響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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お久しぶりです。
「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」を見て書きたい衝動にかられました。少し書き方が変わってしまったかもしれないんですがそこはご了承をお願いします。

※お読みいただく前に何点か注意事項がございます。ここで無理だな思った方はお止めになった方がいいかもしれないです
・「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」と「リズと青い鳥」を無理矢理一緒の作品に落とし込んだので時系列や矛盾が発生するかもしれません
・最後は原作とは違う結果となっています
・原作では一言もしゃべっていないキャラをたくさん出してます。話し方や印象が全然違うかもしれません
・作者の欲望がそのまま入っております

以上のことをご了承いただいた上でお楽しみください



誓いのフィナーレ1

オレ達の初めての全国は銅賞で幕を閉じ先輩達も卒業してしまった。そして来たる新年度。部活は新体制となり再び動き出す。不安はある。頼りになる先輩達はもういない。でもオレ達ならできる。先輩達もそう期待してくれているはずだ

 

だがやはり先輩達は偉大であった。卒業した後の部活を見たら一目瞭然だった。人数が半分ほどに減り空間ができてしまった音楽室は寂しささえ覚えた。しかしどうやっても先輩達が戻ってくることはない。ならばどうするか。新入生に期待するしかなかった

 

新学期が始まると同時に行われる新入生部活勧誘。先輩達卒業後からの当面の目標は新入生ゲットとなった。正直期待はあった。というのも前回全国出場。しかも初ということは強豪校とされる学校ほど人数は多くないと推測できる。しかも北宇治は公立だ。私立のように推薦があるわけではない。なのでオーディションがあったとしても本番に出られる可能性は十分にあると予測できる

 

まぁ別にそんな裏がなくとも勧誘は積極的にやるつもりだったし、もちろん演奏もする。演奏するということは全力で臨む。でないと顧問から何を言われるか....

 

「ハル」

 

「ん。おぉおはよみぞれ」

 

「おはよ」

 

さて、新学期になったところでオレの生活が大きく変化するわけはない。いつも通り朝早くにオレのマジで可愛い超絶天使の彼女と合流し、いつも通り一緒に学校へ登校する

 

「ハル、また寝癖」

 

「マジ?直したと思ったんだけどな」

 

「ホントに?」

 

「...ウソですごめんなさい。めんどくさくて手櫛しただけです」

 

「でもそれがないとハルって感じしない」

 

「それって褒めてんの?」

 

「...」

 

そこで無言になるなよみぞれさんや...

 

気がつくともう学校の最寄駅だった。電車を降り改札を抜けていつもの通学路を手を繋いで歩く。ん?もちろん手は繋ぎますよ。当然じゃぁあ〜りませんか

 

「桜きれいに咲いたな〜」

 

「そだね」

 

「今日も晴れそうでよかった」

 

「うん」

 

「最近あったかくなってきたけど朝方はまだちょっと肌寒いな」

 

「うん」

 

「みぞれは寒くないか?」

 

「平気。ハルの手あったかいから」

 

「そっか...」

 

「うん」

 

はぁ...この時が一生続けばいいのに...と思ったのも束の間、学校に到着しました。この道一日に3mぐらい伸びねぇかな

 

学校に着いたらこれまたいつも通りいつもの場所、校門を見下ろせる廊下に椅子を運び、持っていた楽器を取り出す

 

〜♪

〜♪

 

「どうだ?」

 

「大丈夫」

 

チューニングはバッチリ。窓の外にはちょうど半分くらい太陽が顔を出してあったかい日差しを受けている

 

「なぁみぞれ」

 

「ん?」

 

「今日から新学期だし、あれやってもいいか?」

 

「うん。私もしたい」

 

「そっか。なら失礼して」

 

みぞれに了承を得てオレはみぞれの方を向き顔を近づける。みぞれの頭に手を置いてお互いの額を合わせる

 

「新学期、楽しみだな」

 

「うん」

 

「そのうち他のやつらも来るだろうしいつも通りオレらの音で出迎えてやろう」

 

「うん」

 

「今日からまたよろしくな、みぞれ」

 

「こちらこそ、ハル」

 

