『ジンキ・エクステンドSins』あとがき
どうも、皆さまこんばんは。オンドゥル大使です。
拙作『ジンキ・エクステンドSins』がようやく完全完結を迎えました。感無量ですが、ここではこの作品を書こうと思ったルーツとそしてこれからの展望やら裏話やらをぶっちゃけたいと思います。
まず、何故書こうと思ったか。
それは中学時分ジンキシリーズとの出会いが劇的であったこと、これはなかがきで書きました。この場合は「何故、ここまで好きだったのか」ということでしょう。
実のところ、完全にフィーリングの部分もあるのですが、どこかで魅せられていたのだと思います。綱島志朗先生の紡ぐ物語に。
あと、女の子が無骨な鋼鉄の巨神に乗る、と言うのも当時はとても新しかったと思います。そこにも興味を惹かれたのでしょう。
……いえ、こんな言葉では言い表せないほどに、自分はジンキが好きなのです。
タイミングがよかっただの、巡り会わせだの色々あるとは思いますが、やっぱり、一生に一度は「この作品のために捧げたい」というものがあると思います。
それが自分の場合はジンキであった、と言う話です。
さて、前回の大正ジンキから打って変わって近未来を選んだのは、やはり縛りがきつすぎたのと、一作目を書けばやはり不満点や至らぬ点が出てくるもので、今回のジンキSinsは何度か言っていましたが「自分の中のジンキ観」を丸ごと抽出するために行いました。
ジンキで考え得る全て……ジンキでできること、そしてやると面白そうな事は何か……。
考えに考えた結果、このような物語運びとなりました。
この作品がよかったか、面白かったかは別として、自分は大変満足しています。その点でもやってよかったなぁ、と。なので批判やご意見、何でもどしどし受け付けております。
さて裏話ですが……この長い完結編、実は書く予定はありませんでした。
鉄菜の望んだモリビト《ザルヴァ―トルシンス》も、《トガビトザイ》との月面決戦で出すべきか、それとも完結編的なものを書いて終わらせるべきかはギリギリまで悩みました。
結論として書いてよかったですが、どうなるのかはいい意味でも悪い意味でもライブ感がありました。
元々、自分の物語へのスタンスは一長一短で、あまり深く考えずに物事に取り組める反面、本当に真剣にガチガチに設定を詰められると難しくなる部分もあり……。その辺ではジンキと言う作品の裾野の広さに感謝です。
あとは完結編関係だと、瑞葉の娘でしょうか。
物語最初こそ、独裁国家の強化兵としてしか生きられなかった彼女が母親になる……。書いていても成長したなぁ、と思いました。無論、それはモリビトの執行者達も同じで、
桃に関しては最初のほうこそ生意気な少女であったのに他人をおもんばかれるだけの人間になりましたし、蜜柑も林檎を失いながらも、それでも前に進む覚悟を持つ強い子になりました。また彩芽がセカンドシーズンで出て来てそして鉄菜達の戦いに深い影響を及ぼすのも、難航しましたがやってよかった展開だと思えます。
タカフミは相変わらずかと思いきや、頼れるエースになったり《ゴフェル》クルーの面々もより前へと進む決意を持てたりと、自分でも驚くほどにキャラクターが何段階も上に行けました。それは自分の成長にもつながったと思います。
完結編で出たキャラとしてみればカグラもそうですね。あれはあり方さえ違っていればあの立場は燐華であったかもしれないということと、それと鉄菜ともしかしたら戦うのでは、というミスリードの意味もありました。
燐華は……完結編ではあまり出てきませんでしたが最後の最後まで鉄菜の親友でしたね。それは自分でもいい判断だったと思います。
そして論じるべきキャラと言えば、やはり鉄菜と桐哉でしょう。
まずは桐哉から。
ファーストシーズンでは完全に被害者だったのですが、そこから学び鍛錬し、そして名を捨て全ての守り人になるべく戦う傲慢の徒――。桐哉は最初、正直人気なかったです。出たら露骨に閲覧が下がりました。
ですがセカンドシーズンからちょっとだけ持ち直し始めました。
UD――アンデッドの呼称ですね。
死なずの兵士として恐れられながらも、モリビト打倒のみを至上に掲げる武人。ストイックな生き方はそれなりに反響を得ました。
ですが彼もまた、モリビトに縛られ、そして解き放たれるために戦うはずが泥沼にはまっていったと言えましょう。
何のために誰のために戦うのか――それを見失ったUDは戦士としては優秀ですが「ヒト」としてはいびつでした。
それを矯正したのもまた、モリビトであり鉄菜です。
鉄菜は当初よりクールキャラとして演出するようにしていました。
どのような状況でも的確に判断する、戦士としての人物だと。
ですが彼女には一個だけ欠陥があったのです。
それこそが「心が分からない」という些細な疑念。
実際、何度鉄菜にこの命題を突きつけたか分かりません。鉄菜はその度に苦しみ、そして余計に淵へと落ちていくのです。
鉄菜に「心なんて簡単な事だ」と言わせることはもちろん、何度も可能でした。
