ジンキ・エクステンドSins   作:オンドゥル大使

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♯111 四機目のモリビト

 担当官から聞かされたのは《ノエルカルテット》の状態のみである。

 

 桃の担当官はそれだけだと言わんばかりの素っ気なさであった。

 

「《ノエルカルテット》は戦闘に不都合はない。それに、封印武装も解除していないところを見るに、何も言うべき事はない」

 

 そう結んだのは黒衣を身に纏った老婆であった。どこか達観したように桃を見据えている。

 

「でも、《ノエルカルテット》は現状、問題はなくってもここから先の戦いで……」

 

「三号機に関して言うべき事は以上だ」

 

 異論を挟ませないのも相変わらずであった。桃はもっと話したかった。担当官は、執行者からしてみれば一番に近い他人である。

 

 鉄菜の場合は分からないが、彩芽の場合は恐らく理解者だろう。だが自分は。自分の担当官は一度として自分を人間として理解しようとはしない。

 

 人機、《モリビトノエルカルテット》を動かすために想定されたパーツとしてしか見られていないのだ。

 

 バベルに関しての不具合もなければ、ロデム、ロプロス、ポセイドンにも特筆した問題点はない。《ノエルカルテット》はこれまで通りの作戦行動を実行せよ、という見方に桃は言葉を継いでいた。

 

「でも、《ノエルカルテット》だって問題は浮き彫りになりました。その……耐久性能だとか、物量戦を前にして一方的だとか、格闘戦に弱い事だとか……」

 

「それは《ノエルカルテット》に求められる条件ではない」

 

 断じられた声音には人間らしい慈悲もない。その通りだとも。《ノエルカルテット》は拠点防衛、及び敵地制圧用の人機。格闘戦を想定していなければ、物量戦闘に秀でていなくても何の問題もない。

 

 だが、それはデータ上での話であって、《ノエルカルテット》に問題がないという話には繋がらないのだ。

 

「……二号機、《シルヴァリンク》に関しても聞かないんですね」

 

「報告書にして提出。今書けと言っても書けるわけがない」

 

 何を当たり前の事を。そのような言い草に桃は拳をぎゅっと握り締める。

 

「そう、ですよね……。あの、モモの、特別な能力に関しては」

 

「追及しない。一度の実行でなおかつ敵人機は全て葬り去った。データは残らない。ゆえに責任能力を追及する必要性はない」

 

 冷静な言葉振りに桃は何も言えなくなってしまう。この担当官の前では、自分は何一つ雄弁ではない。

 

「了解、しました。その、三号機操主、任務に戻ります」

 

「任務続行を承認。戻ってよし」

 

 本当にそれ以外に言う事など一つもないようであった。桃は身を翻しかけて、そういえば、と口にされた声に僅かに期待する。

 

 自分に、何か価値があるのか。振り向いた桃は冷たくあしらわれた言葉に閉口する。

 

「別の担当者の一人が、三号機操主に用があると言っていた。話は彼に聞くように」

 

 目線も見ないのだな、と桃は悔恨を噛み締める。こちらを一顧だにしない老婆の担当官に桃は俯いた。

 

「了解、しました」

 

 ラボを出ると待ち構えていたのか、歳若い男の担当官が声をかけてきた。

 

「やぁ、君が桃・リップバーンだね? データでは参照したが本物は初めてだなぁ」

 

 まるで珍獣にでも行き会ったかのような言い草。桃は冷たく言いやる。

 

「……何の用なんですか」

 

「おっと、失礼。機嫌が悪かった?」

 

「別に。こんなのはいつもの事ですよ」

 

 目も合わせずに歩き出すと男の担当官は早口で囁いた。

 

「……知っているとも。君の担当官は無口で、無表情で、それでいて何もかも不干渉だ。それでは多感な時期の君のような少女では愛情のなさを感じてしまうんじゃないかな?」

 

「愛情なんて、ブルブラッドキャリアの執行者には必要ですか」

 

