響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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Netflixでまた1から見直して、絶対もっとおもしろく書けたと後悔しました。まぁもう遅いんですけど笑
それともう少し葵先輩を登場させてあげればよかった...

とりあえずみぞれがかわいすぎ...



誓いのフィナーレ7

 

青空の下でバーベキューというのは青春というものを感じざるを得ない。さらにそれを際立たせるのは目の前に広がる広大な芝生の広場。風に乗って草の香りも...

 

「おまっ!それ俺が育てた肉!!」

 

「甘いね滝野。バーベキューは戦場。取るか取られるかの世界なのよ!」

 

「気を抜いてるのが悪いのよ」

 

...は焼肉の匂いでかき消されてしまっている。バーベキューってこんな戦場みたいにバチバチするだったかふと疑問に思うがこれも友達同士でやる醍醐味か。確かに火がバチバチ言ってるけども

 

「まったく。皿よこせ純一」

 

「おー春樹!お前だけが俺の味方だ!」

 

「はいはい」

 

夏紀や優子に肉を取られた純一をかわいそうに思って春樹は自分達の分を少し分けてやった

 

「春樹くん食べてる?」

 

「さっきからずっと火の番してくれてるじゃん。変わるよ」

 

「慧菜も澄子も優しいな。でも大丈夫。ちゃんと食べてる」

 

「そうなの?」

 

「ハル。はい」

 

「ん」

 

三台あるバーベキュー台の一つを始まってからずっと火の番をしている春樹と変わろうとする慧菜や澄子だったが、春樹はみぞれが差し出してきたピーマンを食す

 

「あふっあふっ」

 

「あーそういうことね」

 

「ご、ごゆっくり...」

 

どういう意味の返答なのか春樹にはわからなかったが口に物を入れてしゃべるのもダメなのでグッドサインだけ出していた

 

「美代子~」

 

「ん?」

 

「こっち入れてもらっていい...?」

 

「どうかした?」

 

「あの甘々空間のせいで食べるもの全部甘く感じるの...」

 

春樹とみぞれが作り出す空間にあてられた澄子と慧菜は美代子が火の番をしている方に逃げてきた

 

「あの二人はよくやるわね。でもこっちに来ても変わらないかも」

 

「どうして?」

 

「ほら」

 

澄子の質問に美代子はとある方向を指さした

 

「ほら長瀬」

 

「ありがとう後藤くん」

 

「ね?」

 

「本当だ。でもあっちよりかはまだいいかも」

 

「そんなだったんだ...」

 

「美代子ちゃんもあっち加わってみたらわかるよ」

 

「それは遠慮しとくわ...」

 

美代子は慧菜からの提案を丁重に断った

 

「あの二人はいつまでもあんな感じなんでしょうね」

 

「調ちゃんもそう思う?」

 

「まぁね。進学先も一緒なんでしょ?」

 

「確か二人とも新山先生からのお誘いで音大を受けるってのぞみが言ってたよね」

 

「毎年倍率が大変なことになってるって聞いたことあるよ」

 

「そうなんだ」

 

「慧菜が言うんだから間違いないんでしょ」

 

なんだかんだ言いつつ話すことは自然と春樹やみぞれのことになっていた

 

「でも二人なら難なく合格できちゃいそう」

 

「「「わかる~」」」

 

「今の内にサインもらっとく?」

 

「あの二人なら有名になってもメール一本でくれそうだけどね。特に春樹は」

 

「春樹は元々レベル高かったけど、あの練習以降のみぞれの勢いがすごいよね」

 

「うん」

 

「あれは鳥肌たったね...」

 

「春樹くんも今まで全力じゃなかったんだってね」

 

「羨ましくあり嫉妬もするけど、なんか誇らしく思っちゃうんだよね」

 

「澄子も?」

 

「も?」

 

「実は私もなんだよね」

 

「調も?」

 

思っていることが同じと気づいた調と澄子はお互いに微笑み合う

 

「なんか意外」

 

「なによ意外って」

 

「のぞみの時みたく対抗心燃やすもんだと思ってた」

 

「確かに負けたくない気持ちはあるけどね。でも最近だと二人の演奏を間近でもっと聴いてたいって思っちゃうのよ」

 

「なるほどね~」

 

調の言うことに他の3人も揃って頷く

 

「そういえば2人ってさ、演奏中に何回かお互いに目合わせてるの知ってる?」

 

「え、マジ...?」

 

「うん。パーカスって一番後ろからみんなのこと見れるからさ、なにかの合図なのか知らないけどたまに目を合わせてるの見るよ」

 

「そうなんだ。何でだろうね」

 

