・クロスオーバー先の重大なネタバレ注意(重要)
・クロスオーバー先の重大なネタバレ注意(重要)
・クロスオーバー先の重大なネタバレ注意(重要)
・クロスオーバー先の独自解釈あり。
・カルデアの支部が、1か国に対して複数個所存在する。
・スカウトマンにねつ造設定あり。
【主人公】
・小学生の頃、左手を切断する大怪我を負った。それと同時期に親友を亡くしている。親友の名前は
・カルデアのスカウトを受ける代わりに、高性能の義手(ダ・ヴィンチちゃん作)を安価で提供してもらう契約を結んだ。生身の手と変わらない動きが可能。
・親友から譲り受けた茶色の毛の犬を飼っている。名前はチャコ。
・過去の出来事が影響してか、オカルト(特に怪異事件に関連するもの)や民俗学に傾倒している節があるようだ。
生きていくって、とっても怖い
カルデアの最後のマスターにして、私――マシュ・キリエライトの敬愛する先輩――
レイシフト適性社会無と言われていた日本で先輩を発見し、スカウトに成功したハリー・茜沢・アンダーソン氏曰く、
『俺が派遣された日本・◆◆支部は過疎化が進むクソド田舎なんだが、実は怪異が跋扈するとんでもねえ田舎だった』
『同僚の何名かが怪異の餌食になり、俺自身も怪異の影響を受けて後追い自殺をしそうになっていたところを引き留めてくれたのが彼女だったんだ』
『彼女が“善悪問わず縁を切る”神様を紹介してくれたおかげで、俺は今生きてるってわけだ。俺、今度から寺じゃなくて神社巡りしようかな』
とのことです。
その後、アンダーソン氏は都内に赴き献血と言う名のレイシフト適性検査を行い、そこに晴先輩が参加したことによって縁が結ばれたとか。ですが、先輩は本能的に嫌な予感を覚えたのでしょう。カルデアへ赴く前、以前住んでいた街――カルデア日本・◆◆支部のある街のことです――にある縁切りの神様が祭ってある神社に参拝してきたそうです。
先輩が“悪いものと無縁であり、異常の中でも普遍性を保っていられる”のは、縁切りの神様の加護がある為らしいです。その神様は、今でもずっと、悪い縁を切ることで先輩を守っているとのこと。神に連なる方々曰く、『神社を綺麗にしてくれる数少ない人間だから、強い加護を与えているのだろう。けったいな見た目のくせに義理堅い』らしいです。
先輩は夏の終わりになると、かつて住んでいた故郷に足を運ぶのだそうです。何でも、亡くなった友達の冥福を祈りに行くためだとか。その際に、欠かさず神社へ参拝し、掃除を行っていたそうです。
ちなみに、件の事件の後、神様に助けられたアンダーソン氏が神社を参拝し、ゴミ拾いをしていたそうです。結果、彼も悪縁とは無縁の存在と化している模様。夜に安心して街を出歩けるようになったそうです。油断してると死にかけるらしいですが。
蛇足ですが、アンダーソン氏は“縁結び”という単語を蛇蝎の如く嫌うようになっていました。何でも、『俺に自殺教唆をしてきた怪異の正体が縁結びの神様だった。ファ〇ク』とかで。閑話休題。
晴先輩は、昔の私から見たら、『不思議な人』でした。
死を恐れる私とは対照的に、先輩は生を恐れる人でした。
『引っ越しても、友達ができても、何年経っても、私はあの夏を思い出すんだ。きっと一生忘れられない』
『未来はどうなっているんだろう。……これからまた、たくさん理不尽なことや悲しいことがあるんだろうな』
『いずれ夜が明けて朝が着ても、また夜がやって来る。何度も何度もやって来るんだ。……それと同じように、痛くて辛いことも際限がない』
『ねえ、マシュ。――生きていくって、とっても怖いんだよ』
そう言って静かに笑う先輩は、どこか遠くを見つめていました。過去の痛みを思い返して、それを静かに抱えるような横顔でした。
先輩は、誰かと別離をする際、儀式めいたことをします。
相手と手を繋いで『さよなら』と言い、手を離すのです。
その行為は先輩にとって『特別な意味がある』とのこと。
人理修復を始めた頃はその理由が分かりませんでしたが、今なら分かります。痛いくらいに分かります。