 憮然として返した言葉に男は笑い飛ばす。

 

「こりゃ失礼。でもまぁ、あの人はそういう人だというのは有名だ。でもだからこそ、君のような特殊な能力を持つ人間を客観的に見られるのだろう」

 

 早口でお喋りな担当官だ。何を自分に期待しているというのだろう。

 

「……耳聡いんですね」

 

「職業柄、ね。他の担当官に関しても評判を言おうか。ニナイシステム担当、別命一号機操主担当官は冷徹で有名だ。他人の前では猫をかぶっているが、あれの本性は冷酷非道。何があっても作戦実行をメインに考える、典型的な研究者タイプだ。だからこそ、一番精神面で問題を抱えていた一号機操主を今の状態にまで回復させられたという功績もある。二号機操主の担当官は僕も友人だ。彼とはよく喋る」

 

「じゃあ、クロの事も」

 

「話すとも。何が聞きたい?」

 

 このお喋りに話させると余計な事まで首を突っ込みそうだ。桃はあえて何も聞こうとは思わなかった。

 

「……いえ、何も」

 

 担当官は肩透かしを食らったように大げさに口にする。

 

「そうかい? 鉄菜・ノヴァリスに関して、君ら二人は知らない事のほうが多いはずだ。この場合、聞いておくのは何も不都合じゃないとは思うがね」

 

「クロにだって、知られたくない事の一つや二つはあるはずです。それを、他人の口から聞かされるのは不愉快でしょう」

 

「不愉快、ねぇ。あれがそういう感情を抱くように設計されているかどうかは別だけれど」

 

「話って何なんですか。余計な事なら担当官越しでも充分でしょう?」

 

 追及した桃に彼は肩を竦める。

 

「一番に年少の君なら、何となく話しやすいかなと思ったんだが、案外大人みたいだ」

 

「他人の事をとやかく言うのが子供だって言うのなら、子供じゃないつもりです」

 

 担当官はすっかりこの言い合いに参っているらしい。大仰な仕草で額に手をやっておどけた。

 

「こりゃ、失敬。なら、一人前のレディとして扱わなければならないかな?」

 

「いいですよ。子供扱いでも。どうせ、そうだと思って話しかけているんでしょう」

 

「擦れてるねぇ。でも、ま。これから話すのは割と大事な事だから、あんまり子供じみた反応でも困るんだけれどね」

 

 何を話すというのだろう。まさか、鉄菜を降ろすか降ろさないかの議論だろうか。

 

 二号機から降ろされる事を鉄菜は極端に恐れている節がある。自分の一言で鉄菜がお役御免になる可能性だってあった。

 

「クロの事なら話す気はないですよ」

 

「半分は鉄菜・ノヴァリスに関しての事でもある。だがもう半分は違うか。ブルブラッドキャリアの未来のための話し合いだ」

 

 前方に回った担当官に桃は不穏な眼差しを向ける。

 

「……退いてください」

 

「話し合いには応じてくれる?」

 

「邪魔をすれば話し合いにもなりません」

 

「じゃあ、交渉。僕の話を聞いてくれれば退いてあげよう」

 

「……話にならない」

 

 踵を返そうとして、担当官が背中に投げかけた。

 

「モリビトに関する重要な話だ」

 

 足を止める。モリビトに関する話をどうして自分に振る? 意味が分からずに振り返ると担当官は笑みを浮かべた。まるで詐欺師のような笑みである。

 

「モリビトに関して、という事はモモなんかよりもアヤ姉やクロを交えたほうが」

 

「いや、あの二人は冷静になれない。一番冷静なのって案外、君だ。桃・リップバーン」

 

「三号機の役割の事を言っているのだったら、もうそれも無効ですよ。第二フェイズは終わりましたから」

 

「これは惑星における執行フェイズとは違う。次世代の話だ」

 

 次世代と言われても全くピンと来ない。担当官は歩み寄ってきて桃の顔を覗き込む。

 

「興味はないかい? 全く異なるモリビトだ」

 