「聞いてみる?」

 

「だね。気になるし。おーい春樹ー」

 

「ん?」

 

みぞれに食べさせてもらいながら肉や野菜を的確に焼いていた春樹を呼んだ

 

「どした?」

 

「春樹とみぞれって演奏中にお互い目を合わせてるって本当?」

 

「なんだいきなり。まぁ本当だぞ」

 

「うん」

 

「本当だったよ...」

 

半信半疑だった調が本人が本当だと言うのでさらに驚いた

 

「なにか意味があるの?」

 

「意味...って言うか確認かな」

 

「確認?」

 

「隣にハルがいてくれてるって確認」

 

「隣にみぞれがいるって確認」

 

「それを演奏中に?なんで?」

 

「ハルがいてくれて安心するし、その方がいい音出せるから。だから本当はソロやりたくない」

 

『えー!!!』

 

みぞれの発言に全員が驚く

 

「なんで!?どうして!?」

 

「ソロってどのパートでも花形だよ!?」

 

「それをやりたくないなんて...」

 

「どういうことみぞれちゃん!?」

 

「えっと、隣にハルがいなくなるから」

 

『???』

 

みぞれの言葉に全員まったく理解できなかった

 

「ソロで吹くってことは同じパートの他のやつらは吹かないってことだろ?」

 

「そりゃソロだし」

 

「それがオレもみぞれも嫌なんだよね。互いの音が聴こえなくなるから」

 

「そう、なんだ?」

 

「私は自分で吹くのも好きだけど、ハルが吹いてるときの音聴くのも好きだから」

 

「同じく。いくら演奏中でもみぞれの音が聴けなくなるのは無理」

 

「もう...2人ともなんなんよ...」

 

「なんだその言い草は。聞かれたから答えただけなのに」

 

「こんな惚気を聞かされるとは思わなかったよ」

 

「惚気か?パートナーの音をずっと聴いていたいって普通のことじゃないのか?」

 

「普通だと思ってた」

 

「そうだよな」

 

「2人には普通かもしれないけど私達にはそうじゃないのよ...」

 

「「??」」

 

「2人して何言ってんの?みたいな顔止めて」

 

「でもすごいよね二人とも。演奏中に目を合わせてるってことは滝先生の指揮棒から目離してるってことだよね」

 

「あー確かに」

 

「意識したことなかったかも」

 

「あんたら本当に人間...?」

 

「失敬だな」

 

ついに春樹とみぞれは人間認定すらされなくなってしまった

 

「さてと。そろそろ食後のデザート作りを始めますか」

 

『な、なんだってー!!?』

 

「4人はオレ達の悪口を言ってたのであげませーん」

 

「そ、そんな...」

 

「悪口じゃないよね...」

 

「そうそう...褒めてたんだよ」

 

「うん。2人はすごいって...」

 

「ホントにー???」

 

「本当だよ!」

 

「じゃあみぞれは?」

 

『天使!!』

 

「よろしい。くれてやろう」

 

『ははーーー!!』

 

「ハル...恥ずかしいからそれ止めてって言った」

 

「ごめんごめん」

 

春樹達にひれ伏している4人を横目にみぞれが春樹の胸のあたりをぽかっと叩いてきた

 

「ごめんて。でもほら、共通認識だから」

 

「そういうのは、ハルにだけ言われればいい...」

 

「...」

 

「ハル?」

 

「はっ!」

 

みぞれのつぶやきに一瞬時が止まっていた春樹

 

「ごめんみぞれ。すぐデザート作るな」

 

「うん。楽しみ」

 

その一言で春樹はみぞれを待たせてはいけない思考になり急いで焼バナナチョコレート乗せを作って全員に配った

 

「ねー春樹」

 

「どうしたリボン」

 

「リボン言うなっての。この後一応解散の予定なんだけど、春樹の家集まれたりしないかしら」

 

「集まるって?」

 

「これで解散ってなんか寂しいし、もう少しみんなでいたいかなって」

 

「それは別にいいけど、なんでウチなんだ?」

 

「みんな実家だし。それにこの人数入れるとしたら春樹の家ぐらいしかないから」

 

「まぁ確かに。別にいいぞ?」

 

「助かるわ。みんなに伝えてくるわね」

 

「おう」

 

まだ日も明るいしこれで解散だとちょっと寂しいと春樹も感じた

 

「みぞれ」

 

「なに?」

 

「今日の夕飯どうしよっか。なに食べたい」

 

「今食べたばかりだから思いつかない」

 

「そりゃそうか」

 

「昨日はサバの味噌煮だったから中華とかがいいかも」

 

