響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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第8話

 あがた祭りも終わってみんなの制服が白に統一された。またそれに伴いオーディションが近づいて来たことで部内の緊張感は増していた

 

 ー音楽室ー

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

「Cの頭タンバリンのロールにもっとアクセントください」

 

「はい!」

 

 おぉ今日もナックル先輩は元気だねぇ

 

「今注意したところを重点的にパート練習を進めてください」

 

『はい!』

 

 この頃全体練習で演奏が中断する度…

 

「先生!クラ(クラリネット)なんですけど…」

 

「はい、この後来てください」

 

「フルートもお願いします」

 

「はい」

 

 こんな風に自ら疑問点をぶつけるようになった。みんなそれだけオーディションに必死ってことかな。オレもうかうかしてらんないな…

 

 一方パート練は自分たちのパートが足を引っ張らないようにと練習に熱が入り、個人練では楽譜とにらめっこしている時間が次第に増えそれぞれ自分の目指すところだけを見つめ不安に追い立てられるように練習を続けて行く

 

 

 

 

 

 

 

 ーパート教室ー

 

「来南先輩さっきの演奏でここ焦ってませんでした?」

 

「そうなんだよ!どうも息継ぎのタイミング取れなくって」

 

「じゃあここで息継ぎしてみてください」

 

「ん?わかった」

 

 ♪〜

 

「おぉ!前より全然楽!!これで少し余裕持てるよ!ありがとね」

 

「どういたしまして」

 

 どうやらアドバイスが役に立ってよかった

 

「春希くん、ここの音の強弱なんだけど…」

 

「あぁ、ここっすね。ここは波をイメージしてみてください」

 

「波?」

 

「音の波です。最初は弱くでどんどん強くしていって最後にまた弱める感じで」

 

 オレは美貴乃先輩の質問に体の前で腕を使って波を描きながら答える

 

「なるほど!」

 

 これも役に立ったようでよかった

 

「そういえば鎧塚さんは今日の音もすごいよかったけど何かあったの?」

 

「…いえ」

 

 そう言いながらオレの方を見てくる

 

「あぁ」

 

「そういうことですか」

 

 2人もオレの方を見てくる

 

「はい?」

 

「愛の力か…」

 

「っ!…///」

 

「あら〜鎧塚さん照れちゃってる」

 

「…///」

 

 みぞれは俯いたままだ

 

「はいはい、練習続けますよ」

 

「「はーい」」

 

 オレ達は全員でオーディション合格するんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーオーディション当日ー

 

 遂にこの時がやってきた。こんなに緊張してるのは久しぶりだ

 

「ではこれよりオーディションを始めます」

 

 始まる…

 

「私達が参加するA編成でのコンクールは1チームにつき最大55名までしか参加することができません。つまりここにいる何名かは必ず落選してしまいます。皆さん、緊張していますか?」

 

「してま〜す」

 

 ここでしない奴はどんだけ肝が座ってるんだよ

 

「ですよね。ですが、ここにいる全員コンクールに出るのに恥じない努力をしてきたと思っています。胸を張って皆さんの今までの努力を見せてください」

 

 みんなの目つきが変わったな

 

「では、始めます」

 

『よろしくお願いします!』

 

 

 

 

 

 

 ーパート教室ー

 

 今はオレらの順番が来るのを待っている

 

「みぞれ、調子はどうだ?」

 

「…問題なし」

 

「オレらなら大丈夫だ。だろ?」

 

「うん」

 

 大丈夫そうだ

 

「ちょっと〜、私達は?」

 

「もちろん、先輩達も受かりますよ」

 

「そう言ってくれるとなんか落ち着くよ」

 

 そうこうしてると順番が回ってきた

 

「先オーボエだそうです」

 

「わかりました」

 

「じゃあ先輩方、お先です」

 

「えぇ」

 

「頑張ってね。鎧塚さんも」

 

「…はい」

 

 オレとみぞれは音楽室を目指す

 

「みぞれ」

 

「ん?」

 

「いい音奏でような」

 

「うん」

 

 オレらは最後にお互いの手を握り合った

 

 

 

 

 

 ー音楽室ー

 

 最初はみぞれからだった。外で待機していたオレにもその音は聴こえていた。それに感化されたからかいつも以上に興奮している

 

 そしてオレの番

 

 ♪〜

 チューニングもいつも通り

 

「大丈夫ですか」

 

「はい」

 

「ではお願いします」

 

「はい…ふぅ…いきます」

 

 ♪〜

 うん、なんの問題もない

 

「はい、結構です。では次にソロのパートをお願いします」

 

「はい…ふぅ…いきます」

 

 ♪〜

 うん、オッケーだ

 

「はい、結構です」

 

「ありがとうございした」

 

 特に話もなくオレの番は終了した

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー結果発表の日ー

 

 オーディションから数日後の今日、いよいよ結果発表だ。消えたはずの緊張がまた蘇ってきた。音楽室には張り詰めた空気が漂った

 

 教室に副顧問である松本先生が入ってきた

 

「それでは合格者を読み上げる。呼ばれたものは返事をするように」

 

『はい!』

 

 その瞬間オレの手をみぞれが掴んだ。オレはそれを握り返す

 

「まずパーカッション!田邊 名来!」

 

「はい!」

 

 そしてどんどん名前が呼ばれていく

 

高久 (たかひさ)ちえり!」

 

「はい!」

 

「クラリネットは以上の4名」

 

 そして…

 

「続いてファンゴット、喜多村 来南!」

 

「はい!」

 

「岡 美貴乃!」

 

「はい!」

 

「以上2名」

 

 先輩方やったじゃん!

 

「続いてオーボエ、鎧塚みぞれ!」

 

「…はい」

 

 手の握りが強くなる。よかったなみぞれ

 そして手の握りが一層強くなる

 

「堺 春希!」

 

「はい!」

 

「以上2名」

 

 ふぅ…なんとかなったな

 みぞれの方を向くとこっちを向きながら目に涙を浮かべている

 

「ソロについては…あとで滝先生の方からお話がある」

 

 あらそう。なんか異例の事態にざわついている

 そして発表はまだ続いている

 

「続いてユーフォニアム、田中あすか!」

 

「はい!」

 

「黄前 久美子!」

 

「はい!」

 

「以上2名」

 

 夏紀…

 

「では最後にトランペット、中世古 香織!」

 

「はい!」

 

笠野 沙奈(かさの さな)!」

 

「はい!」

 

滝野 純一(たきの じゅんいち)

 

「はい!」

 

「吉川 優子!」

 

「はい!」

 

「高坂 麗奈!」

 

「はい!」

 

「以上5名。ソロパートは高坂 麗奈に担当してもらう」

 

「えっ!」

 

 おぉ!さすがぁ!

 

 こうして合格者全員の名前が呼ばれて終わった

 

 

 

「やったね春希くん!」

 

「はい!」

 

「でもソロのこと気になるね」

 

「そうですね」

 

 そしてみぞれの方を向くと

 

「うおっ!」

 

 みぞれが抱きついてきた。しかも泣いている

 

「おめでとうみぞれ」

 

「うん!ハルも!」

 

「おう」

 

 そして教室のみんなから見られる

 

 こうして大会のメンバーが決まって新たな一歩を踏み出した

 

 




そして、次の曲が始まる

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