「……何でモモに」

 

「君が、操主になれる可能性があるからだよ」

 

 操主選定条件はあらゆるチェック項目が加味される。その中で担当官の推薦は一番の優先順位を持っているのだが、この担当官は自分の担当ではない。今の今まで会った事さえもなかった。

 

「……何を知っているって言うんです」

 

「データ上での君らの活躍かな。その上で、適性を見ると君が一番だ。ずば抜けている。だから今回はお願いに来た」

 

「研究者なんですか」

 

「表向きはね。その新型のテスト操主を探しているところだ」

 

「裏があるんですか」

 

 担当官は視線を中空にやって言葉を返す。

 

「裏と言われれば、本当はこんな事をやってはいけない立場、かな?」

 

 ふざけたような物言いをする。桃はすぐにでも会話を打ち切りたかったが、どうやらこの担当官の言いなりになるしか、今、この場を脱する方法はないらしい。

 

「……何なんですか、そのモリビトは」

 

「おっ、興味出た?」

 

「そう仕組んでいるんでしょう。……わざとらしい」

 

「わざとらしい大人は嫌い?」

 

 桃は視線を逸らして口にする。

 

「ふざけた大人はもっと嫌いです」

 

「そりゃ失敬。でもまぁ、興味があるのならば来て欲しい。驚くと思うよ。ところで、時に、君らはどれほどの権限を与えられている?」

 

 唐突な質問に桃は面食らった。

 

「どれほどって、執行者レベルですけれど」

 

「だとすれば開発部門に関しては素人同然というわけだ」

 

「……ブルブラッドキャリアは部門ごとに担当が分かれています。協力者の事を執行者が分からないように、部門に隔てられたところには介入出来ません」

 

「素直に分からない、って言えばいいのに。難しい言い回しを使うな」

 

 桃はこの男の担当官が早くも嫌いになり始めていた。

 

「何をさせたいんですか」

 

「君があっと驚くところを見たい」

 

 歩み出しながら、担当官は鼻歌を混じらせていた。向かったのは下層区画である。エレベーターで潜るのだが、執行者権限では入れないエレベーターのカードキーが用いられていた。

 

「ここに来るのは?」

 

「初めてに決まっています」

 

「じゃあ無重力に慣れてくれよ。この下は1Gじゃないんだ」

 

 シースルーのエレベーターは資源衛星を下っていき、やがて下層ブロックへと差し掛かった。重力の楔が解け、エレベーターの中で桃は浮かび上がる。

 

「ほら」

 

 担当官が手を伸ばした。桃はその手を突っぱねる。

 

「かわいくないなぁ。でも、君にはピッタリだ。きっと驚くよ」

 

 到着したエレベーターホールは円形にくり抜かれており、重力を無視した区域分けになっていた。

 

 下へと潜るように出来たブロックを下っていくとオレンジ色で構築された区域へと変わっていく。

 

「この辺はブルブラッドキャリアの人達でも研究部門の人しか入って来ないんだ。だから、執行者で来るのは君が最初になる」

 

 まだ建造中のブロックで無数の人々が担当官に手を振った。ここではどうやら顔の知れた人物らしい。気安い笑みを振り向ける担当官に桃は問いかけていた。

 

「人機の開発者なのですか?」

 

「当たらずとも遠からずだ。君は知っていただろうか。モリビト三機がそれぞれ別の開発者が別のコンセプトを伴って建造した事を」

 

 桃はバベルで一度閲覧したモリビト三機のデータを思い返す。

 

「一号機は、モリビトタイプの純正品を求めて製造された、いわば生粋のモリビトの姿形をしている。機動性に優れ、重火器を使用するのもモリビトタイプの安定性をはかっての事」

 

 担当官は首肯し、その名前を紡ぐ。

 

「《モリビトインペルベイン》、開発コードは〝破滅への引き金〟。我々ブルブラッドキャリアは惑星への最初の攻撃に際し、あの機体が相応しいと感じていた」

 

