おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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よく考えたら薪の王とか神代の物語だし。
時間も空間も歪んでいるという設定だから、アンゲリカは神代の世界に入れた。
グウィンに至っては神々の王、比較対象はゼウスやオーディン。

番外席次
この世界では最強の存在、
しかし絶望的な敵(フロムボス)と変態的な敵(ガチプレイヤー)と対峙し続けたわけでは無いのでスペック頼りである。
この世界では強さの差が極端で強者は数が少ない。
スペック頼りのゴリ押しで勝てるし、それがここでは効率的
だが、それが通じる程ふろむ世界は甘く無い


Hunt 25 試合

王が去ると、アンゲリカはこう呟いた。

「いい人だったわね、あの王様」

 

無論、褒め言葉では無い。

つまりこの乱世に人の上に立つ資格なしということでもある。

大抵の人は時代に流されるしかない、それはプレイヤーも同じなので人の事は言えないが・・

 

「そうであろう、あのお方は私のような者を信頼し戦士長の地位を授けてくださった」

ガゼフは勘違いして、王が去った後を見つめながら言った。

訂正する必要はあるまい。

実際、彼のような者に忠義を尽くされているのだから、それも実力の内である。

 

「ブリューティヒ嬢、冒険者をやめる気は無いという思いはわかった。

だが、ここでしか言えないのだが。

私と手合わせしてはいただけないだろうか?」

突然のガゼフの提案にきょとんとする

「何で?また急ね。そんなのして私に得があると?

貴方は戦士長で私はただの冒険者、実力にははっきりとした差があるはずだけど?」

 

「いやいや、貴女の活躍は聞いている。

これは戦士としての私の我儘だ、だが貴女は武技について興味があると聞いている」

 

「ああ、そう言えば冒険者組合であれこれ調べたっけ。

国一番の武技使いといえば確かに誰もが貴方だと認めるところだともね」

 

武技、言って見れば戦技であり精神力を消費して発動する技のことである。

武技の習得には熟練の戦士でも数年かかると言われているが、ガガーランのを見せてもらったが

アンゲリカの見た所それはいわゆるコマンド入力された動きの発動であり初見でなければ

容易に対処できる物でしかない。

いわゆる慣れれば容易い攻撃であってレベル差もあり今の所は脅威では無い。

とはいえ、瞬間的にレベルにしておよそ5という攻撃力・俊敏性の上昇は見逃せない。

Lv100同士の戦いで通常技に加えて各種魔法やスキルに武技まで加えれば戦術のパターンは飛躍的に広がるかもしれない。

たとえ5%の戦力上昇でも、それは決定的な差になるだろう。

狩人か不死人か鴉なら分かってくれるはずだ、双方限界を超えた戦いでの5%の重みを。

「確かに・・・私の見た武技を使える戦士は今の所ガガーランのみ。

貴方の技を盗ませてくれるというのなら、確かに手合わせを受けるには十分すぎる報酬ね」

 

アンゲリカは練兵場から木刀を持ってきて構える。

片手に木刀を持ち、杖の要領で構えを取るとガゼフも興味深げに観察する。

「ほう、ブリューティヒ嬢は片手剣か。

盾などは使わないのかね?」

ガゼフは木刀の中でも大型のいわゆる両手剣タイプを持ってきて構えた。

正眼の構えをとるその姿は隙がなく、どんな方向からの攻撃にも素早く対応できるだろう。

「私の相手にするのは獣・・・モンスター相手の剣術。

モンスターの膂力相手に盾は役に立たない、それはご存じでしょう」

 

そう言われてガゼフは成る程と納得する、実際に盾は戦場では矢を防ぐにはよく使われる。

平民が持ってきて帝国兵の放つボルトを防ぐのだが、粗末な盾では鋼鉄製のボルトの鏃は防げない。

ましてやモンスターの膂力は小型のゴブリンや狼ならともかく殆どの場合人間を上回る。

ゆえに大剣や槍など両手持ちの武器で持って攻撃こそ最大の防御を実践するのが冒険者。

あるいは弓など相手の射程外から攻撃するのも正しいし、

片手剣でスピードと身のこなしで相手を翻弄するのも技量は必要で人数も少ないがないことはない。

ガゼフは重戦士であり、アンゲリカは軽戦士。

どちらが優れているというわけではないだろうが、一般的には前者の方が強い事になっている。

 

自然と向かい合い、ガゼフが動いた

それからはガゼフが一方的に押しているかのように周りの兵士にもクライムにもそう映った。

ガゼフの攻撃をアンゲリカがいなし、かわし、あるいは逸らして防戦一方に見える。

だが、当のガゼフからは焦りを止められなかった。

(まるで、攻撃が通じている気配がないとはな・・・)

