おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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ブラボチュートリアルがはっじまるよー
なお強さは群衆=デスナイト
薔薇「ファッ!?」


Hunt 3 New Nightmare

今もアンゲリカの振るった鞭のごとき杖が獣の爪を削ぎ落し

腕を切り刻み、その武器をなくしていく。

現実と化したこの悪夢の中、一体どれだけの時間が経ったのだろうか?

30分?3時間?3日?3年?

永遠の悪夢の中では時間に意味はないのかもしれない。

今もまた、一匹の獣が獣の狩人に狩られる。

体勢を崩されたウェアウルフの急所、心臓に杖を突きたてる。

オオカミは呻くが、残ったもう一本の腕で狩人の心臓を抉り出そうと突き出してくる。

だが、アンゲリカは上体を逸らしそのその勢いのまま獣の体内の杖を変形させ、再び鞭とする。

心臓を抉り出し、胃を、腸を、膵臓、脾臓を、肝臓を

体内の内臓を悉く破壊し止めとばかりに背骨に刃を引っ掛ける。

獲物に足をかけるとそのままの勢いのまま引きずり出し・・・

傷口からは血と内臓と、骨とが勢いよく飛び出し彼女のコートの裾にかかる。

蒼ざめた月が眺める下でなんと陰惨で美しい退廃芸術を見せつけたのだろうか。

彼女の白磁の肌と、黒鴉の絹の髪に血の赤がなんと映えることだろう。

「あーくっそ、こんなんなるならパーティーでバカ騒ぎに参加しとくんだったわ」

口を開けばその蒼褪めた美貌も台無しである。

事の始まりは狩人の夢と呼ばれるヤーナム参加記念に贈られたホームで最期を過ごそうとしていた彼女が、気がつけば啓蒙が高まりすぎたのか、上位者の悪戯。

とにもかくにも悪夢の世界が現実化し、彼女は今やそこに囚われたという事に気が付くまで暫くかかった。

「うわ!?お人形ちゃん、喋って動いてる!?ナンデェ!?」

「それはきっと、貴女の啓蒙が高まったせいでしょう」

人形の説明にいまいち釈然としないアンゲリカは自分の身の回りをペタペタと触って確認する。

(なんか、凄いリアリティある・・触覚も、嗅覚も、熱だって感じる)

試しに松明に火を付けてみると確かに熱を感じ、剣の切っ先に指を付けてみれば

(つっ!)

と指先が僅かに切れ、血が出た。

そしてその血を舐めてみればまごうことなく血の香しく、甘い味がし、頭が心地よく血に酔った感覚をほんの少し示した。

(どれもゲームの中では再現が禁じられてた要素の筈・・・

どういうこと!?ゲームが現実に・・・)

とここまで考えたときに例のあの声の事を思い出した。

(って、上位者!?アタシ上位者と契約しちゃったわけ!?

うっそでしょ!何でゲームしてただけで宇宙悪夢的な血の遺志を得ちゃってるわけ!?

馬鹿なの!?アタシ啓蒙が高まりすぎて一周して思考の次元が逆転してるの!?)

と、そこまで考えてこのユグドラシルの世界の事を思い出した。

(そうだ!メッセージ!他の狩人やプレイヤーも現実化してるかもしれないじゃん!)

そう思い大急ぎでコンソールのメッセージボードを開き、フレンド登録したプレイヤーを捜索しようとする

見立てが正しければプレーヤーの一人や二人はまだヤーナムにいるかもしれない。

コンソールのフレンズ欄に目を通すがすぐに絶望することになった。

そう、彼女のフレンズは誰もいない。

そしてログアウトも出来ない。

(参ったなぁ・・・)

彼女もブラッドボーン世界については知っているが、原作のそれとユグドラシルのそれは違う。

ユグドラシルの悪夢には終わりが無い。

ゲームクリアというものが存在しないMMORPGなのでそこらへんは仕方ないが。

(私は・・・どうすればいいの・・)

試せることは試したの後に彼女は小屋の中の椅子に腰かけて考える。

彼女は今一人だ、そしてこの悪夢は終わらない。

だが彼女の脳裏にいずこの誰とも知れない者の声が響く

「青ざめた血を求めよ、狩りを全うするために」

蒼褪めた血?

