響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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誓いのフィナーレ6

 

「「キターーーーーー!!!」」

 

到着一番、テンション爆上がりのみるとのぞみが叫び出した

 

ここは動物園とアスレチックが併設されたテーマパーク。友恵が全員の意見を聞いて選んでくれた最適な場所だ

 

「来て早々迷子にならないでよー?」

 

「大丈夫だよ!調ちゃん心配しすぎ~」

 

「チケット買いに行くよ~」

 

「はーい」

 

「私も行くー」

 

完全に調と澄子が保護者の役だと感じる。しのぶもそれに続く

 

「朝早いぜまったく」

 

「男がぶつぶつ言わないでよ。いつもの朝練よりはだいぶ遅いでしょうが」

 

「そうだけどよ」

 

「滝野ってそういうこと口にするからモテないんじゃない?ちょっとは春樹や後藤を見習ったら?」

 

「春樹は鎧塚が行くとこならどこでも行くだろうし後藤は真面目野郎だ。一緒にすんな」

 

「それはあんたよりも二人の方のセリフよ」

 

ぶつくさ言ってる純一に注意を払う優子と友恵の図は部活以外でもこういう感じらしい

 

「じゃあオレ達も行くかみぞ...」

 

「みぞれー!私達も行こっ!!」

 

「のぞ...」

 

みぞれとチケット売り場に行こうとした瞬間、のぞみに取られてしまった春樹

 

「ドンマイ春樹くん...」

 

「のぞみちゃん今暴走中だから...」

 

「グスン...」

 

「いやグスンて...」

 

「ほら涙拭いて」

 

「のぞみちゃんのことになると豆腐メンタルなんだからー春樹くん。ほーら!行くよ!」

 

「アリガトりえ...慧菜...美代子...」

 

のぞみが行ってしまって涙を流していた春樹をりえと慧菜が慰めてくれて美代子が背中を押す

 

「卓也と梨子はどうしたんだ?」

 

「二人はもう行っちゃったよ」

 

「相変わらず梨子が後藤のこと引っ張ってた」

 

「あそこの二人はそういう関係で上手くいってるんだな」

 

「私も彼氏欲しいな~」

 

「美代子ならすぐできるでしょ。りえだって慧菜だって」

 

「作るにしても時間がね~」

 

「それはわかるかも...」

 

「梨子もみぞれも同じ部活だから」

 

「じゃあ純一は?」

 

「あー...」

 

「え、えっと...」

 

「ないねー」

 

「あーね」

 

哀れや純一。なにもフォローが思いつかない春樹を許してやってほしい

 

「そういえば春樹くんとみぞれちゃんって音大目指すって本当なの?」

 

「まぁな。新山先生に誘われてオレもみぞれも頑張ってみようかって話にはなってる」

 

「すごいよね。でも二人の実力なら当然かもね」

 

「元々すごかったけど去年の全国辺りからすごいもんね二人とも」

 

「よせやい。照れるぜ」

 

「あー春樹本当に照れてんじゃん」

 

本当に照れている春樹の顔は赤くなっていた

 

「3人はどうなんだよ。吹奏楽は高校で辞めるのか?」

 

「私はちょっとわからないかな。進学予定のところ勉強大変だろうし...」

 

「慧菜の進学先医学部だもんね」

 

「うん。続けられるなら続けたいんだけど」

 

「私はひっそりと続けるかな」

 

「なんだよひっそりって」

 

「サークルかクラブがあれば入るくらいってこと」

 

「私も同じ感じかな~」

 

「なるほどね」

 

慧菜は進学次第。美代子とりえは続けるらしい

 

「どっち回りで行く?」

 

「左からでいいんじゃない?」

 

「いきなり猛獣コーナーなんだ」

 

「なんか餌やりできるみたい」

 

ライオンの檻の前にはでっかい肉を餌として販売していた

 

「ライオンってなんで百獣の王って呼ばれるんだろ。やっぱり強いからかな」

 

「諸説あるけどいろんな彫刻とか絵画、それに国旗とかにも使われてるからって聞いたことある」

 

「へー。春樹くんよく知ってるね」

 

「なんかの番組で言ってた気がする。それにライオンってそんなに強くないらしい」

 

「そうなの?」

 

「オスって群れの中ではなにもしないらしい。狩りをするのも子育ても全部メスの仕事。なのにゾウとかサイとかによく負けるんだってよ」

 

