運のないことにソロのモモンガさんは両方からボス、ではなくてボーナスとして認識されてしまった。

逃げていく結晶トカゲとか悪夢ちゃんとかと同じ扱いです。

「くそっ!こんな連中と付き合ってられるか!私は安全地帯に逃げる!」

死亡フラグを立てたモモンガさんは直後に三角帽子の他の狩人が飛びかかってきて…

『Japari Frieeeeeeeends!』

という掛け声とともに振り下ろされた聖剣の槌のクリティカルヒットを食らって一撃死してしまいました。

聖属性・打撃属性の弱点ダブルコンボだからね、仕方ないね。

ゴウランガ!スケルトンマジックキャスターのなんたるペーパーアーマー!

“YOU DIED”

『Ooh,Majestic!(すごーい!)君は聖者の遺骨なフレンズなんだね!あーはっははははっはあ!

冒涜聖杯儀式につかせてもらうよ!』

 

Killログに残る相手の声にげんなりするモモンガさん。

ヤーナムに来てからというもの殺されっぱなしでヤーナムの狩人ギルドに再転送されました。

「はぁ…」

心が折れ、焚き火の近くに丸くなって恒例の青ニートならぬ青ニト様状態となったモモンガさんは出会ってしまった。

 

「あのーよかったら臨時パーティー組んでくれませんか?」

 

狩人の一人が話しかけてきた。黒い髪に高貴な上品な装束の美人アバターにドキッとする・

「え?いいんですか?本当に?っていうか“騙して悪いが”オチじゃありませんよね?」

これまでのヤーナムの世紀末ぶりから疑心暗鬼へと落ち込んでしまったモモンガさんであった。

パーティーを組んでいる間はフレンドリーファイア禁止でも、ここはヤーナム。

3秒前まで仲良く談笑しあっていた仲間と次の瞬間には殺し合いが始まることなどチャメシインシデントである。

それもこれも上位報酬とランキング実装という運営の外道の極みでデスマッチでバトルロワイヤルな蠱毒めいたシティへと魔界造されてしまったヤーナムの狂気のせいだろう。

やっぱ運営は外道だな。

「いや、私は冒涜聖杯素材探しにダンジョンに潜りたいだけですから

ランキングはあんま興味ないし、”遺志”狙いならあげますから協力しません?」

 

モモンガさんは感動した、この街の住人は動くものなら自分の親兄弟でも躍起になって殺そうという連中ばっかりでうんざりしてきた所だった。

「あ、はい。ネクロマンサー系オーバーロードのモモンガデス、ドウモよろしく」

「狩人のアンゲリカです、よろしくね。それとパーティーならもう一人いますよ」

 

するとギルドからもう一人の人間が現れた。

苗床頭の筋血マン、ボロボロの装束を装備した変態だった。

「おお、魔法使いが確保できたんかいな?こいつは幸先いいな!

あ、私はキノコ頭のメリッサ、よろしくね」

 

あまりにも異様な風貌からこれは異業種なのでは?と思ったので

「え、それって異業種アバターですか?」

「うん?、違う違う。これはあくまでもカレル文字刻んだ影響なだけでれっきとした人間種扱いよ。普通の街にも入れるし」

 

なにそれ、人間種怖い。

運営の異業と人間の区分がガバガバすぎる。


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