ジンキ・エクステンドSins   作:オンドゥル大使

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あとがき

 あとがき

 

 拙作、『ジンキ・エクステンドSins』をここまで読んでくださり、ありがとうございます。あるいは長過ぎるのでここだけ読んでいらっしゃる方もいるでしょうか。オンドゥル大使です。

 なかがきである程度、ジンキと言う作品との出会いに関しては触れたので、ここでは何故ここまで長大かつ壮大な話になってしまったのかも紐解きながら、このお話の余韻を感じたいと思います。

 そもそもセカンドシーズンになるのは最初から決めていたのですが、当初の予想を大きく上回り、ここまで長くなるのに、実は一回己の中で中断期間を挟んだのです。

「さすがにもう書けない」……こうなったのは初めてと言ってもいいでしょう。

 どこ辺りでなったのか、と言うと最終章の前で完全に燃えつきました。

 そう、残すところ最終章だけだったのに、あそこで全てが途切れてしまったのです。

 違和感を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。最小限にしたつもりですが、三か月近くさじを投げた形となりました。

 長編を書き上げるのに体力と精神力と言うのは両方使うもので、自分は前者には自信がないですが後者には自信があったのです。

 それをこの作品の終末に向けて書く過程で大きく誤認していたのだと認識し直しました。

 結局は「若さ」に任せた無茶だったのだと。

 ……まぁ、私の無茶を書くためにあとがきの筆を執ったわけではありません。

『ジンキ・エクステンドSins』、この物語は一人の人造人間である少女が苦悩しながらも「心の在り処」を模索する物語であったのだと今、全体を俯瞰すれば思います。

 鉄菜は何度も「心とは何だ?」と問いかけます。それはきっと、作者である自分にとっての問いかけでもあったのでしょう。

 実際、心を描くのに、複雑な過程は要りません。みんなが当たり前に感じている事や、普段なら気にも留めないこと、そこに「心」はあるのだと、有り体に言ってしまえばそう結論付けてもよかったのです。

 ですが、鉄菜は何度も何度も、その命題に苦しみます。

 そのテーマを口にする時点で、ある程度は分かっているはずなのに、それでも、何度も問い返す……それが結局、ジンキSinsのメインテーマであったのだと思います。

 心を理解しているはずなのに、人造人間である自分には心がないのだと思い込んでいる主人公……ある意味では自分にとっては挑戦でした。

 苦戦する度に精神的には強くなるのに、それでも迷い続ける。

 今にして思えばその苦悩がなければこの作品は完成しなかったかもしれません。

 鉄菜が悩み続け、そして答えを模索し続ける限り、ジンキSinsは安易に終わってはならなかったのです。

 なので、と言うと失礼ですが原作であるジンキシリーズに付き物である「奇跡」や「絆」を極力出さないように努めました。

「奇跡」で鉄菜が救われてしまうと、それはそれでよくないと感じたのと「絆」は使い過ぎれば陳腐になるのだと思っていたからです。

 なので意図的に鉄菜の単独ミッションになる時や、あるいは報われない戦いのシチュエーションが多かったと思います。

 セカンドシーズンではファーストシーズンで得た世界の答えに対する鉄菜達なりのアンサーを全力でぶつけられればと思って描きました。

 ブルブラッドキャリア本隊から追われ、さらに地上ではずっと苦戦状態であったのは読者の方々からしてみればフラストレーションの溜まる展開であったかもしれません。それでも、鉄菜の新しいモリビトであるモリビトシンスには苦戦を強い、桃や蜜柑にも残酷な運命を課しました。

 その結果が報われたか、と言われるとまだちょっと分からないです。

 あ、それと二期を語る上で欠かせないのが燐華とUDの存在でしょう。

 燐華は名前を捨て、身分を偽り、全てを過去に置いてアンヘルの兵士としてモリビトを憎む役割になりました。

 また結果論でありながらUD――桐哉も過去を捨て、名前を捨て、全てを投げ捨てでもモリビトを追う恩讐の徒になったのは、ある意味では宿命であったのかもしれませんね。

 多分、一期でこの兄妹が嫌いだった人達も、二期の扱いには満足いったのではないでしょうか? 特にUDに関してはかなりストイックに書いたので、自分でも書いていて気持ちのいいキャラクターでした。