「マジ?女に仕事させるなんてヒモじゃん。イメージ変わっちゃった。そんな旦那さんは嫌だな~」

 

「まぁ人間とライオンじゃ世界が違うからな」

 

美代子の疑問に前に知った知識を披露できて春樹の気分がちょっと良くなった

 

猛獣エリアを抜けると鳥やら鹿やらの森に住む動物のエリアに入った

 

「ミミズクってフクロウとほとんど一緒だよね。あれってホントに耳なのかな?」

 

「あれはただの飾りだ」

 

「え...」

 

「フクロウの耳はふわふわの中だからあのぴょんっとはねた角みたいなやつはなんの意味もないらしい。シルエットから葉っぱに擬態してるって話はあるみたいだけど」

 

「そーなんだ。でもカワイイからいいや」

 

「そういえばどっかにフクロウカフェっていうのがあるらしいぞ」

 

「マジ?ちょっと行ってみたいかも」

 

「異様な空間だろうな」

 

りえの疑問に前に知った知識を披露できて春樹はさらに気分が良くなった

 

次はゾウが見えるエリアに入った

 

「ゾウって耳大きいよね~。どれくらい耳がいいのかな~?」

 

「ゾウは耳がいいわけじゃないぞ?」

 

「え、そうなの?でもあんなに耳おっきいんだよ?」

 

「あれは放熱板の代わりだからな。用途が違うんだ」

 

「放熱板?」

 

「熱を逃がすためのやつ。オレらは服脱いだり汗が出て体温調節できるけど他の動物はできなくて。ゾウはあのでっかい耳で風を送りながら体温を下げてるんだって。オレらで言うとこのうちわで扇いでる感じだな」

 

「へー。それじゃあのパオーンって声出すのは聞こえてないの?」

 

「あれのほとんどは威嚇じゃないか?ゾウの意思疎通は足でしてるらしいからな」

 

「足?どうやって?」

 

「足で地面を強く踏んでその振動で意思疎通してるらしい。だからゾウの足裏の感覚器官は鋭いんだって」

 

「なるほどね~。春樹くんなんでそんなこと知ってるの?」

 

「たまたまテレビでやってたからな」

 

「そうなんだ。でもなんかすごいね」

 

慧菜の疑問に前に知った知識を披露できて春樹はまた気分が良くなった

 

その後も変に身に付いた動物の知識を披露していると大人気のふれあいコーナーに立ち寄った

 

「ふわ~」

 

「カワイイ~」

 

「もふもふ~」

 

のぞみ、える、澄子の三人がうさぎを抱えて癒されている。その隣にしゃがんで何か見ているみぞれを発見した春樹。同じように横にかがむ

 

「みぞれ」

 

「ハル」

 

「ひよこだな」

 

「うん」

 

「ちっちゃいな」

 

「うん」

 

「カワイイな」

 

「うん」

 

「みぞれの方がカワイイな」

 

「...」

 

「さすがに引っかからないか」

 

「バカ」

 

ふざけていってみたがひっかかりはしなかった

 

「ねぇハル」

 

「ん?」

 

「みんなと何話してたの?」

 

「みんな?りえ達のことか?」

 

「うん」

 

「オレの動物雑学を披露してた」

 

「雑学?」

 

「この前一緒に動物の生態やってた番組見ただろ?」

 

「うん」

 

「あれで覚えた知識そのまんま話しただけ」

 

「そうなんだ」

 

のぞみに連れられてたみぞれがちょくちょく後ろの春樹達を見てたのは気づいてた

 

「この後は一緒にまわるか」

 

「うん」

 

マップ的にももう後半戦入ってる。ここからはみぞれを独り占めにさせてもらおうと画策する春樹

 

「なぁみぞれ」

 

「なに?」

 

「なんでひよこ達さ、オレには寄ってきてくれないんだろ...」

 

「えっと...」

 

「あー大丈夫。みぞれの方に集まってるのには見る目あるなチビ達って思ってるから」

 

「...」

 

「二人はなに見てんの?」

 

二人まったりした時間を過ごしていたが夏紀が入ってきた

 

「ひよこ」

 

「ちっさいねー」

 

「当たり前だろ。リボンはどうした?」

 

「お花摘みに行ってるよ」

 

「なるほどね」

 

「春樹は意味わかるんだね」

 

「そりゃな」

 

「滝野に同じこと言ったら「ここに花畑なんてあったか?」だって」

 

「あー、想像できるわ」

 