「んじゃ改めて。オレはみぞれのために」

 

「私はハルのために」

 

「新学期早々いい音、奏でようぜ」

 

「うん」

 

オーボエカップルの美しい音色は窓を飛び出し今日もまた響いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよお二人さん。相変わらず早いのね」

 

「おぉリボン」

 

「だからリボン言うな!」

 

時刻は6時30分を少し回ったころ。我らが吹奏楽部の新部長、吉川優子のご到着である

 

「お前も早いじゃんか」

 

「当たり前でしょ、部長なんだから」

 

「ならオレ達よりも早く来いよ」

 

「それはムリ」

 

「頑張ればイケるって。なぁみぞれ」

 

「うん」

 

「みぞれ...あんた最近そいつに感化されてきてない?」

 

「そう?」

 

「はぁ...もういいわよ...今日は頼んだわよ?」

 

「ホントにいいのか?ホールとかならともかく外の、しかも勧誘でガヤガヤしてる中音が届くかわからんぞ」

 

オレが言ってるのは今日の新入生勧誘の件だ。毎年のように校門のところで演奏はするのだが今回はリボンの提案でオレとみぞれがこの場所からいつものように音を出してくれとのことだった。通常オレらのオーボエのような木管楽器は野外での演奏はしない。のだが...

 

「前にも言ったけど二人のオーボエが私達の最大の武器だと思ってる。悔しいけど」

 

「それは素直に受け取るよ」

 

「だからそれを新入生にも聞いてほしい。大丈夫!策はあるから!二人はいつもみたいにいい音色を出してくれるだけでいいの!」

 

新部長からの強い要望。オレはチラッとみぞれを見るとみぞれと目が合い軽く頷いた

 

「了解だ。任せろ」

 

「えぇ頼んだわよ」

 

「そっちも頑張れよ。そっちでミスあったら元も子もねぇんだから」

 

「わかってるわよ!」

 

リボンは言われるまでもないってな感じで階段を降りて行った

 

「だってよみぞれ」

 

「うん。みんななら大丈夫」

 

「んだな。大役を任された以上こっちも気合入れないとな」

 

「うん。ねぇハル」

 

「ん?」

 

みぞれは静かに立ち上がり持っていたオーボエを椅子に置いてオレの目の前に立った。オレは座ったままなので今はみぞれのほうが目線は高いわけでオレが見上げる形になっている。するとみぞれは両手でオレの両頬に触れさっきのように額同士を合わせた

 

「私とハルなら大丈夫」

 

「おう」

 

「今度は私からさせて?」

 

「もちろんだ」

 

「私はハルのために」

 

「オレはみぞれのために」

 

「いい音、奏でよう」

 

「おうよ!」

 

本日二度目。それに久しぶりにみぞれからしてもらったな。ヤベッ、泣きそ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

登校時間になり先輩達と同じダークグリーンのスカーフをつけた新入生が続々とやってきた。それに伴い吹部の演奏も始まっている。ありがたいことに新入生だけでなく新二、三年生も立ち止まってその演奏を聴いてくれている。そして...

 

『ちゅうもーく!!!』

 

部長の声が大音量になって聞こえてきた。拡張期でも使ったのだろう

 

『はい、それではお願いします!』

 

「なるほど、そういうことね。みぞれいいか?」

 

「うん」

 

みぞれの返答の瞬間に楽器に口をつけ、指揮者が指揮棒を振る合図のようにオレは足で音を鳴らし二人のデュエットを始めた

 

〜♪〜♪〜♪〜

〜♪〜♪〜♪〜

 

およそ1分30秒。その間静かに聴いてくれたようだ

 

『はい!吹奏楽部です!』

 

最後に部長からの挨拶で初日の勧誘を終えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始業式を終えてクラス替えの発表を確認した後に吹部のメンバーは音楽室に集まった。ちなみに今年もみぞれとは同じクラスだ。ありがとう神様、いや先生方

 

「あ、春希くんとみぞれちゃん!」

 

「さっきぶり」

 

「おっす」

 

