ジンキ・エクステンドSins   作:オンドゥル大使

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♯388 撃てない理由

 叫んだのは相手の声が聞こえた気がしたからだ。

 

 傲慢なる力の使い手。この星をまた新たなる戦場にしようとする呪われし人機。

 

 相手が自ら識別信号を表示させる。《キリビトエデン》の名を冠した機体に、鉄菜は奥歯を噛み締めていた。

 

 あの時――青い地獄で決着をつけていればこのような事はなかった。だからこれは己の罪でもある。

 

「《モリビトシンス》! 鉄菜・ノヴァリス! 対象をSSクラスの脅威と断定し、これを破壊する!」

 

《モリビトシンスカエルラドラグーン》の銀龍の機体が敵影を睨む。クリオネルディバイダーを四方八方に飛ばし、《キリビトエデン》の操る自在なるR兵装を弾いていた。

 

「リバウンドのビームが、曲がる?」

 

『鉄菜! 《モリビトシンス》を受け取ったな? これより《ノクターンテスタメント》と《イウディカレ》を援護に出す』

 

「茉莉花、重力下でビームが曲がるわけがない。カラクリは?」

 

 その問いかけに通信越しの茉莉花が渋面を作っていた。

 

『……単純なる出力だとしか思えない。あれは純惑星産の血塊炉を使っている。その力がもし、完全に制御可能であるとすれば、エデンの使用しているのは……』

 

 その言葉の赴く先を聞く前に湾曲したリバウンド光条が先ほどまで機体があった空域を引き裂く。まるで自在だ。飴を練るかのように相手はR兵装を操る。それほどまでのエネルギー流転を可能にする方法は、一つしか思い浮かばない。

 

 鉄菜は《キリビトエデン》の四肢に流れる黄金の血脈を目にしていた。

 

「……常に、エクステンドチャージ状態、か」

 

 最悪の想定に茉莉花は首肯する。

 

『こちらも出し惜しみはしていられない。エクステンドチャージでの応戦を許可する』

 

《ゴフェル》艦体が黄金に染まり、主砲を発射する。連邦艦隊はしかし無傷であった。構築された高精度リバウンドフィールドの皮膜と、その内側で燻る黄金の艦隊に息を呑む。

 

「まさか……! 人類側もエクステンドチャージを……!」

 

『皮肉な。俺のもたらした黄金の力が……!』

 

《イザナギオルフェウス》が敵影を切り裂く。二刀を操り、それぞれの太刀を交差させた《イザナギオルフェウス》が敵機を捉えようとして、その機体が掻き消えた。

 

 跳ね上がった黄金の軌跡を宿す人機が《イザナギオルフェウス》を蹴りつける。絶句した様子のサカグチは敵からの一斉掃射を《イザナギオルフェウス》の高速機動で回避していた。

 

『黄金の力……! 末端兵までも!』

 

 スロウストウジャ編隊が出力を上げたプレッシャーライフルで《イザナギオルフェウス》を引き剥がす。思わぬ応戦の波に鉄菜は《キリビトエデン》へと攻撃を入れようとして、敵陣に阻まれていた。

 

《スロウストウジャ弐式》が舞い上がり、プレッシャーソードを放ちかけて、背後へと回していたクリオネルディバイダーによるリバウンドフォールで跳ね返す。

 

 だが一進一退だ。どう足掻いても相手の兵力は圧倒的。

 

 スロウストウジャ部隊は決して性能で劣っているわけではない。統率されたプレッシャーライフルの波はそれだけで《モリビトシンス》の進路を塞いでいた。

 

「近づけない……!」

 

 クリオネルディバイダーを放ち、防御陣を張りつつ敵の中枢に向かおうとするが、その時には既に湾曲する光軸が自機を捉えている。

 

《モリビトシンス》を上空に逃がしつつ、鉄菜は突破口を探していた。

 