「本当にやなっちゃうわ」

 

「もうそういう存在として見ていくしかないな」

 

純一はもう少しデリカシーとかその辺の勉強した方がいいのだろう

 

「お待たせー」

 

「結構かかったね」

 

「混んでたのよ。そろそろ次行きましょうか」

 

「そだね。おーい、そろそろ次行くよー」

 

「は~、離したくない」

 

「一匹ぐらい持ち帰ってもいいかな...」

 

「ダメに決まってるでしょ」

 

優子が戻ってきたので出発しようとするとずっとうさぎと戯れていたのぞみとえるがぶー垂れたので調お母さんが強制的に立ち上がらせている

 

ふれあいコーナーの次はアフリカに生息している動物達のエリアだった

 

「キリンだ」

 

「うん」

 

「キリンってまつ毛が長いから目にゴミが入りにくいらしい。だから瞬きが極端に少ないんだって」

 

「そうなんだ」

 

「餌やりあるみたいだけどやってみるか?」

 

「うん」

 

春樹は餌用のニンジンを購入しみぞれに渡す。すると匂いに釣られたのか一頭のキリンが近づいてきた

 

「...」

 

「怖がらなくて大丈夫」

 

みぞれは恐る恐る手を伸ばす。するとキリンは下を伸ばしてニンジンを受け取った

 

「食べるとこはブサイクだな...」

 

「私は嫌いじゃないかも」

 

「マジか」

 

キリンの食べる姿はみぞれのお気に召したらしい

 

「すぐなくなっちゃったな」

 

「うん」

 

「手、洗いに行くか」

 

「うん」

 

このエリアを抜ければ元の位置に戻って動物園は終了。次はアスレチックになる

 

「みんないる?」

 

「あれやんないの?いない人ーってやつ」

 

「うっさい!」

 

「みんないるみたい」

 

「じゃあ次に行きましょ」

 

「コースで分かれてる」

 

「私達も分かれる?それとも一緒に行く?」

 

「分かれてもいいんじゃない?」

 

「じゃあ俺は最難関コースだ!!」

 

チーム分けもまだの内に純一が出発してしまった

 

「まったくあいつは...」

 

「別にいいんじゃない?私も最難関行ってみようかな」

 

「あ、調ちゃん私も行く!」

 

「私は運動苦手だから、初心者のコースにするね。後藤くんはどうする?」

 

「俺も別に運動得居ってわけじゃないから初心者でいい」

 

「とか言って~。梨子と一緒に行きたいだけなんでしょ~?」

 

「みるちゃん!!」

 

「にひひ~。私は中級者コースにしよっと」

 

「もうみるったら...

 

「ごめんね梨子ちゃん、後藤君」

 

純一に続いて調とのぞみが上級者、梨子と卓也はセットで初心者、その梨子卓也カップルをからかったみるが中級者コースに入ってそれを澄子としのぶが追った

 

「私も初心者でいいかな。それでも怖いなー...」

 

「じゃあ慧菜、私と一緒に行こっか」

 

「本当!?ありがとう友恵ちゃん!」

 

「私も中級者にする」

 

「私も中級者に挑戦してみる」

 

慧菜と友恵は初心者、美代子は中級者、りえが中級者に行くのは意外であった

 

「優子は?」

 

「私も中級者かな~」

 

「へー。上級者できる自信ないんだ」

 

「何ですって...?」

 

「じゃあ優子ができない上級者コースを私がさくっと終わらせちゃいますかね」

 

「あはは...言ってくれるじゃない...その挑発受けてやろうじゃないの!!」

 

最初は無難に中級者コースを選んでいた優子だったが夏紀の挑発であっけなく上級者コースへ。普段ケンカしているように見えて本当に仲がいい

 

「オレ達も行くか」

 

「うん」

 

みんながそれぞれコースに入っていくのを確認して春樹とみぞれも出発した。いざ中級者コースへ

 

みぞれは運動がでいないわけではないができるわけでもない。最初は初心者コースを勧めたが本人が中級者をやってみたいと言うのでこっちに来た。春樹の使命はみぞれを無事に制覇させてあげることと胸に誓った。現状特にいらない宣言である

 

「手握ってるから。気をつけてな」

 

「ありがとハル」

 

なんとここのアスレチックは樹上で遊べるツリートップアドベンチャーとなっていた。樹の間に足場が設けられハーネスを着用して進んでいくアスレチック。現在大人から子供まで楽しめると大人気らしい