ですが、それを言わせてしまうと、鉄菜のキャラが損なわれると思い、本当に、最後の最後、土壇場に、ちょっとだけ心が分かったかな、程度にとどめておきました。
だから、最終局面でのエクステンド化も答えを得たから、というわけでもありません。あれは鉄菜が自分の愛する全ての人々を守るために得た、命そのものの姿なのですから。
そう、エクステンド化、ビートブレイク、エクステンドチャージ――。公式から拝借したものに関しても説明しましょう。
まずはビートブレイク。これは原作では赤緒の持つ特殊能力ですね。血塊炉を強制停止させる能力なので相当追い込まれないと使えないようにしておきました。原作でも二巻以降使ってないですけれどね……。
エクステンドチャージ。これは真説で出て来た人機操縦技術ですが、どちらかと言うと意識したのはアニメ版最終話における金色のモリビト2号でした。まぁこれはトランザムということで。
エクステンド化は本当に! 最後の最後まで入れるかどうかは迷いましたが、それでも入れなければ『ジンキ・エクステンド』ではないと思い、入れておきました。
命との一体化、上位宇宙とのアクセス――。
あまりにも突拍子もないように思われるかもしれませんが自分が読んだ限り、ジンキシリーズにはそれだけの含蓄があると思っています。
命の河、星の命の源と一体化し、そして答えの一端を知る――原作だと青葉がその役目でしたが、これをジンキSinsの主人公である鉄菜に踏ませるのは、実のところ躊躇もありました。
青葉は人機に戦争のための兵器になってほしくない、という軸があります。
比して、この作品は徹頭徹尾、人機は兵器、鉄菜は見方によれば殺戮兵、という青葉とは対極の立ち位置です。
ですが、ビジュアルイメージとしては完全に青葉を意識していました。
黒髪に青いRスーツは完全に青葉のイメージです。
個人的には眼差しだけが異様に厳しい、猛禽類のような瞳のビジュアルのつもりでした。
しかし鉄菜もまた、破壊者の宿命だけではなく、破壊だけではない、戦いの中で掴み取れるものを描いて戦う主人公に出来たのは感無量です。
モリビトと共に、鉄菜は戦い続け、そして心の在り方は分からずとも、「命」一つに報いるためならば戦える――これが完結編で得た鉄菜の答えでしょう。
結局、心とはこれだ、と言わせはしませんでした。
それはもう持っていても、鉄菜が言えばそこまでだと思ったからです。
だから、鉄菜も《ザルヴァ―トルシンス》も得るべき答えは全てを救うのではなく、一部でもいい、罪の肩代わりだったのでしょう。
それが罪の星の虹の空を払い、青空を人類にもたらせたのは大きな終着点であったと思います。
そういえばどうして「地球」ではなく「惑星」なのか、という問いには答えていませんでしたね。
理由はプラネットシェル計画という遠大な設定と、月が観測されていないという事実を馴染ませるため――と後から言えば分かるのですが、実はまーったく! 考えておりませんでした!
ただ地球だとこれまで踏んできた歴史を使用せざる得ないので、全く別の進化系統樹を辿り、命の河の在り方も地球とはまた違う、と示す事で物語の方向性に一つのスパイスを加える形となりました。
あとは突飛な設定でも「惑星」ならどこか読めない展開に入れられるかな、と。
また原作である『人狼機ウィンヴルガ』がまだ(2019年現在)地球かどうか怪しいので、完全に影響された形ですね。
そう……原作である『ジンキ・エクステンド』そして絶賛連載中の『人狼機ウィンヴルガ』……綱島先生の描くジンキワールドに自分はただ単に魅了されただけなのです。
思えば中学の時にアニメ版を録画できなければこのような形での貢献はなかったかもしれません。
偶然の出会いがここに来てまさかの縁で「綱島志朗公式サイト」様にてジンキノベルと言う形で関わらせてもらう形となり、自分もまさか一応は物書きへと成長し、少しは報酬を得られるような立場になるとは思いも寄りませんでした。
通常ではあり得ない邂逅と偶然と、そしてファン精神で成り立った今になったわけですが、この結論に自分は満足しています。
あとはジンキシリーズと綱島先生作品が好きなだけのファンなのですが、ちょっとした展望として、もし機会があればこのジンキSinsでは描けなかった、全く別の作品もやれれば、と思っています。それこそ、大正ジンキの時に感じたように、次への可能性を感じているのです。
まぁまだ全然予定も立っていないのですが、ここは完結まで辿れたことの最大限の感謝と、そしてジンキシリーズと綱島先生のこれから先の栄華も願って。
そういえば『ジンキ・リザレクション』として新作も出るらしいので普通に楽しみです。完全にただのファン目線ですがw
ひとまず鉄菜達の物語はここに完全完結し、そして惑星の未来は決しました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
願わくばこの物語も誰かにとっての特別に成れることを祈って筆を置かせてもらいます。
ここまでありがとうございました!
2019年12月31日 オンドゥル大使より