《キリビトエデン》を破壊するのには、《モリビトシンス》のエクステンドチャージでも足りない。恐らくエクステンドディバイダーを使用したとしても、相手は戦力を自在に操り、スロウストウジャを壁にして減殺させるだろう。

 

 完全なる攻撃を放つのには、この状況が悪かった。

 

 スロウストウジャ編隊には恐れがない。人機はヒトが操るからこそ隙が生じるものだが、《キリビトエデン》という一を中心とした編成には恐れもなければ人間らしい戸惑いもない。

 

 躊躇のない攻撃と完全に操主の負荷を無視した機動力は、鉄菜と《モリビトシンス》に蓄えられていた経験則を無力化するのに充分であった。

 

「相手に戸惑いがない! これでは、踏み入る事なんて……」

 

 一機の《スロウストウジャ弐式》がプレッシャーソードを引き抜き、《モリビトシンス》と鍔迫り合いを繰り広げる。無論、こちらのほうが出力は上だか、瞬時に黄金に機体を浸食された相手は内側より赤く照り輝いていた。

 

 まさか、と距離を取るよりも早く敵機が溶解し、爆発の光に包まれる。瞬間的な火力を最大限に有効活用にするのには、自爆が最も正しいのは理解出来る。

 

 ただ――理解は出来てもそれを実行するのは不可能のはずだ。なにせ、人機を操るのは人間。その命を散らせてでも相手を圧倒しろなど。

 

 このような戦い、誰も予期しておらず望んでもいない。

 

 鉄菜は背後より組み付いてきた《スロウストウジャ弐式》がまたしても赤く煮え滾ったのを視野に入れていた。

 

 覚えず蹴り上げ、引き剥がす。クリオネルディバイダーを用いて爆発を最小限に抑えようとするも、誘爆が貴重なクリオネルディバイダーを道連れにした。

 

『何を迷っている! 相手は自爆も辞さない敵だ! 鉄菜、エクステンドディバイダーで敵陣を一掃しろ!』

 

 茉莉花の命令に、分かっている、と応じつつも鉄菜はエクステンドディバイダーを躊躇っていた。覚悟のある相手に放つのならば、それは自分でも許している楔だ。しかし、覚悟のない、全く意図していない相手に放つ刃は? 剣閃が洗脳された相手を吹き飛ばすのだけは……。

 

『鉄菜! 迷っていてはやられるぞ! 桃と蜜柑を出した! お前は《キリビトエデン》に集中して――』

 

「……出来ない」

 

『何だと?』

 

「私は……これ以上、無垢なる人々を、手にかけるなんて……」

 

 指先が震える。視野が霞みコンソールさえも見えなくなっていく。痺れた末端神経が全ての戦闘行為を拒絶していた。胃が捩じ切られそうなほどに痛い。今にも吐き出しそうだ。

 

『今さら何を言っているんだ! この敵も今までと同じだ! 戦わなくては被害が広がるばかりだぞ。鉄菜、今はエデンを倒す事だけを目的に掲げろ! そうでなければ押し負けてしまう!』

 

 茉莉花の言葉は正論だ。しかし、エデンは卑劣にも洗脳した人々を前線に立たせる。鉄菜と《モリビトシンス》はそれを武力以外で後退させる術を知らない。

 

 それどころか、後退するほどの頭もないのだ。

 

 相手から撤退と言う二文字は完全に失われている。エデンに与する限り、人々はいたずらに死んでいくばかり。

 

 これでは何も救えない。何もかもを壊してしまう、破壊者のままだ。

 

《スロウストウジャ弐式》がプレッシャーソードを抜刀し、両脇からそれぞれ一機ずつ襲いかかる。《モリビトシンス》はクリオネルディバイダーで押し退けたが、真正面から飛びかかってきた相手へと鉄菜は習い性の剣筋を放っていた。

 

 Rパイルソードが敵のコックピットを射抜く。

 

 よろめいた敵であったが、それでもなおプレッシャーソードを振るう力は収まらない。振るわれた剣閃にこちらが後ずさる。

 