二人で座ろうとした席の後ろにはクラリネット担当の島(しま)りえとテナーサックス担当の平尾澄子(ひらおすみこ)がいて澄子の方はオレやみぞれとおんなじクラスだった

 

「お互いにこれから大変だな。クラはバスクラ(バスクラリネット)でサックスはバリサク(バリトンサックス)、オレらはファゴットする人らいなくなっちまったな」

 

「そうだよね〜」

 

「バリサクもできないわけじゃないけど、晴香先輩の代わりをすると思うとね」

 

「確かにな〜。そういう面でも先輩らは偉大だったって思い知らされるよ」

 

「二人はもうダブルエースって感じだったけどね」

 

「まったく否定しないところ春希くんらしい」

 

「オレとみぞれの音に自信あるからな。な?みぞれ」

 

「うん」

 

「さっすが!」

 

「今日からもよろしくね」

 

「おうよ」

 

「はーい注目」

 

ちょうど話が途切れたところで部長から声がかかった

 

「じゃあ時間になったのでミーティング始めまーす。これで全員?来てない人手を上げてー」

 

「さむっ」

 

「うるさい!」

 

\はははは/

 

「あと春希はこっち!」

 

「あ、そういえばオレ副部長だったわ」

 

「ちょっと!ちゃんと自覚を持って!」

 

「へいへい。すいませんねお代官様」

 

「誰がお代官様よ!」

 

\あはははは/

 

みんなの笑い声の中オレはみぞれから離れる悲しみをグッ!っと堪え前に出て夏紀の隣に立った

 

「えーっと知っての通りこれが三年生の引退した北宇治の現状です。このままではコンクールにも出られません。一年生の勧誘は始業式が始まってからの一ヶ月が勝負です!そのつもりで各自頑張ってください!」

 

「お代官様しつもーん」

 

「だからお代官様言うなっての!なに?」

 

「勧誘って具体的に何を頑張ればよろしいのでしょうか」

 

「それは...各々考えて頑張るのよ!」

 

「丸投げってことですな...承知しました〜」

 

新入生勧誘の具体案は特になく各自が頑張ってゲットしてこい!という方針で決まり、その後パート練をして新学期最初の部活が終了した

 

そして来たる入部希望の日。勧誘の甲斐もあってかありがたいことに結構な人数の新入生が見学に来てくれた。部長から軽い挨拶と説明があった後に各パートに分かれて新入生を歓迎した

 

「さて、オレらのとこにはどんぐらい来るかね〜」

 

「みーぞれ!♪」

 

「のぞみ」

 

「はぁ〜。おーい調さーん。おたくのじゃじゃ馬どうにかしてくれー」

 

「むっ、じゃじゃ馬とは失礼な!」

 

「ごめん春希、みぞれ。そのじゃじゃ馬私でも手に負えなくて」

 

「えー調ちゃんまで酷いよー」

 

やってきたのは新入生ではなく隣に陣取ったフルート&ピッコロパートの希美とパートリーダーの井上調(いのうえしらべ)だった

 

「そっちはどうだ?」

 

「今のとこ一人だけ。始まった瞬間ダッシュで来て驚いたわ」

 

「なんでまた」

 

「なんか南中出身で希美に憧れてるとかなんとか」

 

「へ〜それはまた物好きな」

 

「ちょっとさっきから私に対して酷くない?」

 

「そんなことないぞ?」

 

「調先輩、希美先輩、ちょっといいですかー?」

 

「高橋さん、どうかした?」

 

先輩二人を呼びに来たのはピッコロ担当の二年生、高橋沙里(たかはしさり)だ

 

「初心者の子が何人か来てくれたので」

 

「ホント!すぐ行く!また後でねみぞれ!」

 

「うん」

 

「じゃあ私も行くわね」

 

「おう、頑張ってな」

 

「春希先輩、鎧塚先輩、失礼します」

 

「うん」

 

「ピッコロ経験者来るといいな」

 

「ホントですよ〜。期待して待ってます!」

 

そう言って二人の先輩の後を追っていった

 

「あの〜」

 

「おぉ、いらっしゃい」

 

遂に我がパート第一号来賓者である。のだがなんだか見た目がギャルっぽい

 