「なるほど。みんな来るみたいだしどうせ夕飯ぐらいまでいるだろ。みんなで餃子作るか」

 

「うん。楽しそう」

 

「なんなら中華てんこ盛りにするか。餃子、酢豚、エビチリ、小籠包...はめんどくさい」

 

「ハルの油淋鶏食べたい」

 

「おっけー作るわ」

 

「みんな聞いてー」

 

春樹とみぞれが夕飯のメニューを考えていると優子が全員に声をかけた

 

「今日はこのバーベキューで終わりのつもりだったんだけど、春樹の家に集まれることになったから大丈夫な人はよかったら来てね」

 

『行く!!』

 

「じゃあ一旦解散して春樹の家に再集合ね!」

 

『おー!!!』

 

全員で来るらしい。買い出しが大変そう...

 

「こりゃ買い出しに人手がいるな」

 

「うん」

 

「話は聞かせてもらったよ」

 

「お、お前は...!」

 

「春樹くん...たまに変なノリが出るよね」

 

「すまんすまん」

 

救いの手を差し伸べたのは莉子と卓也だった

 

「買い出しの手伝い俺が行こう」

 

「いいのか?卓也」

 

「家にお邪魔させてもらうだけなのは申し訳ないからな」

 

「私も行くよ」

 

「ホントか莉子。助かるわ」

 

「ありがとう」

 

「ふふっ。なんかみぞれちゃん春樹くんの奥さんみたいだね」

 

「奥さん...」

 

莉子の言葉にみぞれが一瞬目を見開く。奥さん...素晴らしいな...と春樹は未来のことを想像してしまう

 

「あ、春樹ー」

 

「どした調。澄子と美代子も」

 

「必要なものあったら買っていくけどなにかある?」

 

「いいのか?」

 

「もちろん!」

 

「じゃあ夢と希望を頼む」

 

「「「...」」」

 

「冗談だ」

 

「いやわかってるわよ」

 

「ノリが悪いなー。でも助かる。後でリストメールするわ」

 

「おっけー」

 

「じゃあこれ」

 

「え」

 

春樹は財布から諭吉2枚を取り出し調に渡した

 

「いいよこんなに!」

 

「いや買い出ししてくれるし」

 

「春樹の家使わしてもらうんだから!」

 

「いいから持ってけって。実は親からもらいすぎて困ってたんだ」

 

「でも...」

 

「大丈夫だと思う。残ってた方がハルのお母さんに怒られるから」

 

「え、そうなの?」

 

「ウチの親っていい意味でも悪い意味でも豪快な人なんだよ。みぞれと初めてデートしたとき全然使わないでいたら「みぞれちゃんに質素なデートさせて何考えてんの!!!」って怒られたし...」

 

「わー...」

 

「だから気兼ねなく使ってくれるとありがたい。というかお願いします」

 

「変な頼まれ方。でもそういうことならありがたく使わせてもらうね」

 

「おう。夜は期待しててくれ」

 

「春樹。俺達はどうすればいい?」

 

「卓也も莉子も一旦帰るだろ。早めに来てもらって一緒に買い出しに行ってくれると助かる」

 

「わかった。春樹くんのお家に着いたら連絡するね」

 

「おう」

 

そこで春樹はふと思う。なぜみんなは自分の家の場所知ってるのかと

 

「ハル。私達も帰ろ」

 

「そだな」

 

「みぞれー!また後でね!ついでに春樹もねー」

 

のぞみに向かって小さく手を振るみぞれ。それを見て春樹は決して口にはしないが心の中でのぞみにグッドサインを出していた

 

みんながぞろぞろ帰る中春樹達も電車に乗った。ほとんどがバスで帰るらしく電車組は春樹達だけであり、電車よりバス使用者の方が多いのは京都あるある

 

「座れたはいいものの眠くなるな」

 

「そうだね」

 

「みぞれは疲れてないか?」

 

「ちょっと疲れたかも」

 

「普段は教室ばっかだからな」

 

「でも楽しかった」

 

「んだな。友恵には感謝しないと」

 

「うん」

 

電車の極意。座れたらとりあえず手を繋ぐ

 

「ねぇハル」

 

「ん?」

 

「今日も泊まりたい」

 

「いいけど。お母さんは...」

 

「これ」

 

みぞれが見せてきた携帯画面にはみぞれのお母さんから一言『いいわよ』とだけ書いてあった

 

「行動が早いな」

 

「いい?」

 

「もちろん。じゃあ先にみぞれの家に寄ってから帰るか」

 

「うん」

 

もう最寄りの駅に着いたので改札を出て真っすぐみぞれの家に向かった。そして歩いて数分で見慣れた家に到着した

 

「用意する」

 

「手伝うよ」

 

「ありがと」

 

「いつものことだ」

 

本当なら女子の衣類などに男子が触るのはいかがなものなんだろうが、そんな関係からはとっくに卒業している

 

「みぞれの部屋はいつ見てもきれいだな」

 

「あんまり見なくていいから」

 

「オレの部屋にはよく来るのに?」

 

「それとこれとは別」

 

女子とは難しいものである...