《モリビトシンス》の血塊炉すれすれを掻っ切った一撃に、鉄菜は言葉を失っていた。

 

「……洗脳だけじゃない。コックピットを撃ち抜いてもなお、襲ってくるのか……」

 

 人機のシステムそのものに介入している。操主がどれだけ生きようとしていても関係がない。エデンは全てを自らのためだけに使っている。

 

 それは今まで対峙してきたどの敵よりも卑怯で、そして醜悪であった。

 

 鉄菜は《モリビトシンス》に黄金の輝きを滾らせる。エデンの行いに自らの内奥から発せられる憤怒の熱が思考を白熱化させていた。

 

 ――許してはいけない。自分が、罰する。

 

「エクステンド、チャージ!」

 

 加速度で飛び抜けた《モリビトシンス》が《スロウストウジャ弐式》を弾き飛ばし、《キリビトエデン》へと斬り込もうとする。

 

 その道筋を他の機体が阻んだが、それさえも関係がなかった。

 

 Rパイルソードに熱を充填させ、そのまま掻っ切る。壁となったスロウストウジャが瞬く間に砕け散った。

 

 身を焼く怒り。敵を許すまいとする己のエゴも渾然一体となって、今、剣として結実する。鉄菜はRパイルソードに光を溜め込んでいた。赤く煮え滾った激憤が灼熱の剣閃となって瞬く。

 

「エクステンド――ッ!」

 

 そのまま《キリビトエデン》に向けて打ち下ろしかけた、その時であった。

 

 ――嫌だ、死にたくない。

 

 切り込んできた思惟の声に鉄菜は当惑する。幻聴かと疑ったが、確かに脳裏を震わせる声は自分に向けて放たれている。

 

 その主はこの空域でエデンによって指揮されている無数のスロウストウジャを含む人機部隊より放たれていた。彼らとて死に場所をここと規定して挑んでいるわけではない。

 

 全て、エデンの掌の上で操られているのだ。

 

 彼らの懇願が、無垢なる人々の声が、鉄菜を苛む。

 

「やめろ……! 撃たせてくれ……ッ! エデンさえ撃てば、終わるはずなんだ……」

 

 そう、終わるはず。そう決めつけて戦わなければ、先ほど散らした命は何だったのか。今まで殺してきた命は何だと言うのか。

 

 しかし、鉄菜は渋ってしまう。

 

 鈍らせた刃の隙を敵機は見逃さない。スロウストウジャ編隊がプレッシャーライフルを撃ち込み、エクステンドディバイダーが中断される。

 

 掻き消えた光の残滓に好機だと判じたのか、《キリビトエデン》からの一斉掃射が《モリビトシンス》を蝕んでいた。

 

 注意色に塗り固められたステータスに、鉄菜は《モリビトシンス》を急上昇させる。

 

 俯瞰したのは、醜い喰い争いであった。人間同士が分かり合えるはずのない戦地で殺し合っている。

 

 エデンを倒せば全て済む話、ではもう収まらないだろう。

 

《ゴフェル》より放たれた桃と蜜柑のモリビトが敵影を切り崩していく。だが、その動作にも苦渋が滲んでいるのが窺えた。

 

 自分だけではない。皆が自らを切り離しつつ戦っている。

 

「……私さえ、エデンに到達出来れば……」

 

《モリビトシンス》の突破力で並み居る敵影を全て薙ぎ払い、《キリビトエデン》に最後の一撃を下せばいいはずだ。

 

 だと言うのに、どうして躊躇う? これまでならば出来たはずだ。これからだってそうであるはずなのに。

 

 どうして、アームレイカーに入れた指先がこうも震えている。どうして、寒くもないのに身体を押し包む震えを止められない。

 

 鉄菜は荒立たせた呼気を詰めようとして、最接近した《スロウストウジャ弐式》部隊に奥歯を噛み締めていた。

 