“お別れをきちんとできなかったせいで、親友を怨霊にしてしまった”――その経験が、貴女をそうさせた。
「あ、ああぁぁぁ――!」
膨大な熱量が襲いかかる。人類焼却式、魔神王ゲーティアの放つ第三宝具。
星を貫く熱量を凌ぎながら、私は想っていた。今まで歩いてきた道のりを、その旅路の中で見た景色やあなたの横顔を。そして――私がいなくなった未来のことを。
先輩はこれからも生きていくのでしょう。私のいなくなった世界で、また出会いと別れを繰り返すのでしょう。未来はどうなっているのでしょうか。不安が尽きません。
晴先輩の言う通りでした。死を迎えていない限り、私は生きているのです。死ぬまでその痛みや悲しみに心を傷つけられていくのです。……今だって、そうです。
(――あ)
命が燃え尽きんとする刹那に浮かんだのは、偶然見てしまった貴女の過去。
“お別れをきちんとできなかったせいで、親友を怨霊にしてしまった”――その真相。
『ずっと一緒にいられなくて、ごめんなさい……』
『
『ちゃんと『さよなら』が言えなくて、ごめんなさい!!』
……ねえ、先輩。
人理修復の旅に出てから、先輩は沢山の出会いと別れを繰り返してきましたね。『さよなら』をきちんと言えたこともあれば、言えないまま永遠の別離になってしまったこともあります。前者でも後者でも、貴女は別れを悼むのを忘れなかった。
なけなしの勇気を奮い立たせ、誰かの為に立ち上がった先輩の姿が、私の憧れだったんです。嘗て貴女が“親友を助けるために、怪異の跋扈する夜の街を駆け抜けた”ときのように、“人理修復の旅の最中、何度も私を助けてくれた”ときのように、私も立ち上がりたかった。今この瞬間、私の手を握って、私を信じて立っている貴女を守りたかった。
……でも、ちょっと、嫉妬してたんです。貴女が語る“亡くなった親友”である結さんに。
どんな形であれ、先輩に想われている結さんが――貴女の一番を不動にした彼女が羨ましかった。
私よりもはるかに短い命を絶つ選択をした結さんの決意を想像し、恐怖に震えたのも事実です。
だって、私の半分しか生きていない小学生の女の子が、『別れがつらくて耐えられない』という理由で自ら人生の幕を閉じるだなんて信じられなかった。/死ぬのを恐れた私には、絶対に出来ない選択だから。
“家庭環境が悲惨で、飼っていた2匹の子犬と先輩だけが唯一の救い”という極限状態が、嘗ての私の環境とよく重なっていた事実に戦いた。/もしかしたら、彼女と同じ決断を下していた可能性があったから。
寂しさに負けて悪霊と化しても、縁切りの神様が介入したとしても、お互いに『離れたくなかった』と思っていても、最期に『手を離す』なんて選択を選べた決意に心が震えた。/誰かの為の
「……良かった。これなら何とかなりそうです、マスター」
私の守りは、物理的な護りではない。
それは寸分の隙も無く、先輩を守ることができるだろう。
「今まで、ありがとうございました」
大事な人のために勇気を奮い立たせた貴女のようになりたかった。貴女がくれたものを少しでも返したくて、弱気を押し殺して旅を続けてきた。色々なことがあったけど、自分の人生が有意義なものだったと実感できた。――この瞬間、私は私の望みを理解する。先輩の言葉を理解する。
生きていたかった。死にたくなかった。先輩を失うことが、先輩と一緒にいられなくなることが、怖くて怖くて堪らなかった。喪失の恐怖に戦きながら死を待つこの状況が――その痛みと戦いながら生き抜かなくてはならないこの状況が、辛くて辛くて堪らなかった。
だって私はまだ、何も返していない。貰ってばかりだった。支えてもらってばかりだった。導いてもらってばかりだった。助けてもらってばっかりだった。こんな形じゃなくて、もっとちゃんとした形で、先輩とお別れがしたかった。
――ですが、もう、それは難しそうです。
「――最期に一度くらいは、先輩のお役に、立ちたかった」
自分の身体が蒸発していくのを感じながら、私は先輩の方に向き直る。
今にも泣きそうな顔をした先輩を、最期くらい安心させてあげたくて、私は微笑みました。
てをはなす?