 

「怖くないか?」

 

「大丈夫」

 

「みぞれってこういうの結構好きよな」

 

「うん。意外?」

 

「最初のころはそう思ったけどな。でももう何度も遊園地だったりカラオケだったり行ってるからみぞれのことはだいぶわかってるつもり」

 

「私もハルのことは大抵わかってる」

 

「だろうな」

 

もう泊りまでする仲なんだし隠し事なんてできるわけもない

 

「ハル」

 

「ん?」

 

「少し怖い?」

 

「な、なんで?」

 

「高いとこ、あまり得意じゃないから」

 

「そうだな。でもこれくらいならまだ平気。上級者だったらちょっとヤバかった...」

 

春樹達のいるのは中段。一個下の段は初級者で上が上級者。上を見上げるとちょうど優子と夏紀が渡ろうとしている。優子はめっちゃ震えている。それを後ろから見ている夏紀はいい笑顔だった

 

「っ!みぞれさん!?」

 

「ん?」

 

「急に揺らさないでもらえます!?」

 

「なにもしてないよ」

 

と言いつつも無意味な上下運動でわざと揺らしている。顔には出さないがたまにSっ気が出てくるみぞれ

 

「後ろ来てるしもう行くよ!」

 

「なにもしてないのに」

 

「わかってるから!もう全部わかってるから!とぼけても無駄だから!」

 

「ハル、カワイイ」

 

「は?みぞれの方がカワイイから」

 

(((何やってんのこのバカップル...)))

 

周りから(何やってんのこのバカップル...)みたいな視線が2人にささる。ただ2人は特に気づくようすはない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかったー!!」

 

「森の中のアスレチックって爽快感がすごかったね」

 

「慧菜、最初あんなに怖がってたのに後の方スイスイ行けてたじゃん」

 

「友恵ちゃんがいてくれたおかげだよ!」

 

「はぁ...はぁ...」

 

「あっれ~優子。そんな息切れしてどうしたのかな~」

 

「あんた...覚えときなさいよ...」

 

「「「はぁ...」」

 

「ど、どうしたのみるちゃん達...」

 

「梨子...この後抹茶アイス食べに行こ...」

 

「い、いいけど。なにかあったの?」

 

「胃もたれ...」

 

「なにも食べてないよね...」

 

「目の前であんなにイチャコライチャコラされて...」

 

「アスレチックやったのに別のことで疲れた気がする...」

 

「すごい仲良かったよね」

 

「あれを見てその感想が出るのはしのぶくらいよ...」

 

なにがあったか春樹にもみぞれにも心当たりはなさそうだがみると澄子がげっそりしている。なぜかしのぶは大丈夫そうだ

 

「春樹。何があったんだ?」

 

「さぁ。別になにもなかったと思うんだけど。みぞれわかる」

 

「わからない。大丈夫かな...」

 

((絶対あんたらのせいだよ!))

 

同じく中級者コースを行っていたりえと美代子がめっちゃ春樹を睨んでいる

 

「この後どうすんだ?」

 

「ちょっと行ったところにバーベキューできるとこがあるからそこでお昼よ」

 

「おっしゃ!肉だ肉!!」

 

調からお昼はバーベキューと聞いた純一がまた走り出した。さすが男の子。元気元気

 

「あ。みぞれ少し待ってて」

 

「え、うん」

 

春樹は売店でとあるものを見つけたのでそれを買ってをみぞれに渡した

 

「ラムネ?」

 

「しかもビン。みぞれの好きなもの」

 

「うん。ありがと」

 

みぞれは嬉しそうにビンの蓋に口を付けて傾けた

 

「美味しい」

 

「そっか」

 

「ハルはいいの?」

 

「この後バーベキューらしいしお腹空けとかないと」

 

「少しいる?」

 

「いいのか?」

 

「うん。ハルだって好きでしょ?ラムネ」

 

「まぁな。じゃあ一口だけもらう」

 

春樹はみぞれからビンを受け取って一口だけいただいた

 

「...」

 

「どした?」

 

みぞれがじーっと春樹の方を見ている。ビンの縁?口元?

 

「あー。ここは人いっぱいだからまた後でな」

 

「うん」

 

表情には出ないみぞれだが春樹はみぞれの今の気持ちは「間接キス...直接がいい」的な考えを読み取った。こんな公衆の面前でするわけにはいかないので頭を撫でて紛らわした

 

 


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