だんまちの方がまったく思い通り書けてないので、ちょっとした気分転換にもなるかもと。
ギャグがね、書きたいんですよ。
リポート1.その男、不屈につき
「ま、前が見えねぇ……」
とある山嶺の頂上付近、豪雪に覆われた上に今もなお吹雪が吹き荒れるそこは、まるで地球の意志が生物の存在を拒んでいるかのような光景が広がっていた。
その、凶悪なまでに白く、凍てつく雪原を行く青年がいる。
「あんのアマァァァ、人が大人しく言うこと聞いてりゃ調子に乗りやがってぇぇぇ!」
特大のリュックを背負い、バンダナを巻いた青年……彼の名は──
………
……
…
「カルデア……っすか?」
美神除霊事務所にて、その日、彼は所長である美神令子よりとある魔術機関からの依頼を聞かされていた。
美神令子……悪霊退治を生業とするゴーストスイーパーの中でも、間違いなく世界最高峰の実力を持つ才女である。
名の通り見目麗しく、どんな男でも彼女とすれ違えば振り返らずにはいられない……その本性さえ知らなければ、だが。
「そ。人理継続保障機関、通称カルデア。そこが今、幅広く使える人材を集めてるみたいなのよね」
「人理ってなんです?」
「要は、現在過去未来に渡って人類が繁栄してきた、していくための道筋みたいなもんよ。これがある限り、人類は滅亡することなく存続が約束されてるってわけね」
「はあ……なんかピンと来ないっすね。で、それを保障する機関ってのがまたなんとも」
そして本性を知ってなお、その美貌に釣られて付き従う彼もまた、見るからに間抜けでスケベそうな外見に似合わぬ実力を……持ってたり持ってなかったりする、ある種の変人であった。
「アホくさ、人類なんてほっといたって勝手に栄衰繰り返してく生き物じゃない」
私以外は。そう言いたげな美神の表情。
「一銭の得にもなりゃしないのによくやるわー。暇なのね。私はパスだわ」
「一機関掴まえて暇人扱いはないでしょうよ」
苦笑いを浮かべながら、彼は話をまとめた。
彼曰く、筋金入りの守銭奴にして究極の自己中。自身の美貌を盾にやりたい放題。そんな彼女がそうまで言い切るのである。
「つうことは、今回は断るんすね?」
正直ホッとする。
この手の組織モノに関わって、良いことが合った試しがないからだ。
「受けるわよ? 魔術協会からは、民間のGS枠として是非にって話だし、何より霊感が疼くのよ。この件、恐ろしくめんどくさそうなことになるってね」
しかし現実は非情だった。
「え、でもさっきパスって……」
「あんたが行くのよ」
沈黙が落ちる。
「…………………………え?」
「場所はヒマラヤね。山頂付近にそれらしい人避けの結界が張ってあるらしいから、近付けば霊視ゴーグルでわかるんじゃない?」
「ちょっ」
「現地へは……いいわ、知り合いの密輸業者に頼んどいてあげる。帰りは適当にすれば?」
「嫌じ──」
「帰ってきたら……お祝いにご飯でも食べに行こっか? 二人っきりで」
…
……
………
そして現在、
「男ってやつぁー!! 男ってやつぁーよぉー!! 例え九割九分の偽りがあったとしても!! 輝かしい未来への幻想を目指さずにはいられん生き物だからーよぉぉぉぉ!!」
鼻水が作った氷柱を下げながら、彼は雪原を歩いている。
「帰ったら、あのチチ、シリ、フトモモを俺の思うがままに! まずはチチから……いやシリか!」
ギュオオオオオオオオオオオッ
繰り返すが、ここは人類生存が困難な環境であり、彼はもはや立ち位置としては死人に近い場所にいる。
「ぐふ、ぐふふふふ…………いかん、笑いが込み上げてくる」
が、世界規模になりかけたアシュタロス事件をくぐり抜けた、かどうかは問題ではなく……日頃美神から受ける折檻と比べれば春風に等しい状況であった。
「待ってろよぉ、俺のシリー!」
そう、煩悩の続く限りにおいて、もはや自然現象程度で彼の足を止めることは出来ない。
彼の名は横島忠夫。
ゴーストスイーパーである。
導入です。
横島忠夫は多分、未だに彼を越える男の子ってキャラはいないんじゃないかってくらい好きです。