響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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第22話

 ー翌日ー

 

 しかしそんなみんなの心配を嘲笑うかのように副部長はあっさりと現れた

 

「副部長来たんですか?」

 

「うん。学校は休んでたんだけどね」

 

「パート練に顔出したらしい」

 

「大丈夫なんですかね…?」

 

「どうだろ…あすかはよくわからないからね」

 

 どうなるんだろうか…

 

 

 そしてそれから副部長は部活に来なくなった

 

 

 

 

 

 ー1週間後ー

 

「あすか先輩、今日も来ないのか?」

 

「え、あーうん…」

 

「連絡は?」

 

「今は気にしてもしょうがないよ。練習に集中するしかないんじゃない?」

 

 黄前さんと塚本くん、そして夏紀と3年生でトロンボーンの田浦 愛衣(たうら めい)先輩がそんな話をしている

 

 副部長が部活に来なくなってから既に1週間が過ぎていた。きっと明日は来ると信じてみんな不安を押し殺していた

 

 

 

 

 ー放課後ー

 

 オレはいつものようにみぞれと練習後も自主練していた

 

「この頃のぞみと夏紀が居残って練習してるらしいな」

 

「うん。のぞみの練習に付き合ってもらってるんだって」

 

「そっちに行かないでいいのか?」

 

「ハルが休んだら行くかも…」

 

「じゃあ一生ねぇな」

 

「そうだね」

 

 みんなが副部長のことを考えている中オレ達はそんなこと気にならないかのように練習していた。実際気にしていないわけではないが、気にしていても仕方ないと割り切っているのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー翌日ー

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

 今日もみんなの演奏には覇気がなかった

 

 パンパン

 

 そんな演奏を聴きかねたのか、昇さんが演奏を止めた

 

「…なんですかこれ。皆さんちゃんと集中してますか?」

 

『…』

 

 みんなは黙ったままだった。しかし昇さんはそれに何も言わない…何が原因かは昇さんさんもわかっているようだった

 

「あのー」

 

「なんですか?」

 

 そんな沈黙の中、リボンが手を挙げて質問する

 

「あすか先輩の退部届、教頭先生が代理で受け取ったっていう話は本当なんですか…?」

 

 みんなの視線は一気に昇さんに向く

 

「…そのような事実はありません。皆さんはこれからもそんな噂話が出るたびに集中力を切らして、こんな気の抜けた演奏を続けるつもりですか…?」

 

 それに答えられる者はいなかった

 

「…今日はこれまでにして、残りはパート練にしましょう」

 

「先生!」

 

 部長の声かけにも応じず、教室を出て行ってしまう昇さん

 

 このままじゃ駅ビルはもちろん、全国大会にも影響が出るかな…仕方ない。キャラじゃないけど…

 

「皆さん!」

 

 オレがいきなり立ち上がり声をあげたことにみんなは驚きつつこちらに目をやる

 

「副部長がいなくて不安なのはわかります…でも皆さんは副部長に頼らないと何にもできないんですか?言い方が悪いことは謝ります。でも副部長がいないだけでこんな演奏をしているようじゃダメだと思います。部活ってそういうもんだったんですか?」

 

「…そんなの言われなくてもわかってるよ。でもさ…!」

 

 オレの言葉に反論しようとする3年生でトロンボーンの野口 ヒデリ先輩を中世古先輩が止めてくれた。オレはそれれに感謝しつつ続ける

 

「部長はどうなんですか?このままでいいんですか?」

 

「私は…」

 

 部長は一瞬口を紡ぐがすぐに返事をしてきた

 

「私はあすかの方が優秀だと思ってる。だからあすかが部長をやればいいってずっと思ってた…私だけじゃない、みんなもあすかが何でもできるから頼ってた。あすかは特別だから、それでいいんだっって…でもあすかは、特別なんかじゃなかった。私達が勝手にあすかを特別にしていた。副部長にパートリーダーにドラムメジャーとか…仕事を完璧にするのが当たり前で、あの子が弱気なとこを見せないから大丈夫だろうって思ってた」

 

 部長は一呼吸おいて続ける

 

「…今度は私達があすかを支える番だと思う。あの子がいつ戻って来てもいいように…もちろん、去年のこともあるからムカついてる人もいると思う。頼りない先輩ばっかって思ってる子もいるかもしれない。でも、それでもついて来てほしい…お願い、します……」

 

 

 部長はそう言い終えて一歩前に出て頭を下げる。部長、盛大に勘違いしてるな

 