「次は二号機。でも、二号機には特殊な兵装のせいで開発が大幅に遅れた」

 

「アンシーリーコートだろう。元々はトウジャの武装だ。一極化したエネルギーの皮膜を相手にぶつけ、敵を完全に粉砕する。トウジャとモリビトでは機体の重心が大きく異なるからね。さらに変形機構を持たせた二号機は三号機開発よりも大きく遅れを取る事になった。加えて操主の特殊性。これは言わないほうがいいかな。君は自分で知りたいようだし」

 

 気に食わない言い草であったが、桃は静観しておく。

 

「アンシーリーコートだけで、そんなに開発が遅れるものなんですか」

 

「フルスペックモード時における眩惑作用さえも加味した設計だからね。あれのせいで遅れたのは確かだ。《モリビトシルヴァリンク》。開発コードは〝鋼鉄の絆〟か。あまり二号機操主にはそぐわぬ名前だ」

 

 区画を抜けていくと青白く発光する整備デッキへと通された。宇宙服を身に纏った者達が担当官に敬礼する。

 

「ここは、関係者以外立ち入り禁止じゃ……」

 

 桃を見やっての言葉に担当官は手を払った。

 

「モリビトの執行者様だよ。充分に関係者だ」

 

「こ、これは失礼を……」

 

 桃が無重力を流れていくと隔壁に遮られた場所へと至った。人が通れるように出来ている小型の扉へと担当官がカードキーと網膜認証でロックを解除する。

 

「三号機。《モリビトノエルカルテット》。開発コード、〝福音の四重奏〟。三機のサポートメカと我々ブルブラッドキャリアの脳とも言えるシステム、バベルへの閲覧権限を持つ。高出力R兵装を装備し、拠点制圧、あるいは防衛任務において高い適性を持つ機体。弱点があるとすれば、格闘戦術には極めて弱いところか。ま、相手は強力なR兵装を潜り抜けてでも近づこうとは思わないだろうがね」

 

「……それが知っている事の全部ですか」

 

「全部とは言わない。他にも知り得ている事はあるが、ま、伏せておこう。それよりも、この先にいる人機に、君は驚愕するだろう」

 

「驚愕……? モリビトタイプはその三機しか製造されたなかったはず」

 

「そのはず、だろう。バベルにも複写されなかった記録だ。これは、僕と限られたブルブラッドキャリアしか知らない」

 

 三重の防御隔壁の扉が開き、担当官が踏み込む。桃がその背中に続いた。

 

 直後、眼前に聳え立ったのは《インペルベイン》の三つのアイサイトに近い眼窩形状を持つ機体であった。

 

 機体中央部には三角の形状をしたエンブレムの意匠があり、三つの制御核が組み込まる想定がされている。

 

 他のモリビトタイプに比してあまりに巨大であった。後頭部に反り上がった角のような形状があり、その姿はまるで鬼のようだ。

 

 赤と銀の機体カラーが余計にその印象を際立たせる。

 

「この、モリビトは……」

 

 担当官は振り返り、言い放った。

 

「初めて見るだろう。モリビトゼロ号機。君達のモリビト三機の基となった、原初の機体だ」

 

「原初の……。この機体を基にして、モモ達の三機が造られたって」

 

「そう言っても差し支えない。この機体を百五十年かけてブルブラッドキャリアは解析し、三機のモリビトへとフィードバックした」

 

 その言葉に桃はハッとする。

 

「惑星産の、モリビト……」

 

「追放時に持ち込めたのは僅かな資源のみであった。その一つがこれさ。百五十年前に、プラント施設で開発が進められていた最新鋭のモリビトタイプ。なおかつ、この機体は不完全だ」

 

「不完全、って言うのは」

 

「現状の技術と血塊炉の数では、再現不可能な領域なんだよ。この機体には一基の血塊炉が組み込まれているが、それでは起動しないんだ。まさしくオーパーツさ」

 

「じゃあ、こうして立っているだけの、無用の長物だって事?」

 

