おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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グランドマスター 薪の王 グウィン(ワールドボス)
セイバー 狼騎士アルトリウス(ワールドボス)
ランサー 竜狩りのオーンスタイン(ワールドボス)
アーチャー 鷹の目ゴー(ワールドボス)
アサシン 王の刃キアラン(ワールドボス)
バーサーカー 処刑人スモウ(ワールドボス)
キャスター 陰の太陽グウィンドリン(ワールドボス)

・・・・・・ライダー 無名の王(隠しワールドボス)
いずれも英雄の名に恥じぬ強者ばかり
これが復活のアノールロンド必殺の陣イベントか



Hunt 22 優しい手

 

アダマンタイト級への昇進をかけて試験に挑んだアンゲリカ。

だがそれは彼女を六腕に引き込もうと言う罠であった。

試験内容は近隣の森で都市に農作物を卸している農村と都市の通商路に近年出没するバジリスクの討伐である。

(バジリスク・・・Lvで言えば15から20程度といったところか

いや、この世界では成長に爬虫類は限度がないからもっと上に行っている可能性もあるが・・)

大型の爬虫類はかなり長生きするという話を聞いたことがある。

この世界でバジリスクが脅威となっているのはまず第一にその石化の眼を防ぐ方法が極端に少ないため。

アンゲリカからすれば実につまらない性能のマジックアイテムすら高価で貴重とみなされているのだから確かに見られれば防ぐ方法のない石化の魔眼は脅威だろう。

中世レベルの文明世界で携帯可能なレーザーライフルがあるようなものだと言えば読者諸君にもどれだけモンスターが恐ろしいかお分かりいただけるだろうか。

だが、今彼女の前にある洞窟はあまりにも小さい・・・

そう、冒険者組合から渡された資料によればバジリスクが寝ぐらとしている洞窟はここで間違いない。

だが、まるで狩人の悪夢でガトリング砲持ちがを構えて待ち構えているような・・・

(ふぅん・・・・・この血の匂い・・獣じゃない・・息遣い、十人ってところか)

アンゲリカには既に目星がついていた、それなりに頭の回る奴が待ち構えている。

ここまで乗せてきてくれたシフに入り口付近で待機するように命令する。

「ここで待ってて、あなたじゃ中には入れない・・・それに中の連中は私に用があるみたいね」

そういうと、中にザクザクと踏み入って行く。

中からは獣特有の生臭さは感じず、ここがバジリスクの寝ぐらではないのは明白だ。

だが、冒険者組合から渡された地図では間違っていない。

考えをまとめると、彼女はこれが八本指の罠だと直感した。

殺した六腕の意趣返しか、実に仕事が早いとも思った。

中に入って、通路を抜けると・・・なるほど人の気配を感じる。

広場のようにある程度広まった洞窟の中は頭上の亀裂から日光がさしているが連中のいる場所には差さない。

大人数が少人数を待ち伏せするには絶好のポジションだろう。

杖をカンカンと床に打ち付けると

「いつまでも隠れているのはやめにしたら?そっちはこっちに用があるんでしょ?」

 

すると岩や瓦礫の陰から男たちが驚いたような顔を覗かせた。

(Lvにして10から15ってところか、あれは25くらいか?

重戦士にしては剣が細い。ああ、成る程な)

アンゲリカは鎧姿の男のその構えた剣が自分の杖や獣肉断ちと基本的な考えは同じだと一瞬で見抜いた。

顔には出さないが、それがガラクタ同然のゴミだとも気づいた。

「ほう・・・俺たちの気配に気づいたか・・ふっ、流石にサキュロントを倒すだけの事はある。

軽装のビーストテイマー・・レンジャーとしての能力もあるのか?

ああ、自己紹介が遅れたな俺は”空間斬”のペシュリアン。

お前がこの前殺したサキュロントの同僚・・ということになるのかな?」

 

「サキュロント?よく覚えてないわ。敵討ち?仲間思いね」

自分を殺した相手に名前すら覚えてもらっていない。

敵からは無視され、味方からは死体蹴りされる惨めさに少し同情した。

 

「おいおい、誤解しないでくれよ。

俺たちの中の誰一人あいつが死んで悲しんでる奴なんかいない、むしろ殺してくれたあんたには感謝してるくらいだ。」

 

「そう、冷たい同僚を持ってお気の毒ね。

お葬式にくらい行ってあげたら?」

 

「全くだ、この前の事件。世間じゃお前が正義の味方だとチヤホヤしてるが、あれは単なる喧嘩だろう。

従業員の証言や殺し方を見れば、あんたは単に売られた喧嘩を喜んで買っただけ・・・

正義を行う意思なんて最初からなかった・・・どうだ、違うか?」

総合的に判断すれば正義の味方なんてする気は無かった。

要するに酒場の喧嘩で悪党をぶちのめした奴だからと行って善人だとは言えないのと同じだ。

悪党が悪党を殺すのが普通に起きるのがこの世の中だ。

 

「確かにそうね、単に血が見たかっただけと言われればそう。

正義の味方気取りなんて考えても見なかったわ」

 

彼女の物騒な答えに満足したのか続ける。

 

「それなら、話は簡単だ。俺たちの仲間にならないかってのが提案、俺たち八本指は王国を裏から牛耳る闇社会の組織、そしてお前に提供しようって椅子はその組織の実行部隊の六腕の地位だ

考えても見ろ?この先アダマンタイト級に登ったってこの王国に未来があると思おうか?