 一応は娯楽作品を標榜し、出来るだけ人機同士の戦闘をメインとした作品にしたつもりでしたができていなかったのならばそれは自分の力不足です。すいませんでした。

 そして、この一年間程度で個人的な変化もありました。

 綱島先生の公式サイトでジンキノベルという形でジンキ・エクステンドのファン小説を書かせていただくようになったのです。

 そういうのも含めて、分からないものだなぁ、と思います。ただのファンの一人であったのが綱島先生を応援できる一つの力になれているのですから。

 ここからは二期のメカニックに関してのお話をば。

 モリビトシンスに装着される武装、クリオネルディバイダーですが、これはジンキ原作に登場した兵器とほぼ同じですね。違うのはエクステンドディバイダーと言う必殺技を得たことでしょうか。この必殺技、結構気に入っております。普段寡黙な鉄菜が叫ぶからこそ、意義があるとでも言いますか。

 そして、モリビトシンスは最後まで読まれた方なら分かると思いますが、一期の主人公機、シルヴァリンクの血塊炉を組み込み、Sを得たまさしく鉄菜の後継機であったことも自分としては大満足です。

 続いてナインライヴス。これは純粋に可変人機が欲しかったのと、桃のキャラクター性を考えると「何度やられても倒れないしぶとさ」みたいなのが成長した桃には欲しかったのでナインライヴス=しぶとさみたいな部分があります。

 イドラオルガノンですが、この名前はラテン語の組み合わせですね。特に意味はないのですが、字面で選んだ感じです。複座人機にしたのはやはり上操主下操主は触れておかなければ、というリスペクトありきです。

 続いてこの作品独自の設定を帯びたイクシオンフレーム。イクシオン、には罪人の意味があったので即採用したのと、モリビト、トウジャ、キリビトの既存人機に当てはまらない機体を出すことによって緊張感を演出したかったのもあります。また裏設定としてスロウストウジャの基礎フレームデータにモリビトの能力を上乗せした、というものがあります。アムニスがブルブラッドキャリアと繋がっていたのでモリビトのデータを独自で持っていたというわけですね。

 まぁ他にも七つの大罪をモチーフにしたトウジャシリーズや、色んな人機が出ましたがここでは置いておきましょう。

 鉄菜を含むブルブラッドキャリアは平定された世界を見守り続けることを選びました。それこそが自らの使命だと信じて。この結末、実は相当悩みました。

 トガビトザイを倒すところまでは結構前に出来ていたのですが、トガビトザイの強さの設定や、最終決戦で用いるモリビトシンスカエルラドラグーンが実はポッと出てあったため、どうやってトガビトを倒すのか、その後どうするのかはノープランだったのです。

 まぁ言い方を悪くすれば「俺たちの戦いは続くエンド」だったわけなのですが、どこまで鉄菜の心情を発露させるべきかは吟味いたしました。

 あとは燐華が当初は死ぬかもしれなかったり、UDとの決着が違ったりと、紆余曲折ありましたが、これにて『ジンキ・エクステンドSins』本編は一応の幕引きです。

 ……そう、この物語には完結編があるのです。

「こんなに長いのにもう要らん」という言葉はありがたくいただいておきましょう。

 自分の書いた一つのストーリーの中では最も長く、そして最も複雑なお話となってしまいました。

 完結編は最終回より一年後のストーリーとなります。

 文字通り、全てを「完結」させるために書いたお話ですので、今度もまた終わらないという事はございません。次で絶対にジンキSinsは終わります。

 なので、もしよろしければもう少しだけお付き合いいただければ幸いです。

 また、こんな長くてちょっと苦痛かもしれないお話でも、批評、感想、何でもお待ちしております。「長いんじゃ、クソボケ!」でも構いません。少しでもこのお話に何かあればじゃんじゃん待っておりますので。

 ――ということであとがきのようでこの部分も実はなかがきでした。

 本当のあとがきは完結編の後に。

 二週間のお休みの後に、完結編を更新していきたいと思います。よろしくお願いします。

 最後に、ジンキに関わらせてもらった事と、そしてジンキに出会えたことに最大限の感謝を。『人狼機ウィンヴルガ』がなければこのジンキSinsは存在しておらず、ジンキ・エクステンドがなければそもそものお話でしょう。

 綱島先生の生み出す物語に敬意を込めて、このあとがきを〆させていただきます。

 ありがとうございました。願わくば、完結編もお楽しみください。

 

2019年10月1日 オンドゥル大使より

 




本編はこれにて終了――そして物語は完結編、『ジンキ・エクステンドSins Star Songs of an Old Primate』へと二週間後に続きます。よければこちらもよろしくお願いします。


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