「舐めてんすか?部長…オレ達の中にそんなこと思うやつがいると思ってたんすか?それこそ心外です」

 

「そうです!言われなくてもみんなついて行くつもりです!本気なんですよ?みんな…」

 

 オレの言葉にリボンが続く

 

「まぁ、あんたの場合好きな先輩に私情を持ち込みすぎだけどね」

 

「うっさい!なら春希はどうなのよ!?」

 

「あれはもう手遅れ」

 

「なんでオレが悪口言われんの…」

 

 \はははははは/

 

 夏紀がリボンに言ったことにリボンがツッコミ、なぜかオレまでとばっちりをうけた

 

「オレは相手に迷惑かけてないぞ。そいつと一緒にするな」

 

「じゃあ私は迷惑かけてるって言うの!?」

 

「その通りじゃない」

 

「うっさいっての!だいたいあんたねー!こういうときは…!」

 

「あぁはいはい、これだからいい子ちゃんは…」

 

「なぁにー!!」

 

 茶番劇はまだ続いた

 

「てなわけで部長。あなたがやるならもれなくみんなついて行きますよ!」

 

「みんな…ありがとう……」

 

 こうしてオレ達は副部長不在の中、今までの演奏を続けることができた

 

 

 

 

 

 ー帰り道ー

 

「さっきのハル、カッコよかったよ」

 

「やめてくれ、内心すげぇ恥ずかしいんだから…」

 

「次の部長はハルかな」

 

「なんでだよ、そういうのはリボンの方がむいてんだろ」

 

「そんなことないけどな…」

 

「そんなことあるんだよ」

 

 そんな会話をしながらオレとみぞれは下校した

 

 

 

 

 

 

 

 ー駅ビルー

 

 今日は駅ビルコンサート本番。最後まで副部長は練習には来なかったが、あれからみんなしっかりと練習には励めた

 

「セーラ女子、やっぱり堂々してるね」

 

「そうか?」

 

「春希にはわからないかもね〜」

 

「気にしてもしょうがないだろ」

 

 セーラ女子高校の面々を見たのぞみはそれを見て感嘆しているが、正直オレらと何が違うのって感じだ

 

「あれ、あすか先輩…」

 

「ん?ホントだ」

 

 そこに副部長が来た

 

「来れたんだ」

 

「言ったでしょ!迷惑かけないって」

 

「あすか先輩!」

 

「先輩!心配したんですよ〜」

 

 瞬く間に副部長の周りにみんあが集まり、長瀬は泣きながら抱きついた

 

「もう、また泣く」

 

「あすか」

 

 部長が副部長に近づく

 

「私、ソロ吹くことになったから。しっかり支えてね」

 

 部長はそう言って副部長に楽譜を渡す

 部長の目は今までのものとは全く違い、何かを覚悟した目をしている

 

「…もちろん!」

 

 ようやっとみんな揃って演奏できるな

 

 そろそろかな

 

「んじゃあ、準備しますかね」

 

「…」

 

 オレは準備しようて椅子やら楽譜置きやらを用意しようとするが、なぜかみぞれがこっちを見つめてきている…

 

「…あの〜みぞれ?どうかしたか…?」

 

「…しないの?」

 

「え、あぁ…今日は別に気合い入れるほどのものじゃないし……」

 

「そっか…」

 

 みぞれが言いたいことは瞬時に理解できた。オレの返答を聞いたみぞれは明らかにテンションが下がった…オレはそれを見て慌てて荷物を置き、みぞれを抱き寄せる

 

「わりー、大会じゃなくてもみぞれの隣でやるのは変わりないもんな…気の抜けた演奏するわけにはいかねぇよな」

 

「…」

 

 抱き寄せているためみぞれの顔は見れないが、みぞれが服をギュッと掴んできた。オレはそれを合図に体を離す

 

「やっぱ演奏前にはやっとかないとダメだな。ごめん…」

 

「…大丈夫」

 

「じゃあ改めて…」

 

 オレはそう言ってみぞれの額に自分の額を当てる

 

「オレはみぞれのために」

 

「私はハルのために」

 

「いい音奏でようぜ」

 

「うん」

 

 額を離すとみぞれはさっきとは別人のように笑顔を見せた

 みぞれの中でもこれは演奏前の気合い入れるみたいになってるのかな…気をつけよう

 

 そして、オレ達の演奏が始まった

 

 ♪〜♪〜♪〜

 

 

 

 待ちに待った部長によるソロ

 

 ♪〜

 

 おー!さっすがー!

 部長の奏でる音は今までにないくらい最高なものだった

 




そして、次の曲が始まる

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