>はい いいえ
◆◆◆
――少女の話をしよう。
少女には、かけがえのない親友がいた。明るく活発で、気弱な自分をいつも励まし、支え、助けてくれた女の子。
少女は親友と約束をしていた。『ずっと一緒にいよう』という、小さくてささやかな――けれど大切な約束だった。
けれどその約束は、不本意にも、破られることになる。少女とその家族が、都会へと引越しをすることになったためだ。
今年が、故郷の街で過ごす最後の夏。即ち、親友と過ごす最後の夏であることを意味している。
少女と親友は最後の思い出となるであろう街の行事――花火大会を見に、山へ赴いた。
この街で行われる花火大会は、夏の終わりを告げる行事である。つまり、少女と親友の別れが間近であることを示していた。別れの気配に元気をなくす少女と対照的に、親友は明るく笑いながら「花火を見よう」と勧めてきた。
花火大会が終わり、2人で山を下りていく最中、得体の知れないモノの介入によって2人は夜の街に別れ別れとなってしまう。異形が跋扈する夜の街を彷徨いながら、少女は親友の姿を捜し歩く。途中で出会った茶色のポメラニアンの導きもあって、少女は夜の街を歩き続けた。
街を探索していく中で、少女は親友の遺した手紙を発見する。親友は既に死んでいて、幽霊となって彷徨っていたのだ。
“己の死の真相を探るため、山へ向かう”という手紙に従い、少女もまた山へと赴いた。そこで、少女は悪霊と化した親友と、彼女の遺書を見つける。
“きのう、たいせつにしていた こいぬの いっぴきが、しんでしまいました”
“とても つらくて かなしいことでした”
“さいしょに、おとうさんが いなくなって おかあさんは ヘンになってしまってた”
“だから、わたしは ハルを たよりにしてて、ハルとトモダチでいられたなら それでよかった”
“でも、ハルは、なつがおわると、とおくのまちへ ひっこしていく”
“わたしの たいせつにしているものは どんどんわたしから はなれていきます”
“おわかれは、いつも、いたくて、つらくて、たえられません”
“もう、なにもほしくない”
親友の遺書を読んだ少女の心はボロボロになった。
途方にくれた少女に、どこからか誰かが語り掛けてくる。声の主は、少女を山の頂上――親友が自殺した場所まで誘導した。あわや後追い自殺をしかけた少女だが、ふとしたきっかけで、少女は自殺を辞めて山を下ることにする。
だが、どこからか聞こえてくる声がそれを許さない。意地でも『先へ進め』と指示してくる。終いには、『おいで』を連呼して少女の身体の自由を奪い始めた。耐え切れなくなった少女が『もう嫌だ』と叫ぶと、どこからともなく怪異が現れて声を断ち切ってくれた。
それは、少女が逃げ惑っていた怪異の1つだった。この街では“縁切りの神様”として都市伝説となっている存在で、『もう嫌だ』と叫んだ者の縁を断ち切ってくれるらしい。少女は自分を助けてくれた神に礼を言う。神は赤い裁ち鋏を託して姿を消した。少女は意を決して、“縁切りの神様”が開いた道を進んでいく。
洞窟を進むうち、少女は“嘗て自分がここに来ていたこと”、“その際、親友に助け出されたこと”を思い出す。少女は勇気を振り絞り、親友を助けるために洞窟を進む。そこで待っていたのは、親友を悪霊にして力を振るっていた山神だった。
山神は糸を使って少女に襲い掛かる。“縁結びの神”としての力を振るい、少女と親友の願い――『ずっと一緒にいる』――を悪辣な形で叶えようとしていたのだ。左手に意図が巻き付くことで動きを封じられた少女は、怨霊と化した親友に語り掛ける。
『ずっと一緒にいられなくて、ごめんなさい……』
『ユイを助けてあげられなくて、ごめんなさい……!』
『ちゃんと『さよなら』が言えなくて、ごめんなさい!!』
『――こんなの、もう嫌だ!』
少女が叫んだ刹那、『もう嫌だ』という単語に反応した“縁切りの神様”が、糸が巻き付いた左手を切り落とした。
出血のショックで倒れた少女を支えたのは、怨霊から元に戻った親友。
朦朧とする意識の中、少女は親友に本音をぶつける。引っ越しが嫌だったこと、もっとずっと一緒にいたかったこと、ちゃんとお別れを言えなかったこと――。
親友は黙ってそれを聞いていた。執着や未練という糸を断ち切られ、別れを受け入れた親友は、少女とともに山を下りる。
本当はずっと手を握っていたかったであろう。別れたくもなかっただろう。けれど、それでも――親友は、少女の手を離した。
――こうして、少女たちの
言うならばこれは、『かけがえのない相手と
無邪気に、けれど歪に、確かに
そんな夏の終わりを過ごした少女を再び中心に据えて、新しい物語が始まる。
数多の出会いと別れを繰り返し、人類の未来を取り戻す旅。
『生きていくって、とっても怖い』――そんな口癖を持つ少女と、人に対する憐憫に突き動かされた獣と、善き人々が織りなす物語だ。
クロスオーバー先:『深夜廻』
『ハリー・茜沢・アンダーソンが向かった飲み屋が『深夜廻』の舞台である街だったら』で分岐する世界。
『ハリー・茜沢・アンダーソンが向かった飲み屋が隣町だった』場合、青葉晴はカルデアに来ない。代わりに、“左目を失明した少女”が48番目のマスターとなる。
よく過労死している軍師(正確にいえば、軍師の身体の貸出人)に『深夜廻』プレイ経験がある場合、48番目のマスターにエンカウントすると大変なことになるらしい。