 己を殺し、剣を振るう。それはかつて自分の鏡像を殺してきたあの日々に似ている。自らが何者なのかも知らず、ブルブラッドキャリアの尖兵となるべく、思考を放棄して戦ってきた、あの退廃の日々に……。

 

 どうして逆戻りしているのだ、と鉄菜は頭を振っていた。

 

「……私は、結局破壊者なのか……。殺す事に、この身は費やされているのか……」

 

 壊す事しか出来ない。そうではないのだと、二年前の戦いで知ったはずの身はこの戦局ではあまりに無力な張りぼての理論であった。

 

 エデンに辿り着けない。相手を殺し尽くす、と規定すればいいものを、そうだと断じられないのは脳内のバグか。

 

 どうしても硬直した身体を動かせなかった。

 

 敵陣のプレッシャーライフル掃射に《モリビトシンス》を稼働させる事さえも出来ない。じりじりと追い込まれているのが分かった。

 

『鉄菜! 何をしている! 棒立ちになっていれば如何に《モリビトシンス》とは言えただの的だぞ! エクステンドディバイダーで、《キリビトエデン》を撃て!』

 

 茉莉花の言う通りだ。自分がここで弱気になってどうする。

 

 しかし、撃てない。どうしても、それだけは出来ないのだ。

 

「……すまない、茉莉花。今の私に、撃つ権利はない。それだけの覚悟が……どうしても携えられないんだ」

 

『エデンが全ての元凶だ! エデンさえ討てばこの戦局は収まる! それが出来るのは《モリビトシンス》だけなんだぞ!』

 

 悲鳴のような声と共に轟音が通信域に混じる。《ゴフェル》とて新連邦艦隊と真正面から戦うようには出来ていない。

 

 時間はあるようで全くないのだ。

 

 迷っている暇はない。

 

 今すぐに剣閃を打ち下ろし、《キリビトエデン》を破壊しなければならないはずなのに――。

 

「……何でなんだ。どうしたって言うんだ! 鉄菜・ノヴァリス! 私は……!」

 

 何故、撃てないのか。何故、単純に考えられないのか。

 

 そうだ、大を生かすために小を殺せばいい。多くを生存させるためには少なからず犠牲はつきものだ。

 

 そこまで論理的に計算出来ているのならば何が不確定要素だと言うのだ。

 

 何も変わりはしないはず。今までの戦いとこの戦地、何が違う?

 

 自分の意志ではないから? そんな事で踏み止まっているのか? 今までだって様々な相手を墜としてきたはずだ。相手の信条がアンヘルにあろうがどの国家陣にあろうが、エホバを信奉していようが、ラヴァーズの兵であろうが、関係がない。

 

 今まで殺してきたのと何が違う?

 

 この空域にいるのは確かに、無垢なる民だ。

 

 この戦いでの意識はほとんどないはず。それでも、相手は敵だ。墜とすべき、敵であるはずなのだ。

 

 それは分かっている。分かり切っているはずなのに。

 

 指がどうしても引き金を引けない。最後の踏ん切りがどうしてもつかない。

 

 鉄菜は戦慄く視界の中で、首を横に振っていた。

 

「駄目だ……すまない、みんな……。私は、何にも成れない。破壊者にも、再生者にも……。何にも成り切れない半端者だ……」

 

 その時、不意打ち気味の照準警告に鉄菜は《モリビトシンス》を急速後退させる。

 

《キリビトエデン》が新たなる火線を咲かせるとの同時に、今までモニターされていなかった援護砲撃が《ゴフェル》を襲っていた。

 

 地下空間より這い出たその生命体に鉄菜は息を呑む。

 

「古代、人機……。何故……」

 

『星は我らに下った。これこそがその証。古代人機、星の守り手は我々を支援する。これほどまでに勝利が似合う筋立てはあるまい』

 

 まさか、と鉄菜は問いかける。

 

「本当なのか……。本当に、お前らでさえも……!」

 

 その言葉への拒絶のように古代人機の砲撃が《モリビトシンス》の肩口を抉っていた。思わぬ伏兵に《ゴフェル》からもうろたえの声が上がる。

 

