ー次の日ー
昨日の夜にみぞれからの連絡で教えてもらった時間に駅に着く電車に乗り、みぞれが乗ってくる駅を目指す。そうは言うもののたった3駅だが
目的の駅に着きドアが開くとみぞれが乗ってきた
「おはようみぞれ」
「おはようハル」
そう言ってオレの隣に座る
「楽しみだな」
「うん」
「この時間で何番目くらいなんだ?」
「1番」
「だろうな」
「うん」
「じゃあオレらの音でみんなを迎え入れるか」
「うん」
ガタンガタンと揺れる電車はそんな2人を乗せていく
ー学校ー
昨日も来たが昨日とは全く違う気持ちだ
楽器は2人とも自分のもので時間もかけずセッティングを終わらせる。最後にオレ達の音を聴けと窓を全開にして準備完了
「みぞれどうだ?」
「オッケー」
「よっしゃ!じゃあ始めるか」
「うん」
「オレはみぞれのために」
「私はハルのために」
「いい音奏でようぜ」
「うん」
そして今年初めてオレら2人だけの二重奏《デュエット》が始まった
♪〜♪〜♪〜
1曲が終わった
「ふぅ」
「…」
「どうだった?」
「…かった」
「へ?」
「楽しかった!」
いつもより目を見開きキラキラさせながらオレに迫ってきた
「いつもよりすごい楽しかった!」
「オレもだよ」
「もう1回!」
「いいよ。お前が満足するまで付き合ってやる」
そして2人の二重奏は続く
ークラスー
朝は特に集まって演奏ということは滅多にないので個人練で終わる
オレとみぞれはあの後2、3曲自由に吹いて終わってしまった
「いやー今日のみぞれはアグレッシブだったね」
「…///」
「あんなみぞれ久々に見たよ」
「…うるさい///」
みぞれは朝のデュエットの間はずっとテンションがあがったままだった。そんで終わった後に我に返って恥ずかしくなってしまっているのだ
「照れなくても大丈夫でしょ」
「…恥ずかしい」
「ははは、ほれ」
「おにぎり?」
「お昼までお腹持たないと思って作ってきた。入らなかったら食べなくてもいいぞ?」
「ううん、ありがとう」
「どういたしまして」
2人で授業前の軽い食事を済ませた。持ってきて正解だったな
「昼はどこで食べる?」
「ここでいい」
「いいのか?」
「ハルがいるから大丈夫」
その言葉に思わず抱きしめたくなるがここは教室だ。抑えるんだオレ!
ー放課後ー
部活のため音楽室に来た。そこでオレ達は滝先生から衝撃的な発表を耳にした
「今年はオーディションをしようと思います」
『えっ!?』
「オーディションて…」
「はい。私が1人1人皆さんの演奏を聞いてソロパートも含め大会に出るメンバーと編成を決めるということです」
『えー!』
まぁ今まで上級生優先の決め方しかしてこなかったから驚くのは無理ないか
「難しく考えなくてもよろしいですよ?3年生が1年生より上手ければいいだけの話です。尤も、皆さんの中に1年生より下手だけど大会には出たいという方がいるなら別ですが」
うわー、昇さん意地悪ー
ーパート教室ー
「いきなりのオーディションかぁ」
「大丈夫かなぁ」
来南先輩と美貴乃先輩は少し不安げだ
「課題曲と自由曲の譜面とCDもらってきました」
「みぞれサンキュー」
「「ありがとう」」
「課題曲が田坂 直樹作の『プロヴァンスの風』で自由曲は堀川 奈美恵の三日月の舞か。マジか!滝先生エグいな!」
「聴いてみよっか」
♪〜♪〜♪〜
「かっこいいね」
「うん。でも難しそう」
「こいつは複雑な気持ちだな」
「なんで?」
「これオーボエの“ソロ”あるんすよ」
「「え!」」
「…」
「ということは…」
「オレとみぞれがソロを巡って争うってことっすね」
マジでか…昇さん……もしかしてわざとか…?
「まぁとりあえずこの4人で合格しないと意味ないんで練習しましょう!」
「そうだね!」
「ここのパートはみんなで合格しよう!」
「(コクッ)」
先輩2人はやる気を出し、みぞれは黙って頷くが内では燃えているようだ
でもホントソロどうしよう…
そして、次の曲が始まる