「悔しいがそうなるね」

 

 肩を竦めた担当官はタブレット端末を整備士から受け取り、桃へと投げて寄越す。無重力を漂った端末を手にして桃はそのモリビトの名前を紡ぎ出した。

 

「《モリビトシン》……」

 

「《モリビトシン》、というのが正式な呼称だ。ブルブラッドキャリアは惑星からあらゆる叡智を盗み出してきた。リバウンドフィールド発生装置、光学迷彩、モリビトの設計技術、トウジャの武装技術、リバウンド兵装の標準化……、列挙されるだけでもかなりのものだ。それらを三機のモリビトに預け、人々は雌伏の時を経た。その結果が、現状の報復作戦。だが、これを君に見せているのは別の意図がある」

 

 そのはずだ。どうして《ノエルカルテット》を駆る自分に、モリビトの原初機を見せ付ける必要がある。

 

 あるいは、こうであろうか。

 

《ノエルカルテット》を含む三機が敗北する事を想定しての――。

 

「負けるから次の手を見せておく、という魂胆ですか」

 

「察しがいいね。さすがは執行者か」

 

「モリビトは負けませんよ」

 

「どうかな? ゾル国が攻めてくるっていう情報は」

 

「担当官から渡されました。バベルでも閲覧可能です」

 

「結構。ならば分からない話でもないだろう? 敵はトウジャタイプの可能性が高い。トウジャはモリビトとほとんど技術体系では同じだが、向こうは量産が簡単だ。物量戦でモリビトが弱いのは身を持って感じたはず」

 

「それは……、勝てばいいだけの話です」

 

「物事はそこまでシンプルではない。トウジャの量産とワンオフ機体の想定。それに、ブルーガーデン国土を滅ぼした謎の人機への警戒。どれを取ってしてみても今のブルブラッドキャリアには不利な要素が多い」

 

「だからって……モモにだけこれを見せたのは」

 

「生存の確率の問題だ。《ノエルカルテット》はまだ奥の手を見せていない。《インペルベイン》と《シルヴァリンク》は対抗策を取られる可能性が高いが、《ノエルカルテット》は一番に生還出来るかもしれない」

 

 確かにまだフルスペックモードさえも晒していない《ノエルカルテット》は最終局面まで生き残れる可能性は高いだろう。だが、その想定通りに進んだ場合、ブルブラッドキャリアの敗色は濃厚になっていく。

 

「……負けを是とするんですか」

 

「何事も考えられる可能性は列挙するべきだ。《モリビトシン》は我々の希望でもある」

 

「現在の技術では建造出来ないのに?」

 

「困りものなのはそれなんだが、血塊炉の安価製造技術も同時並行に進んでいる。宇宙産の血塊炉もこの先可能であるとの試算はあるんだ。だから、《モリビトシン》がこの先も整備デッキで埃を被っているとも限らない」

 

「ブルブラッドキャリア全体の奥の手、というわけですか」

 

「話が早くって助かるね。そうだとも。未知のスペックである《モリビトシン》の、存在だけ頭に留めておいてくれ。きっと、必要になる時が来る」

 

「モモだけが知っているのはそれでもやっぱり、おかしい」

 

「どうかな。案外、この判断が正解だと思い知るかもしれない。遠くない未来に、ね」

 

 笑みを浮かべる担当官に桃は問い質していた。

 

「失礼ながら、そちらのお名前は」

 

「名乗っていなかったね。《モリビトシン》担当官、ひいては全モリビトの技術顧問を務めている、タキザワだよ。よろしく」

 

 手を差し出したタキザワに桃は鋭く言いやる。

 

「信用は出来かねます」

 

「そのスタンスでちょうどいい。なに、一人でも知っていれば御の字の話だ。それに、二号機操主が次の作戦でも乗っているかどうかは怪しいからね」

 

「クロは降りませんよ」

 

「それを決めるのは担当官だ」

 

 無慈悲な宣告に桃は拳を握り締めた。

 


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