「剣崎梨々花(けんざきりりか)です〜。オーボエやってました〜」

 

「おぉマジか!オレら二人もオーボエだよ」

 

「ということは始業式に吹いてたのって...」

 

「オレら二人だ」

 

「そうだったんですね!」

 

剣崎さんはそれを聞くと興奮したように思い切り机に手をついて身を乗り出してきた

 

「あの音聞いてどんな人なんだろうってすっごく気になってたんです!えっと...感動しました!」

 

「ありがとな。そんな風に言ってもらえるとこっちも嬉しいよ。な、みぞれ」

 

「うん。ありがと」

 

「こちらこそありがとうございます!色々教えてください!」

 

「ということは高校でもオーボエってことでいいのかな?」

 

「もちろんです!」

 

「おっしゃー、一人ゲット!じゃあ部長に報告してこなきゃな。みぞれ、頼めるか?」

 

「うん」

 

「じゃあ剣崎さんはみぞれについていってね」

 

「わかりました!」

 

ふむ、見た目はあんなだけど至って普通のいい子じゃないか

 

「あの!」

 

「お」

 

続いて新たに二人新入生が来てくれた

 

「兜谷(かぶとだに)えるです!」

 

「籠手山駿河(こてやまするが)です!」

 

「いらっしゃい。二人はオーボエとファゴット、どっち希望?」

 

「私ファゴットやってました!」

 

「私も、コントラファゴットの方を」

 

「おぉマジか!いやー実は二人ファゴットやってた先輩達が卒業しちゃって、今ファゴット担当いなかったんだよね」

 

「そうなんですか」

 

「しかもコントラの方ははじめましてだわ」

 

「やってる私もあまり同族の人に会ったことないです...」

 

「でも大丈夫。二人とも経験者なら基礎はできてると思うし、あとの技術に関しては顧問の昇さ...滝先生が教えてくれる。といっても二人も高校で新しい楽器をやりたいかもしれないし、他の楽器を触ってから決めて全然いいから」

 

「いえ、私はファゴットを希望します!」

 

「私もです!」

 

「ありがとう。超歓迎する!」

 

「「それに...」」

 

「ん?」

 

「「間近で先輩方のオーボエを聴きたいので!!!」」

 

「お、おう...お手柔らかに頼むな」

 

ふふふ...オレとみぞれのオーボエにこの二人も虜ではないか。いやー嬉しいね。それにしても兜と駿河か...二人のコンビ名は”徳川家康“だな!

 

「んじゃ部長に報告行くぞ。おーいリボン!」

 

「リボン言うな!」

 

わがままなやっちゃなー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新入生の楽器決めも順調に終わり各パート毎の案内に移った

 

「ここがオーボエとファゴットの練習場。パート練って言われたら大体ここだから集まってな」

 

「「「はい!」」」

 

「んじゃとりあえず座って座って」

 

一年生を適当なところに座らせてオレとみぞれは一年生に向かい合うように椅子に腰掛けた

 

「したら自己紹介と行こう。オレはオーボエ担当で副部長をとある一個上の先輩に押し付けられた堺春希だ。わかんないこともあるだろうし気楽に接してくれ。そして」

 

「鎧塚みぞれです」

 

・・・沈黙

 

「それじゃあ一年生も改めて自己紹介お願いするわ」

 

「それじゃあ私から〜。はじめまして〜剣崎梨々花です〜。オーボエ希望で入部しました〜。よろしくお願いしま〜す」

 

「はいよろしく。その間伸びした話し方、オレらは気にしないけど先のこと考えると部活中とかは気をつけた方がいいかもな。じゃあ次」

 

「はい。兜谷えるです。担当希望はファゴットです。よろしくお願いします」

 

「よろしくな。兜って漢字ちゃんと書けるか怪しいから今度教えてくれ。じゃあ最後に」

 

「は、はい!ひゃっ!」

 

最後の籠手山さんは緊張してたのか勢いよく立ち上がってしまい椅子を倒してしまった

 

「すいません!」

 

「っと。大丈夫。落ち着いて」

 

籠手山さんは椅子をあげようとするが屈んだときに今度は腰が机を押してしまい倒れそうなところをたまたま前にいたオレが止めた。ドジっ子かな?