実際、本気で攻撃していればガゼフは一瞬すら持たなかったろう。

それでもアンゲリカは自らの行動を防御一方にすることによってガゼフの動きを漏らさず観察し取り込めないところがないか体で覚えた。

「お見事・・・まさか私の動きがこうも簡単にいなされるとは・・・・

全く、世界の広さと己の視野の狭さに恥じ入るばかりだ」

 

「謙遜もいいところね、貴方が言ったら嫌味にしか聞こえないわよ」

ここではアンゲリカはガゼフより弱い、そういう事になるのがいいだろう。

 

「成る程、それではお約束通り私の全力を持ってお相手しよう!」

『武技:流水加速!』遂にガゼフがその持つ武技の一つを発動した。

やはり思った通り、今のガゼフの攻撃の速さは明らかにレベル不相応のもの。

と、いっても魔法で強化した方が効果的な気がするが。

アンゲリカは咄嗟に見えるようにギリギリの差で服に剣が掠れる程度の間合いで回避した。

ガゼフにしても本気で打ち込む気はなかったが、それでも剣が絶妙なタイミングで外された事には驚く。

アンゲリカは武技が嬉しかった、あれが自分のものになるかもしれないと思うとわくわくする。

思わずガゼフに打ち込んだ、ただの軽い一撃。

だが、ガゼフは両手剣で受けたその一撃の重さに驚愕する。

(お!重い!なんという剛撃だ!)

かつて、帝国4騎士と相対したこともある。

だが、今の一撃は彼らと比べても全く劣るどころか・・・

アンゲリカは次々と軽いジャブを繰り出すがガゼフはそれを本気でいなさなければならなかった

『武技:不落要塞!』

攻撃を凌ぐガゼフの硬さが変わった、今までの撫でるような感触が急に少ししこりのある硬さに変わったような・・・・

本気を出せば一撃で終わるが、そんな無粋な終わり方なぞ誰も望んではいない。

 

「くっ・・・全く、とんでもないお方ですな貴女は。

軽戦士でありながら重戦士以上の重さの蓮撃を繰り出すとは・・・」

 

「あら、でも貴方は簡単にいなせたじゃない。

結構ショックなのよ、これが捌かれるなんて」

 

嘘だ、アンゲリカの今の攻撃なぞストレッチでしかない。

だがガゼフはその行動を武人の誇りにかけた本気だと勘違いする。

「成る程・・・貴女が相手では出し惜しみしている場合ではなさそうだ

ならば!武技『六光連斬』」

 

 王国、無形の至宝。

 一刀六断の武技が炸裂した。

(へぇ、これが貴方の奥義ってわけ・・・)

目の前に迫る六連撃をまじまじと観察する。

速さ、威力、正確さ、どれを取っても今のガゼフの強さから放たれる程度ではアンゲリカの毛髪一本切りおとせまい。

だが、斬撃がアンゲリカの木刀に当たったその瞬間。

剣が遠くまで弾き飛ばされた・・・・

 

「参ったわ、流石は戦士長・・・

確かに周辺国家最強の戦士と呼ばれるだけはあるわね」

アンゲリカはわざとらしそうに飛ばされた剣を持っていた右手をさする。

0ダメージだが。

 

「そう言われると、私も全力を出した甲斐があったというものだ。

貴女の武には底が見えない、今のが本当に本気なのですかな?」

ガゼフは今の手合わせから何かはわからないが相手の本気を測りかねていた。

「あら?それ嫌味?こっちは戦士長相手に本気を出していっぱいいっぱいだったのよ。

そう、今のは本気。相手を過剰評価するのは心配性な兵隊さんの悪い癖ね」

アンゲリカは汗を拭うような振りをするが、相変わらず涼しげな顔だ。

一方で武技を使ったガゼフはかなり息が上がっていた。

六光連斬、王国の無形の至宝は彼の弛まぬ練達があって初めて放つことができる技。

体力の消耗もかなりのものである。

手合わせが終わると誰もが戦士長と渡り合ったアンゲリカを口々に讃えた。

その場にいたクライムも美しく若い女性でありながら、天才剣士であるアンゲリカを憧憬の視線で見つめていた。

 

(俺にも・・・・あの人の才能の10分の1でもあったなら・・)

 

そしてそれを見ていた女性の色の無い瞳もあった。

 

(ふふ、こんなに早くお目にかかれるなんてね。ぷれいやぁ様・・・)

 

一方で当人は貰った報酬で買うお菓子の事ばかり考えていた。

(また面倒な事になったな、だが試合でおやつの小遣い稼ぎできたと考えるならそれでよしとするか)


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