・クロスオーバー先の重大なネタバレ注意(重要)
・クロスオーバー先の重大なネタバレ注意(重要)
・クロスオーバー先の重大なネタバレ注意(重要)
・「こいつが人類最後のマスターで人理修復が成し遂げられるか」に関してはノーコメント。
【主人公】
・家族構成は「妹がいる」こと以外一切不明。
・カルデアにスカウトされるまではずっと無職だった。
・妹からは蛇蝎の如く嫌われている模様。
公式が病気(ガチ)
“筋肉隆々の成人男性が、明らかに体躯に不釣り合いなセーラー服を着てカルデアの正面ゲートに現れた”――。
『あpsgふgこ&*@w2$3op\zq%!?!?!!?』
正面ゲートの認証システムが盛大にバグったのを皮切りに――それでも最終的には『大変不本意ながら、登録ナンバー48番と一致しました』と言って扉を開いてしまった――、彼を迎え入れたスタッフたちは次々に仰天した。
それもそうだろう。どこもかしこも筋肉で覆いつくされた体躯を持つ屈強な男性が、誰が見てもサイズの合わない女子学生のセーラー服を身に纏っていたのだ。カルデアの職員たちにとっては、視覚の暴力以外の何者でもない。恐慌状態に陥る者が多かった。
「マシュ! い、今すぐコイツから離れなさい! 大至急だ!!」
レフ・ライノール(フラウロス)もその1人である。48番目のマスターに戦々恐々とした様子でコンタクトを試みるマシュ・キリエライトの眼前に躍り出た。
マシュの近くをうろつく小動物は顔面蒼白になりながらカタカタ震えているが、今のレフならこの小動物や性的知識に羞恥と嫌悪を感じる人間たちの気持ちがよく分かる。
今だからこそ、レフの友人であるロマニやマシュに関係するスタッフたちが『マシュを汚したくない』と奔走する理由が痛いほど理解できる。
特に、レフ――否、フラウロス含んだ魔神柱は、嘗ての王によって創り出された存在だ。よく似た境遇で命を与えられたマシュに対し、レフは強いシンパシーを感じていた。
コイツはダメだ。なんかもう色々ダメだ。第1印象からして最悪の極みである。こんなものを視界に納めることになったマシュが可哀想で可哀想で仕方がない。
こんな人間がこの世界に存在しているという事実だけで、この世が悍ましいことが分かる。こんなものと生きていかねばならない人類が哀れで仕方なかった。
憐憫の意味は大きく変わってしまったが、『人理焼却を絶対に成功させねば』という意志はより一層強くなったのは事実である。結果オーライと言ったところか。
「で、でも、先輩は……」
「先輩!?」
マシュの口から出てきた言葉に、レフは激しく混乱した。
先輩、先輩だと!? こんなケダモノを、あの子は『先輩』と呼ぶほど親しんでしまったと言うのか!?
なんてことだ。ああ、なんてことだ! レフが早くここに来なかったせいで、マシュが汚されてしまった!!
カルデア以外の世界を知らぬ無垢な魂が、あんな変態との接触によって汚れてしまった――他の魔神柱共々絶叫する。
満場一致で『全部フラウロスのせい』という結論が出た。魔神柱を統括するゲーティアなんか、絶対零度の眼差しでフラウロスを睨みつけている。
満場一致で『あのマスターは絶対殺せ』という結論が出た。無論、『まずはアイツを普通の格好に着替えさせる』ことが先決だったが。
「48番目のマスター。そろそろ説明が始まるから、その前にカルデア制服に着替えて来なさい」
「断る。俺の肉体美が一番映えるのは、この“妹の夏服”だ」
48番目のマスターはにべもなく切り捨てると、得意満面の笑みを浮かべてポーズを取った。所謂“ジョジョ立ち”と呼ばれる、特徴的なポーズのものだ。
ぱっつんぱっつんの女子制服から、武骨な筋肉がはち切れんばかりに姿を現す。服は布の限界まで引っ張られ、心なしか悲鳴を上げているように思えた。
「うわあああああああああああああああああ!?」
「どうだ、美しいだろう?」
レフは反射的にマシュの視界を遮った。庇った少女の代わりに、容赦なく視界の暴力を叩きこまれる。
それからの出来事は思い出したくもない。だが、48番目のマスターと言い合いを繰り広げ、どうにか彼に「仕方がない。着替えてこよう」と言わせることができた。
レフは爆弾によって全てのマスターを屠るつもりでいる。しかし、流石にあんな『視界の暴力』を投入する程
伊達に憐憫の権化をやってるわけではないのだ。最期にあんな汚物を見ながら死んでゆくことになるなんて、色々と可哀想ではないか。
レフはマシュを伴い、管制室に足を踏み入れる。そこには、先程着替えに戻った48番目以外のマスターたちが集っていた。38人は生粋の魔術師たち、残り10名が一般枠から選ばれた数合わせの連中たちだ。