無いね、王国は遅かれ早かれ帝国にぶっ潰される。

あんたは知らないかもしれないが、冒険者なんてものは帝国ではもう無用の長物に成り下がりつつあるのさ。

王国が潰されたら、冒険者なんて日雇いのワーカーと同じ汚れ仕事を貰ってその日その日を喰い繫ぐだけのつまらん下働きに転落する。

いや、ほとんどの冒険者は今でも食うや食わずだからもっと酷くなるだろうな。

俺たちは違う、俺たちは王国も帝国も関係ない。

時代が変わっても闇がなくなる事はない、この先つまらん下働きになって安い報酬でこき使われたいのか?

俺たちの仲間になれば思いのまま力を振るって大金を稼げるんだ、どうだ悪くない話だろう」

 

「フゥン・・・成る程、冒険者からヤクザへの引き抜き?

いいわね、特に暴力最高ってところが気に入ったわ」

 

「だろう?話がはや「でもねぇ」ん?」

 

アンゲリカはペシュリアンの話の腰を折る。

「あんたらは勘違いしてる、

1つ:私はしたいのは狩りであって、暴力じゃない

2つ:正義の味方気取りはなくても、正義の味方と言う評判は役に立つと知ってる

3つ:私の本性を知ったあんたらを・・・私がここから生かして帰すと思う?」

 

恐ろしく冷たい言葉をかけられ瞬時に右手に構えた剣を振るおうとする

(ヤバい。こいつは悪党じゃない、獣だ)

交渉決裂とみて部下たちは構えたクロスボウを一斉に発射し

ペシュリアンは矢を避けたか、弾き返したアンゲリカに蛇剣の射程まで近づき確実にとどめを刺そうとする。

だが、目の前に現れた光景はあまりにも非現実的だった。

蒼ざめた美貌の女の顔がすぐ目の前に現れた、黒い洞窟の中にあって白く輝く女の顔だけがまるで浮いているようだった。

次の瞬間、耳元に囁きが聞こえる

「地獄に行ったら、悪魔にこう言いなさい。

天使の美しい手で地獄に来れましたってね」

 

瞬時、アンゲリカの右手が分厚いミスリルでできた鎧を紙のように貫きペシュリアンの心臓にまで達する。

 

自らの心臓を掴まれる悍ましい感覚と痛みで全身が硬直したペシュリアンは動くことすらできず直立したままだった。

そして彼はみた、自らのまだ鼓動している心臓が引き抜かれていく様を

 

「あら、綺麗な心臓ね。心は真っ黒なのに・・・」

文字通り息も絶え絶えのペシュリアンは目を最大限まで見開き、口から言葉を絞り出す。

「か・・返せ・・俺の・・俺の心臓・・」

「Non!」

次の瞬間、グチャァ!と言う音とともにアンゲリカは持ち主の目の前で心臓を握りつぶす

 

絶望に目を見開き、倒れこむ。それがペシュリアンの最後だった。

あまりにも呆気ない自分たちの上司の死に様を見てすくんでしまう残りの部下たち。

ペシュリアンは絶対的な強者として自信があり、ここにいるものは精々脅しの飾り程度の役だろうと思っていただけに予想外の事態に頭が追いついていかなかった。

 

「な!何してやがる!撃て!あの女を殺せ!」

部下の中でリーダー格の男が数秒間の沈黙の後にやっとの事で思い出したように号令するが、全て遅かった。

「あら?撃たないのかしら?」

なぜ、後ろから女の声が聞こえるのだ?目の前に・・・いない!あの女はどこに行った?

それに部下たち、なぜ誰も撃たないどころか声も挙げないのだ?

「ふふ、みんな疲れて寝ちゃったみたいね・・・でも大丈夫・・・あなたもいい夢見れるわ。

あるいは・・そう、何が起ころうとも、悪い夢のようなものだから・・・」

ヒュン、という音とともにリーダー格は自分の中にとても優しい手の感覚を覚えた。

「あ・・あああ」

「大丈夫、痛くないわよ。

北斗有情破顔拳!せめて痛みを知らずに逝くがいい・・・なーんちゃって」

 

ペキッ!という音とともに世界が暗くなり、リーダーの命の火もどこかに飛んで行ってしまった。

・・・・・・・・・

「あーあ、全くつまらないオファーだったわね」

 

洞窟から出てきたアンゲリカは死体から防具や武器を剥ぎ取るとアイテムボックスに収納した。

足のつかない武器は現地の現金に換金し小銭稼ぎにぴったりだ。

更に念を入れて洞窟も破砕しておくことにしようとする。

右手と左手でかの聖剣を握る、あの醜い獣のように・・・

「あぁ、我が師・・・導きの月光・・・墓所なき者共に安寧を・・・

ルナティックスレイヴ!」

 

月光の光を帯びた剣が煌くと洞窟に向かって翡翠色の斬撃が飛んでいき・・・

斬撃は大地を剔り、空を割き森を消しとばして洞窟を粉微塵にした挙句にちょっとした谷を作った。

「シフ、帰ろうか。実につまらん連中だった」

当初の目的の月光の聖剣の威力確認もできた、小銭も獲得できた、依頼が嘘っぱちだった件であとは冒険者組合を締め上げてアダマンタイトのプレートを発行させれば万事めでたし。

 

だが、彼女の放った月光の斬撃を遥か遠くで感知したものがいた事にまでは気づかなかった。

 

 

『今の感覚・・・ああ、また世界のどこかが歪められたのか』

今、白金の鎧武者が満月を仰ぎながら彼方で放たれた世界を歪めるものの波動に嘆息した。

『悪しきぷれいやぁか、良きぷれいやぁか・・・傍観者ならまだ良し、だが悪しき世界を歪めるものなら・・・』

アーグランド評議国永久評議員、【白金の竜王/プラチナム・ドラゴンロード】ツァインドルクス=ヴァイシオン

ぷれいやぁを恐れるものの一人・・・いや一柱であった。

 


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