オーディション宣告されてから何日経ったかもう覚えてねぇ
試験も終わりオレもみぞれも勉強はできる方なので赤点で追試みたいなことはなかった。勉強会はすげぇ楽しかった
さて季節も春からオレの嫌いな梅雨に入り始めたからなのか雨が多くなってきた。これからは替え用の靴下を持って来るべきだな
オレ達のパート(オーボエ&ファンゴット)の練習はかなりいい具合に進行していった。みぞれは1人だったときより断然音が良くなってるみたいだ。オレも毎日みぞれと一緒にいるから調子が全く下がらない。ファンゴットの来南先輩も美貴乃先輩もオレ達に感化されてのことか練習への熱がすごい
でもオレはまだソロのことで悩んでいた。オレとしてはみぞれのソロを聴きたいってのもあるがそのために手を抜いた演奏をするのはみぞれにも昇さんにも失礼になる。別にみぞれよりオレの方が上手いだなんて思ってはいないが万が一ってこともあるからな…はぁ……
そして全体練習
♪~♪~♪~
今は自由曲の“三日月の舞”をみんなであわせてるところだ
パンパン
昇さんが手を叩いて曲を一時中断させる
「田邊くん、ここのロールフォルテピアノ(意味:強く叩いてすぐに小さく)ですがアクセントをもっと大袈裟にください」
「はい!」
「いい返事ですけど、ズボンのファスナーが開いています」
「えっ!?」
あらら、ナックル先輩恥ずかしい
「では頭からもう一度」
オレもだけどみんな昇さんに教わってから大分上達したと思う。あの人の指示が的確すぎるんだよな
『ありがとうございました!』
あれから何度か合わせて今日は終了となった。これからは自主練やら下校やらで別れるだろう
「せんぱーい!今日は一緒に帰っていいですか?」
「うん、いいよ」
「やったー!」
リボンは相変わらず中世古先輩にべったりだな
♪〜
みんなが片付けをする中、トランペットの音が響く
「麗奈ー、片付けだぞー」
「わかりました!」
あいつ吹いてたとこってソロのとこじゃん。まぁ1年が練習しちゃいけないなんて言われてないからな…ソロか……
「みぞれ」
「…なに?」
「帰りに話がある」
「…わかった」
「じゃあ帰るか」
「うん」
今日も一緒に帰るオレ達にであった。雨振りそうだから運が良ければ相合傘とかできんじゃね!?
案の定雨が降ってきた。もちろん相合傘してますよ
「…みぞれはソロどうする?」
「どうするって?」
「正直に言うとオレはみぞれのソロが聴きたい」
「私もハルのソロが聴きたい」
「やっぱそうだよなぁ」
オレもこう思ってるんだからみぞれも同じ気持ちだとは思っていた。嬉しいんだけどね
「手抜いたりしないよね…?」
「するわけないだろ。そんなことしたらお前に失礼だ」
「よかった」
「そこで提案だ」
「?」
みぞれは首を傾げてきた。可愛いな!
「オレはみぞれのソロが聴きたい。みぞれはオレのソロが聴きたい。じゃあどっちもやろうぜ!」
「…どういうこと?」
「どうせオレら全国行くんだから府大会と関西大会で1人ずつソロやらね?ってこと」
「滝先生は許してくれるのかな」
「オレとみぞれの演奏が甲乙付け難くなったらいけるべ」
そのためには練習あるのみだな
「…それができるなら私もそれがいい」
「じゃあ決まりだ!明日からまた練習がんばろうぜ!」
オレはその言葉と同時にみぞれの頭に手を乗せる
「うん」
みぞれはそれに笑顔で答える
そして、次の曲が始まる