哀れなことに、彼等は自分の命が残り数刻であることを知らない。レフが仕掛けた爆弾によって、カルデアの中枢は吹き飛ばされる。人理修復を行う組織も機材もなくなれば、人類にはもう打つ手が無くなるのだから。
「こんな大事なときに来ていないマスターがいるみたいね。48番の
「ま、まあまあ。彼の遅刻は私も一枚噛んでいてね。私に免じて許してやってくれないか?」
ヒステリックな形相を浮かべたオルガマリーを適当に宥めすかしながら、レフは48番目のマスター――
程なくして管制室の扉が開かれる。遥かに遅れた到着を咎めようとしたオルガマリーが扉の方に視線を寄越し――そこにいた剛一郎の姿を見て絶叫した。
「きゃああああああああああああああああっ!!?」
「うわああああああああああああああああっ!!?」
絶叫したのはオルガマリーだけではない。この場にいるマスターも、カルデアのスタッフも、レフ・ライノール・フラウロス自身も絶叫していた。絶叫せざるを得なかった。
だってそうだろう。管制室にやって来たのは、カルデア戦闘服(女性用)に身を包んだ屈強な成人男性――
確かに、レフは剛一郎に着替えろと言った。着替えてくれと頼んだ。
でも、「カルデア戦闘服に着替えろ」とは一言も言ってない。
しかも、奴が着ている戦闘服は女性用だ。明らかに体格とは不釣り合いである。
「アンタ、なんて格好してんのよぉぉッ!?」
「そこの男にしつこく『着替えろ』と命令されてな。服を探していたところ、素晴らしい服を見つけたので着てみたのだ。どうだ、美しいだろう?」
剛一郎は得意気に笑い、セクシーポーズを決めて見せる。圧倒的な視界の暴力によって、カルデアの管制室はあっという間に阿鼻叫喚地獄へと突入した。
そんな中で、オルガマリーはわなわなと握り拳を震わせていた。管制室内には怒号が響き渡っている。だが、どんな悲鳴や罵詈雑言も、剛一郎を揺らがせるには至らない。
彼らの声を何と認識したのか分からないが、剛一郎は自慢げに微笑んで更なるポーズを決める。例えるならそれは、ボディビルダーが審査で見せるポージングであった。
「……け……」
「む? どうかしたか?」
「――この変態がぁッ! 私のカルデアから出て行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
オルガマリーのキャパシティも限界を突破したのだろう。彼女はヒステリックに叫んだ。ほぼ反射で、オルガマリーは剛一郎を管制室から蹴り飛ばす。
レフも彼女に続いて管制室の扉に細工を施した。鏡剛一郎が管制室に入って来れないようにする効果のものだ。あんなものは、ここにあってはいけない。
管制室の扉が閉められ、沈黙が広がる。幾何かの沈黙の後、管制室は歓声に飲み込まれた。あの変態を追い払ったのが、所長のオルガマリーだからだ。
「――あ」
やんややんやの大喝采。その歓声の中で、レフは思わず声を漏らした。
自分は何をしようとしていたのか。――あのマスターを、鏡剛一郎を優先で殺さなければならないと考えていた。
自分は今何をしたのか。――オルガマリーと一緒になって、鏡剛一郎を管制室から追い出した。
(や……やってしまったァァァァァァァァ!!)
マスターを殺すために、管制室に爆弾を仕掛けた。丁度、作戦開始時間に間に合うよう、爆破時刻をセットして。――それなのに、爆弾を仕掛けた管制室から剛一郎を放り出してしまうとは、なんたるミスだ!!
頭の中では、他の魔神柱からのブーイングが飛び交っている。周囲の大喝采と合わさり、それはレフの脳内でわんわんと響き渡った。とりあえず、レフは弁明を試みる。
紆余曲折あったものの、『あんな変態に人理修復が成し得るとは思えない』ことを説きまくって、どうにか他の魔神柱を納得させることに成功した。
後に。
自分の仕掛けた爆弾によってカルデアの精鋭マスターたちが意識不明の重体に陥り、カルデアが人類最後のマスターとして鏡剛一郎を認定することになるなんて。
冬木の特異点ではカルデア戦闘服(女性用)を皮切りに、女性用の衣装を身に纏った剛一郎による視覚の暴力にさらされた挙句、最終特異点では“胸元に『あに』と名札が刺繍された女子生徒用のスクール水着”を身に纏い、得体の知れない剣を携えてやって来ることを。
このときのレフ・ライノール・フラウロスは、まだ何も知らなかった。
否――知らないでいられたのだ。幸福なことに。
クロスオーバー先:『つぐのひ 第2話』、『つぐのひ -怨みっ子- 特別編』
・妹の夏服=白いセーラー服⇒『つぐのひ 第2話』隠しルートにて登場
・胸元に『あに』と名札が刺繍された女子生徒用のスクール水着⇒『つぐのひ -怨みっ子- 特別編』にて登場
2の隠しEDで、『主人公の兄に飛びかかって来たのが怨霊ではなく、カルデアのスカウトマンだったら』で分岐する世界。