 

「初日から先輩にご迷惑を...」

 

「大丈夫だって。とりあえず自己紹介を頼むな」

 

「は、はい!籠手山駿河です!コントラファゴット希望です!よろしくお願いします!」

 

「うん、緊張してたかな?」

 

「は、はい...」

 

「ウチはトランペットとかサックスみたいに大所帯じゃないからすぐ打ち解けるさ」

 

「ありがとうございます」

 

自己紹介も終わったところで部活の説明に進めた

 

「大体こんなところかな。何か質問ある?」

 

「部活終わった後の自主練はやっても大丈夫でしょうか?」

 

「もちのろん。というか用事がない限り全員やってるな」

 

「普段の練習はどういう感じなんですか?」

 

「基本的にはコンクールに向けての演奏が中心。あとは各パートに分かれてパート練。その他は...あ〜。死ぬ覚悟をしといた方がいいな...」

 

「え...」

 

「特に夏はしんどいぞ...」

 

「そんなにですか...」

 

「ガンバロウ...」

 

「先輩!戻ってきてください!」

 

「ハル」

 

「はっ!こいつは失敬。他にあるか?」

 

「おやつはいくらまでですか〜?」

 

「自分の体型が崩れてもいいならいくらでも許可するぞ〜?」

 

「あ、あははは...」

 

「他には?」

 

「ハル、時間」

 

「おっとそうだな。一旦音楽室に戻るぞ。他に質問があったらその都度聞いてくれ」

 

「「「はい」」」

 

「サンキューみぞれ」

 

「うん」

 

オレとみぞれが一年生三人を引き連れる感じで音楽室へ戻った

 

各パートが集まったところでリボンと夏紀、オレとトランペット担当で三年生の加部友恵(かべともえ)、黄前さんの五人が前に出た

 

「そういうわけですのでしばらくの間、一年生は加部さんと黄前さんが見ます。あとでそれぞれ集まってください」

 

「いてっ」

 

リボンが話している途中ではあったが昇さんの登場だ。どうやら開ききらなかったドアにぶつかったようだ

 

「すみません、少し早かったですかね?」

 

「いえ」

 

「それにしても随分集まりましたね。これだけの人数がいればきっと演奏にも厚みが増すでしょう。尤も人数がいるだけでまったく結果を出さない無能な集団にならないとも限りませんが」

 

早速出たよ爽やか笑顔からの毒舌

 

「去年も同じことをお話したのですが私は生徒の自主性を重んじることをモットーとしています。みなさんを甘やかしたり突き放したいわけではありません。これが一番合理的な方法だと私は考えています」

 

話をしながら昇さんは黒板に大きく”全国大会出場”と書いた

 

「これが去年の目標でした。今年の判断はみなさんにお任せします」

 

「先生、チョーク借りていいですか?」

 

「どうぞ」

 

「口先だけのスローガンなら誰でもできる。だからここではっきり言っておきます。やるからには本気でやりたい。ここで決めた目標を最後まで本気でやり抜きたい」

 

とカッコよく言いながら黒板の”出場”の文字を消し”金賞”新たに書き直したはいいが、チョークの扱いがヘタクソでキーっと嫌な音がなってしまう

 

「多数決を取るのでしっかりと手を挙げてください。この一年緩くやるか。それとも!」

 

リボンは黒板に手をやりながら力強い目で全員を見渡した

 

「それでは全国大会金賞を目標にする人」

 

その問いかけに手が挙がらなかった者はいなかった

 

「みんなの気持ちはわかりました。では今年の目標は、全国大会金賞とします!これから大変なこともいっぱいあると思いますがきっと乗り越えられると信じています!頑張りましょう!」

 

『はい!』

 

「わかりました。それでは音を合わせてみましょう。チューニングbで」

 

♪〜

 

♪〜♪〜♪〜

 

新たにクラのパートリーダーになったりえの音出しからチューニングが始まり、北宇治高校吹奏楽部の新体制がスタートした

 


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