これは、一つの可能性のお話

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セガサターンのゲーム「機動戦艦ナデシコblank of the 3years」をプレイしてないと全然わからない内容です。ホントスミマセン…。
カイトというのはゲームのオリジナル主人公のデフォ名です。これはオリ主…なのか…?


機動戦艦ナデシコ blank of the White knight

「カイトさん…キスしてください。そうすれば、私にも変えられるかもしれません」

 

彼女はそう告げた。多分わかっているんだ。そうやって引き止めるぐらいしなければ、僕がここでイツキと共に永遠とも呼べる眠りにつく事を。ルリちゃんの眼は真っ直ぐと僕を見ている。よく見れば、泣きそうとも言える表情で。それを見てどうしょうもなく自分が情けなくなった。彼女はよく自分の事を『少女』と呼ぶ。それは紛れもない事実であり側から見たって大人の女性には見えない。そんな少女に似合わない事を言わせるぐらいにまで我儘ともいえる行動を取ろうとしている自分。本当に情けない。

 

「わかった」

 

それでもルリちゃんの意思は本物だ。してくださいと言われればそれを拒否するほどの意思は僕にはなかった。それに、僕はきっと彼女の事をイツキ以上に好きだったから。アキトさんには鈍感と言われたことはあったけど、きっとルリちゃんが僕の事を憎からず想っていてくれてると分かってしまったから口からでる了承の言葉を止めることはできなかった。ルリちゃん…僕は…。

 

 

 

 

 

 

木星プラントから白いカラーリングのエステバリスが旅立つ。それは、一度だけ振り返りプラントを名残惜しそうに見つめた。まるで愛していた者をそこに置き去りにしていく様な…そんな感覚で。しかしそれも一瞬のことで、エステバリスは直ぐにナデシコBに向かって進み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイトさん…本当に…」

「うん…いいんだよ。僕は帰る場所を見つけた。君が解らせてくれたんだ。ルリ…ナデシコが、君の隣が、僕の帰る場所なんだって」

 

その言葉にルリは頷き、パイロットシートで操縦するカイトに寄り添う様になだれかかる。正直、ルリはキスをしてもカイトの意思を変えることはできないと思っていた。だが彼は今こうして自分の隣にいてくれている。それは、カイトに望んでいない選択をさせた末の結果だったのではと不安があった。彼が、縋り付いている自分に同情して側にいてくれているのではという不安も。ふとカイトがルリの頭を撫でる。穏やかな笑みを浮かべながら、愛おしそうに。

 

「大丈夫だよルリ。これは僕が望んで選んだ答えなんだ。僕が君の側にいたいって…そう思ったんだよ」

「私、口に出してましたか?」

「んー…ルリの考えてることはだいたいわかるさ。全部じゃないけどね」

 

どうしてこの人は自分の事をこんなに理解してくれているのか。ルリは顔全体が熱くなるのを感じた。多分今自分の顔は真っ赤になっているだろう。さっきのキスの時も同じ様な感覚だったし、きっとこの熱が人を好きになるという感情の表れなんだと思った。そんな事を考えていたら、先程まで心に巣くっていた不安が消えていることに気づく。カイトが側にいるという結果が、そんな不安を感じる必要のない根拠だと感じた。

 

(そう。今カイトさんは私の隣にいてくれている。それだけで良かったんだ。カイトさんがいるだけで、心があったかくなる。体が熱を持つ。世界に色がついて…綺麗に見える)

 

ナデシコBは目の前だ。自分たちの帰るべき場所。もはや家族同然の人達からは先ほどから通信が入りまくっている。やれ「無事か?!」だの「俺たちのルリルリに傷一つついてないだろうな?!」だのそれはもうひっきりなしに。ウィンドウは人の顔だらけだ。

 

「ははは…僕がついているんだけど、そんなに頼りなく見えるかな?」

「そんなことは……ないですよ?」

 

言葉の間に顔を引きつらせるカイト。だが直ぐに表情を引き締めた。

 

「…決めた。少しワイルドになるよ…ぼ、俺は」

「一人称を変えたところでワイルドになれるとは思えませんけど。そもそもワイルドになっても、頼りになるとは限りません。全く別の意味ですし」

「いーや。力強く、荒々しい。頼りになる感じしない?」

「どうでしょう?」

 

他愛もない会話が続く。しかし一旦会話が途切れると言葉が続かなくなった。通信の方も今は落ち着いて、皆周囲の状況確認に勤しんでくれている様だ。アサルトピット内には機械音のみが響く。宇宙ならではの静寂のなか、カイトが思い出したかの様に喋り始めた。

 

「あ、そういえばさっきの通信でウリバタケさんがルリに傷一つついてないだろうなっていってたけど」

「はい。いってましたね」

「傷、ついちゃったよね」

「…?…どこにもついていませんけど。カイトさんが守ってくれましたから」

「いや。その俺が、つけちゃった感じの…」

 

そう言いながらカイトはルリの唇を人差し指で軽く触る。意味を理解したルリは顔を再び赤くしながら俯いた。

 

「それいろいろと危ない発言ですよ。一定の人は、多分違う意味で捉えると思います」

「…そう遠くない未来に実現すると思うけど」

「……よくわかりません。私、まだ『少女』ですから」

「………」

 

カイトはエステバリスのバーニアを少し弱めて体をルリに向ける。顔は真剣そのものだった。

 

「カイトさん?」

「俺、求められるだけじゃダメだと思うんだ」

「はい…?」

「キス…していい?」

「……断る理由がありません」

「うん。今度は、俺が変える番だから」

「?」

「もう少女じゃいられないよ?ルリ…」

 

木星プラント内で行われた様に、二人の影は重なった。静寂の中、実はアキトとユリカの時と同じ様にナデシコB内でこの光景が艦内放送で中継されていることも知らずに

 

二人は2度目のキスをした。

 




昔やったナデシコのゲーム「blank of the 3years」の「『思い出』は刻のかなたに」のルリルートに納得がいかなくて書いてしまった…ただの妄想です…。タイトルの意味は?と言われたら実は劇ナデまでストーリーは考えてあるけど形にできる文章力がないなんて言えない…


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