『古代人機……? まさか、あれは自然現象のはず。コントロールなんて……』

 

『《ゴフェル》を後退させて! モモと蜜柑が前を固めるから、艦体を出来るだけ後ろに! そうじゃなければ狙い撃たれる!』

 

 桃の指示に、《ゴフェル》が急速後退に入る。この戦局での後退は実質的な敗北行為に等しい。それでも、このまま《ゴフェル》が轟沈される憂き目に遭うよりかはマシなのだろう。

 

 桃の駆る白と黒のモリビトが高出力R兵装の腕を突き出す。丸太のような腕そのものが高出力Rクローと化し、砲撃が敵スロウストウジャ部隊を追い込んでいく。

 

 その最中、滑走する蜜柑の《イウディカレ》が高機動し、敵の懐に入っていた。ライフルが可変し、銃火器の下部に配されたリバウンド刃発振装置より格闘兵装が引き出される。

 

 斧を顕現させた蜜柑のモリビトがすれ違い様に敵影を掻っ切る。それでも敵の戦力の三分の一も追い込めていない。

 

《スロウストウジャ肆式》が新型の拡散プレッシャーライフルで敵を出来るだけ巻き込んで誘爆させようとするが、それを掻い潜って《スロウストウジャ弐式》部隊が《ゴフェル》へと向かってくる。

 

『こんの! 傀儡兵士共がァッ!』

 

《イクシオンカイザ》に搭乗した血続兵士から殺意の波と共に自律兵装が放たれていた。四方八方へと編み出された攻撃網がスロウストウジャ部隊を押し込んだかに思われたが、その爆発を逆利用し、相手が熱源をかく乱させて《イクシオンカイザ》の死角へと潜り込む。

 

 鉄菜はそれを目にして咄嗟に《モリビトシンス》を稼働させていた。

 

 放たれたのはほぼ同時。

 

《イクシオンカイザ》を絡め取ろうとした銃撃網を《モリビトシンス》の躯体が受け止めていた。

 

 リバウンドフォールでもない、ただ盾になっただけの機体が瞬時に警戒色に塗り固められる。

 

《イクシオンカイザ》から声が迸っていた。

 

『モリビト……、何故……何故私を庇った!』

 

「……死すべきではないと、思ったからだ」

 

 そう返答するのがやっとであった。頭部コックピットが熱でひしゃげ、いくつかのガラス片がRスーツを貫通して突き刺さっている。

 

 心肺機能をやられたらしい。呼吸も絶え絶えの身体がそのまま《モリビトシンス》ごと、力を失って虚脱する。

 

 その機影に向かって《キリビトエデン》が火砲を浴びせようとする。

 

 鉄菜は、これが終わりか、と瞼を閉じていた。

 

 応戦する気力も湧かない。かといってここで生き抜いたところで自分はどうすればいいのか分からない。

 

 案外、自分にはお似合いの死に様かもしれないとさえも思えてくる。

 

 こうして惑ったまま死んでいく。

 

 何も成しえず、何も出来ないまま。何にも成れないまま、死んでいく。

 

 傀儡となった兵士に憤るわけでも、エデンに対して怨嗟を募らせるわけでもない。

 

 この戦場にあるのは虚無ばかりだ。殺し合ったところで、彼らは一生諍いの原因さえも分からぬままにこの戦地を呪うであろう。

 

 そして知るのだ。

 

 エデンが原因であったとしても、結局殺し合ったという結果。その冷酷なる結果こそが世界を回す。

 

 また、人が人を信じられない暗黒時代の幕開けだ。

 

 そうならないように戦ってきた。そんな未来を壊すために、それだけのために戦ってきたのに。

 

 自分は、この手が掴み取ったのは結局、虚構の世界のみであった。

 

 その実感が滑り落ち、直後に炎に抱かれた《モリビトシンス》を鉄菜は感じていた。

 

 


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