いや、やめておこう。

ネタバレになりかねない

 

「今は何も分からないだろうが、難しく考えることはない

君は、ただ、獣を狩ればよい。それが、結局は君の目的にかなう

狩人とはそういうものだよ。直に慣れる…」

獣を狩る・・・・

彼女は考え直す

ここには武器も防具もアイテムも引退した仲間の分まである。

そう、何一つ足りないものはない。

ヤーナムで狩りを全うするのも、外の状況を探るのにも足りないものなどない。

「よし、いくよ!私頑張って狩りまくって・・・思考の次元をガンガンあげるよ!」

彼女はここでうずくまっていても何も始まらないと外の世界に出ることを決意する。

「狩人様、現実がどうとかこの人形にはわかりません・・

ですが・・これだけは言えます

終わらない夜は無いと、昔・・ずっと昔 ある狩人様から聞きました

あなたの目覚めが有意義なものであることを・・」

その言葉を受けて、彼女は初めての現実と化したヤーナム市街地の灯りで目覚めようと墓石に手をかざすと使者達が狩人の帰還を喜び、贈り物を持ってきた。

アイテム「幻の灯」を手に入れました。

彼女はアイテムを鑑定するとその効果は

「何処なるとも、この灯が照るところが狩人が目覚める場所となる

この世界そのものが今や悪夢の中なれば、夢はヤーナムの中でのみ見るものではないのだから」

要するにこれを安全な場所に突き刺して灯せば携帯式の灯になる。

ユグドラシルのどこからでもセーフハウスに入れるのは確かに有難い。

「転移」を使えば済む話だが。

「じゃぁ、行ってくるよ」

そう人形に告げると彼女は悪夢と化したヤーナムの町で目覚める・・・・

 

 

・・・・・・

色の無い霧を抜けて未知の街に入った途端、世界が一変した。

外から見れば霧があるとはいえ、ヤーナムの街はアンデッドすら存在しない完全な静寂の町に

しかみえなかった。

今、霧を抜けたとたんに世界が現実から悪夢へと変わる。

「な!止まって!何・・・何よこれ!?」

街に入って瞬き一つしないうちに街の景色は外からは静かだが、瀟洒で雄大なものにみえていた。

今、彼女たちの目の前に見えているのはまさに獣狩の夜の夕暮れだった。

「リーダー、あっちこっちから血と焦げた匂いがする」

「それに何だか凄く獣臭い」

ティアとティナもクナイを握り、目を凝らしていつも以上に警戒態勢を取った。

「馬鹿な・・・・魔法の反応は何一つ感じなかったぞ!一体どうやればこんなことが出来る!?」

 

ゴミ一つ落ちていなかった街の通りは死体と棺桶、逃げ切れなかった人々が大慌てで逃げようたのか荷物がそこかしこに散乱している。

 

「!!リーダー!あれ!」

彼女たちの目に映ったのは火炙りになっている巨大な獣。

ウェアウルフ

そして・・・・

「なんてこと・・・ひどい」

行方不明になっていた冒険者チーム豪剣の5人の死体だった。

彼らもまたウェアウルフのように磔にされ、焼かれていた。

首元からぶらさがるミスリルのプレートが炎に照らし出され光を反射している。

ガガーランも同じ冒険者仲間をこのように殺され、さらには曝し者にした連中に怒りを覚え

武器を抜き油断せずに構える。

「っ!誰か来るぞ!」

イビルアイが吸血鬼特有の鋭い夜目と耳で足音とぱちぱちという炎がはぜる音が近づいてくるのを確認する。

「みんな、戦闘態勢を取って。この町の住人と話し合えれば一番だけど・・」

だが、浮遊剣を展開し臨戦態勢になったラキュースもスキはない。

彼らが叫ぶ

「Beasts!Beasts!Kill them!Kill Them All!」

 

聞きなれない言葉と共に道の先から群衆が手に手に粗末な武器を持って駆けてきたのを見て

全員が交渉は不可能だと悟った。

道のあちこちであがる炎が彼らの獣そのものの形相を照らし出しその恐ろしい顔に薔薇も驚く。

「けっ、あいつらビーストマンかよ!」

獣人 この世界の竜王国を脅かす人類種の天敵。

実際にはヤーナムの群衆はれっきとした人間だが、もはや獣以外の何物でもない。

 

 

 

 

 

 

 


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