 

「用意って言っても大抵ウチにあるから荷物少ないな」

 

「そうかも」

 

「明日は学校だから制服ぐらいか」

 

「うん」

 

これだけ通っているのだから既に部屋着も歯ブラシもある春樹の家には常備してあるため特に持って行くものはなさそうだ

 

「じゃあ行きますかね」

 

「うん」

 

みぞれの家から徒歩10分ほどで春樹の家がある

 

「ただいま~」

 

「お邪魔します」

 

「まぁ誰もいないけどね」

 

「今日もお仕事?」

 

「らしい」

 

いつも通り親は仕事でいない。大抵いないので春樹はもう慣れてしまっていた

 

「ねぇハル」

 

「ん?」

 

玄関のドアがしまったタイミングでみぞれが春樹の服の裾を引っ張りながら呼んできた

 

「もう、誰もいない」

 

「あー」

 

さっきの欲はまだ切れてなかったらしい。そっとキスをした

 

「オッケー?」

 

「もう一回」

 

「欲しがりめ」

 

本当に高校生かというぐらい積極的な彼女を見て春樹の脳内は『みぞれがかわいすぎる』で覆われてしまった

 

「とりあえず一回シャワー浴びてきな」

 

「ハルは?」

 

「夕飯の準備」

 

「一緒に入らないの?」

 

「湯舟溜めてないんだから一緒はムリだろ」

 

「そう...」

 

「また夜な」

 

「わかった」

 

みぞれは少し寂し気に春樹の部屋から着替えを持ってシャワーを浴びに行った。その間に春樹は冷蔵庫の中身と調味料などのチェックをやった

 

「シャワーありがと」

 

「あいよ」

 

「ハル」

 

「ん?」

 

シャワーから戻ってきたみぞれが持っていたのはドライヤーと櫛だった

 

「承知の助。座って」

 

「うん」

 

みぞれがいなかったら女性の髪を乾かすなんて作業一生縁がなかったかもしれないと心の中で感じる春樹。いつものように丁寧にみぞれの髪を乾かしていく

 

「コンディショナーがなくなりかけてた」

 

「マジ?換えあったかな」

 

「なかった」

 

「危ね。今日ついでに買ってくるか」

 

「うん」

 

春樹はあまりコンディショナーを使わない。しかしみぞれが頻繁に来るため減りは意外にも早かった

 

「ほい終了」

 

「ありがと」

 

「どういたまして」

 

髪を乾かし終えるてドライヤーを片付けようとするとみぞれが春樹にもたれかかる

 

「どした?」

 

「ううん」

 

「...」

 

「...」

 

しばし沈黙の時間。シャワー後のせいかみぞれはあたたかい

 

「...」

 

「...」

 

するとみぞれは携帯で音ゲーを始めてしまった

 

「今日する時間なかったもんな」

 

「うん。ハルもやる?」

 

「オレはいいかな。あんま上手くないし」

 

「慣れたらハルでも簡単だと思う」

 

「慣れるまでが大変そう...」

 

みぞれは話をしつつもノーミスで一曲クリアした。難易度『鬼ムズ』

 

そこから20分くらいほんわかな時間が流れて莉子と卓也が到着したのでみんなで買い出しに出かけた

 

「私達はなに買うの?」

 

「澄子達に飲み物やらお菓子やら頼んだから夕飯の材料だな」

 

「春樹が作るのか?」

 

「もちろん。どうせみんな夕飯までいるだろ」

 

「おそらくな」

 

「男がオレと卓也と純一だけで助かった。大量に作らなくてもよさそう」

 

「確かに男子ばかりだと大変なことになりそうだね」

 

「てなわけでカート二台あれば大丈夫だろ。回りながらどんどん入れていこ」

 

「わかったよ」

 

「了解した」

 

「うん」

 

友達と買い出しというのはあまり経験しないことかもしれないが案外楽しいものだった。莉子は普段から料理をしてるらしく野菜選びなど活躍し、卓也はなにも力になれないと悔やんでいたが重い荷物持ってくれて春樹としては大いに助かった。そしてみぞれは好きなソーダグミに目を取られてていつも通り天使でだった

 

 


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